崖っぷち結束バンド   作:三十路スキー

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 山田回、続いた。
 陰隠滅滅としたぼっちざろっく。
 ガルクラかベックでやれってノリではあるけど、
 あえてぼざろでやりたいんやな。
 リアル志向を。ちょっと蛸壺めいてきたけど。


青春コンプレックス

 自宅の最寄駅から乗り込んだ電車で、ぼんやりと考える。もしもあの頃に戻れたらってさ。ほんと、私らしくない話だよね。スマホの画面に、下北沢の駐車場、あの壁の前で撮影した最初のアー写を表示する。メンバー揃っての写真なんて何度も撮影してきた。アーティスト写真なら去年もWEBサイト用に新しいのを更新した。

 でも、私にとってはあの写真が一番だ。……実は虹夏だけトリミングした写真もあったりする。10年近くになる関係の中で、スマホの中にはメンバーの画像が沢山ある。もちろん虹夏の画像が一番ある。

 あの夜、虹夏に指一本触れられなかったあの日から、夜独りで、その……シてしまうこともあるんだ。海水浴で撮った水着での集合写真、別荘での合宿でふざけ合って撮った下着姿。そして淫らな姿の想像でも。

 

 ――最低だ。私。

 

 親友をオカズにしている罪悪感がさらに劣情を駆り立てるんだ。恵恋奈の裸を見ても、乱れる姿にも何も感じなかったのに。ぼっちや郁代は友達だって思えるのに。虹夏だけは……ダメなんだ。虹夏と笑いあって、虹夏と一緒に泣いて、虹夏にたっぷり叱られた。そんな日々が愛おしい。でも虹夏は私に振り向いてくれない。

 電車は東京に近づくにつれて、それなりに混雑してきた。……切り替えないと、私。

 

 

 

 

 

「どうよ、山田ちゃん。この店のカレーうまいっしょ?」

「あ、はい。美味しいです」

 

 ぼっちみたいな反応をしてしまう私。結束バンドもお世話になったことがあるレコーディングスタジオで所属ミュージシャンのチーフみたいな仕事しているリナさん。何回か会った印象は、少しガサツだけど面倒見のいい姉御タイプ。ツンツンツンデレツンな星歌店長とは違って人懐っこさ全開。私としては距離感が近いところが少し苦手。でも音楽については確実にシビアさがある人。

 あとカレーはめちゃくちゃ辛い。私が頼んだ中辛でこれなのに、リナさんは5辛を余裕で食べている。

 

「山田ちゃん、やっぱあの話さ、一回無かったことにしよ?」

「……え?」

 

 リナさんと都内のスタジオ近くのカレー屋で話し合う。スタジオで働くって件がナシになるのは、困る。

 

「だってさ、キミバンド活動に未練タラタラじゃん」

「いや、そんなこと」

「嘘ばっかり。星歌が言ってたよ。『一番バンドに入れ込んでるのは山田だ』ってさ」

「……」

 

 図星だ。

 

「前にも言ったけどさ、スタジオの仕事はほとんどサラリーマンみたいなもんでバンド活動と両立できるほど甘いもんじゃないんよ。こっちもバンドに未練残した半端モンに来られても困るってわけ」

「……」

 

 確かにそうだ。リナさんは私の音楽的な小器用さを認めてくれたけど、それだけじゃ勤まらない。スタジオミュージシャンは同僚とのチームワーク、クライアントとのコミュニケーションも必要な仕事。簡単じゃないことは私もなんとなくはわかる。そして、何よりもバンドを抜ける覚悟が足りないことを見透かされてる……。

 

「だからさ、これ受けてみなよ。バンドで食っていきたいなら、レーベル一つクビになったぐらいで、落ち込んでる場合じゃないよ?」

 

『コニーミュージック ガールズバンドオーディション』

 

 最近は珍しいコンテスト形式の公開オーディション。音源審査と勝ち抜いたバンドによるライブ審査。優勝バンドは確実にメジャーレビューできるという。……大昔に受けた『未確認ライオット』みたいだ。

 

「……」

 

 フライヤーを真剣に読み進める。『特別審査員 大槻ヨヨコ』という文言に少し苛立ちを覚える。学生時代はライバルと言える間柄だったシデロスに大きく差をつけられたという現実。そして最近弄られキャラとしてテレビタレントの地位も確立している大槻への苛立ちも。アイツにはずっとカッコつけていてほしかった。プライベートはともかくバンドマンとしてはね。

 

「とりあえずさ、この間バンド解散するかどうかで揉めてるって言ってたじゃん? 山田ちゃんとしては本当に解散でいいのかい?」

「……来週話し合うつもりです」

「よし! ならメンバーみんなで言いたいこと全部吐き出してさ、しっかりホンネをぶつけ合ってきなよ! そんでも納得できなかったら、殴り合いでもしてこーい!」

「え、いや、殴り合いはちょっと……」

「あたしと星歌は飲みに行くたんびに喧嘩してたけど? でもその分絆は深まった。あいつの気持ちなら何でも手に取るように分かるよ。だから辞めるって言われたときは何よりも辛かった。大昔のことだけどねー」

 

 そういや、ずっと仲良しバンドでやってきたから、この間までは喧嘩の一つもしたことなかった。それでもレーベル所属出来たんだから、これが私たちのスタイル。まあ、作曲については、みんな完全に私の言いなりなわけだし。練習やバイト、ライブなんかで毎日顔を合わせても、郁代もぼっちも虹夏とも、怒鳴り合ったりブン殴ってやりたいってぐらいに腹が立つなんてことは一度も無かった。それに結束バンドの結束力には自信があるんだ。今は無名バンドだけど、それだけは日本にあるどのバンドよりも一番だと私は思っている。

 

「バンドでやることやりきってさ、それでも音楽で食っていきたいって覚悟があるならまた連絡してよ。その時は歓迎するから。もちろん、今のバンドでうまくやっていけるならそれでいいんじゃない? やっぱ山田ちゃんはジカちゃんたちと一緒にバンドしてるのが一番輝いてる」

「ありがとうございます。リナさん」

 

 ――やっぱり、私の居場所は結束バンドだ。




 うーむ、伸びない……。
 暗いシリアスに需要が無いのか、純粋に実力不足なのか……。
 しかしそんな中でのお気に入り、感想、高評価大変うれしく思います。
 多大なる感謝を!

 リアルごたごた。というか来月で仕事クビになりました。
 でも書きたい。書き続けたい。
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