アインザーム・オリジン【完結】   作:ごすろじ

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▼第三十一話▶「変わらないものなんてねぇーわな」

 

 

 

――二年後。

 

 

この世に生まれ落ちてから幾星霜。

千年を超える記憶の大半は霞がかっているが、生みの親から授かった名前だけは今も鮮明だ。

フルーフ――それが私の名だ。

 

 

最低限の道理を通し、気に入らない奴はぶっ殺す、私を殺した奴は必ずぶっ殺す。

金は天下の回りもの、今も昔も金への執着は消えていない。

 

見せびらかすように使うのは気分がいいものだ。

 

そんな暮らしを続ける中で私は長いこと一箇所に定住したことはない。

 

親しくなれば情が湧く……自分を愛玩動物のように優しく可愛がってくれる人が、私は大好きなのだ。

好きな人達が死ねば悲しくなる、好きな人達が幸せになれば嬉しくなる。

 

 

それゆえに距離を取った……。

全てに一喜一憂していては自分のことに手がつかなくなってしまう。

 

 

現実から目を逸らし夢を追いかける。

火事場泥棒をしながら気紛れに人助け、放浪生活を続けていた私は……気づけば一箇所に定住していた。

 

 

一家の柱としてしっかり仕事はしている。

 

 

戦争による大規模衝突は私のようなクズには絶好の稼ぎ時だ。

 

なにせ金から食料、魔道具や貴重な薬品まで全て揃っているのだ。

まさしく宝の山、南側諸国の闇市まで持っていけば巨万の富を築くなど実に容易い。

 

 

定住したとはいえ美味い収入源を見過ごすことはしない、帝国軍や王国軍が魔族との争いに備え軍を編成している噂が聞こえてくれば、喜びいさんで戦場へと向かう。

 

 

血と怒号、焼けた肉の臭いが鼻をつく。

足元では泥と血が混じり合い、踏み込むたびにぬちゃりと嫌な音を立てる。

 

 

離れた場所から冷めた眼で戦場を眺める。

一頻り殺し合い、人間が殺され尽くした頃が私の仕事時だ。

 

糞ったれの魔族の首を圧し折りひっそりと物資を強奪する。

余り派手にはやらず邪魔者だけを一撃で排除する。

 

 

魔王軍で上位者を気取っている『全恥』に見つかるのが一番面倒くさい。

もし私を始末しようと魔族でも差し向けられれば……殺しに向かわない理由がなかった。

 

 

将軍の死体から勲章を剥ぎ取りながら、私は奴のことを考える。

 

 

まぁ……だけどあの未来視を避けるのは簡単だ。

 

ああいう奴は何でもかんでも自分一人で事が運べると自惚れている、その能力故に無意識下で育まれた万能感は簡単に揺らぐものではない。

 

視点が違う、物事への尺度も違う……ようは想定している盤面が大きすぎるのだ。

 

勲章を袋に放り込み、次の獲物を物色しながら思考を続ける。

 

 

だから一々倒れていく駒などに意識を割かない。

奴にとって大事な駒は魔王軍という軍そのものであり、七崩賢と一部の大魔族だけでしかない。

 

将軍や木っ端魔族を幾ら殺そうが、部隊を率いる『頭』、大局の流れ、そして部隊としての形が整ってさえいればいいのだ。

 

奴は細々とした内容にまで眼を通していない。

 

いかに未来視とはいえ視るのは個人だ、一人一人の動きを毎度注視するなど、それこそ砂漠の砂を一つ一つ確認するような途方もない労力を要するものだろう……。

 

だからこうしてヒッソリと火事場泥棒を働けば奴にはバレない。

 

 

魂を一目見れば自ずとその本質も見えてくるものだ。

 

そいつがどんな奴で、どんなことを目的としているのかが大雑把にわかれば地雷原であろうと容易に避けることが出来る。

 

もっとも私程度では細部までは読み取れない……。

魔族の魂から読み取れるのは。その魔族にとって重要度が高いことだけだ。

 

 

それでも十分だった。

 

