(証拠はいる)
彩葉ママに耐性がない人(ノベライズ未読者)はご注意!
☽000☾
目の前の食卓机には紙紙紙、それと脂汗をかきながら吹けもしない口笛を吹いてるかぐや。
静まり返った室内は、シンクに落ちる水滴の音すら聞こえるようだ。
「ねえ、かぐや」
「………」
「かぐやが隠してること、あるよね?」
「………」
我ながら菩薩のような笑みを浮かべていると自負しているが、思慮深い目の前のダメ宇宙人は何を言っても怒られると思ってか滝のような汗をかきながら何も答えなかった。
長い沈黙を挟み、いつもとは違い重い口ぶりで話し出す。
「は、半分はヤチヨのだから……」
「見せて、私、かぐやの全部を見なくちゃ」
動揺が伝わったのか背後に隠したお菓子の缶と思しきものが音を立てた。
……そこか。
「……彩葉、怒んない……?」
この期に及んで上目遣いでこちらを伺うかぐやに、我ながら感心する跳躍で机を飛び越して飛び掛かる。
感情は時に肉体へバフをもたらすらしい。
「問答無用!」
「うわー! やっぱ怒ってんじゃん!」
半泣きのかぐやが仰け反って逃げようとするが一手早い私の腕はかぐやが隠し持っていた硬い感触を確かに掴んだ。
☽001☾
時は深夜の不思議なカフェの翌々日の昼下がりまでさかのぼる。
ついにかぐやの部屋の掃除を決意した私は、ゴーグル(実験用)、マスク、エプロン、ゴム手にゴミ袋とフル装備で扉の前で大の字で抵抗するかぐやを引っぺがしにかかっていた。
「どいて! かぐや!」
「やだー!」
「昨日一日あげたでしょ!」
「いーやーだー!」
力づくで引っぺがしにかかるが、ドア枠をうまい事突っ張ったかぐやの抵抗はすさまじく、ビクともしなかった。
しかたない、この手は使いたくなかったが……。
私が引っ張るのを辞めたのを諦めたと見たのか、突っ張った体勢のまま、こちらを上目遣いで見ながら、瞳を潤ませて媚びたように小首を傾げた。
な、舐めやがって……。
「こちょこちょこちょ」
「ひゃん! えっ! なに!? ふふ……あはははは!」
ゴム手のままガラ空きになったかぐやの脇腹を両手でくすぐる。
ピアノのおかげか指の柔軟性には自信がある。
力が緩んだ! いまだ!
「突入ー!」
「あ゛ー! まって!」
かぐやの力が緩んだ隙を見て勢いよくドアノブを開け、かぐやのわきの下に体をねじ込んで室内に踏み入る。
一応、かぐやが去った10年の間にベッド以外は綺麗に片づけた室内であったが、今は見るも無残な姿をさらしていた。
ダブルサイズのベッドがごみごみとした小物を押しやっているせいで余計に雑多に見える室内は、ローテーブルに転がる飲みかけのペットボトルやお菓子の殻にクッキー缶、そして床にばらまかれたトランプやレシートなどで余計に汚らしく見えた。
床に机の上のゴミたちの仲間が散らばってないあたり、床に捨てるほどまで堕ちてはいないようで安心する反面……ん? レシート?
往生際悪く、たわごとを言いながら私の足にへばりついて足止めをしようとしているかぐやを引きずって、ローテーブルの下に落ちたレシートをかき集める。
……これは先月の配信で使った奴、これもこないだ料理配信でマイニューギアとか言ってたやつ、これも、これも、これも!
