先生とアリウス4人が第二の人生を歩む話   作:緑抹茶

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1.日常の崩壊

「先生、こんなにもらってもいいの...?」

 

「あぁ、君たちの力になれるのなら私としてもすごくうれしいからね」

 

「缶詰に、乾パンに水に、あ、それにこれは私が欲しかった雑誌じゃないですか!世の中まだまだ捨てたもんじゃないですね...!!」

 

「でもごめんね、これくらいしかしてあげられなくて...」

 

「これは私たちに与えられた罰だから先生は気にしなくていい...」

 

「ミサキ...でも、何かあったら遠慮なく私のことを頼ってね」

 

 

 

 

「先生、失礼します。」

 

「あ、おはようリンちゃん。ってあれ?珍しいね、カンナも一緒だなんて」

 

「えぇおはようございます、先生。」

 

1つ仕事を片付ければ2つ仕事が追加されるという、連邦捜査部ことシャーレ。そんな組織で馬車馬のごとく働くワンオペお兄さんこと私のもとにやってきたのは、リンとカンナという珍しいカップリング。

 

ただ彼女たちの表情はいつもと違い緊張しているというか暗い。何かあったのだろうか。

 

「今日は誰も当番に入ってなかったと思うんだけど、何かあった?まさかまだ仕事が増える感じ?先生それはちょっと勘弁してほしいな~」

 

「...」

 

「...先生には今からヴァルキューレに来ていただきます。」

 

「...へ?」

 

「単刀直入に言うと先生、あなたにトリニティで、テロリストへの武器供与に関して嫌疑がかかっています。」

 

ーーー

 

そこから私はヴァルキューレにて取り調べを受けることとなった。

 

「正直、先生がそんなことをするとは思えませんが...」

 

当初はカンナをはじめ、多くの生徒が私の潔白を信じていた。

 

もちろん私も武器供与なんて身に覚えがない。誰か、もしくはどこかの組織から、濡れ衣を着せられているのは明白。

 

そして当の私も数日もすれば無実が証明されると、そう楽観的であった。

 

 

「だから私はやっていないんだ!!!」

 

「じゃあこれはどう説明するというのです!!!!!」

 

あれから数日がたった。

 

私の潔白が明らかになるどころか事態はその逆をたどっていた。

 

カンナが私の前に出してきたのは1枚の写真。

 

それには私がトリニティの郊外でアリウススクワッドに武器や弾薬を支援している様子が写っていた。それも違法のものばかりで、中にはヘイローを破壊できるような弾薬も確認できる。

 

「...確かに私はアリウススクワッドに接触はしたよ。でも、私が支援したのは食料や日用品で違法弾薬や武器は1つも支援していない。」

 

「目の前に証拠が出ていますが?」

 

「疑うのならば私について洗いざらい調べてもらっても問題ないよ。」

 

「正直その写真が偽物っていう可能性もあるとおもうんだけど...それにその1枚だけで決めつけるのは早計じゃないかな...」

 

「周辺の防犯カメラについても複数台のデータを押収し確認しました。しっかりと武器取引の映像が映っていました。言い逃れはできないかと。」

 

数日前までは半信半疑だったカンナも、今では犯罪者であるかのような目で私を見ている。

 

「ディープフェイクということもあり得ると思うね。第一、ずっと言ってるけど私はやっていないんだ。」

 

「はぁ.....先生、正直言ってあなたには失望しました。」

 

ため息をついたカンナから出たその言葉。それが一体どういうことを表すのだろうか。

 

「...は?」

 

「これ以上、こう話していても平行線をたどる一方なのは目に見えています。だからもう、終わりにしましょう。」

 

「いや...は?」

 

「取り調べはこれにて終了です。先生には処分が出るまで自宅で謹慎していただきます。もちろんシャーレでの業務も厳禁です。」

 

本来なら勾留案件ですが、今までの功績を考慮してのことですと言われたが、そんな慈悲を与えられたとて、こっちの言い分やアリバイをまとも検証せず勝手に謹慎させるどこに考慮もクソもあるのだろうか。

 

「こんなの...こんなの横暴すぎる!!」

 

「...連れて行け」

 

「「「ハッ!!」」」

 

「こんなのあんまりだよ、カンナ!!私は何もやっていないんだ!!!」

 

 

取り調べもなかなか大変なものだったが、謹慎期間中も地獄だった。

 

取り調べの後はクロノスを通じて私が謹慎していること、あの先生がテロリストを裏で支援していたのだとあることないことの証拠とともに大きく報道された。

 

アリウスの4人が無事なのかが心配でならない。ただそれを確かめる余裕が今の自分にはなかった。

 

その証拠にSNSは常に私やシャーレのことが上位トレンドに入っていた。もちろん中身を覗いてみればそこには罵詈雑言、誹謗中傷の嵐。

 

”死ね”

 

”生きる価値なし”

 

”先生がそんな人だったなんて、最低”

 

”あはは...殺す”

 

”こんな人間に頼っていた私達がバカだった。もうアビドスには来ないで”

 

”私に会うたびに足舐めてたもんな、そりゃ納得だ”

 

”これマ?”

