【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】   作:ヒャル

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最後の残り火と待ち続ける者

「ふふっ。また今度ね。みんな」

 

 賑やかな鳥たちに別れの挨拶をして、第二の職場から退出する。

 

 

 私は佐々木麗奈、旧名はレーナ・ゲイルスタッド。

 かつての首都惑星アルヘイムに住む、普通のアールヴ人女だ。

 

 小さい頃から動物が大好きで、動物園で働くのが夢だった。両親はもっとエリートらしい進路に進ませたがっていたけど、兄はいつもそれを応援してくれた。

 その夢が叶い、大人になった今ではアルヘイム最大の動物園であるアドリアン中央動物園で働いている。

 

 これまで色々な苦労があった。

 

 国防や宣伝活動に割く予算を増やす為に動物園に回す予算が削られそうになった時は、同僚や動物好きの友人たちとデモ活動をした。

 戦争の影響で流通が大混乱になり、動物たちのご飯の仕入れが止まってしまった時は、備蓄でなんとかやりくりしつつ皆で頭を悩ませた。

 

 そして、アールヴ共同体滅亡によって訪れた動物園存亡の危機。

 アールヴ共同体の首都惑星として51億人以上の人口を擁したアルヘイムはただの地方惑星となり、住人の半分以上が政治犯として強制移住させられそれ以外の住人の多くも地球などの他の惑星に移住していった。

 

 残った人口は1億人を切り、行政機能は縮小され供給過剰となった様々な施設とサービスが縮小あるいは廃止されていく。

 当然、アルヘイムの動物園たちも例外ではなかった。

 

 私たちは総督府への陳情を繰り返した。

 大日本帝国連邦は戦前に聞かされていたような酷い支配者ではなかったし、動物園がなくなっても私たちアールヴ人は他の仕事を探すことができる。でも、動物たちは違う。

 行き場を失った動物たちが殺処分される…それだけは、嫌だった。

 

 正直言って、色々と忙しいだろう総督府にとって迷惑な相手だったと思う。でも、私たちにそんなことを気にする余裕はなかったし、それをわかってくれていたのか門前払いにされることはなかった。

 

 最終的に総督府側も対策チームを組んで数人を対処に回してくれ、彼らと一緒にお願いして回って閉鎖される動物園の動物たちは地球などの大日本帝国連邦の他の惑星の動物園に引き取ってもらうことになった。

 日本人には受けの悪い動物も漏らさず、最後の一匹まで行先を割り振るのは本当に大変だったけど…今もあの子たちが幸せに暮らしているなら、その価値はあったと思う。

 

 

(あの人に出会ったのもあの時だった…)

 

 アルヘイムの動物園職員たちと、総督府の対策チームの間には共に苦労を乗り越えたことで確かな絆が生まれた。

 アールヴ人と地球人という種族の違いはあれど、共に動物を愛する者同士。プロジェクトが完了した後も、交流が途絶えることはなかった。

 そして、その内の一人と気づけば恋仲となり、結婚し…今では1人の娘を持つ母となった。

 

(でも、あの時はすごく、カッコ良く見えたな……)

 

 アルヘイムで重力嵐の影響で大気が不安定になり、何種類もの鳥たちが上手く飛べなくなるという事件が起きた。

 餌を得るのにも苦労し、他の動物たちに狙われる可哀そうな姿に私たちの影響で動物好きになった娘は泣き、私も何とかできないかと思っていた。

 そんな私たちに、夫は『なんとかできないか、やってみる』と力強く言ってくれた。

 

 そして、言葉通り夫は上に掛け合い、飛べなくなった鳥を保護する為の鳥類保護区の建設を実現してくれたのだ!

