【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】 作:ヒャル
「やはり、またこの星系に来ることになったか…」
以前訪れた時には前哨地に過ぎなかったステーションが星系軍港にまで拡張していることに時間の経過を感じつつも、深々と司令官用のシートに身を委ねる。
タクーヴァン星系。
10年以上前に大日本帝国連邦に領有されて以来、対アールヴ軍事拠点として営々と拡張され続けてきたこの地の星系基地に、大日本帝国連邦宇宙軍の主力が集結していた。
一つは、即応艦隊として創設された俺の第五艦隊。
10隻のフリゲート艦による艦隊としてスタートしイプルガラ星系で結晶生命体を撃破したこの艦隊は、増強を繰り返し今ではフリゲート艦30を擁する有力な艦隊となっていた。
――しかし、日本艦隊の主力はこちらではない。
「しかし、アレと比べてしまうとこちらのフネがちっぽけに見えるな…」
第六艦隊…アールヴとの戦争に備えてタクーヴァン星系で建造され続けてきた艦と、ソル星系で建造されこちらに回されてきた艦とを合わせ、巡洋艦10、駆逐艦5、コルベット4を擁する大艦隊だ。
そして、それを率いるのはヴィクトル・ジャリデン男爵。高名なパラゴンの一人にして、戦術指揮能力にも優れた日本の切れる最高のカードと言える男である。
彼が大日本帝国連邦に帰化してから5年以上が経ったとはいえ、宇宙人に帝国最大の戦力を委ねることに反対する声も少なからずあったのだが。
「宇宙戦争については男爵が一番よく理解しているし、その忠誠に疑う余地はないと確信している。それとも、私の見識がそれほど不安か?」
冷ややかな声が会議室を凍り付かせた。
感情的に反発した彼らは忘れていたのだ。かつて家も艦隊も失った流浪の提督を、最高評議会の一員という異例の厚遇で迎える剛腕を発揮したのは誰だったのかを。
「男爵。貴方の能力と与えた艦隊があれば勝利は間違いないと確信している。吉報を期待しているぞ」
「最善を尽くします」
信頼の籠った視線を向ける大元帥と、言葉少なに応える男爵。
新聞や市井の噂では面白おかしく脚色され、巷では大元帥が男爵を三顧の礼で迎えたなどと言われているが…この2人の間には、しっかりとした信頼関係が構築されているのは間違いない。
願わくば男爵がこの帝国を第二の故郷と定め、その悲しみを拭い去ってくれれば良いのだが…
「まあ、そんなことを考えるのは戦争の後でいいか」
間もなく、この銀河で初めての星間戦争が始まる。そして、大日本帝国連邦は更にその領域を拡大することだろう。
「ベイラ様、通信設備が破壊されたようでバイハム星系からの通信が途絶えました。彼らは我々の到着まで持ちこたえられるでしょうか…?」
「戦う前から悲観的になっても仕方あるまい。今は彼らの奮闘を信じろ」
大日本帝国連邦からの宣戦を受け、我々は彼の国と国境を接するバイハム星系へと急行していた。
イプルガラ星系での邂逅から時は過ぎ、ヴァナヘイム・ガーディアンズは今やコルベット29隻、フリゲート15隻を擁する有力な艦隊だ。
しかし、我々が軍備に手を抜いていないことは連中も想定しているはず。
ならば、その上で勝利できると確信しているからこそ仕掛けてきたのだろう。
故に、私としては軍事拠点として整備された星系港からの支援が望めるユグド星系で日本艦隊を迎え撃ちたかったのだが…議会からの命令はバイハム星系での水際迎撃だった。
(首都星系への侵入を許せばソールクェルが良からぬことを企みかねない、という議員たちの懸念もわかるが…)
アールヴ共同体の仮想敵国筆頭は大日本帝国連邦だが、他に敵がいないわけではない。
銀河中央方面に位置するソールクェル協約もまた、互いに宿敵と認識する第二の仮想敵国だ。
奴らに弱腰な姿を見せては、嵩に懸かって便乗宣戦してきかねない――それの考えが戦略的に間違っているとは言えない。
言えないのだが――
(戦略を大切にするあまり、戦術を疎かにしてどうする!)