あの『全恥』と直接関わることは今後もないだろうし、目をつけられるような派手な事をする予定も無い。私は私腹が肥やせればそれで満足なのだ。

 

 

そうして小さな面倒を経て、各国の支給品で袋がパンパンになるまで物資を詰め込んだ私は戦場を後にする。

 

 

張り込み期間と合わせ、少しずつ慎重に物資を盗んでいたせいで四ヶ月も掛かってしまった。

だが魔族の魂も三桁近く確保出来たし収穫は上々、言う事なしだ。

 

 

大袋を担ぎ山を一跨ぎしながら帰ってくれば、見慣れた家が見えてくる。

 

色とりどりの花が風に揺れる花畑、陽光を浴びて白く輝く女神像、その奥に佇む無骨な造りの家。

見慣れた我が家だ。

 

 

「うぃ~す。ただいま……うん?――誰だ?」

 

 

上空から一気に降下し、着地と同時に地面が爆ぜた。

 

ズドン、と重い衝撃が足裏から全身を駆け抜け、土煙が視界を白く染める。

煙を払いながらただいまの挨拶をしようとした矢先――家の前に見慣れた小柄な影と、見慣れない白髪の男が立っているのが見えた。

 

 

――なんだコイツ?棺桶なんか背負った変な格好しやがって。……魔力は馬鹿みたいに多いし、おまけに……揺らいでるな――って、お前かよ。

 

 

「おっと――危ない危ない、誰かと思えば……我が親愛なる息子くんじゃないか。えらく変身が上手くなってるもんで気づかなかったぞ」

 

 

咄嗟に手が出そうになるも魂の色を視て寸前で思いとどまる。

随分とイケメンに仕上げているが、私の親愛なる糞息子であるアインザームで間違いない。

 

 

『あぁ、私だ』

 

 

アインザームの全身が一瞬霧に包まれ見慣れた巨体の影が見えてきた。

 

変身魔法にまで幻影を応用しているようだ。

幻影込みの変身とは随分と徹底しているな。

 

それにしても、こいつの魔法の方向性どんどん人外染みていってるな……あっ、人外だったわ。

 

 

「何、お前……イメチェンしたの?随分とまぁ……整ったな」

 

 

頭から蠢く下半身までじっと見渡していく。

ボサボサの髪にボロい農民みたいな服を着ていた奴とは思えん。

 

 

今のアインザームはなんというか……小綺麗だった。

 

髪には艶が出るまで油が塗り込まれ、金色のアクセサリーで一つに束ねられている。

全身を覆う黒いコートは仕立てが良く、革手袋まで嵌めていた。

 

 

『私の嗜好では無い』

 

「アイン、威厳は大事だよ。人間は見た目で人を判断するもの、仕事に出かける時にはしっかり身嗜みを整えて立派な紳士にならないと」

 

 

最近ぐんぐんと身長が伸び始めたマキナがアインザームの服を整えシワを伸ばしている。

こいつら……いつの間にか出社前の新婚みたいなことしてるな。

 

 

「フっ……これ、お嬢さんの趣味でしょ。で、変身した時の姿はアインザームの趣味だろ」

 

『……知らん』

 

「そ……そんなことはありません」

 

 

バッ、と顔を一斉に背ける二人を見て笑みが漏れる。

こんなのは図星と言っているようなものだ。

 

 

マキナは……まぁ、好みが変わっているので仕方ないとして。

アインザームはどうしてあんなイケメン顔なんだ?

 

そんなの気にするような奴じゃなかったはずだが。

 

いや、そもそも……――

 

 

「あ、ちょっと待て、今仕事って言った?え?何アインザーム……お前仕事始めたの?」

 

『稼ぎは少ないが真っ当な仕事だ』

 

「アイン、旅の葬儀屋さんを始めたんです」

 

 

何だよ旅の葬儀屋って?

旅の僧侶とか神父みたいなものか?