「ねえちょっとかぐや! 確定申告に使うから小道具買ったレシートはちゃんと取っといてって言ったよね!?」
「いや~、かぐや、ちゃんと取っておいたけど昨日入れてた缶ごとひっくりかえしちゃって~~……」
「あのクッキー缶はそれか!」
ヘロヘロの声で何やら言い訳をするかぐやに、つい目つきが鋭くなる。
「ねえ、かぐや」
「はい!」
返事だけは無駄に良い下手人に、努めて仏のような笑みを作り、私は微笑みかけて言った。
「掃除は辞めてあげるから、今すぐレシート全部持って下まで降りてきて、私待ってるから」
「いいの!? やった! 彩葉ありがとー!」
呑気に喜びながらガサゴソと床を漁りだすかぐやを置いて、私は階段を下っていった。
さて、どうしてくれよう……。
☽002☾
そうして持ってこさせたレシートと小一時間格闘していたら、かぐやの不審な態度に気付いて隠し持ってたもの取り上げて今に至る。
奪い取った小さなブリキ缶を、取り返そうと往生際悪く抵抗するかぐやを片手で抑え込みながら振ると、数枚の領収書が出てきた。
ひらひらと机の上に降る紙たちを見ると、かぐやに机に並べさせた領収書とは一線を期すなかなかの大台たち。
配信用PCを強化しようとしたのかPCパーツたちに交じって、オーダーメイドアクセサリーの注文書が目についた。
……これか、抵抗してた理由は。
紙と違ってどこかに引っかかってるのか、いまだお目にかかれてない缶の中身の硬い音はきっとコレなのだろう。
抵抗を辞めて、どこか私の表情を伺うようなかぐやに、缶の中身を見ないようにしつつ、アクセの注文書を入れて返す。
「……これは確定申告には使えないから、別に取っておきなよ」
「………! うん!」
大事そうに両手で缶を抱えるかぐやに少し悪いことしたかなと罪悪感を感じながら、目の前の紙束の山を見る。
復活ライブからまた始めた配信者生活で増えたふじゅ~のウォレットの数字は、ヤチヨカップの集計期間中のそれに匹敵する。
私の収入は別として、かぐやの稼ぎであればこの程度問題はないだろうが、個人事業主となる上で一番怖いのは税金だ。
つまりこの山をまとめ上げて年に一度、確定申告を行わねばならない。
まだ半年足らずというのに出来上がった山を見るともはや税理士の先生にお願いしたほうが良いのかもしれない。
「ん? 税金……?」
「どしたの? 彩葉?」
今度は私がどっと冷や汗をかいた。
なぜ今まで気付かなかったのかと自責しながら目の前の宇宙人を見る。
そう、税金は基本的に法人と個人の違いは有れど
つまり……。
「……年末までにかぐやの戸籍作らないと税務署から芋づる式にバレて不法滞在者で追い出されるかも……」
「え゛っ!?」
☽003☾
税金のことはいったん忘れて(先送りともいう)、部屋から持ってきたノーパソで戸籍の取得について軽く調べる。
出てきた参考例たちは、基本は出生届にまつわるトラブルだが、参考になりそうな成人後に自分が無戸籍だと自覚するパターンも存在した、しかし家庭裁判所への申し立ては必須。
目の前でどこか不安そうに眼を泳がせるかぐやは、月生まれの父はタケノコ、母はゲーミング電柱。
とてもじゃないが裁判所に出す書類なんて作れない。
「詰みか……」
「えーー! かぐやいなくなっちゃうんだよ!? 彩葉いいのっ!?」
「いいわけないでしょ!」
何を言ってるんだこのあんぽんたんは、ここまで来るのに私がどれだけ人生を賭けていたと思ってるんだ。
しかし、私たちだけではもうどうにもならないのは事実。
―――絶対に使いたくなかった最終手段を使うしかない。
「はぁ……」
「彩葉……?」
気の進まなさに鉛のようなため息が出るが、しかしこの電話一本でどうにかなるのだろうという信頼はある。
ほんとに気が進まないが。
「少し黙っててね……」
「うん……」
不安そうなかぐやの視線を受けながら、スマホの電話帳から呼び出す名前は『お母さん』。
深呼吸を一つして、コールすると2回鳴って直ぐに暫定救い主が出た。
『ずいぶん久しぶりやな、彩葉、なんや月まで行って大層忙しそうやから連絡する暇もないのかと思ったわ、それとも甘ちゃんやから話すの怖くて倦厭してたんか? 情報工学やるっていうから見てたら、なんや今回は航空宇宙学やっけ? 何でもかんでも手ぇ出して、私、型無しで成功するのはほんの一握りやっていうたよね? あんたが思いつきで周りを振り回すたんびにどんだけ多くの人間が迷惑を―――』
「あんな、お母さん」
止まらない止まらない、こちらからかけたのに要件も聞かずに怒涛のお説教が始まった。
涼しい声と相まって猛吹雪のようだ。
次のお説教が降る前に本題をねじ込む。
「助けてほしいの」
『助けて? そないなこと、いまだに気軽に言えるのが驚きやわ、私、前にも言わんかった? もう忘れてしまったん? せやったら―――』
しまった地雷だ! しかしここで負けるとこれから4時間ほどのお説教でスマホのバッテリーを失った挙句、釣果ゼロどころか心のダメージでむしろマイナスだ。
朗々と続くお説教に被せるように声を張り上げた。
「弁護士の! お母さんに! 助けてほしいの!」
『………ええよ、話してみ、ただし、弁護士の酒寄紅葉に話すちゅうことは、すなわち30分で6000円の相談料が掛かるちゅうことや、家族やからって無料で聞いてもらえるなんて甘い考えは―――』
「払います! 払わせてください! 請求書は郵送で!」
かぐやには遠く及ばないが私だってサラリーマン並の収入はある(研究職は薄給が宿命だ、それが所長でも……)、4時間コースのお説教を食らったってなんてことはない。
『はぁ……そんでなんや?』
「あんな、今、ウチで居候してる子が無戸籍やねん、せやから裁判所に申し立てよと思てんけど、その子両親も祖父母ものうなってしもてん、どないしよ思って、代理人とかお母さんやってくれへん?」
少し考え込んだように、電話の向こうで沈黙が流れた。
『せやさかい、足を掬われんようにいうたやろ、人助けできるほど一人前になったつもりな―――』
「お母さん! 仕事中! お説教するならお金払わへんよ!」
油断も隙も無い!