それは前哨地しかないバイハム星系で日本艦隊を撃退し、その上でソールクェルが欲心を出さないほどに艦隊戦力を保全するということが前提になっている。
しかも、それを実現する為の手段は現場に丸投げだ。
(スクルド様は、敵が想定以上に強力なら撤退して戦線を下げることを許可してくださったが…)
議員や大臣たちを宥め、こちらの負担が減るように采配してくださったスクルド様には改めて感謝すると共に、負担をかけてしまったことに申し訳なくなる。
しかし、あの感情的な立ち振る舞いを見るに、あの議員たちは自分の任期中に自国領土が踏みにじられることを許容できなかっただけではないだろうか…?
「ハイパーレーン突破!……バイハム星系前哨地、破壊されています!!」
目的地への到着に余計な思考を追い出すと、そこに待っていたのは半ば予想していた破壊された前哨地。そして――
「敵艦隊、我が方を上回る大型艦が10隻以上存在しています!推定戦力値……はっ、8000以上!」
「直ちに全艦に緊急FTLを準備させろ!急げ!」
オペレーターの悲鳴のような報告に、ただちに撤退命令を飛ばす。
「ふざけるな!8000だと!?ルファーリやソールクェルを上回る我々でも3500ほどだというのに、一体どうやってそんな戦力を持ってきた!!」
癇癪を起したような参謀の絶叫を聞きつつ、私は撤退までの時間を稼ぐ為に指揮へ集中する。
…それは、一種の現実逃避だったのかもしれない。
「前哨地が破壊されていると見るやさっさと逃げましたな。戦場以外では勇者であるのに、なかなかに逃げ足が速い」
「戦場を見誤らないのもまた指揮官の心得だ。地の利を得られない戦場で決戦を避けるのは怯懦とは言えまい」
戦闘終了後、俺はジャリデン男爵と通信を行っていた。
「離脱が間に合わぬと見た先頭の3隻が捨て身の攻撃を仕掛けてきた為に敵主力への攻撃が不徹底に終わるだけではなく、ミサイルの直撃を受けた駆逐艦が1隻沈められるとは…見上げた根性だ」
バイハム星系会戦での戦果はコルベット2隻とフリゲート1隻。対する損害は駆逐艦1隻。
バイハム星系を制圧し、敵艦隊を退けたのだから勝利と言っていいが…戦力差を考えれば素直に喜べないのもわかる。
「しかし、撃沈には追い込めなかったとはいえ少なからぬフネに打撃を与えました。緊急FTLの負担に耐え切れずに失われる艦船も出るでしょう。次に相まみえた時には、先ほどより弱体化しているかと」
「そうだな…駆逐艦も失われたとはいえ爆沈ではなく、多くの乗組員を救うことができた。これだけの大戦力を揃えれば楽勝間違いなしと慢心していた若造たちの気を引き締めることもできたと考えれば、悪いものではないか」
巡洋艦という大型艦船の配備に驕り、アールヴ恐るるに足らずと慢心する雰囲気は艦隊に少なからず広がっていた。
この状況で防衛設備の整った首都星系で総力を挙げた防衛戦を挑まれれば多少は損害を強いられたかもしれないが…
現実には最低限の設備しかないバイハム星系での迎撃、しかも進撃体制を整えていたこちらの方が先に到着した為前哨地を撃破してから艦隊戦を行うことができた。
最低限の損害で、将兵たちの慢心を取り払うことができたと考えれば…勝利と言えるだけの成果は得ている。
「次のユグド星系では星系基地の攻略と星間帝国相手の地上戦だ。いずれも大日本帝国連邦宇宙軍にとっては初めての戦いになる。よく学び糧とするように」
「ハッ!」
敵艦を含む撃沈艦の生存者を回収した後、第五・第六艦隊はアールヴの首都星系ユグドへの進撃を再開する。
緊急FTLで離脱したばかりのヴァナヘイム・ガーディアンズが迎撃に出られるかはかなり怪しいところだが…どう出る?ベイラ・イェータ。