 …詳しい人間の知見も必要だからと、動物園の職員が持ち回りで手伝いに行くという新たな仕事も出来てしまったけれど、このくらいは軽いものだ。

 

「今日は、あの人がご飯も用意してくれてるはずだよね…」

 

 今日は鳥類保護区に行く日だった分私の帰りが遅くなるので、夫が仕事を早めに切り上げて娘のお迎えに行ってくれたはずだ。

 夫はアルヘイム総督府の公務員だから決して暇な仕事ではないけど、こういう時は融通を利かせてくれる。まあ、夫は仕事のできる人だから、私がお迎えに行けなさそうな時はバリバリ仕事を片付けて抜けられるようにしているみたいだけど。

 

「ただいまー」

 

 玄関を開けると、奥からドタドタと足音がする。

 

「大変だ、大変だ!麗奈、大変なんだ!!」

 

「まあ、そんなに慌ててどうしたの?あなた」

 

 慌てた様子で飛び出してきた夫を宥める。

 

「…落ち着いて聞いてくれ。お義兄さんが、生きていたんだ!」

 

「……えっ?」

 

 手から滑り落ちたバッグが床に当たる音が、妙に遠くに感じた。

 

 

 

 

 窓の1つもない、完全な密室になっている尋問室。

 その部屋の椅子に、両手を拘束されたアールヴ人が座らされている。

 

 彼こそが、デルファイアンズ・エディーの市街戦で重症を負っているところを確保されたアールヴ人。

 サースウィアで活動していた旧アールヴ共同体工作部隊の最後の生き残りだ。

 

 最近ようやく回復したことで尋問が始められたが、これまで彼は一言も口にすることはなかった。

 

 

「…お待たせしましたね」

 

 

 尋問室のドアが開き、スーツ姿の地球人女性が入ってくる。

 極めて整った顔立ちのアングロサクソン系の美女だが、その瞳は氷のように冷たい。

 

「今日もお話しましょうか。名無しさん……いえ、ヴェルンド・ゲイルスタッド中尉」

 

 女の言葉に、男の眉が微かに動く。

 

「合っているようですね。様々な偽装工作が施されていた為に身元を洗うのには手間取りましたが…ようやく貴方が誰なのかを突き止められました」

 

 微笑みつつ、女は男の正面の椅子に座る。

 

「ヴェルンド・ゲイルスタッド。首都惑星アルヘイム出身で軍の情報機関に所属し階級は中尉。家族は年の離れた妹が1人…貴方のパーソナルデータはしっかりと調べさせていただきましたよ」

 

「…脅すつもりか」

 

 男が地獄の底から響いてくるような声と共に、女を睨みつける。

 

「いえ、いえ。我が国は文明国ですもの。そのような野蛮な方法は取りませんわ。ただ、今回は貴方にお届けものがあったというだけ」

 

「……?」

 

 訝し気にする男の前に、女はスクリーンを展開する。

 

「ビデオレターです」

 

 

『兄さん?元気にしている?正直、兄さんが無事だったと聞いてすごくびっくりしてる。…戦争の後一切連絡がつかなかったから、きっと……死んじゃったんだろうなって、思ってたから』

 

『大日本帝国連邦に征服されて、酷い目にあってるんじゃないかと想像しているかもしれないけど…私は元気よ。占領軍に乱暴されたとか、被征服民として弾圧されたとか、そういうのは一切ないから。引き続きアドリアン中央動物園で働いてるよ。流石にちょっと給料は減っちゃったけど』

 

『皆も元気。お隣のバルズル君は大人になって発電所で働き始めたし、ヒョルおじさんはこの間も酒場で深酒して奥さんに怒られてた。お向かいのローザおばあちゃんとはこの前お茶をしたよ』

 

『…兄さんが情報部の所属で、アールヴ共同体が滅んだ後も国外で活動してたって聞いて驚いてる。軍人だってことしか聞かされてなかったから』

 

『きっと、私や皆が酷い目にあってると思って、それから救い出したいと思って、国が滅んだ後も頑張ってくれてたんだよね?でも、私たちは大丈夫だから。……もう兄さんも頑張らなくて、いいの』

 

『兄さん。私の大好きな兄さん。私、結婚して子供ができたんだ。娘にも、兄さんのことを紹介したい。だから帰ろう?私たちの、家に……』

 

 

 ビデオレターの再生が終わる頃には、男は静かに涙を流していた。

 

「…貴方のこれまでの行動を鑑みて、通常なら二度と陽の目を拝めない待遇になるはずです。しかし…我々に協力するのなら、面会のできるアルヘイムの刑務所での収容に…そして刑期を終えて釈放されるように、手配することもできます」

 

 男が、これまでとは異なる感情の宿った瞳を女に向ける。

 

「司法取引をしましょう。貴方達の“スポンサー”についての情報をカードに、ね」

 

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