日本で一番、月に近い場所   作:五宝合体竹取ロボ

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ゴキンジョの超かぐや姫コンセプトアートを見てから読むともっと楽しめます!

よくわかんないものいっぱい出てくるけど全部書いてあったもん!
ほんとだもん!
金魚いたもん!


【蛇足】Ghost in the TUKUYOMI

☽000☾

 

 

 ヒトの脳細胞と機械とで電算上の大きな違いは ”忘れる” ことができるかどうか。

 

 膨大な情報を処理する上で、すべてをイチから処理するのではなく、忘却と再構築を繰り返し、省力で効率的に最短の道を作り出すチカラ。

 

 海辺に墜ちた『もと光る竹』に宿る幽霊とは違い、肉体を得たかぐやはこれからどんどん ”忘れて” いく。

 ヒトらしく効率的に、そして再構築して行くのだろう、始まりは同じだった(ヤチヨ)とは別の(かぐや)に。

 

 幽霊とは言い得て妙だ。

 

 蝶が羽ばたいた後に残るサナギの殻のように、中身が抜け去った外殻に宿った残留思念(ゴースト)の寄せ集め。

 それでいて残ったものがあるからこそ、ただの複製(コピー)とも違う、ドーナッツの穴、そのもののような矛盾した存在。

 単体だと存在しないのに確かにあるもの。

 

 幽霊は殻の中に宿る(Ghost in the shell)……、なんちゃって!

 

 さて、神々のみんなー! ヤオヨロー!

 ツクヨミ管理人の月見ヤチヨでーす!

 

 今日は一日オフだから、彩葉と遊ぼうと思って待ってるところ!

 

 欄干に寄りかかりながら、ログイン検知のウィンドウを付けたり消したりしつつ、じっと空に流れる魚たちの流星群を眺める。

 キセルでもあったらサマになったのかな? なんて思いつつ、お気に入りの眺めを見ていると、ウィンドウが音を立てた。

 

 「さあ、FUSHI! おいで!」

 

 掛け声とともにぴょんと肩に乗ったふわふわの相棒の感触を感じながら、欄干を蹴り上げて宙に体を泳がせる。

 視界に乗せたUIでピックアップした彩葉への最寄りへと繋がる鳥居(ワープゲート)に向かって瓦屋根を駆けながら、つい含み笑いをこぼしてしまう。

 

 そう! 今日はいつも二人セットのかぐやから、もと光る竹のモデリングを超特急でさせられた時の借りを返してもらうために、丸一日彩葉を借り受けたのだ。

 

 まぁ、(ヤチヨ)(かぐや)の非同一性にまだ気づいていない彩葉にとっては、いつものかぐやとのデートなんだろうけどね。

 

 でも、私にとっては特別な一日。

 

 突然空から現れた私に驚く鳥居前の周囲の声を聴きながら目的の鳥居に飛び込む*1

 

 緩む口角を必死に抑えながら、頑張ってお澄まし顔を作る。

 彩葉の ”推しの月見ヤチヨ” の顔は作れてるだろうか?

 

 座標移動とともに視界を塞ぐエフェクトが晴れるとそこには―――。

 

 

☽001☾

 

 

 「いーろは!」

 「うお、ヤチヨ!? どっから!?」

 「ふふふー」

 

 待ち合わせ場所なのに、私の姿が見つけられなくてキョロキョロしていた彩葉に抱き着く。

 それもそのはず、今の私はいつもとは装いが違う。

 

 バトル用のような涼やかなショートパンツに合わせた見せキャミ、そしてその上から赤フチのラインのついた真っ白いダボっとした大き目フードのダッフルコート。

 

 フードを下ろせばFUSHIを模した耳が立つのがワンポイント。

 最初は狐耳を模してこれで狐の嫁入りだねーだなんて言ってたけど、途端に恥ずかしくなって変えたのは彩葉にはナイショ。

 

 外もそろそろ秋も終わるし、ツクヨミの中のおしゃれさんたちも徐々に冬服っぽくなっているから、良く紛れるだろう。

 

 「あれ? 新衣装?」

 「似合ってるかな?」

 「最っ高!」

 「よきよき~」

 

 本邦初お披露目の姿に目を輝かせる彩葉を見ると、こっちもうれしくなる。

 悩んだ甲斐があるってものだ。

 

 「お姫様、お手を拝借」

 「ツクヨミのお姫様はヤチヨでしょ?」

 「あはは、ほら! 握って?」

 

 ぎゅっと彩葉の暖かな手を掴む、それが疑似信号であっても、じんわりと熱が腕を伝って胸に届く。

 