 

いや葬儀屋自体は今の時代に合ってるし繁盛してるからいいと思うけど。

旅の、ってつくだけで胡散臭さが半端ないな。

 

 

「葬儀屋かぁ、いいと思うぞ。今はどこでも人が死にまくってるから、信用の無い奴でもそれらしく振る舞えば金を払ってくれるしな。で、どうして胡散臭い葬儀屋さんは稼ぎが少ないのかな?……よっぽどアコギな商売でもしてるのかい?」

 

『全て聖都の形式通り執り行っている。私の提示するプランは一つ……棺桶、花、埋葬、祈りの言葉による葬儀のみだ』

 

「――ハァッ!?お、お前……どうしてそのフルプランで稼ぎが少ないんだよ、今の市場相場を理解してんのか!?その棺桶がそうか!?」

 

 

まじか、コイツ。

 

アインザームの提示するプランは、正式な神父によるものではないとしても、銀貨数枚は軽くかかるはずだ。

 

それにアインザームが背負っている細部まで模様の掘られた豪華な棺桶……。

あんなものを加えたら金貨が飛んでいってもおかしくない。

 

 

『棺桶職人から棺桶の制作方法と材料の加工方法を学んだ。クッションこそ無いが品質は保証する。それに葬儀屋からも式の進め方も学んでいる、安心してくれ』

 

 

学んだって……どうせ覗き見しただけだろうが。

いや、見て学ぶって言葉もあるしそこは正当性があるか……。

 

だけどクッションって……お前は貴族でも埋葬するつもりかよ。

 

 

「いや、そんなこと心配してないわ!待て待て……誰を相手に商売してるんだよ、この辺りの小さい村にお前が提示する葬儀代を払える所なんてないだろ。あ――お嬢さん、まさかだとは思うが……」

 

 

嫌な予感がする。

 

ただでさえこの辺りは僻地と呼んで差し支えない。

片田舎で金を持っている人間なんて極少数だ。

 

数十キロ先にある領主の街まで行けば可能性はあるが……あそこは確かマキナの実家がある場所だ。

アインザームが好き好んで近づくことはあり得ない。

 

 

だとすれば……。

 

 

「はい……。アインは近隣の村の方々に破格の値で葬儀を請け負っています。その……私も思う所が無いわけではありませんが……」

 

 

し、市場破壊だ。

価格破壊は駄目だろアインザーム。

 

 

注意すべきか?

だけど……マキナが止めない所を見るに何かあるな。

 

 

「ならせめて、もうちょっと値段相応に手を抜けよ」

 

『駄目だ、彼らはただ純粋に死者を悼み追悼を願っている。だが葬儀屋共はそんな彼らの足元を見て法外な値段を吹っかけているのだ。腹がたった……それに私は救いを求める手を出来るだけ取ると決めている、それが純粋で清いものであれば尚更』

 

 

一ミリも理解できねぇ。

そりゃ需要が増えれば値段も上げてくるだろ。

 

値段を吊り上げた結果、それでも仕事が入ってくるんなら誰だってそうする……それが商売ってものだろ。

 

「薄っぺらい偽善のボランティアかよ……」

 

『金は貰っている、これも商売だ。私は己の技術に私自身で値をつけて売っているだけだ、仕事を取られるのが嫌ならより良いサービスと営業精神で信頼を勝ち取ればいいだけだろう』

 

 

かなりトゲのある言葉を使ったのに無敵かコイツ。

言ってることは別に間違ってないんだけど、それにしてもやりすぎ感が否めない。

 

棺桶制作や材料加工は……魔法で効率化してそうだな、コイツ器用だし。

花は……当然魔法だろうな、これはまぁいい……フランメが喜びそうな使い方だし。

 

 

魔法の安売りが過ぎる。

教えた私としては別にいいんだが、損してる気分になるのは私が卑しいだけか?

