My Revenge Against God! 作:まきものさん
ベッドの上に服を並べてあれこれ考える。シンプルで動きやすいのか、それともちょっとかっこいいのか。
リアはどっちの方が好みなんだろう。
悩み抜いた末、シンプルな方に決めパパッと支度をし家を出た。
待ち合わせ場所の噴水広場に行くと、リアはもうとっくに着いていた。
少し待たせてしまったかもしれない。
「おはよう、待った?」
「おそい!」
「え~、時間通りに来たよ?」
「まあ、いいよ。それでなにか言うことがあるんじゃない?」
リアがわざとらしく腕をいっぱいに広げて自分の格好を見せつけてくる。
フリルの付いた純白の長袖ワンピース、麦わら帽子の下から覗く髪を少しだけ横に流して、
空色のリボンを編み込んだ三つ編みにしている。そこに僕のあげた髪飾りがきらりと輝いている。
「その、か、か、かわいいよ。すごい似合ってると思う」
うわ、思いっきり噛んだ。こういう時に言葉がすらすら出てくればいいのに。
「やっと言ってくれた。うん、どういたしまして。行こ?」
「うん」
歩いていても、隣を歩くリアに自然と視線が吸い寄せられてしまう。
それに気付くたびに首をブンブン振って前を向く。
実はデートの最後、リアに告白するつもりだ。
告白しようと決めている今日くらいはエスコートをしっかり頑張らないといけないのに、
自分だけ見惚れてたらダメだ。
女の子のことをリードできるかっこいい男の子であることをアピールしないと。
◆◆◆
屋台がたくさん立ち並ぶ路地は朝早いので人はまだまばらだ。
「なにか食べたいものある?」
「さっき朝ご飯食べたばっかりだからまだおなか空いてないかなー、あ!!!」
なにか美味しいものでも見つけたのかな。駆け足のリアを慌てて追いかける。
屋台の看板には、幸せが絶対に来る魔法の壺と書いてあった。
どう見ても怪しい。目をキラキラ輝かせるリアの将来が若干心配になってきた。
・この壺を買ったら妻と仲直りできました!!(男性 二十代 農民)
ほんと?
・この壺を買ってから夜だけじゃなく昼間も気持ちよく寝れるようになりました(男性 三十代 無職)
いや、働け
・この壺に頭を叩きつけ続けていたら何で怒ってたか忘れました。
あと残念なことに壺は割れちゃいました(女性 二十代 農民)
煩悩だけじゃなくて記憶もなくしてない?
・追記 夫が同じ壺を買ってきたので
ギャンブルでお小遣い全部使っちゃったことは水に流して許してあげました♡
さっきの男性の妻だった。夫婦そろってちょっと霊感商法ハマっちゃってるけど、大丈夫かな。
宝石とかをジャラジャラつけて、いかにもうさん臭いおばさんが
にこやかな笑顔で棚の奥から声をかけてきた。
「ひっ、ひっ、ひっ、お嬢ちゃんかわいいね。どれ今なら3割引きにするけど買っていくかい?」
「えっ、いいんですか?じゃあ買います」
財布をポケットから取り出し始めた。うそでしょ、ほんとに買う気なの!?
「ちょっと待ったー!!」
慌てて間に割り込んで大声で止める。
「リア、これは詐欺なんだ。
霊感商法って言ってこういう普通の壺を高い値段でふっかけられてお金むしり取られるんだよ!」
僕も昔、港町オズマンの市場で"持ってるだけで幸せになれる薬草"を買ったけど
一週間後には腐って変なにおい出るわ、
よくわからない虫が大量発生するわで家の中が阿鼻叫喚になったことがあるからわかる。
ていうかこの壺よく見たらオズマン商会連合の刻印があるから量産品の壺だ。
「ケッ、お前さんのような勘のいい坊やは嫌いだよ」
豹変したおばさんが吐き捨てる。さっきまでの笑顔はどこに行ったんだろう。
「行こう、リア?」
「うー、わかった」
納得してくれたみたいで一安心だ。
「……でもこの壺があればリヒトと一緒にずっと幸せになれるかもしれないのに……」
小声のつもりだったのだろうが、僕の耳には、はっきりと届いた。
「はぁ……」
ため息をつきながら思わず額に手を当てる。全身がこそばゆい。
とりあえず聞こえてないフリをして次の屋台へと向かった。
◆◆◆
・このあたりの薬草クイズ大会
1位 リア 100点
2位 リヒト 96点
3位 ・・・ ・・点
早押しでリアに負けた。ちくしょう、最後の一問押し勝っていれば僕の優勝だったのに。
「おめでとうございます!なんとリアさんが優勝です!