 彩葉は数え切れないほどいろんなものを(ヤチヨ)にくれた、それが(かぐや)に宛てたものであっても。

 

 でも、この世界(ツクヨミ)の五感だけは、私への贈り物だ。

 理論は完璧でもスキャンがまだまだ甘くて、どこか薄っぺらい食べ物たちも、抱き着けば感じる柔らかさや温かさも、うっすらと感じる花の香りも。

 

 だから、彩葉と触れ合えるこの時が、私は大好きだ。

 

 「ねえ、彩葉、どこに行きたい?」

 「ヤチヨと一緒ならどこでも」

 「え~~、困るなぁ!」

 

 二人で笑い合いながら彩葉の腕を引っ張りながら、第一案でマーキングしていた鳥居に向かう。

 大通りから路地に入り、石積の階段を上りお地蔵さんを撫でて裏を抜ける。

 

 「あれ? そういえば牛列車*2は使わないの?」

 「あれは風情が無いから、なーし! それとも彩葉はヤッチョと歩くの嫌だったかい?」

 「いや、そんな! ちょっと気になっただけで……」

 「ふふっ、困らせたくなっただけー」

 

 そうしたら彩葉はちょっと呆れたような目つきになって、こう言ったの。

 

 「ヤチヨちょぴり悪い女になったね……」

 「解釈違い?」

 「いや……新解釈の登場だね……奥が深い……」

 

 顎に手を当てて、真剣に考えこむ姿がお兄さんの帝とそっくりで、つい声をあげて笑ってしまった。

 

 

☽002☾

 

 

 そこそこの行列とその先の巨大金魚鉢で、目的地に得心が行った彩葉とともに列に並ぶ。

 列の先には竹筒製の入り口と、そこに水を落とす巨大鹿威し。

 そしてその鹿威しに水を供給し続ける、常に水があふれている巨大金魚鉢とヌシの金魚が見える。

 

 この先にあるのは要は複合施設だ。

 アバターアイテムショップにゲーセンにカラオケに、エトセトラエトセトラ……。

 人気すぎて、施設内の人数調整のために入場制限が掛かってるという訳だった。

 番頭が金魚だけど。

 

 「今日は空いてるみたいだね」

 「ずっと前に中でヤチヨのライブするって日は、もう金魚すら見えない長蛇の列でさー、学校帰りじゃ私は入れんかったよ……」

 

 ボヤく彩葉のしみじみとした声で思い出す。

 ツクヨミのふじゅ~の徴収システムは、リスナー側の脳波や心拍数から興奮度を割り出して自動徴収する。

 なので、当時の私は彩葉の生活費が必要以上に削れないようにと、会いたい気持ちを押し殺し、抽選を落としたり、入場数を絞ったり……っていうのは、墓まで持って行こう! うん!

 ま、私にお墓(最期)なんてあるかわかんないけど。

 

 「あはは~……、大変だったね~~……」

 「?」

 

 思わず出た乾いた笑いに怪訝そうに目を向けてくる彩葉。

 

 「さ、行こ!」

 「あ、ちょっと!」

 

 誤魔化すように手を引っ張り竹筒の中に入る。

 狭い筒の中は二人で入るにはぎゅうぎゅうで、計らずとも彩葉に抱き着く格好になる。

 

 さりげなく腕の中に入るように私の腰に回された彩葉の手の感触にどぎまぎしていると、カコンと鹿威しの音が鳴ってワープのカウントダウンが始まった。

 

 私の方が拳一つアバターの身長が低いから自然と見上げる形になりつつ、そっと彩葉の顔を伺う。

 私の視線に気づくこともなく、前を見つめる彩葉の表情は気負った感じも無く楽しそうで、なんだか安心した。

 

 そのうち、水しぶきの音と共に滝に入り口が閉ざされて、施設の中へと私たちは移動した。

 

 

☽003☾

 

 

 朱塗りの欄干で縁取られた楼閣は、きらびやかなテナントたちと相まって、デパートというよりは遊郭を思い出す。

 半ばランドマークと化した中庭の大赤松を通り過ぎて、目的のゲームセンターへと彩葉をいざなう。

 

 踏むたびに音を立てる板張りの階段を上って小道に入れば、石畳の通路の両脇にテナントたちが並ぶ通りだ。

 からんころんと鳴る雪駄の音に合わせて、自然と足取りは軽くなった。

 

 ここら辺のテナントたちは、もともとはアバターアイテムばかりで食べ物屋はそこまで多いわけでもなかったが、今は味覚情報アセットが売られてることもあり、食べ物を扱うお店もちらほらと増えてきた。