 

”こんな人のために当番に行ってた私が恥ずかしい。シャーレにある私の私物は処分させていただきます。”

 

そして物事は人を介せば介すほど尾ヒレがついていき、過激になっていく。

 

気づけば私は社会で立派な犯罪者とみなされ、居場所なんてなくなっていた。

 

シャーレが荒らされるような写真もSNSで出回るようになり私の精神は確実に削られていった。

 

「私が...俺が一体何をしたっていうんだよ...」

 

正直、私の冤罪を信じてくれる生徒が少数ながらでも存在すると思っていた。なのに実際はそんなことなんてなく、モモトークにも私への罵詈雑言で溢れていた。

 

こんなのまともに受け止めていたから気が狂う、そう思った俺は、通知を切ってモモトークは開かないようにした。

 

「毎日毎日、みんなのために身を削った結果がコレとは、大分情けないなぁ...」

 

これほどまでに手のひら返しをされると、なにか心にくるものがある。

 

「俺はもう、ここにいていい存在ではないのかもしれないな...」

 

 

謹慎させられて1周間ほどたったころ、連邦生徒会から呼び出しがかかった。

 

どうやら、処分が決まったらしい。

 

連邦生徒会の会議室に入るとそこにはリンを始めそれぞれの室長の姿があった。ただその視線はどれも今までとは違い、鋭く、冷たいものだった。

 

「先生、今までありがとうございました。」

 

その言葉とともにリンちゃんから受け取った書類には一言

 

”シャーレを解任の上、キヴォトスを追放処分とする。”

 

他にも長々と文章が書かれていたが、頭にそれ以上の情報は入ってこなかった。

 

「追放...」

 

「はい。あなたには今日から1周間の猶予を与えます。その間にシャーレや自宅にある私物などを整理してキヴォトスを去っていただきます。また、その際はシッテムの箱は回収しますから出ていくときにシャーレの執務室にシッテムの箱は置いていってください。」

 

「分かった...よ」

 

「あぁ、仕事の引き継ぎに関してはご安心を。すでにこちらで済ませています。犯罪者のあなたに触らせるわけにはいきませんから。」

 

犯罪者...か

 

ある程度覚悟はしていたが、面と向かってそう言われるのはかなり辛い。

 

「そう...色々と、お世話になりました。そして...」

 

「ごめんね」

 

 

ーーー

 

 

「サっちゃん、久しぶり。どう?自分探しは順調?」

 

「みんな、久しぶりだな。自分を見つけたと言うには、私にはまだまだ経験足りてない。」

 

「つまり、まだまだってことだね。」

 

社会を追われ、各地を点々としている私たち。偶然にも今日の住処と決めた場所でサっちゃんと再開することができた。

 

「あぁ、そうだ。3人とも、充電とかは大丈夫か?よかったらバッテリーがあるから使うといい。」

 

「いいんですか!!ありがとうございますぅぅ!!!」

 

「ありがとう。」

 

数日前に先生からの支援があったからなんとかなっていたが、充電については数日前からなかったものだからここで充電できるのはすごくありがたい。

 

彼女のお言葉に甘えて充電させてもらうことにした。

 

「リーダー。正直言って助かった。こんな私にもここまでしてくれて...」

 

「ミサキ。それ以上は言うな。お前も今はリーダーとして2人を引っぱっている。立派だ。」

 

「...ありがとう。....は?」

 

そう言いながらスマホをいじっていたミサキだが急に彼女が顔をしかめた。

 

「ミサキ?どうしたんだ?」

 

サっちゃんがそう聞くと、ミサキはスマホの画面をこっちに見せてくれた。

 

どうやらネットニュースの記事のようだ。

 

”速報 シャーレ業務停止 テロリストへの違法武器取引により先生無期限謹慎か”

 

「え...」

 

「せ、先生がか?」

 

「ありえない...あの人がそんなことするわけがない」

 

「こんなの嘘です、きっと何かの悪い夢ですよ!あの先生がそんな、ってまさか...」

 

もしかしてあの時のことが、こんなことになったのかもしれない。

 

「......そのまさかかもしれない。みんな、準備して。ここを離れるよ」

 

「姫、どうしたの急に。」

 

「そこに載ってる画像、先生と私たちがガッツリ写ってる。このニュースの書き方だと先生にもかなりのヘイトが向くと思うけど、中には先生だけじゃなくて私たちを本気で殺しに来る子もいるはず。」

 

私たちのやり取りを見ていたかのように遠くからニュースキャスターの声が聞こえてくる。どこかの商業ビルにあるモニターから流されているものだろう。

 

『........繰り返しお伝えします。先ほど連邦生徒会はシャーレ所属の先生がトリニティ郊外においてテロ集団に違法弾薬の供与、支援を行っていた事案が発覚したことを公表しました。』

 

『これにより、先生の無期限謹慎が決定し、シャーレ、またそれに関連する活動が全て無期限停止となる見込みとなっています。』

 

 

 

その後のキヴォトスはひどいものだった。

 

案の定、SNSは先生のことで大荒れし、誹謗中傷で溢れかえった。

 