なお優勝賞品は収穫の時にでた藁を使った麦わら帽子です!」
「へっへーん、勝ったよ?」
リアが得意げに麦わら帽子を見せつけてくる。
「はいはい負けました。普通に負けました」
不貞腐れてそっぽをむいていたら、頭にふわりと帽子が乗る。
「おそろい、だよ?」
そのまま顔を近づけてきたリアが耳元でささやいてくる。ドクン、と心臓が跳ねた。
近い、近すぎる。耳まで熱くなっているのが自分でもはっきりとわかる。
「う、う、うん。あ、あ、ありがとう。よ、よし次はどこ行こう?」
完全に声が裏返ってる。とにかく話題を逸らそう、今すぐに……。
・毎年恒例! ビンゴ大会
「優勝は、リヒトさん!景品はこちらの霊験あらたかな壺です!」
「あれ、この壺さっきと同じでオズマン商会連合の刻印がある?やっぱりさっきの壺は量産品だったんだ!
ていうか重っ!?すいません、やっぱり景品大丈夫です」
「えー、じゃあ私に代わりにちょうだい?」
「いや、ダメだって。こういうのは一回手を出したら戻れなくなるから」
「ええー??」
・木炭でおえかきコーナー
「わー!!リヒト、これリスさん?かわいいーー!」
「リアは、何かいたの? クマ?」
「やだなぁー、リヒトだよ。我ながら自信作だよ!かっこよく描けてるでしょ!?」
なんでそんな得意顔なの?あとなんで四本足なの?僕もう赤ちゃんじゃないよ?
・麦わらおみくじ! あなたの来年の運勢はいかにっ!?
「やったー大吉だー!リヒトは?」
「大凶だ、なんて……。この後青くなったジャガイモを食べておなかを壊します、だって……」
「気にしなくて大丈夫だよ。そんなの信じちゃってるの?たかがおみくじだよ?」
いや、おみくじにしてはやけに現実味がある内容だ。
・じゃがバター
「おじさん、これください。あ、二個で」
「あいよー」
「ちょっと待って、これさっきのおみくじ当たってない?
あ、おじさんそのじゃがいも青いです、替えてください!!」
「好き嫌いしないで食べなきゃだめだよ。リヒト、ほら」
うわぁぁぁ、やめてぇぇぇぇ。
◆◆◆
屋台を何軒もはしごして散々はしゃぎまわっておなかがペコペコになった。
食堂の看板が目に入る。
「もう十二時回ったし、そろそろお昼ご飯にしない?」
「うん、そうしよっか」
店に入る前に念のため財布の中をこっそり確認する。
午前中結構屋台とかで使っちゃったけど、父さんがこの間のクマ型の魔物の爪を
オズマンでかなりいい値段で売り捌いてくれたからまだまだ軍資金はいっぱいだ。
昨日の夜、父さんに言われた女の子のエスコートの極意その一を反芻する。
――デートの時は常に"レディーファースト"の精神だ!
たとえば昼飯を食べるとき、お前一人がドカッと椅子に先に座るんじゃねえぞ?
さりげなく、かつ俺、お前のことちゃんと気遣えてるから、
みたいな空気を出しながら椅子を引いたりしてちゃんとエスコートしろ ――
ドアを開ける。さぁ、戦闘開始だ!