 データをイチから現実でスキャンして持ってくるのではなく、カクテルのように組み合わせでいろんなものを作るとは、ツクヨミのクリエイターたちは侮れない。

 

 ま、その分ゲテモノも多いんだけど……。

 

 お、噂をすれば影だ。

 

 「彩葉! アレ食べよ?」

 「ん、なに? なんだあれ……メンダコまん……?」

 

 テナントの売り場にはセイロの上に湯気をまとったピンクのメンダコ饅頭が整列していた。

 

 手早く会計を済ませて二人で、せーのでかぶりついた。

 このメンダコまんは最初期に出てきたもので、今でも一部でカルト的な人気を誇る。

 その理由は……。

 

 「ぐあ! 苦甘しょっぱすっぱい!」

 「あはははは!」

 

 主に罰ゲーム用だ。

 

 「うーん、相変わらずおいしくない!」

 「うぇ、どうしちゃったのコレ……」

 「タコ焼きの味を再現するためにいろいろ組み合わせてたらアセットのIDが1個ずつズレちゃってるの気付かずにショップに並べちゃったんだって」

 「あぁ……、なるほど……」

 「そんで、慌てて直したら、前の味が良かったって逆にクレーム入って元に戻しましたとさ、めでたし、めでたし」

 「ええ?」

 「今じゃここに来たなら一度はみんな食べる名物なっちゃってさー」

 

 渋そうな顔をしながら半分のこった饅頭を見つめる彩葉におかしくなって笑ってしまう。

 データとはいえ、頑張って食べ切ろうとする彩葉とともに歩き続けるとお目当てのゲーセンが見えてきた、入口直ぐのプリクラの小屋を指さしながら声をかける。

 

 「あっ、彩葉! プリクラ! 一緒に撮りたいな!」

 「いいじゃん、どれにする?」

 「ん~~、あれ!」

 

 指を指す先は、舞妓風に勝手にアバターを弄ってくれる筐体だ、名前はそのまんまMAIKO6。

 

 「MAIKOかぁ、おしろいは?」

 「アリナシどっちもがいいな~」

 「りょーかい」

 

 暖簾をくぐると、それぞれ元のアバターの面影を残した着物姿に自動変換される。

 

 紺地に水色の麻の葉模様の彩葉と、白の無地から裾にかけて黒い青海波が書かれた私。

 びしっと帯までついて完成。

 

 狐耳が消えて舞妓の髪型(割れしのぶ)になった彩葉に抱き着くとお互いの簪がチリンと鳴る。

 

 「わ、ヤチヨ!?」

 「彩葉もポーズ! いえーい!」

 「えっ、い、いえーい」

 

 ぱしゃっと筐体からSEが鳴った。

 そこからは回数が許す限り、いろいろなポーズをして撮り合ったけど、プリクラの本番はここから。

 暖簾をくぐっていつもの服装に戻ったら、外の別画面で写真の加工だ。

 

 「お、小顔だ、えい☆」

 「元が小さいんだからエイリアンみたいになってるじゃん……」

 「いーのいーの、こういうのは盛ったもん勝ちって芦花が言ってたよー」

 「ふーん……、うお、自動美白にしたらヤチヨが元が色白すぎて白飛びして消えた!」

 「彩葉も変な顔ー! あははっ!」

 

 さんざんふざけ倒して写真を弄ったら、デコって完成!

 加工が終われば、自動でフォトフォルダに送られる、一応フォルダを開いてきちんと送付されてることを確認したら、もう一度入るために彩葉の手を引く。

 

 「さ、次はおしろい有りでもう一回!」

 「さっき白飛びしてたけど大丈夫だよね……?」

 「六代目だから、多分だいじょーぶ! ヤッチョは保証しないけどー」

 「適当だなー……」

 

 もう一度暖簾をくぐって、撮影ボタンを押す、画面のフレームの中にはもはや誰が誰だかよくわからなくなった舞妓さんが、二人並んで楽しそうに笑っていた。

 

 

☽004☾

 

 

 次に来たのはゲーセンの目玉! ってほどでもないけど割と人気な太鼓バトル。

 

 お互いに太鼓をたたいて光線を出して相殺し合い、押し勝ったほうが勝ち。

 

 連打でも光線は出るけど、流れてくる音楽に合わせたノーツの的中度で威力が倍以上変わるから、結局はみんなちゃんと音ゲーをやることになる。

 

 グレイト(100%)オンリーのフルコンボ同士であれば理論上は引き分けになるけど、実際に手でバチを動かす以上そんなことはなかなか起きない。

 というかそんなことが起きるような超達人同士は怒涛のノーツが流れてくる鬼畜曲で戦うからフルコンボできてもコンマで外したグッド(90%)の数で片方に押し負ける。

 

 さて……。

 

 「彩葉ー! 準備できたー!?」

 「いつでもいいよー!」

 

 10mほど離れた彩葉に向かって声を張り上げる。

 曲は私の持ち歌、彩葉もよく聞いてくれてたから得意だしね。

 

 「じゃあいくよー!」

 「ほいきた!」

 

 さあ、試合開始だ!