『……着手に40万、モロモロ含めて合わせて70万用意したら、後は全部片づけたるわ』
「ほんと!?」
苦み走った声から望んでた答えが聞けた。
思わず喜びに声が弾む。
『一応聞くけど、その子成人しとるん?』
「うん」
『日本人?』
「うん」
『母子手帳の類は?』
「ない」
『ほんなら就籍やな、両親の住民票か何か戸籍を証するものと親子関係がわかるもんは? 写真でもええよ』
矢継ぎ早の質問のラリーを何とかこなしていると、答えに詰まる。
両親……、今もマンションに浮かぶもと光る竹を撮ってくるわけにもいかないし……。
ん? マンション?
「ある……かもしれへん」
『ほな、それが用意出来たらもう一回電話かけてきてな、そこで資料の受け渡しと支払いについて詰めよか』
「わかった、ありがとうお母さん」
感謝を伝えると、呆れたような息を吐く音が聞こえた。
『あんたは……、まあええわ、年末はお義父さんとお義母さんのところ行くんやろ?』
「うん」
『楽しみにしてるわ』
なにやら恐ろしいことを言いながら通話は切れた。
通話終了の文字が浮かぶスマホを机に投げ出しながら、どっと疲れが押し寄せてきて椅子に脱力して両手両足を投げ出す。
額に滲んだ脂汗を払いながら、両手を握りしめて心配そうにこちらを見るかぐやに笑いかけた。
「彩葉……」
「やったね、かぐや、なんとかなりそう」
☽004☾
運動したわけでもないのにお互い汗だくだったため、早々にお風呂を沸かして、さっさと交代で入った。
さすがのかぐやもこのドタバタ明けに凝ったものを作る気力はないのか、乾麺のお蕎麦だった夕食を手早く済ませて、自室に戻りツクヨミに一人でログインする(かぐやには部屋の掃除を言い渡した)。
ログインのエフェクトが晴れた視界に映るいつものミニシアターには、最近は必ず出迎えてくれるヤチヨではなく、小さなウミウシが居た。
「あれ? FUSHI? ヤチヨは?」
「準備があるって一足先に部屋に行ったぞ」
「部屋?」
部屋と言われてもツクヨミに限ったとしても心当たりはいくつもある、いつもの茶屋風ミーティングルームに溜まり場にしてる真実の家、あとここも部屋といえば部屋か、あとは……。
「ばかたれ」
「む」
私の思考を読んでか、唐突に罵倒してくる白いもふもふに掴みかかろうとすると、するりと抜けて出口の扉の前でぴょんぴょんと跳ねた。
「こっちだ」
さすがにこの世界の創造主の相棒なだけあって、あらゆる道を知り尽くしてるとばかりにすいすいと駆け抜けるFUSHIを追ってツクヨミを駆け抜けると、やがて、ヤチヨ城の天守閣、8000年の語らいをしたあの部屋へをたどり着いた
☽005☾
襖を開けると、銀の影が何やらガサゴソと葛籠を漁っていた。
周囲を見渡せば大小様々な、葛籠、千両箱や玉手箱など収納と名の付きそうなモノが散乱していた。
なんかつい数時間前に似たような光景を見たなと頭痛をこらえながら、声をかけた。
「ヤチヨ?」
「ひゃい! あっ彩葉!? ちょっとFUSHI! 時間稼いでって言ったでしょ!」
「はぁん? 聞いてねえな?」
「え~……」
8000年来の相棒から見捨てられてトホホ……と嘆いてるヤチヨに近づくと、両の人差し指を付けたり離したりしながら目を泳がせて、聞いてもいない言い訳を話し始めた。
こういう素のごまかし方はかぐやそっくりだなと最近特に思う。
「えっとね彩葉、彩葉たちが困ってるって小耳に挟んだというかスズメダイに聞いたというか……」
雀鯛? 京雀*1の仲間だろうか?