「いらっしゃい。あらリヒト君とリアちゃんじゃない、久しぶりね。
そこら辺の空いてる席に好きに座っちゃっていいわよ」
ラッキーなことに窓際の席が空いていた。今日は秋晴れで眺めは最高。あそこにしよう。
店の中をずんずん進むと、テーブルが近づいてきた。
ちゃんとエスコートしなきゃ、ちゃんとエスコートしなきゃ……
「リア、こっちに……」
勢いよく椅子を引いた結果、ギギギギギギギーッと、店内にひっかくような嫌な音が響き渡り、
ほかのお客さんの視線が一斉に僕に集まる。
我ながらひどい。穴があったらスライディングしながら入りたい、いやホントに……。
しばらくその場に立ち尽くしてしまう。
その横で、リアは何事もなかったみたいにさっさと椅子に座り涼しい顔でメニューを見始めた。
完全にやらかした。忘れよう、記憶から消そう。
今度は音が鳴らないように慎重に自分の椅子を引いて座る。
「えっと、この牛肉のステーキのチーズかけと、ライスと……」
「じゃあ、僕も同じやつで」
店のおばちゃんが注文を取ってから厨房に戻ると、微妙な沈黙が流れる。
と、突然リアが笑いだして
「無茶しすぎだよ、リヒト」
「いやーあははっ、ははっ、はっ……。すんませんでした」
たぶん笑顔がひきつりまくってる。父さん、僕うまくエスコートできませんでした。
「……私は、いつも通りのリヒトが一番好きだなぁ」
聞こえてないフリ、聞こえてないフリ。
コップの水をがぶがぶ飲んで、なんとか気分を落ち着かせる。
そうやってまた、言葉にするのがためらわれるようなことをどうしてポンポン言えるんだろう。
ぜひ、その勇気を見習いたい。
◆◆◆
昼食を済ませて、屋台は一通り見てしまったので、今度は教会に行くことにした。
教会の中にはかぼちゃや花がたくさん飾ってあり、
祭壇にも果物や花、小麦、野菜などたくさんのお供え物が丁寧に並べられている。
午前中はしゃいだのと、昼ご飯を食べた後だからもうあんまり動きたくない。
「あ、たまには本でも読んでいかない?私もう疲れちゃったからちょっと休憩がてら……」
どうやら同じことを考えていたみたいだ。
「うん。そうしようか」
教会に併設された図書館に入り、座りながら本を一緒に読む。
顔の距離が近くてリアのサラサラした髪の毛が腕に触れるたびに鼓動が早まる。
そんな僕の気持ちなんて全く気付いていない風にリアは本をペラペラめくる。
「あ、これ……、私が一番好きだった本」
「そ、そうそう。僕も好きだったから久しぶりに読んでみようかなって」
―――
むかしむかし、あるちいさな国に、りっぱな騎士がいました。
騎士は、お姫さまのことを、ちいさいころからずーっと、そばで守っていました。
やがて、騎士とお姫さまは大人になって、けっこんしました。
やがてふたりのあいだには、とってもかわいい女の子が生まれました。
騎士とお姫さまと女の子は、三人でなかよく、しあわせにお城でくらしていました。
でもある日、南のほうから、こわーい魔族がやってきました。
魔族は、あっというまにお城にせめてきて、お姫さまと女の子を、つれていってしまいました。
騎士はふたりを助けようと、魔族がいる南に旅にでました。
やっとのことで、騎士はふたりをつれていった魔族をたおして、
お姫さまと女の子をとりもどしました。
三人は、なみだをながして再会をよろこびました。
でもある日、なんと、女の子がこわい魔族になってしまったのです。
女の子を助けるためには、騎士か、お姫さま、どっちかの命とひきかえにしなければいけませんでした。
騎士は、なきながらお姫さまに言いました。
――僕のぶんも、あの娘をたのむよ。愛してる、と。
お姫さまは、女の子が助かったあとも、ずっとずっと、悲しくて、しくしくなきつづけていました。
ある夜、騎士がお姫さまのゆめに出てきて言いました。
――僕は、ずっと君たちを、どこかで見守ってるよ、と。
それから、お姫さまは泣きやんで、女の子といっしょに、なかよくくらしました。
騎士が、お姫さまの心のなかで、
いつまでも、ふたりを見守ってくれている、あたたかいぬくもりをかんじながら。
―――
「おしまい。もう出ない?結構休んだし」
「そうしようか」
本を静かに閉じもとの場所に戻す。図書館から出るとすでに外は暗くなっていた。
さっきの物語の騎士が命を差し出した場面を思い出すと、胸の奥がチクリと痛んだ。
守るってなんなんだろう。考えたこともなかったし、まだ僕にはよくわからない。
でも、と。隣で歩くリアをちらりと見ながら考える。
ずっと幸せでいてほしい。その時横でその幸せを支えるのが自分でありたい、自分であり続けたい。
