ハイスクールD×D~混血悪魔のクロニクル~   作:星屑の騎士

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完結までもう少しとなりました。早ければ今月、遅くても来月上旬には完結すると思います。


合同調査

 

 

 ある日、蓮夜は『灰色の魔術師』の協会本部、その特権を持つ一部の者しか知らない理事長の部屋──父メフィスト・フェレスのもとを訪れていた。

 

 『番外の悪魔』、大悪魔たるメフィスト・フェレスは、静謐かつ重厚なオーラを纏いながらも朗らかに笑いかける。

 

「──やあ、蓮ちゃん。今日は急にすまないね」

 

「──別にかまわないさ。それで今日はどうしたんだ、父さん?」

 

「うん。今日はキミに紹介したい子がいてね。──入ってきていいよ」

 

 蓮夜の疑問に答えつつメフィストが促せば、入口のドアが開き、ひとりの女性が入ってきた。

 

 銀色の長い髪を頭のうしろでポニーテールに結い、透き通るような碧眼を持ち、女性的な起伏に富んだ肢体をメイド服で包んだ女の子は、蓮夜にも見覚えのある人物だった。

 

「──お久しぶりでございます、レオンハルト・フェレスさま」

 

 そい言って見事なカーテシーをしてみせたのは、もとは父親に連れられた者同士、パーティで出会った縁があったが、つい先日蓮夜が助けたバウンティハンター、シルファ・ラングリスだ。

 

「──ああ、シルファか。その格好はどうしたんだ?」

 

「彼女は今日から蓮ちゃんの眷属かメイド、あるいはその両方になりに来たんだよ」

 

 蓮夜の疑問に答えたのは、メフィストだった。

 

 先日、蓮夜に助けられたことでシルファは、蓮夜に仕えたいと父親のマルクオスの伝手でメフィストに会い、縁を繋いでもらったのだ。

 

 ちなみにシルファとともに行動していたルーナ・フロックハートは、フロックハート商会の人間らしいが、近々『灰色の魔術師』に所属するかもしれないという話が出ている。

 

「……俺の眷属やメイドになりたい? おまえほどの実力者がか?」

 

「はい。貴方さまのもとに仕えることこそが、私の望みですから」

 

 蓮夜の問いにシルファは、一礼して答えた。

 

「どうか私の剣を貴方さまに捧げさせてくださいませ」

 

 シルファの嘆願に蓮夜はしばし思考を巡らせた。

 

 いちばんに眷属にしたい者は決まっている。

 

 しかし、シルファからは確かな縁を感じ取っていた。

 

「……そういうことなら、これからよろしく頼む」

 

「はい、よろしくお願いいたします、レオンハルトさま」

 

 こうして蓮夜のもとにひと振りの剣がやってきたのだった。

 

 

 

 

 

       §

 

 

 

 

 

 シルファを仲間にしたあと、蓮夜は引き続き『灰色の魔術師』から斡旋された協会の仕事をこなしていた。

 

 今回からはシルファも同行することになる。

 

 いくつもの仕事をこなし、シルファとの連携なども確認していったがお互いに近接戦が得意とあり、相手の呼吸を掴むのはあっという間だった。

 

 いまではすっかり連携を取れるようになっている。

 

 そんな蓮夜とシルファの次の仕事は、他所の協会との合同調査となっていた。

 

 捜査内容は、最近目撃されるようになった未確認生物の調査だ。

 

 人間界で噂されるようなものではなく、どの書物にも記載のない魔獣が最近目撃されていることについての調査だ。

 

 蓮夜とシルファは、他所の協会の魔法使いとの待ち合わせしていた。

 

 先に待っていたふたりだが、待ち合わせ相手も二、三分後にやってきた。

 

「──遅れてしまい申し訳ありません。あなたがたが『灰色の魔術師』から派遣されたかたがたですか?」

 

 そう言って現れたのは、歳の頃はシルファほどで、銀色のロングヘアを背中に流した少女だった。

 

「ああ、そうだ。俺は黒崎蓮夜だ。よろしく」

 

「私はシルファ・ラングリスと申します。よろしくお願いします」

 

「これはご丁寧に。私はロス──ロセと呼んでください」

 

