【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】 作:ヒャル
「これで、こっちの担当の仕事は完了かな」
破壊された前哨地を眺め、第十一艦隊司令のヘイスカイネン提督は小さく息をつく。
エグラディル、ギンディクス星系基地を落とし、タクシカ共同国のコターラ・ヴォイドスカルカーズを撃退した第十一艦隊は、そのまま上へ上へと進み星系基地も有人惑星もないタクシカ辺境領域を制圧。
最後に上側の端にあるケレンサ星系を落とし、課せられていた任務をすべて完了した。
「司令、調査船「ヴェルナー・フォン・ブラウン」より通信が入っておりますが」
「暇だから仕事くれって通信?頼みたいことは別にないんだけど…」
アールヴ、ルファーリ、サースウィアとの戦争では撃破した敵艦のデブリから研究が遅れている分野の技術情報が手に入ったので、今回も得られるものがあるだろうと調査船を連れてきたのだが…タクシカの艦船技術は日本より進んだ点がないらしく、何の成果も得られなかった。
一応ハカラックス星系のワームホールを調査させ、近くの未知の星系に繋がっているらしいことを突き止めたが、本国に報告したところ血相を変えた担当者がそれ以上の調査を止めてきたので暇を持て余しているはずだ。
「それが、デュガール星系の救難信号の発信元を探りたいと」
「デュガール星系の?今更やっても意味ないと思うんだけど…」
かつて探検任務中の偵察艦隊がタクシカ領になる前のデュガール星系を通過した時に救難信号をキャッチしていたのだが、タクシカ共同国はこれを完全に無視し続けていたらしく第十一艦隊が通過した際にも同じ救難信号が確認された。
数年どころではない期間たれ流されている以上、既に救援を求めた人物は死亡し救難信号だけが出しっぱなしになっているのだろうと推測されていたが…
「…まあでも、他にやって欲しいこともないし止める理由もないか。好きにさせてやれ」
「はっ!」
「地上軍が惑星クレグックスの行政府を占拠しました!これでタクシカの残る有人惑星は首都惑星タクシカのみです!」
「結構。地上軍を乗船させたらボス=タクシカ星系に向かい、決着を付けるぞ」
一方、本隊である第六艦隊は首都星系ボス=タクシカの手前のダサーナ星系まで進出。同星系の入植惑星を落とし、タクシカ共同国に王手をかけていた。
「第五艦隊、第十一艦隊は共に戦略目標を達成したのだな?」
「はっ!第五艦隊はフォルケル星系、第十一艦隊はケレンサ星系までを落としております!また、追加の報告によりますと、フォルケル星系のワームホールは銀河の左上の端、ラントール階級国の奥に広がる空白地帯に繋がっている模様です!」
「ほう。魅力的だが…フォルケル星系はちと遠いな。政府は【統一文化惑星】、特にヌーリアン星系帝国の全面併合を望んでいる。その分タクシカからの領土割譲は少なくなるだろう。一気に手を広げすぎると管理が追い付かん」
タクシカ侵攻軍を統括するジャリデン男爵は腕を組んでそう口にする。
「両艦隊は接収した星系基地で艦隊の整備と修理に入るよう伝えよ。仕上げは我らが行う」
「承知いたしました!」
奴隷軍団を輸送船団に乗船させ直した第六艦隊は、そのまま首都星系ボス=タクシカに突入する。
「敵艦隊、コリンス星系へのハイパーレーンの入り口に密集しています!編成駆逐艦3、コルベット16!」
「星系外延部ならば星系基地の攻撃が届きません!各個撃破の好機です!」
「ふん。一旦コリンス星系に移動した上でこちらがボス=タクシカ星系の星系基地に襲い掛かったタイミングで帰還、艦隊と星系基地で挟撃を狙ったのか?挟撃は戦術の基本ではあるが…動き出すのが遅すぎたな。踏み潰せ」
第六艦隊はタクシカが首都に残していた艦隊――ドゥルカラ・ヴォイドスカルカーズに向けて一斉に進撃を開始する。
「星系基地の方に艦隊はいるか?」
「コルベットが1隻のみ!他は輸送船団などの非武装船です!」
「であれば恐れる必要はないな。第一航空戦隊は後方で艦載機を発艦させよ。第一、第二巡洋戦隊、第一駆逐戦隊はこのまま押し出して攻めかかれ。敵が崩れたらコルベット戦隊を突撃させて傷口を広げる」
中央が第一巡洋戦隊、左翼が第一駆逐戦隊、右翼が第二巡洋戦隊の陣形のまま、第六艦隊はドゥルカラ・ヴォイドスカルカーズに襲い掛かる。
対するタクシカ艦隊は巡洋艦よりは与しやすいと見たのか、中央・左翼で耐える陣形を取りつつ第一駆逐戦隊と相対する右翼に戦力を集中させるが――
「生憎と、お前らの相手はフネだけじゃないんだぜ!」
第一航空戦隊から飛び立った艦載機の群れが空襲を開始。格上相手の砲撃戦だけでいっぱいいっぱいだったタクシカ軍右翼は混乱し、中核だった駆逐艦がミサイル多数を受けて爆沈するとその統制は完全に崩壊していく。
「よし、コルベット戦隊を突撃させよ。全面攻勢だ!」
望み薄とはいえ反撃の希望だった右翼の崩壊は、タクシカ軍中央・左翼の士気崩壊を呼ぶ。