そういう気持ちなのかもしれない。
突然隣を歩くリアに袖を引っ張られた。
「なに?」
「あの話って、本当にあったことなのかな?」
「どうなんだろう。でも何かしら元になるエピソードは昔にあったはずだよ。
火のない所に煙は立たない、って言うしね」
実際はどうなんだろう。今度父さんか母さんにでも聞いてみようかな。
「私にも何かあったら、リヒトが守ってね、約束だよ?」
「うん、絶対、絶対守るよ。何があっても」
守るってよくわからない。でも、今、隣で歩いている一人の女の子をこの手で守ってあげたいと強く思う。
そのためにも僕は……っていててて
「なんでいきなりつねってくるんだよ!」
「この間みたいなやり方したらまたビンタするから」
「いや、ごめんって」
そうこう話している内に屋台がある通りに入った。
人通りは朝の三倍くらいある。このままだとお互いに姿を見失ってしまいそうだ。
「リア、手……その、はぐれたら大変だし。まぁ嫌だったらいいんだけどさ……」
手をおずおず差し出す。
「うん、いいよ。手つなご?」
ぎこちなくリアの手に触れ、そっと包み込むように握る。
まだ指を絡ませることもない、ただ握手しただけみたいな握り方。
でも、今の僕らにとってはこれくらいがちょうどいい。
ゆっくりと二人で通りを歩き始める。
「ここ、見ていっていい?」
宝石の露店の前で立ち止まる。魔鉱石のランプで優しく照らされた色とりどりの宝石は
昼間よりもずっと光り輝いて見える。
リアはいくつかの宝石を手に取って灯りに透かしては棚に戻していく。
父さんが言ってた、女の子のエスコートの極意その六を思い返す。
たしか、こういう時は女の子の一挙手一投足に全集中、するんだっけ。
「いや、そんなにジーッと見ないでよ」
「あー、ごめん」
さすがにジロジロ見過ぎていたみたいだ。まあでも欲しいものは大体わかった。
リアはアメジストのペンダントを三回手に取っているし、視線もさっきから釘付けだ。
「欲しいやつある?」
一応の確認。たぶんリアは否定するだろうけど……
「うーん、特に無いかなぁ。どれも高いし」
「そっかぁ」
もっとわがまま言ってくれてもいいのに。
それからいろんな屋台を一通り見て回り、通りを抜け教会前の噴水広場に戻ってきた。
「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」
「わかった、待ってるね」
トイレに行くふりをしてさっきの宝石の露店にダッシュで向かう。
父さんに教わった女の子のエスコートの極意その十、
トイレに行くふりをしてサプライズのプレゼントを買いに行け!を今こそ実践するとき!
いや、そんなんじゃないか。たぶん純粋にリアに何かプレゼントしてあげたいんだ。
「おじさん、このアメジストのペンダントください」
「おや、さっきの……。でも坊ちゃんこれ結構高いよ?」
「大丈夫です、お金ならあります。たぶん……」
財布の中身をバラバラ全部出す。足りるかな……。
「ひー、ふー、みー……、おどろいた、普通に足りるじゃねえか……」
良かった、買えそうだ。財布の中身は大分寂しくなっちゃったけど……。
ペンダントを受け取ろうとするとおじさんが待ったをかけてきた。
親切にも、ペンダントをおしゃれな空色のひもにつけ変えて
布を敷いた木箱の中に丁寧に入れてくれた。
「こいつぁ、おじさんからのサービスだ」
「わざわざありがとうございます!」
「おう、頑張れよ!」
◆◆◆
広場に息を切らしながら大急ぎで戻る。
「悪い、待たせたね」
「んーん、大丈夫」
「ちょっと歩かない?」
「いいよ」
五分ほど歩き、刈り取られたばかりの麦畑の中に入り、畑の真ん中まで来た。
さっきまでいた教会前や屋台通りの喧騒が遠くから風に乗って聞こえてくる。
星明りだけが静かに降り注ぐ場所で、二人っきり。
父さんに教わった女の子のエスコートの極意最終奥義を……
いや、ここから先は自分で決めよう。いつまでも父さんの極意に頼るわけにはいかない。
自分の気持ちくらい、自分の言葉で素直に伝えたい。
「今日、楽しかった?」
「うん、楽しかった、久しぶりに一日中遊んじゃったなぁ。ビンゴ大会で負けたのは悔しかったけど!」
「それを言ったら僕だって早押しで負けてるんだけど」
「でも帽子はおそろいになったよ?」
「そうだね。僕も、楽しかった」
意を決して、ポケットから木箱を出す。
「はい、これ。僕からのプレゼント」
「え、何?開けてみてもいい?」
「うん、もちろん」
木箱を開けると中からアメジストのペンダントが姿を見せる。
星明りに照らされて、露店で見た時より色とりどりにきらきら光って見える。