 蓮夜たちは互いに自己紹介したあと、それぞれ握手を交わす。

 

 蓮夜たちは、会話が日常的に聞こえるように魔法で細工し、移動しながら仕事内容を確認して齟齬がないか共有していった。

 

 今回の仕事は、キメラとして確認された未知の魔物の調査、可能であれば原因の究明だ。

 

「私のほうでは、原因は調査済みです。あくまで推測の範囲内ですが、北欧からのはぐれ魔法使いの仕業です」

 

 ロセは沈鬱な表情でそう口にした。

 

「そういえばロセは、北欧からの派遣魔法使いだったな」

 

「はい。なので身内の不手際でお恥ずかしいですが、ご協力をいただけたらと」

 

「それはもちろん、かまわない」

 

 蓮夜の言葉にシルファも「当然です」と頷く。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 ロセもようやく笑顔を見せた。

 

 ずっと気を張っていたのだろうが、蓮夜たちの言葉に気持ちが和らいだのだろう。

 

 団結力を高めた蓮夜たち三人は、謎のキメラが目撃される島へとやってきた。

 

 一見すると普通の無人島だが、見る者が見ればわかるほどに魔法的な仕掛けが施されている。

 

「これは……間違いなくこの島に潜んでいますね。ところどころに刻まれたのは、北欧式のルーン魔術です」

 

 ロセが魔法的な仕掛けの要を観察し、そう口にした。

 

「北欧式のルーン魔術は、本場のは初めて見るな」

 

 クー・フーリンから教わってこそいるが、蓮夜も北欧式のルーンを見るのは初めてだった。

 

 いつの間にか隣にいた蓮夜にロセは、ビクッと体を跳ねさせて頰が赤くなると、ずさささっと音を立てて後退りする。

 

 ロセは男性経験もなく、免疫なども当然なかったのだ。

 

 そんな様子も気づいていないのか、蓮夜は北欧式のルーン魔術をつぶさに観察していた。

 

「──ああ、待たせたな」

 

 すっかり新たな魔法に夢中な蓮夜だが、ある程度見て覚えるとそう言って振り向いた。

 

 自分だけ過激に反応したロセはどこか不満そうだが、シルファは楽しげに見つめていた。

 

 そして、蓮夜たち三人は魔法的な仕掛けを解除しながら進んでいく。

 

 特にただ解除するだけでなく、解除したことをバレないように細工することも忘れない。

 

 ロセは知識などを教えてはくれたが、あとは蓮夜がすべてやった。

 

 なんでもロセは、攻撃魔法を主に勉強してきたため、この手の細かな魔法は苦手らしい。

 

「うぅ……勉強不足がここにきて祟りました」

 

「あまり気にするな。魔法なんてのは、必要に迫られないと覚えないものだ」

 

 落ち込むロセを蓮夜が苦笑しながら慰めた。

 

「──レオンさま」

 

 蓮夜が魔法作業に集中できるように警戒していたシルファが、鋭い声かけをする。

 

 蓮夜もそれに気づいて警戒を強め、遅れてロセも身構えた。

 

 森の奥から現れたのは、ひとつ目の顔がふたつついて舌は一本、尻尾は二本という八本脚の怪物と、四本腕のゴリラだ。

 

「……どちらも見たことない生物ですね」

 

 元バウンティハンターとして経験豊富なシルファをしても、それらは未知の怪物だった。

 

「気づかれたのでしょうか?」

 

「いや、少なくとも魔法的な仕掛けが発動したりはしていない。おそらくは、動物的な勘や感覚だろう」

 

 ロセの疑問に蓮夜が答えた。

 

 警戒する蓮夜たちへ四本腕のゴリラ──トロルコングが襲いかかる。

 

 蓮夜たちは素早く回避したが、トロルコングの空振った拳が地面を殴りつけると凄まじい衝撃と土煙が巻き起こった。

 

 一発でもまともに喰らえば重傷は避けられないし、最悪命に関わる。

 

 だが、それよりも問題は──。

 

「っ、仕掛けがっ!?」

 

 ロセの言うようにいまだ細工していない仕掛けが降り注ぐ土砂によって発動したことだった。

 

 シルファが長剣の抜き打ちざまに斬撃を風の刃として放つ。

 

