【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】 作:ヒャル
「いよいよ、我々トルコ民族の出番が来たのだな」
タカンジャー政治機構との国境にあるビール星系。
その星系基地から駐留する艦隊を眺め、第十四艦隊司令のアリー・ジェマル提督が士気を上げていた。
「また艦隊を眺めているのか」
「…ツァヒアギーンか」
そこに声をかける偉丈夫はモンゴル系のツァヒアギーン・ガントゥルム提督。新設された第十五艦隊の司令官である。
この2人は士官学校の同期。共に故郷から日本本土へと留学し、共に連邦宇宙軍に入って長年付き合いを続けてきた。ガントゥルムが第十五艦隊司令に選ばれたのも、同じ対タカンジャー戦力である第十四艦隊司令との交友関係を見て上手く連携が取れるのではないかと上層部に判断されたのも一因である。
「本当に飽きないな。そんなに好きか、ここからの景色が」
「ああ。自分が宇宙艦隊を、それも主力艦隊の1つを預けられている。それをこうして直接目にする度に、誇らしくなる」
「まあ、それは同感だがな」
そう言って、ガントゥルムはジェマルの隣に立つ。
「だが、俺たちが目指すのはもっと上だ。そうだろう?」
「…その通りだ。俺たちの力は、まだまだこんなものではない」
トルコ系とモンゴル系。彼らに共通しているのは、“かつて世界に冠たる大帝国を築き上げた”という誇りだ。
しかし、いずれの帝国も滅びを迎え、白人たちの機嫌を伺わねばならないほどの立場へと落ちぶれた。
大日本帝国が白人一強の世界体制を打ち砕き、同じツラン系民族として上位者の席に迎え入れられたトルコ民族とモンゴル民族は白人と同等の地位を手に入れたが…ジェマルもガントゥルムもそれに満足していない。並ぶのではなく…超えるのだ。かつて日本人がそうしたように。
「以前入植惑星の命名法則について尋ねた時にお前は言ったな。いずれ、後が続かなくなると」
「ああ、入植惑星の名前は日本の旧国名由来…過去に存在した地名だ。つまり、無から生み出しているわけではない以上いずれリストが尽きる時が来る」
その時、次はどんな名前を使おうとするか。
艦船の命名にも日本以外に由来を持つ名前が使われている以上、惑星の命名に日本語以外が…トルコやモンゴルに由来する名前が使われない道理があろうか。
「俺たちはもっともっと偉くなる。もっともっと民族の地位を上げて…いつか、我が民族に由来する入植惑星を出し、銀河に民族の名を刻む」
「どっちが先になるか、恨みっこなしだ。こっちの民族の方が先になっても恨むなよ?」
「ふん。その時はすぐに追いついてやるから覚悟しておけ」
一瞬鋭く視線をぶつけ合った後、2人揃って破顔する。
2人の軍人は互いの背中を叩き合った後、それぞれの艦隊へと戻っていった。
「まずはシャシャマール星系で第3スターオーダーを潰す。景気づけに完勝するぞ!」
「第一目標はオブスカイク星系!邪魔な宇宙アメーバを蹴散らしてやれ!」
帝国が為、我らが民族の為。ここに勝利を。
「ハイパーレーン突破。アークトゥルス星系に入ります」
「おう」
一方、大日本帝国連邦上層部が一番の難敵と見ているヌーリアン星系帝国との戦線。
その第二国境であるエスカント星系から、急造された艦隊である第十二艦隊が出撃していた。彼らはまず国境沿いの星系であるアークトゥルス星系に入り、艦隊司令のゴダール提督はその情報をタブレットに映して確認する。
「アークトゥルス星系には有人惑星があるんだったな。軌道爆撃で降伏させられたりはしないか?」
「アークトゥルスⅡには地上軍18個、戦力値860以上の地上軍が配備されている模様です。我々の手に負える相手ではないかと」