 

 

「お前……同業者から少なからず恨まれてるだろうから気をつけろよ」

 

この辺りの仕事が減ったからといって、アインザームの同業者にとっては痛手でもなんでもないだろう。

 

人の死が多い今の時代は葬儀屋にとっては絶好の稼ぎ時だ。

死が身近にある今の世だからこそ、仕事はそこら中に溢れている。

 

 

飢餓や貧困に陥っていても、大事な人間は弔ってやりたいと思うのが人情ってものだろう。

だからこそ片田舎での仕事が無くなった所で困りなどしない。

 

それよりも多くの金額を積んで、葬儀を依頼する人間は多くいるのだから。

 

 

それでも面白くは無いだろう。

誰だって収入源の一つを潰されればいい気分はしない。

 

物騒な真似はしてこないだろうが、恨みの一つや二つ買っていてもなにも可怪しくはなかった。

 

 

『覚えておこう、だが止めはせん。私は私の理想へ向け歩み続ける』

 

「あ、アイン……無理しないでね?」

 

『しない……何事も君に勝るものなどないからな。君が本気で止めるなら私は素直に従うさ、理想に近づくことは大事だが、君を蔑ろにすれば何の意味もない。私の全ては君だ……君だけを最優先に考えると約束したからね』

 

「……うん」

 

 

優しい声だ、ゲロ甘過ぎて吐きそうになる。

 

マキナの声色からも嬉しさが滲み出ている……。

あの娘にとってはコレがパーフェクトコミュニケーションなのか。

 

やっぱり大分変わった娘だ。

 

 

「あーはいはい、理解理解。最初から金以外の大事なものの為に働いてますって言えよ。青臭い野郎だ」

 

『自分の行いを何か別のもので言い訳するつもりはない……自分の為だ』

 

「そういう無駄に卑下する所、私に似てるから止めとけよ。口先だけならともかく、お前はそれが押し通せる能力と意地があるんだ……。胸はってイケよ、私は好きだよ、そういうの」

 

 

それにしても変わるもんだ。

初めは知能の欠片もない、人肉を喰べることしか考えてない魔物だったのにな。

 

知能が芽生えてからは会話こそ出来るけど、どこか無機質で虚無った感じが滲み出てる機械みたいな奴だったのに……。

 

 

マキナと出会った。

たった数年で此処まで情緒が育つものか。

 

まだ自分が何者なのかとか考えてそうな気配はあるが……。

私から見ればとっくに個として独立している。

 

魔物、人類、魔族……そんな既存の形に無理して当てはめる必要もないのに……変に真面目なのは変わらない。

 

 

私は基本的に人の成長や変化が嫌いだ。

自分だけが取り残されていくようで、酷く惨めな気持ちになる。

 

急激な変化なんて歓迎できるはずもない。

だけど……この二人の変化を見ていると、不思議と悲しくはならなかった。

 

 

この輪の中には確かに私もいて、私を疎外したり、除け者にしたりしない。

同じ時間を共有して、同じ感動を体感させてくれる……。

 

 

傷ついた娘の為に、大事な人の為に、愛した彼女の為に……臆病さを克服して全力で駆け抜け続けた馬鹿息子。

 

だからこその成長、それを疎ましく思う程腐っちゃいない。

……はは、それに、普通に格好いいじゃん。

 

 

私には出来ないことだ……アインザーム。

だから無駄に卑下せず堂々と胸でも張ってろ。

 

 

「大好きな人の理想に近づきたい、単純なことだろ。確かに金は大事だけど、その理由に比べればなんてことないさ。こんなんは所詮採石場で取れた石ころを溶かして固めたもんだ……理想を追いかける意思に及ぶもんじゃない」

 

『……すまない。お前に対して守銭奴のイメージが先行し過ぎていた、下手な建前で気を遣わせてしまったな』

 

「ったく。私は確かにお金大好きだけどな……お前らの親だ。信用も信頼も出来ないクズだが……お前らを大事に想ってることは本当だよ」

 

『言わずとも……知っている』

 

 

なんとも気恥ずかしいな。

こういうのは私のキャラじゃないからあんまり言いたくないんだけど……誤解されるのはもっと嫌だし……。

 

マキナはその生暖かい視線を止めておくれ……私はメンタルが弱いんだ。

 

 

「で、あの変身姿って何が原型なんだ?」

 

 

話を変える為にアインザームに変身後の姿について尋ねるが、マキナがヒョコっと私の視界に割って入ってくる。

 

どこか悪戯っぽい気配を感じさせ、アインザームは気まずそうに態とらしく空を見上げている。

 

 

ほほぉ……これは、面白そうだ。

 

 

「あれはですね……――」

 

 

マキナが話してくれた内容はこうだ。

 

人間に変身したいんだけど……参考になる姿とかないかなぁ〜。

出来ればマキナが格好いいって感じる姿がいいなぁ〜……チラ、チラ、え、教えてくれるの?