 しかし、トロルコングは瞬時に察知して回避した。

 

「速い……いえ、危機感知能力が高いようですね」

 

 そのシルファへもう一体のキメラ──オブサウルスが噛みつく。

 

 だが、それは横合いから飛び込んできた蓮夜に顔面を蹴り飛ばされて阻止された。

 

「ありがとうございます、レオンさま」

 

「いや、かまわない」

 

「ですがどうしますか?」

 

 シルファに気軽に返し、背中合わせになる蓮夜へロセが訊く。

 

「そうだな……もう仕掛けで気づかれている。時間をかけて逃げられてもことだ。魔法で一気に片付けよう」

 

 蓮夜が視線を巡らすと、トロルコングやオブサウルスがさらに何匹も現れた。

 

 これは一体一体相手にするよりも魔法で殲滅したほうが得策だ。

 

 蓮夜が魔方陣を展開しようとすると、ロセが前に出た。

 

「ここはお任せください! 先ほどはお役に立てませんでしたが、殲滅ということならば私の得意分野です」

 

「……わかった。任せる」

 

「はい!」

 

 漲る魔法力に蓮夜は問題ないと判断し、ロセも力強く請け負った。

 

 ロセは魔方陣を無数に展開する。

 

 その数は数十では利かず、数百にも到達していた。

 

「──全属性、全精霊、全神霊装填。北欧式フルバースト魔法──喰らいなさい!」

 

 魔法力を練り上げていたロスヴァイセが数え切れない数の魔方陣を展開すると、その量に応じた砲撃魔法が放たれた。

 

 回避も防御も用をなさないほどのまさに数の暴力が豪雨のごとく突き刺さっていく。

 

 炎、水、氷、風、雷、光。闇、他にもあらゆる属性を宿した砲撃魔法が、風景を焦土に変えながら、オブサウルスやトロルコングの群れへと襲いかかっている。

 

 木々が一瞬で蒸発して、跡形もなく消え去っていく。

 

 風景が吹き飛んでいくさまは、いっそ清々しい。

 

 魔法砲撃の雨霰は、オブサウルスとトロルコングの群れを瞬く間に殲滅していった。

 

 砲撃がやんだあとには、それこそぺんぺん草も残っていないほどだ。

 

「いやはや、たいした威力だな」

 

 それを見届けた蓮夜は、ラヴィニアにも引けを取らない破壊力だと、感心した様子だった。

 

「恐縮です。──す、少しやりすぎましたかね?」

 

「いや、充分だ。おかげで敵の仕掛けもすべて吹き飛んだみたいだしな」

 

 蓮夜はロセに肩を竦めて返した。

 

 あれだけ手を加えられた植物は、もはや人工物と変わらず、そう遠くないうちに枯れていただろう。

 

「それに敵地も見えたしな」

 

 蓮夜の視線の先は、木々が吹き飛んで見晴らしも良くなっており、敵の研究施設らしき建造物が確認できた。

 

 ロセの魔法力も問題ないようなので蓮夜は、突入しようとしたが──。

 

「ああ、そういえば……ロセ。敵はどんな魔法使いなんだ?」

 

 蓮夜の問いにロセは神妙な表情で答えた。

 

「……敵の名はキョウ・エスニナ。生命や魂についての研究をしていて、行きすぎてはぐれ魔法使いになった男です」

 

「行きすぎた?」

 

「はい。優秀な魔法使いだったのですが、研究に固執するあまりに生きた人間すら実験に使ったんです」

 

 研究内容は、不死や不老、不滅といった命の存続だったようだが、そのためにあまりに多くの犠牲者を出したようだ。

 

 ロセの話が事実ならば容赦しなくていいなと、蓮夜は決断した。

 

「なら早いところ抑えるとしよう」

 

 シルファとロセが頷き、三人は敵のはぐれ魔法使い── キョウ・エスニナのアジトへと乗り込んでいくのだった。

 

 

 

To be continued

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




シルファが正式にメイドになるなか、本編でヒロインになる予定の子が登場しました。アンケートで採用した敵も複数出てますね。大きな事件は、この北欧関係で外伝だと終わりかな。


それでは、本編、外伝ともにお気に入り登録、高評価のほどよろしくお願いいたします!
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