【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】   作:ヒャル

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再びの小説形式です。


イプルガラ星系の戦い

「司令、まもなくタクーヴァン星系です」

 

「ああ」

 

 部下の言葉に小さく頷く。

 タクーヴァン星系はソル星系から5つ隣、その先が目的地のイプルガラ星系だ。銀河マップで見れば近いようだが、ハイパーリレイ網もない現状では片道300日もかかってしまう。

 

 道中のモナキディール星系、バンセルガウム星系、サッサーラ星系には前FTL文明を潰して作った総督府があるので休み休み移動することができたが、それでも23世紀の娯楽がなければ部隊の士気低下は免れなかっただろう。

 脳内スレというおまけがある俺ですら負担を感じているのだから。

 

「敵戦力に変動はないか?」

 

「はい、結晶生命体に数の増減はなく、その場に留まっている模様です」

 

 相手はサファイア級結晶生命体のかけら9体、推定戦力値は565。

 陽炎級フリゲート10隻を擁する第五艦隊なら十分撃破可能なはずだ。

 

 ゲームの経験を基に頭の中で算盤を弾くが、傍にいる副官が僅かに震えているのに気づいた。

 

「武者震いか?」

 

「…はい。実戦は初めてというのもありますが…我が国が正面から宇宙生物に挑みかかるのは初めてですので、帝国の名誉の為にも失敗は許されないと思いまして」

 

「…そうだな」

 

 他の艦隊は探索…というか冒険が主任務なので戦闘は可能な限り避けるよう厳命されている。

 これまで飛び込んだ星系で敵対的な宇宙生物に遭遇したことは何度もあったが、すべて相手に絡まれる前にその星系を離脱してきた。

 

 …となれば、この戦いが事実上大日本帝国連邦宇宙軍の初陣となるわけだ。

 

「案ずるな。勝利できるだけの戦力は揃えている、そして俺は戦力をマイナスにするほどの愚将ではないつもりだ」

 

 ブリッジを見回すと、緊張した面持ちの兵士たちがこちらを見つめている。

 

「いつも通りミスなく、訓練で習った通りに動け。それだけで勝てる……いや、俺が勝たせてみせる」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 一斉に敬礼してくる乗組員たちに、ゆっくりと答礼を返す。

 

「司令、調査船『シラールド・レオー』から通信です」

 

「スクリーンに出せ」

 

 通信兵に指示すると、久方ぶりに見た顔が映し出される。

 …脳内スレではよく話しているから、なんだか妙な感じだ。

 

「遠路はるばるお越しくださってありがとうございます。助かります」

 

「仕事だ。礼は良い。…それで、ただ挨拶の為に連絡してきたわけではないんだろう?」

 

 視線で促すと、通信相手…『科学者リーダー』は苦笑いを浮かべる。

 

「ええ……こちらのセンサーが、バイハム星系を移動しているアールヴ共同体の艦隊を捉えました。数は10以上、アールヴの主力艦隊と思われます」

 

「バイハムの隣は首都星系ユグドだからな。そちらから送られてきたのだろうが…俺の艦隊に反応して、警戒に出てきたのだと思うか?」

 

「いえ、進行方向はタクーヴァン星系ではなく、右上…イプルガラ星系です。狙いはこちらと同じかと」

 

「ふん……」

 

 タクーヴァン星系―イプルガラ星系のラインを抑えられると日本は上への拡張を封じられるが、それはあちらも同じこと。

 ハイパーレーンの形状上、アールヴ共同体が拡張できるのは左上か右上の2方向のみ。その片方を塞ぐ障害はさっさと排除したいことだろう。

 

「バイハム星系に調査船の反応はないか?」

 

「見当たりませんね。おそらく、ユグド星系に下げているものかと」

 

「……宇宙生物を撃破したら、すぐ動けるように準備しておけ。早い者勝ちになりそうだからな」

 

「ええ。そちらもご武運を」

 

 調査船からの通信を切ると、指揮下のフリゲート艦たちに通信を繋げる。

 

「どうやら俺たちの獲物をアールヴの連中も狙っているらしい。進軍速度を上げるぞ、到着したら既に狩られていましたでは笑いものだからな!!」

 

 

 

 

「…ベイラ様、間もなく目的地です」

 

「ああ」

 

 参謀長の言葉に、ゆっくりと頷く。

 

 我らアールヴの民が宇宙に飛び出してから15年の時が経った。

 惑星温暖化と技術発展による人口爆発に押し出されるように進出した我々だが、この銀河は我々の想像以上に広く……そして、冷たかった。

 

 群居性と相互所有の伝統を掲げ、数十万年もの間森に強固なコロニーを形成してきた我々には想像もつかなかった過酷な弱肉強食の世界。

 その中でも最初に遭遇した『大日本帝国連邦』は際限ない拡張を希求し、その行き先にいる未発達文明は容赦なく踏み潰し社会の最下層に組み込んでいく恐るべき帝国主義国家だ。

 今はまだ同等の星間国家を攻撃するつもりはないようだが…いつ我らを獲物と見定め、襲ってくるかわかったものではない。

 

(スクルド様……)

 