 

 曲が始まるとともに流れてくるノーツを叩きつつ、片手で処理できる合間にずっとフチを連打する。

 

 「どんどん、かかか♪」

 「あー! ヤチヨ、フチ叩きしてる!」

 「ふふん、禁止されてなかったのです、油断したほうが悪いんだよー!」

 「このー!」

 

 フチ叩き、ま、小技だ。

 ノーツ外の打撃も一応光線としてカウントされるため、両手必須の高難易度曲以外の片手で済むパートを、余った方の手でひたすら連打でジャブを打ち続けて物量で勝つ戦法。

 

 高難易度(全部両手)が基本な大会では使われないことから、暗黙な感じでバッドマナー扱いされてる。

 片手でもこなせる上級者が、初・中級者相手にやってたことも原因かもしれない。

 

 そんな私のこざかしい攻撃に、余裕をかなぐり捨てた彩葉も渾身の連打で攻めてきて、一時は押してた私の光線をだんだん巻き返してきた。

 あれは何だろう……、満身の力を込めて痙攣で回数を稼いでるんだろうか……? 

 きちんとこちらで腕を振らないといけない私では追いつけないスピードの超速連打だ。

 

 紳士協定を結ぶつもりだった彩葉から出てきた秘策にワクワクしながら、両手で捌かなきゃいけないサビのパートに入った。

 

 二人の間の相殺し合った光線が消える直前に周囲に散り、花火のように花開く。

 ……というかだんだん近づいてきてない?

 

 「あれー? グレート出し続けてるのに……、あ! 彩葉、ノーツの合間にフチ叩いてる!?」

 「今更気づいてももう遅い!」

 「負けるかー! あっ! ぎえー!」

 

 真似しようとしたら、うっかりノーツを叩き洩らしてコンボボーナスの威力補正のバフが消えた。

 そうなれば、あとは押し切られるだけで、あっという間に私の太鼓は煙を吐いて負けてしまった。

 

 「目には目を歯には歯を、ぶい!」

 「ぐぐぐ、たのくやしかったー!」

 

 負けちゃったけど楽しい!

 でも、彩葉いつの間にあんな技を?

 

 「その変な造語まだ使ってるんだ……」

 「ね、彩葉、あんな技初めて見たんだけど、新技?」

 「いやー、なんかできるかなって思ったらできたんだよねー」

 「さすが彩葉……」

 

 なんかもう、悔しいとか楽しいじゃなくて素直に感心してしまった。

 

 

☽005☾

 

 

 さんざん遊び倒した複合施設を後にして、ちょっと奥まったところにある鳥居の前までやって来た。

 鳥居に書かれた目的地に見覚えがないのか彩葉が首を傾げる。

 

 「ヤチヨ、ここは?」

 「行ってからのお楽しみだよー」

 

 そう言いながら彩葉の手を引きながら鳥居をくぐる。

 

 「わぁ……」

 「ふふっ、イェーイ! どう?」

 

 目を輝かせて感嘆の声を上げる彩葉の姿に満足。

 連れてきた場所はツクヨミの郊外に新規で作った紫陽花畑。

 

 中心の小島が浮かぶ池からすり鉢状に周りを囲む棚田には、稲の代わりに青紫ピンクの紫陽花たちが咲き誇る。

 色とりどりの紫陽花たちが風にそよぐと花の匂いが流れて着て、嗅覚を実装したアップデートツクヨミのチュートリアル体験としてはベストといった感じ。

 

 ま、紫陽花はほとんどの品種はほぼ無臭だから、香りは演出なんだけど。

 

 「すごくきれい……、だけど、どうしたの?」

 「プレオープンって感じかな? もともと近々開放する予定で作ってたから、いい機会だと思ったんだよね~~」

 

 嘘である。

 めっちゃ頑張って突貫で作った。

 なんだったら配信のリソースすらもったいなくて最近は再放送すらしていた。

 

 「ね! 歩いてみよ!」

 「じゃ、エスコートはお任せしよっかな」

 「うっけたまりー!」

 

 ぐるりと渦巻き状になっている散策路を一緒に回る。

 中央の池に流れ込む小川を浮石で飛び越えて、たまに吹く風に髪を泳がせながら。

 