アインザームMAX嬉ピ〜、ってことらしい。

 

 

勿論冗談だが、アインザームから鬼のような気配が伝わってくる……。

どうやら思考の浅い部分が読み取られたようだ。

 

 

「で、マキナを助けてくれた異端審問官を真似た訳ね、若くしたのはジェラシー感じて張り合った結果だと……面倒くせぇなお前」

 

『……ほっとけ。お前よりはマシだ』

 

 

まぁ、確かに。

 

一頻り変身と仕事について話し終えると、アインザームは再び霧に包まれ中から無駄にイケメンな葬儀屋が現れる。

 

棺桶背負って、首元に異端審問官の十字架とか……私からすれば危険人物そのものだな。

 

 

だが悪くない、眼の保養になる。イケメン自体は嫌いではないのだ。

 

何気に歩くのも上手くなっている、相当練習したんだろうな……。

口が全く動いてない所を見るに、変身しても発声器官が無いから喋ることは出来ないようだ。

 

 

私はマキナにこっそり近づき耳元でコソコソと耳打ちする。

 

 

「お嬢さん……。アレどう思う?」

 

「アインには申し訳ないですが……私としてはもう少し御歳を召していた方がアインに合うと思います」

 

 

無念アインザーム。

この娘たぶん年上好みの気があるぞ。

 

だけど今更変えるようなことは出来ないだろうし……言わないでおいてやろう。

 

 

『では、私は仕事に向かう。昼までに向かわなくてはならんのでな』

 

 

そう言いながらアインザームは二本足で歩み、私達に背を向け山を降りていく。

 

黒いコートの裾が風に揺れ、背負った棺桶の装飾が陽光を受けて鈍く光った。

マキナの教育の賜物か、歩き方や姿勢には貴族みたいな気品が宿っていた。

 

 

「アイン、いってらっしゃい!」

 

「凄い背筋整えて歩くのな、生まれついての猫背の癖に……」

 

 

アインザームを見送り、マキナは家の中に戻ろうとする。

 

自由に動けるようになったマキナは大変アクティブであり、家庭菜園や掃除と日々充実した生活を送っている。

 

 

アインザームへの信頼からか、奴の仕事について心配一つしていないのが見てわかる。

だが私はアイツが仕事しているのだなんて今日が初耳だ……正直心配である。

 

あの無愛想が人間相手に商売をして、円滑なコミュニケーションを取れるとは到底思えない。

 

 

だから、戻ろうとするマキナの肩を掴む。

 

 

「ちょっと待って……お嬢さん」

 

「どうかしましたか?」

 

「アイツの仕事してる様子……気にならない?私と一緒にちょ〜と様子を見てみないかい?ほら、信用はしてても気にはなるでしょ?今なら私が連れてってあげる、安全は絶対保証するからさ」

 

「――ッ!?行きましょう!!お義母さん!!」

 

 

マキナは私の言葉を理解すると首をぶんぶんと縦に振る。

 

アインザームから仕事のことについて聞いているようではあるが、やはり実際に見てみたい気持ちはあったようだ。

 

 

フッ……すまんなアインザーム。

お前は絶対反対するだろうが……将来の嫁になる相手には職場での様子を見せておくべきだと私は思う。

 

 

なにより……ッ!私が気になってしょうがない!!

 

 

「その意気や良し!では征こう……我が義娘!!あ、体調が悪くなったら直ぐ引き返すね」

 

「――はいッ!いざいかん……です!お義母さん!あ、お気遣いありがとうございます」

 

 

こうして息子の恋人の扇動に成功した私はマキナを抱え、アインザームによる霧の感知範囲から外れた後、ゆっくり山を下っていった。

 

 

 

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