しかしここが自国の首都星系である以上最早これ以上退ける場所もなく…駆逐艦3隻、コルベット16隻すべてが首都惑星の前で撃沈されることとなった。
「第一駆逐戦隊は生存者の救助にあたれ。残りは星系基地を破壊し、首都惑星タクシカに地上軍を降下させるぞ!」
シールドの消耗が著しい駆逐艦たちにタクシカ艦隊の生存者救助という役目を与えて後方待機させると、第六艦隊はボス=タクシカ星系基地をコルベット諸共破壊。
首都惑星タクシカの地上軍は18個大隊戦力値750とそれなりにあったが、奴隷軍団32個をジャリデン男爵が自ら指揮することで侵攻軍の戦力値は1100を突破。5ヶ月の地上戦の末に首都惑星は陥落した…のだが。
「…タクシカ首脳部がいない?」
「はっ!捕縛した官僚たちの話によりますと、開戦時点で導師トロリックスと一部の大臣は首都を離れており、その後も戻らず遠隔で指示を出していたとか…」
「有人星系はすべて落としたはずだが。どこに逃げた…?」
「日本艦隊は我らを未だに見つけられず途方に暮れているようですな」
「所詮は力任せに暴れるばかりの連中。力づくで開けぬ扉は開けられますまい」
首都惑星が陥落した後も、自分たちの身の安全を確保しているタクシカ首脳部の一部は嘲るように笑い合った。
ダスタモン星系の秘匿バンカー。アモール・アルヴェオ星系の宇宙アメーバの群れにより、日本艦隊が近づかないこの地に導師トロリックスらは潜伏していた。
如何な日本とはいえタクシカ方面に大艦隊を集結させておいて多方面に有力な艦隊をいくつも配備できるわけはない、ヌーリアン、タカンジャー方面の日本艦隊の多くはダミーのはずだ…そう想像し、今回も外交で話がつくと考えていたタクシカ首脳部。
予想に反して開戦となり、例えヌーリアンとタカンジャーの艦隊が日本領に攻め込んでも銀河の反対側もタクシカ領を救うのは困難――ほぼ全域が蹂躙される可能性を考慮した彼女たちは、状況が好転するまで身を隠そうと安全なダスタモン星系に身を潜めていたのだった。
「DAAR社とソールクェル協約も講和したと聞く。両国の戦力がフリーになった以上、大日本帝国連邦もタクシカに戦力を集中したままではいられまい」
「そして、艦隊の多くが撤収すれば広大なタクシカ領を威圧し続けるのは不可能…いずれ占領体制が崩壊する時が来る」
「その時が来るまで、我らは連中が右往左往するのを眺めながら潜むのみよ……ん、何か騒がしいような――」
自分たちが敗北者になることはない…そう確信した男女たちが笑う会議室に、突如として武装した兵士の群れが突入してきた。
「何をする!離せ!」
「無礼者!」
兵士たちに拘束された人々が叫びもがく中、豪奢な軍服に身を包んだ初老のボス=パチュタクスが部屋に足を踏み入れる。
「参謀総長!貴様の差し金か!一体我らをどうする気だ!!」
「知れたこと。皆様を大日本帝国連邦に引き渡し、降伏するのです」
「ふざけるな!まさか、自分たちは権勢を維持できるからと我らを売るつもりか!」
首都惑星タクシカを占領した後、日本側はどこにいるかわからないタクシカ首脳部に向け、タクシカ領全域に講和条件をオープンチャンネルで呼びかけていた。
現政権が退陣し、権威主義者と軍国主義者による政権を作ること。サースウィアの政権転覆に関わった者の引き渡し。エグラディル、マティロン、ハイカン、ラムダ・セルペンティス星系の割譲。
有人惑星をすべて占領された国家に対する条件としてはかなり穏当だ。4星系の割譲はあるが、この範囲に含まれる有人惑星のドゥコレックスとゲラルドは開発が進んでいないし、タラッシ恒星連合国との国境地帯を日本が抑えることで艦隊が壊滅したタクシカをタラッシが攻撃できないようにする意図もあると思われる。
この中で注目すべきは新政権が権威主義者と軍国主義者によるものになるということ。…つまり、受容主義と精神主義と違い、軍国主義者…すなわち軍部は政権に居座り続けることができるのだ。
「まさか。完全敗北した以上、参謀総長の椅子に座っていた者がその地位にしがみつくことは許されますまい。私も皆様と一蓮托生ですとも」
「ならば何故!」
「何故?決まっている。占領下に置かれた民たちを救う為だ!」
参謀総長は導師トロリックスを睨みつける。
「食材が天然ものでなくなったりワインのグレードが下がった程度で随分と忍従したつもりになっている貴様らと違い、民衆は日本の軍靴に踏みにじられ苦しんでいる!だというのに貴様らは民に詫びようともせず、戦後に責任を追及されたら第三国に移住して溜め込んだ個人資産で永遠のバカンスを楽しむなどと浮かれた未来図を描いている!如何に軍人は政治に干渉せずが民主主義国家の原則だとしてももう限界だ!!」
テーブルに叩きつけられた拳が大きな音を立てた。
「こやつらを全員牢にぶち込め!私は日本に通信を入れる!」
「待て、参謀総長!」
「血迷ったか!!」
呼びかけてくるかつての上位者たちの言葉を無視して、肩を怒らせたタクシカ参謀総長は会議室を出ていった。