……まぁ家電のどれかに潜んで私たちの会話を聞いていたというところだろう。
「それでね! ヤッチョなら手伝えるかなーって思って探してたんだけどさ……」
「だけど?」
「まだ見つかってないの! ごみん……」
腰に手を当てて見渡すと、20や30じゃ足りない数の箱々。
片付けが苦手なのは8000年経っても変わらないらしい。
ま、三つ子の魂百までっていうしね。
「しょーがない! 私も手伝うよ、ヤチヨは探してるモノわかってるの?」
「ツクヨミの法人の登記事項証明書だよね?」
「うん、正解」
腕まくりしながらヤチヨに尋ねるとドンピシャで正解を当てた。
私が垣間見た8000年の中で妙にキャラが濃く印象に残った、バーで出会った自称CIAの謎の男。
彼は正倉院からもと光る竹を盗み出すという大犯罪だけではなく、現在のツクヨミの前身となる法人の設置に、あのマンションの一室の手配に、もと光る竹の回線への直結など、まさしく獅子奮迅の活躍をした。
ちょっと世界観がズレてる謎の大怪盗スパイのことは置いておいたとして、今回必要なのは、不動産契約にも使ったこの法人の情報。
正確には、法人の代表者名だ。
「ようは彩葉は思いついちゃったわけだね? マンションを契約できる人物がいるならば、それをそのままかぐやの親にしてしまえばいいって」
「そのとおり、さすがヤチヨ」
つまりどういうことかというと。
「改めて言うね」
「なにかなー?」
「ヤチヨ! お願い! かぐやのお母さんになって!」
自力で正解にたどり着いていたから予想はしていただろうに、私の両手を合わせての全力のお願いに破顔したヤチヨは、大爆笑のまま、しまいには床に倒れこんでケラケラ笑った。
「あははははは!
「……どう? ヤチヨ……?」
「ふふっ、いーよ、ほかならぬ彩葉のお願いだしね! ぷっ、ふう……承りました!」
まだツボに入ったままなのかぴくぴくと動く口角を気合で抑え込んだヤチヨは軽く了承してくれた。
「あとは……」
「うん……」
私の声に現実に叩き戻され、真顔に戻ったヤチヨとともに目の前の惨状に目を向ける。
これからは、この山からの宝探しだ。
☽006☾
ヤチヨと協力しなんとか書類を見つけ出し、代表者名(なんと月見ヤチヨだった!)とその住所その他個人情報を取得し、第一関門をクリアした。
これで日本国籍を持った親の情報を入手、あとはヤチヨに一筆委任状を書いてもらってお母さんを代理人に戸籍謄本でも本籍入り住民票でも出してもらって材料にしてもらえばいい。
第二関門は……。
「難しい顔は似合わないよー? ほら笑ってー」
いつの間にやらロリヤチヨに体を変えたヤチヨが、悩む私の口角を人差し指で突き上げた。
そのままヤチヨを抱きしめて板間に胡坐をかいて座る。
「えっ、ちょ、彩葉?」
「ねえヤチヨ、2013年頃に生まれたかぐやをヤチヨが育ててるってわかる写真ってどうすればいいと思う?」
私の体温を感じてか耳を桜色にした銀の後頭部に向かって語り掛ける。
本当は2030年7月5日生まれだが、あの大きさで10歳はちょっとさすがに通りづらい。
お母さんにも成人済みって言っちゃったし。
で、あるならば、私と同い年のほうが都合がいい。
「えっ? う、うーん……、ヤッチョとしては電子カルテをちょちょい☆ ってしちゃう方が楽だけど……」
「辞めてね」
「だったら……、あっ! そうだ! 彩葉、ちょっと放して?」
何か思いついた風にこちらに向きなおして言ったので、指示どおりに開放した。
私の腕の中から飛び出したヤチヨは、とんとんと私からちょっと距離を置いて、そのまま屈んで左の手のひらを床につけるとゆっくりと立ち上がった。
ぬるりと床から引っこ抜かれるように出てきたのは、今も隣室で掃除しているはずのリアルのかぐやの姿。
「本物?」
「嘘っこだよー、そんで、こう☆」
くるりと偽のかぐやと同時に回ったヤチヨは、次の瞬間、ロリヤチヨから見たこともない姿に変化した。
いつものヤチヨの姿から10か15年成長すればこうなるだろうか、いつか見た花魁のように色気に満ちた姿は、女性らしさを前面に出したさらに丸みを帯びたシルエットか、拳2つほど大きくなった身長のせいか、同性とはいえドキッとする。