 スクルド様、我らが忠誠を誓うお方。

 国を前へと進める為に自ら王位を放棄し、それ故に今でも愛され続ける旧王家の現当主にして当代の国家元首。

 あの方の笑顔を守る為なら…如何なる障害であろうと、打ち破ってみせる。

 

「ハイパーレーン通過!イプルガラ星系に到着しました。……これは!?タクーヴァン星系方面から反応多数!」

 

 一瞬標的の結晶生命体たちを映し出したスクリーンが場所を変え、別方向からほぼ同時に到着した謎の艦隊を捉える。

 

「国籍反応は…大日本帝国連邦!?ベイラ様、アレは日本の艦隊です!」

 

「日本の艦隊だと…?」

 

 連中が隣のタクーヴァン星系まで拡張しているとは聞いていたが、首都星系までは距離があったはず。

 訝しんでいるとあちらから通信が入ったと報告が入り、スクリーンに映させると軽薄そうな男の姿が現れた。

 

「こちらは大日本帝国連邦第五艦隊だ。そちらはアールヴ共同体の主力艦隊、ヴァナヘイム・ガーディアンズで宜しいか?」

 

「その通りだが、何の用だ日本人。我々は貴様と話すような理由はないが」

 

「そう言うな。お互い、目的は同じだろう?共闘しよう…というのは難しいかもしれんが、誤射が起こらないよう顔合わせくらいは必要だろう。偶発的事故から戦争になるのはどちらも望まないはずだ」

 

「偶発的事故を故意に起こして戦争に持ち込むのはお前たちのような軍国主義国家のお家芸だろう?」

 

「手厳しいな。だがこちらはお前さんたちと戦って確実に勝てるほどの戦力は持ってきていない。そちらも戦争中でもないのに背中を撃つほど無法じゃないと信じているつもりなんだがな」

 

 取り付く島もない態度を取り続けているというのに、不快そうな顔も見せずにヘラヘラしているのが実に癪に障る男だ。

 

「…こちらは左の結晶生命体から潰していくつもりだ」

 

「じゃあ、こっちは右から行かせてもらおう」

 

「…好きにしろ」

 

 通信兵に通信を切るよう命令すると、結晶生命体に向け進軍を再開する。

 

「ベイラ様、他国の将帥にあまり挑発するような言動を繰り返すのはいかがなものかと」

 

「わかっている。わかっているからこそ通信を切ったのだ」

 

 咎めるように見つめてくる参謀長を黙らせると、不快感を振り払うように指揮へとのめり込むことにした。

 

 

「撃て!野蛮人共に遅れを取っては末代までの恥だぞ!」

 

 星系中央部まで接近して攻撃を開始する。

 あちらも盛んに迎撃してくるが、同時に逆方向からも攻撃が始まったことで纏まった反撃ができず弾幕はまばらだ。

 

「四番艦、シールド消失!装甲が削られていきます!」

 

「ダメージを負った船は無理せず下がれ!無理せずとも勝てる戦だ、損失を抑えることを第一にしろ!」

 

 16隻と数を揃えることで十分な戦力としたが、コルベット1隻1隻の耐久力は脆弱だ。

 最悪、いくらか損失艦が出ることも覚悟していたが…犠牲を出さずに済みそうだという点だけでは、あの男に感謝してやってもいいかもしれない。

 

「敵四番体、爆散!」

 

「次!目標敵五番体、撃ち方はじめ!……む?」

 

 左から4体目まで結晶生命体を撃破し、中央の個体に攻撃を開始したところで別方向からも攻撃が殺到しあっという間に爆散する。

 

「目標の全滅を確認。……ベイラ様、再び日本の旗艦から通信が入っていますが」

 

「…スクリーンに繋げ」

 

 再び、あの憎らしい男の顔が映し出される。

 

「そちらは左の4体を潰し、こちらは右の4体を潰した。そして中央の1体は同時に攻撃して撃破。戦果としては引き分けだな」

 

「貴様と競争した覚えはないが、その通りだな。で、何の用だ」

 

「いやなに、折角両国の主力艦隊が同じ場所に集まったのだから、交流会でもするのはどうだろうかとな。こういうのも外交だろう?」

 

 そう言って人好きのする笑みを浮かべてくるが、そんなものに騙される私ではない。

 

「そう言って我々の艦に入り込み、軍事機密を探る気か?」

 

「まさか。信用できないなら開催場所をこちらの船に限定してもいいが?」

 

「……何が狙いだ」

 

「何も。強いて言うなら…」

 

 男は私をじっくりと見つめて――

 

「勝利の美酒は格別だが…良い女がいれば、更に良い味になると思っただけだ」

 

 そんなことを口にした。

 

「…通信兵、通信を切れ」

 

 通信兵に命令して、不愉快な通信はすぐに切らせる。

 

 

 ――まったく、本当に気に喰わない男だ。戦場では男も女もないというのに、この私を女として扱うとは。

 …しかし、いずれあの男とはまた相まみえることがあるだろうと、私の戦士の勘がそう告げていた。

 




なお、実際のプレイでは第五艦隊が到着した時には既にかけらとの戦闘が終了していたという非常にカッコ悪い展開でした(
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