崖っぷち結束バンド   作:三十路スキー

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 早くも週一更新を断念。ペース堕ちますがなんとか完結させます。


もう一度、路上ライブするんだよ!

「ごちそうさまでした。美味しかったよ、ぼっちちゃん」

「おそまつさまでした。お母さんが用意したものを温めただけですが」

 

 お姉さんと昼食を食べた後は一緒に後片付けをして、私の部屋に招待した。いつも練習している押し入れも見せた。今日は夜まで暇なお姉さんと一緒に過ごしたいと思っている。15歳にして家に初めて友達が遊びに来た日、虹夏ちゃんと喜多ちゃんが来てくれた日を思い出す。あの時は何故か横断幕を張ったり、部屋を風船で飾ったりして見事に空回りしてたっけ。今思い出すと顔が真っ赤になるけど、嬉しかったな。

 

 

 

 

 

「なるほど、ここが噂のギターヒーロー誕生の地ってわけか」

「え、あ、そ、そうですね」

「すごいな、ポスターいっぱい。それに教則本もたくさんあってさ、付箋ベタベタ。努力してきたんだなぁって」

「私にはギターしか、ありませんでしたから」

 

 扉閉じても練習できるように、お父さんが裸電球を付けてくれた。最初のギター『レスポール』はお父さんから借りた物。最初に読んだ何冊かの教則本もお父さんがくれた。それからはギターを1日6時間以上練習して、カタチになってきたらギターヒーローの動画チャンネルを作った。ポスターもスコアも買い集めて、押し入れは私の『ひみつ基地』になった。練習は楽しかった。何度も失敗したけど、少しずつ上手くなっていくことに喜びを感じた。不思議と辞めたいと思ったことは一度も無かった。

 3年間頑張ってきた。動画は人気が出てきた。コメントも沢山もらえた。でも友達は出来なかった。誰からもチヤホヤされない。当たり前だ。友達を作る努力なんて全くしてこなかったんだから。本末転倒だ。あの日偶然虹夏ちゃんに出会ってなかったら私は一体どうなってたんだろう?

 

「ねえ、ぼっちちゃん。セッションしようよ。また路上ライブやるのはどう?」

「え? でもエレキとアコギじゃ……」

「大丈夫! スーパー酒呑童子君も持って来たんだよね。ホテルにあるから志麻に持って来てもらお!」

 

 そう言うとお姉さんは志麻さんに電話した。私との路上ライブならと快く応じてくれた。お姉さんのバンド、シクハックが活動停止してから、志麻さんは個人事務所を設立してお姉さんとイライザさんのマネージャーを務めているらしい。

 

 

 

 

 

「それじゃ行こっか! ギターとエフェクターは持ってきてね」

「あ、はい!」

 

 似たような家が立ち並ぶ住宅地を抜けて、あの場所へ向かう。海沿いにある小さなステージ。土日にはたまにストリートミュージシャンなんかが演奏している。大学が近いから、パフォーマーみたいな人たちがあそこを使うことも多いみたい。

 

「久しぶりだね、後藤さん」

「志麻さん! お久しぶりです」 

 

 ジャケットにチノパン、落ち着いた格好の志麻さん。今じゃ『株式会社四苦八苦』の社長だって。機材車にベースと機材を乗せて来てくれた。

 

『イエーイ! ヒトリー! イライザダヨー!』

「イライザさん!」

 

 志麻さんのスマホからテレビ電話にイライザさんが写る。国際電話で金がべらぼうにかかるから演奏開始までは切っておくそうだけど。今は一時的に地元のイギリスへ帰っている。コスプレイヤーとアニソンバンドでの活動で人気者らしい。前会った時には、ファンの男性と付き合っているって聞いたな。

 

「やっほー! ひとりちゃんおひさー」

「ひとりちゃん! 電話くれるなんて何事かと思ったよ! また八景でライブするんだね、うれしい!」

「1号さん! 2号さん!」

 

 私に出来た初めてのファン。ファン1号さんとファン2号さん。地元が八景なのは知っていたから、ダメ元で2号さんに電話したら丁度帰省していたらしい。急な誘いだったけど、1号さんも連れて来てくれた。

 

「よーし、役者は揃った! 早速路上ライブの準備だー! おー!」

「廣井、はしゃぎ過ぎ」

 

 お姉さんはいつになく張り切っている。それを冷静にたしなめる志麻さん。お姉さんはもうお酒を飲んでないけど、昔よく見た懐かしい光景。さあ、ライブを始めよう。




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