【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】   作:ヒャル

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女帝ガブの賭け

「…第3スターオーダーが敗北したとは真か」

 

 訪れる者も稀な宮殿の薔薇園にて、軍の中枢に潜ませた我が忠臣より報告を受ける。

 

「はっ。このベルニ星系外延部にて日本艦隊に挟撃され、1/3が撃沈。残る艦も少なからず傷ついた上に緊急FTLで更に脱落艦が続出し、再度の決戦に耐える戦力はないかと」

 

「大損害じゃの。で、ガック元帥は如何しておる?」

 

「情報統制を試みておりますが…覆い隠すには規模が大き過ぎますな。自分で『我が主力艦隊堂々出陣す!』と大規模な宣伝を行った以上は尚のこと…」

 

「…ふん。無様なものよ」

 

 手に負えぬ獅子を手負いの猫と侮って自滅した阿呆など、あざ笑う気にもならぬ。

 

「そちは怪しまれぬ内に戻るが良い。余はしばし薔薇を楽しむとしよう」

 

「御意」

 

 臣を下がらせると、余は空を…その先の星々を見つめる。

 

「目を覆うような損害ではあるが…これは好機。軍を割り、皇帝の権威を取り戻す」

 

 我がルファーリ帝国は帝政国家ではあるが、実権を握るのは軍部。

 女帝たる余が大日本帝国連邦との戦争に反対しているにも関わらず、元帥が『弱腰に過ぎる』『このような怯懦に駆られているとあっては先帝も泣いておりましょう』と嘲笑して戦争を強行している今の事態こそが、帝権の弱さを象徴しているようなものだ。

 

(それで満足せず、更なる権勢拡大の為に危ない橋を渡る阿呆で助かったと言うべきか…)

 

 アールヴ共同体の滅亡により、目の前に現れた空白地帯。それを為した大日本帝国連邦との対立というリスクを負ってでも、元帥は拡張を望んだ。宇宙に領地を拡張することが、自らの権力基盤である宇宙艦隊の更なる拡張に繋がると考えて。

 アールヴとの戦争で日本も消耗したはず、強気に出る機は今をおいてない…その妄想に従った結果、自らの権力基盤を破壊した上で責任を追及される立場に成り下がったのは滑稽と言う他ない。

 

(そうであっても軍との全面抗争は危険じゃが…連中も一枚岩というわけではないからの)

 

 古来より陸軍と海軍は対立する関係だった。それは、陸軍が地上軍となり、海軍が宇宙軍となった今でも変わらない。

 宇宙に進出して以来、宇宙軍ばかりが大きな顔をして地上軍は冷や飯喰らいを余儀なくされていたが…このような事態になれば、権力が動く。

 

(地上閥と組み、元帥を引きずり下ろす)

 

 次に頂点に立つのは地上軍総司令だ。余ではないのは癪だが…これよりの政争で軍の力は少なからず弱まり、余の権勢は強まるはずだ。権力を奪い取るのは、次でいい。

 

(軍に打ち込む楔となる、良い駒も手に入りそうじゃしの)

 

 タビの息子、セネ。我が帝国最高の名将。

 本来の第3スターオーダーの司令官であったが…大日本帝国連邦との戦争に職を賭して反対し、そのまま軍を退役した男。

 元帥があやつを追い出して子飼いの若造を強引に後任にした結果、第3スターオーダーはその戦力を更に落としより無様な敗北へと繋がる事となった。愛国者として気を揉んでおるだろうあの男を余が拾い上げ軍に復帰させる。さすればあやつは余の閥の者となる。その価値は計り知れぬ。

 

(日本がルファーリを族滅せんと攻めかかって来ればこの企みも絵に描いた餅じゃが…まあ、そこまで酷いことにはなるまい)

 

 耳長の阿呆共は大日本帝国連邦を野蛮だ、血も涙もない暴君だと罵っておったが、何もわかっておらぬ。

 大日本帝国連邦は、ある意味で実に“甘い”支配者だ。

 

 カウホルスを見よ。蒸気機関をやっと使い始めた程度の未開の蛮族であったにも関わらず、姫をあやすような厚遇を受け日本に染まり切っている。

 当のアールヴ共もそうだ。相容れぬ平等主義者はともかく、物質主義者であれば怨敵であろうに迫害らしい迫害を行っておらぬ。むしろ民間レベルでの迫害を政府が抑えているくらいだ。

 

(似通った容姿を持ち、美しい種族は丁重に扱われる…然らば、我らルファーリが同じ扱いを受けぬはずがあろうか)

 

 余が目指すのは一、二星系拡張するなどというちっぽけなものではない。大日本帝国連邦の懐に入り、ルファーリを繁栄させることだ。

 国内を纏め、機を見て従属し、併合される。独立を守る必要などない。ずっと惑星1つにしがみついているより、広大な日本領にルファーリの民を散らした方が種としては余程繁栄していると言えよう。

 そして、いつかルファーリの民が日本の最高評議会の一員となるか、ルファーリの母を持つ者が帝国大元帥の地位につく…その時、ルファーリは銀河で最も繁栄した種族の1つとなるのだ!