先生に好意を寄せていた生徒は数え切れないほどいたと思っていたが、その大半の生徒が今までの態度が嘘だったかのように先生を攻撃している。

 

正直言ってみんなが彼にここまで手のひらを返せるのかが不思議でならなかった。あれだけ良くしてもらった人にここまで裏切れるなんて私には考えられないから。

 

試しにモモトークも送ってみたけど、先生からの返信はなかった。

 

多分モモトークでも口撃されているのだろう。そういうのを目に入れないようにするために見ていなんだなと考えた。

 

1日経つごとに先生の疑いを裏付ける証拠が次から次へと見つかっていき、メディアはそれを大々的に報道する。そうして先生のことを更に嫌悪する生徒が増える一方だった。

 

もちろんと言ったらそうかもしれないが、私たちも多くの子たちから攻撃を受けるようになった。

 

ニュースとかの画像にガッツリ映っていたからだろう。

 

「はぁ、はぁ...はぁ....」

 

「クソっ、一体どうしてこんなことに...」

 

「うわぁぁぁぁん!!!私が一体何をしたっていうんですかぁぁぁ!!」

 

「ヒヨリ、ちょっとうるさい!」

 

「ごめんなさぁぁぁい!!!」

 

 

「そこの路地を曲がったら私が煙幕を張る。その隙にどこかの建物にでも入って撒こう」

 

そうしてなんとか廃ビルに逃げ込むことができた。

 

こんな生活が続いて1週間。

 

先生からもらったものや、サっちゃんが用意していた物資はとっくのとうに枯渇し、弾薬もついさっきなくなった。

 

私たちは疲労も相まってかなりボロボロ。薄々気づいてはいたが、この世界に私たちの居場所はない。

 

......このまま死ぬしかないのかな。

 

そんな事を考えていると、何やら外が騒がしい。外を見ると近くのビルに設置されている大型ディスプレイにみんなの視線が釘付けになっていることに気づいた。

 

そこには

 

”速報 シャーレ先生解任へ 後任は設けず、AIを導入 業務効率化を推進”

 

先生が先生を辞める。私の鼓動が速くなっているのが嫌でも分かった。

 

それが意味するのは、これから先生と会える可能性が低くなるということ。下手をすればもう二度と会えなくなるかもしれない。

 

たしかにニュースでは解任としか情報は出てこなかったが、先生はそのまま消えてしまう、そんな気がした。

 

「ねぇみんな」

 

行かなきゃ

 

「今からシャーレに行こう」

 

会わなきゃ

 

「姫...正気?正直言って今のキヴォトス、特にD.U周辺は急速に治安が悪化してる。多分戦闘になれば私たちに勝ち目なんてない。リスクしかないけど、それでも行くの?」

 

いなくなってしまう、その前に。

 

「ここで先生に会えなかったらきっと後悔すると思う。もしみんなが行かないなら私一人だけでも行くから。」

 

「姫ちゃん...」

 

「...はぁ、分かった。みんな、準備して。可能な限り人目を避けて行く。」

 

「ありがとう、みんな」

 

「何を言ってる、みんな家族だ。今更遠慮なんて不要だろう。」

 

 

私たちが出発したのは日が昇る前だったが、D.U、シャーレにつく頃にはすっかり夜になっていた。

 

幸いにも戦闘に巻き込まれることなくシャーレに到着することができた。

 

「やっと着いたな。しかしいつも以上に時間がかかってしまった...」

 

「仕方ない。どこの地域も治安が悪くなってるからいつものようにはいかなかっただけ。」

 

私たちの眼の前に鎮座する連邦捜査部、シャーレ。ただ、以前のような姿はなく、今残っているのは散々荒らされた跡が残る痛々しい姿であった。

 

「これがシャーレ...」

 

「前に当番に来たときよりも大分荒れていますね」

 

「荒らした奴がいるんでしょ」

 

「とにかく中に入ってみよう。ちょうど執務室あたりに電気がついてる」

 

ーーー

 

外があれほどに酷かったから中についてもある程度予想はしていたが、正直かなりひどいものだった。

 

今までのきれいな廊下ではなく、壁には落書き、電灯やガラスは割れ、床にはいろんなものが散乱している。

 

人とはここまで酷くなれるものなのかと感じた瞬間でもあった。

 

「これは相当だな..」

 

「先生が心配です...」

 

コツコツと私たちの足音だけが反響する。いつもなら気にも留めないが、今日はここの不気味さをより掻き立てている。

 

どれだけ歩き、階段を登っただろうか。ようやく執務室が見えてきた。

 

ギリギリ自動ドアのセンサーに引っかからないところで一回足を止める。

 

いつもなら普通に入っていく執務室。でも今は少し怖かった、私たちのせいでこうなったのだと怒られるかもしれない、罵倒されるかもしれない、と。

 

「みんな、行こう。」

 

ドアをくぐり執務室に入る。

 

確かにそこに先生はいた。

 

「せんせ...?」

 

でもその見た目はボロボロで今にも倒れそうな、見ていられないような姿だった。

 

 

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