 「ねえ、彩葉」

 「んー、なにヤチヨ?」

 「紫陽花ってさ、色によって花言葉が違うんだよー」

 「へー、それで種類統一したの?」

 「そんなことはー、ちょっとあるかも?」

 「なにそれ」

 

 くすくすと笑う彩葉に、順路を流れてくる紫陽花たちを房を手で抱えながら一つ一つ説明していく。

 

 「青は知的、彩葉も青系だしね?」

 「辞めてよ、そんなん私のキャラじゃないって」

 「えー? またまたー」

 

 研究所の若き所長が知的じゃなかったら何なんだ……?

 彩葉の変に自己肯定感が低いのがいまだに治っていないのがちょっと心配になる。

 

 「そんで、紫は神秘的」

 「ヤチヨって、正体不明で複数企業説とか国家プロジェクト説とか未だに半分陰謀論みたいなのが噂されてるし、たしかに……」

 「ふふっ、なにそれー」

 

 さっき彩葉を当てはめたからか、返歌が飛んできた。

 

 「中身がかぐやでがっかりした?」

 「ううん、全然、もっと好きになった」

 「そっか」

 

 彩葉は真顔でこういう事言うから困っちゃう。

 まったく……。

 

 「で、ピンクは元気な女性」

 「まんま、かぐやじゃん」

 「たしかに!」

 

 普段の破天荒を思い出して二人で静かにクスクスと笑い合う。

 

 「ねえ、ヤチヨ」

 「なんだい?」

 「他の色は?」

 「うーんとねー、白は一途な愛情で、緑は辛抱強い愛情……だったかな?」

 「へー、どうして植えなかったの?」

 

 当然の疑問に私はにやりと笑って、少し間を貯める。

 

 「それはですねぇ……、実は……」

 「実は?」

 

 ごくりと息をのむ音が聞こえた。

 

 「植えたけどなんかあんまり映えなくてさー、抜いちゃったんだよねー」

 

 私の気の抜けた返答に蹴躓く彩葉。

 ふふふ、マジでそんな大した理由は無いのだ。

 

 「花言葉とか言ってたから深い意味があるのかと思ったよ」

 「ぜーんぜん! そんなに世の中、全部が全部、考えられてるわけではないのですー」

 「そんなもんかー」

 

 そんな他愛もない話をしているとついに終点の小島の鳥居の前まで来てしまった。

 

 「さて到着ー、あー終わっちゃった……、ねえ、彩葉? 今日はどうだった?」

 「すっごく楽しかった!」

 「良かった~~」

 

 彩葉の満面の笑みに、ほっと胸を撫でおろす。

 

 「でさ、ヤチヨ」

 「ん? なんだい?」

 

 唐突に切り出された彩葉の言葉に首を傾げる。

 

 「今度はさ、向こうで遊ぼうよ、かぐやと三人で」

 「えっ? でも……」

 「体なら大丈夫! 実はYC型のボディの持ち出し許可取ってるんだ」

 

 実は今日使うかなって思っててさー、なんて頭を掻く彩葉に、思わず抱き着く。

 

 「わっ、ヤチヨ?」

 「ありがとう彩葉! 大好き!」

 

 答えはもちろんYESだ。

 

 

☽006☾

 

 

 私の夢みたいな一日デートはこれでおしまい。

 

 友達と買い食いしたり、ゲーセンで遊んだり、お花畑で散歩したり、普通の女子高生みたいだと思わない?

 

 ま、私も彩葉もそんな歳じゃないんだけどねー。

 

 三人で遊びに行った日の話はまたいつか。

 あんなトラブルやこんなトラブルを彩葉がビシバシと! なんてことは……、ま、起きなかったんだけど。

 

 あ! そうそう。

 

 実は彩葉に言ってない花言葉があったんだ。

 青い紫陽花のもう一つの花言葉はね?

 

 ―――「浮気」なんだって。

*1
ツクヨミ内は鳥居ワープゲートによるワープ移動を行う。街中のいたるところにある

*2
長距離移動用のツールで人気クリエイター用の屋根付きタイプもある




 
高濃度のいろかぐを摂取し続けたことによる、ちょいグレヤチヨ。
しかし彩葉のスパダリ力は53万であるため難なくスルー。

むねの清水あふれてつひに濁りけり、君も罪の子、我も罪の子……なんちゃって。

いやー、超かぐや姫コンセプトアートすごかったですね。
ちょこちょこ摘まみながらこのお話を書きましたが、ちゃんと動くツクヨミがもっと見たくなりました。


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