 

「…では、講和に向けた話し合いを始めようかの。密使殿?」

 

 その為に、余は影が実体化するかのようにぬるりと現れた男へと向き直った。

 

 

 

 

『…それでは、責任者の首、二星系の領有権が日本にあるとの公式発表、賠償、すべていただけると』

 

『うむ。迷惑をかけたのはこちらの阿呆じゃ、けじめというものは必要だからの』

 

「…順調順調」

 

 脳内スレのライブ配信機能を使ってこちらの密使とルファーリ女帝の密談を見守り、必要に応じて指示を飛ばす。

 さっさとルファーリとの戦争を終わらせるために、旧アールヴ領での捜査で近くにいたチート系転生者(パチモンアベンジャーズ)の一人を向かわせたが結果は上々だ。

 

 しかし、アールヴ同様にルファーリも内政に問題を抱えているのではないかという推測は当たっていたようだ。

 今回の事件も軍部の主流派がゴリ押ししたのが元凶のようだし…その連中に詰め腹を切らせて、首都星系に引き籠ってくれるならこちらとしてはそれで構わない。

 追い詰められた軍主流派が女帝を始めとする敵対者を殺して回って生き残りを図る可能性もなくはないが、それはそれだ。既に宇宙艦隊は壊滅し首都の星系基地もこちらに占領されている以上、連中が何を吠えようと講和しない限り宇宙に出ることは叶わない。恐怖政治を敷こうともいずれボロが出るだろうし、こちらが適当な小艦隊で何年でも軌道爆撃を続ければその内崩壊するだろう。日本としてはルファーリが外に拡張しようという意志を失くすのであれば、それがどのような形であっても構わないのだから。

 

「さて、“そろそろ例の計画について提案してくれん?”っと」

 

 …とはいえ、ほぼ形だけの賠償だけで戦争を終えるのも癪だ。折角戦争を始めたのだから、国益の追求はさせてもらう。

 

『…しかし、そうですな。後一手が必要だ』

 

『ほう、講和条件に不服があると?』

 

『いえ。しかし、軍部による暴走であったとしても日本の臣民たちはルファーリを横暴な略奪者として記憶するでしょうし、ルファーリの民もまた艦隊戦で同胞の命を奪った日本を恨みましょう。それは、今後両国が友誼を結ぶにあたって障害となりましょうぞ』

 

『…それを一挙に解決する妙案があるかのような口ぶりじゃな』

 

『その通り。…要は、それ以外に恨む先を、責任を押し付けられる第三者を用意すれば良いのです』

 

 こちらの密使の提案に、女帝の顔がニタリと悪そうに歪む。

 

『ほほう…道理ではあるが、そんな都合の良い者がおるかな?』

 

『おりますとも。貴国に工作を試みても不自然ではなく、我が帝国を嫌い、そしてどれだけ叩いても殴り返される心配のない者が』

 

 女帝の楽し気な笑みに、私は謀略の成功を確信した。

 

 

 

 

 その後、ルファーリの首都星系にて反政府組織の拠点が検挙され、銃撃戦の末に制圧された。

 戦争と艦隊戦の大敗による治安の悪化が反政府活動を活発化させたのだろうというのが大方の見方だったが、調査が進む中で亡国の残党による恐るべき計画が明らかとなった。

 

『亡きアールヴ共同体の工作部隊がルファーリ帝国内に浸透し、その繋がりは軍部主流派にすら及んでいる』

 

『此度の戦争は旧アールヴ領を戦火に巻き込むことで混乱させ、その中で平等主義国家を復活させようとするアールヴの平等主義者残党の陰謀によるものだった』

 

 そして、銃撃戦の後に運び出された死体の中には、アールヴ共同体滅亡後行方不明となっていた平等主義派閥の有力議員がいたのだ。彼こそが首謀者なのだろうと人々は囁き合った。

 

「濡れ衣だ!」

 

 ルファーリ帝国元帥はそう主張したが、拠点から見つかった証拠に加えて宇宙艦隊という権力基盤を喪失した彼女の言葉に耳を貸す者はおらず、地上軍総司令が主導する捜査の中でルファーリ帝国艦隊派は次々と捕縛されていった。

 

 そして、平等主義者の陰謀によって戦争へと誘い込まれた日本とルファーリの両国はただちに講和を行い、己が主義主張の為に陰謀を巡らし、戦火を広げて人々を苦しめる宇宙の癌である平等主義と協力して戦っていくことを高らかに宣言した。

 ルファーリの人々はひとまず戦争が終わったことを喜び、家族を失った者は艦隊派とアールヴ平等主義者を恨んだ。日本の人々はとりあえず喧嘩を売ってきた無法者に懲罰を与えたことに満足し、平等主義は駆逐せねばならない思想だという思いを強くした。

 

 

 ――そんな人々の耳に、発見されたアールヴ平等主義派議員の死体が“まるで初めから死んでいたかのように冷たかった”というちっぽけな謎など、届くことはなかった。




国家補正・平等主義者の陰謀
大日本帝国連邦
平等主義への魅力-100%
権威主義への魅力+100%
ルファーリ帝国
平等主義への魅力-100%
権威主義への魅力+100%
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