着崩れた和服から覗く鎖骨に、おもわず生唾を飲む音が頭蓋に響いた。
ついでに変化に巻き込まれた偽物のかぐやは、いつかオムライスを食わせてやったちんちくりんだ、なつかしい。
「で、こう!」
ヤチヨが手を払うように動かすと、あたりが前に住んでいた私のアパートに切り替わった。
フィールドの遷移とともに、服装がかぐやも好んで着てる私のブカブカの黒Tシャツ(今のヤチヨが着ると妙にパツパツだ)に変わり、その勢いのまま、流れで偽のかぐやとのツーショットスクショを撮った。
「ね、彩葉? これならどうかな?」
ウィンクとともに私に送られてきたスクショは、背景の生活感(私が10年前住んでたアパートの再現なんだから当然だ)と合わせて、妙に色気のあるシングルマザーと一人娘といった感じで、これがツクヨミ内のスクショとは思えない出来だった。
「うーん、アリ材で作ったからやっぱ、見る人が見ればVRだってバレちゃうかな~」
関心しながらスクショを眺めてると、いつの間にやらロリヤチヨに戻ったヤチヨが私の肩越しにスクショを見直して辛口に評定する。
「十分だと思うけど、不満?」
「4日……3日くれれば、もっと完璧に作れるよ、多分ね☆」
「だったら、お願いしてもいい?」
「うーん、いいけど……」
かぷりと首筋を甘噛みされて、背筋がぞくっとした。
「もしも出来たらさ、彩葉はヤチヨになにをしてくれるんだい?」
耳元で囁かれる声と吐息に腰が抜けそうになる。
10年前はあんなに欲しかったヤチヨのASMRだ(終ぞ発売されることはなかった)。
「え、あの、えーと、エッ」
「あははは、じょーだんじょーだん! 本気にしちゃった?」
背後からのしかかるように抱き着くヤチヨは誤魔化すように軽快な笑い声をあげる。
「でもね、彩葉、たまには
「うん、また会いに来るよ」
「うん! 待ってる!」
さ、おしまーい! ヤッチョも寝る時間だー! なんて言いながら私から離れるヤチヨに名残惜しくも手を振りながらログアウトボタンを押す。
エフェクトで青く染まる視界の中で、
「待ってるからね、彩葉」
声を聴いた気がした。
☽007☾
ヤチヨの渾身の捏造子育て写真の完成を待って、それからお母さんに連絡した私は、その後の指示どおり京都に捏造写真と登記事項証明書と委任状を送り、前金を振り込んだ。
それからはさすがのお母さんの剛腕というべきか、2か月ほどで『かぐや』改め『月見かぐや』さんが爆誕した。
そんなこんなで、ついに発行された顔写真付きのマイナンバーカードに目を輝かせてるかぐやの、その腕には私の右手と同じ形のブレスレットが光る。
そうあのかぐやが隠し通そうとしたオーダーメイドアクセサリーは、あの夏にかぐやから貰った月のブレスレット……のガワだけコピーしたプラチナのブレスレットだった。
せっかくだからおそろいのアクセ付けたかったけど、なんか今更新しいのを付けんのもなんかちがうかなーって、とはかぐやの談。
たまに光っていた私のブレスレットと違って、単一金属のコピーで良いのかと尋ねると、元の奴ももうほとんど金属の塊みたいなものだし、錆びなければ一緒、と笑っていた。
ちなみにここまで話が大事になったにもかかわらず、いまだにかぐやの部屋は掃除ができていない。
次は運転免許だ! などと浮かれるかぐやを見ながら、私は年末には必ず一掃することを密かに誓った。
この小説はフィクションですので法的なアレコレはふわふわ雰囲気で書いてるので眉毛にたっぷり唾を付けといてください。
またしても捏造エセ関西弁ごめんなさい。
気になるなら誤字報告で直してくれてもいいのよ(チラチラ
作者にはネイティブ関西弁話者の友人はいません……。
よく創作で魔法とか裏組織の権力とかハッキングとかでどうにかする捏造戸籍ですけど、実はそんな不思議パワーじゃなくて弁護士が居れば作れるんだよなっていうアレから生まれたお話です。
裏組織じゃなくて、まずは法務局と法テラスに相談だ!
ちょうど彩葉ママは弁護士ですし。
結局掃除できなかったかぐやの部屋!
なにも片付いていない確定申告!
なにやら不穏なヤチヨ!
どうなってしまうんだ!
感想とここすきください!