「綺麗……。ありがとリヒト」
リアの口元が緩む。
良かった、ちゃんと喜んでくれたみたいだ。
これで、壺の方が良かった、何て言われてたら立ち直れなかったかも。
ほっと胸をなでおろしていると予想外の攻撃が飛んできた。
「リヒトがつけてよ」
「え、僕が?」
「つけてもらいたいなぁ……、なんて。だめ?」
潤んだ瞳で僕を見上げてくる。
「わかった」
こういう時、どれだけ説得しようとしてもリアは言うことを聞いてくれない。
やるしかない、か。
リアの体をなるべく触らないように、首の後ろに手を回す。
それでもサラサラの髪が手の甲に触れたり
ふわりとした花のようないい匂いが鼻孔をくすぐるたびに鼓動が高鳴っていく。
「よし、できた」
「ありがとう。どう……かな?」
「似合ってないわけないよ、すごくかわいい」
「えへへ、ありがとう。
プレゼントも、今日一日私を楽しませようとして必死に頑張ってくれたのも
すごくうれしいな」
「まあ、結構空回りしちゃったけど」
「それでも、ありがとう」
「こっちこそどういたしまして」
会話が途切れる。いよいよその時が来たみたいだ。
深呼吸だ、覚悟を決めろ僕。
「リア!」
「何?」
まっすぐリアの目を見る。
「僕、リアのことが好きだ!」
「あ……」
「クマ型の魔物に襲われた時、僕を心配して泣いて、本気で怒ってくれた。
素直に感謝を伝えられて、素直に謝れて、手作りのお菓子もおいしくて、
ちょっとドジなとこもあるけど、だから守りたい。そばにいて守ってあげたい。
だから、僕はリアが大好きだ、付き合ってください!」
言い切ってやった。
瞬間、リアが胸の中に飛び込んできて背中に腕を回してきた。
「私も……私も好き。だからそばで、いつまでも私のこと、守ってね?」
「うん、ずっと守るよ」
僕も背中に腕を回し、ぬくもりを確かめるように優しく抱きしめる。
「約束、だよ?」
「うん、もちろん」
「絶対だよ?」
「うん」
◆◆◆
それから噴水広場前まで戻り解散しようとしていると
父さん、それにリアのお父さんとばったり遭遇してしまった。
手も思いっきり指を絡ませてつないでいたから言い逃れはできなかった。
手をつなぐ僕らとリアの胸元のペンダントを見て父さんはテオと同じような目を向けてきた。
一方でリアのお父さんはというと……
「リヒト君、ちょっと二人きりで拳で語り合いを……。いや違った、話し合いをしようか」
もう言っちゃってるから言い直す必要ないです。たぶんこれボコボコにされるパターンだ。
その後なんやかんやあって両家族総出で夕食を取ることになった。
酒場は収穫祭の夜だからかいつもよりすごい賑わいだ。どのテーブルからも笑い声が絶えない。
「ついにリアが彼氏を……。もう立ち直れない、ヒック」
「あなた、しっかりして。リアはすっごく可愛いから当然よ。時間の問題だったじゃない?
それにリヒト君ならどこの馬の骨かわからない野郎よりかは全然マシだわ」
リアのお父さんがグイっとジョッキを呷る。
あとリアのお母さんにはかなり失礼なことを言われた気がする。
「父さん嬉しいぞ、リヒトにこんなに早く彼女ができるなんて。
しかもリアちゃんときた、将来絶対べっぴんさんになるぞ~」
「あんまからかわないでよ父さん。兄さんもなんか言ってやってよ……」
「ああ、まぁ、お幸せにって感じだな、うん。チッ、リア充爆発しろ、クソガ」
舌打ちされた。兄さんはさっきからずっと、俺より先にとか、置いてかれたとか
爆発しろとか、言ってるけど、どうしちゃったんだろう。
にしても、ちょっとは兄さんに庇ってほしかった。四方八方からからかわれて生き地獄すぎる。
「リアちゃん、お料理とかは得意なの?」
「"お義母さん"、ええ、まぁそれなりには。お菓子作りとかも一応できますけど?」
ちょっと待って。
今のお母さんじゃなくてお義母さんみたいな意味合いが込められてたような気がする。
なんかいつの間にか外堀埋められてる。まあ別にいいんだけどさ……。
◆◆◆
「じゃあ、また今度食事でも一緒に行きましょう」
「そうですね、また今度」「まひゃこんど、やりまひょう、ヒック」
あの後、酔っぱらったリアのお父さんに胸倉掴まれて殴りかかられるわ、
リアが母さんに花嫁修業で弟子入りを熱望したりするわいろいろあって大変だったけど
なんとか
ずっと胸の奥にしまい込んでいた気持ちを、ようやく素直に伝えられた。
その上、リアと、付き合うことになった。……現実かな、これ。
リアの怒り顔、得意顔、笑顔が次々に浮かんで、気付いたら頬が緩んでいた。
今日くらいは魔法の練習サボってもばちは当たらないよね。
そう思いながら眠りについた。