副官が無表情のまま、その思いつきを冷たく却下する。
「何だその規模。アークトゥルスⅡはヌーリアン星系帝国の第二首都だったりするのか?」
「ヌーリアン星系帝国は前FTL文明を積極的に侵略して併合していると聞きます。恐らく極めて発展し人口も多い前FTL文明がかつて存在した星で、その元前FTL文明民たちを徴兵することで多数の地上軍を用意しているのでしょう」
「私も同意見ですな。【アークトゥルスⅡ】という名前も味気ないですし、恐らくヌーリアン人が一から開拓した惑星ではないのでしょう」
「ふぅん。まあ、上も俺たちが惑星を抑えることは期待していないだろう。このまま無視して進むぞ、固定配備の地上軍では守る以外何もできまい」
攻めにくい有人惑星アークトゥルスⅡは放置して、第十二艦隊はアークトゥルス星系中央の前哨地を破壊する。
「よし、このまま星系基地のある星系は避けつつ、一筆書きの要領で落とせるだけの星系は落とすぞ」
アークトゥルス―チャラ―ロマックス―エンバーグ―ヴォッコン―ゾム―シュロールと落としていくのが第十二艦隊の役目だ。
だが、問題はロマックス星系に入ったところで起こった。
「センサーに感あり!ヤーメク特異点に敵艦隊が潜んでいます!」
「何だと、数は?」
司令官用のシートに身を委ねていたゴダール提督がその腰を浮かせた。
「駆逐艦2、コルベット23!ヌーリアンの主力艦隊と思われます!」
「戦力値的にはあちらが上ですな。巡洋艦といえど、5倍以上のコルベットに纏わりつかれては押し切られる可能性が大」
参謀長は深刻そうな表情で腕を組む。
「それ以外に何かあるか?」
「はっ、輸送船団が同行しているようです!地上軍10個前後の規模はあるかと!」
「如何為さいますか?後退しても怯懦の誹りは受けないかと思いますが…」
「…後退はする。だが、日本領までは退かない。そして、連中が『追いつけるかもしれない』と期待する程度にスピードを落とせ。ヌーリアン領内であいつらの引きずりまわしてやる」
『これから命がけの追いかけっこを始める』というゴダールの言葉に、少なからぬ数の参謀が表情を凍り付かせた。
「その心は?」
「第一に、エスカント星系には星系基地がない。前哨地では申し訳程度の戦力にしかならん。地の利を得られないということだ」
「エスカント星系は“突然生えてきた”国境の星系ですので、バイハム星系やビール星系のような従来の国境と違って開発が間に合いませんでしたからね…」
副官が渋い顔をする。
「第二に、連中は輸送船団を伴っている。つまり、侵攻の意志があるということだ」
ゴダール提督はシートに座り直しつつ、スクリーンに周辺の星図を広げる。
「あの艦隊の第一目標は一番弱い第十二艦隊が単独行動している間に撃滅して各個撃破を狙うことだろう。だが、こちらの逃げ足が速くてそれが果たせなかった場合、目的を日本領の占領に切り替えるはずだ」
周辺星図の有人星系がリストアップされる。
「無防備なエスカント星系を突破し、有人惑星に地上軍を降下させて占領していく。初めての国土喪失、初めての地上戦敗北、初めての臣民の捕縛…ありがたくない初めての嵐で世論は動揺し、それを指を咥えて見ていた我々の面目は丸潰れ。永遠に陽の目を見ない立場へ逆戻りというわけだ」
ゴダールが語る最悪の予想に、司令部の面々の顔が引き攣る。
「だからこそ、俺たちが“餌”になる。連中の鼻先を駆け回り、第十三艦隊が来援するまで引きずり回す」
ゴダールは暫し瞑目すると、野性味のある笑みと共に周囲を見回す。
「無事に追いかけっこに逃げ切れば第十二艦隊は少ない戦力で敵の主力艦隊を拘束したことになる、間違いなく手柄だ。その掛け金は俺たちの命…ビビるんじゃねぇぞ、野郎ども」