一部性の表現、ご注意を(シリーズにr-15タグは付けています。)
アロナ→アロ
プラナ→プ
アロ「先生!今日はどこに向かってるんですか?」
「今日はね、アリウススクワッドのみんなに会いに行くんだ。」
トリニティ自治区の外れ、きらびやかな町並みを抜け、古い建物がところ狭しと並ぶ細い道を抜けていきます。
プ「もしかしてここですか?人がいるようには到底見えませんが...」
「アツコが言うにはここらしい。とりあえず入ってみようか。」
そうしてたどり着いたのはとある廃ビル。窓ガラスも割られ、落書きもひどい。どうやらアツコさんたちはここにいるみたいです。
コツンコツンと先生の足音がビル全体に反響する。昼間なのに中は暗く不気味です。
「アツコからだ。3階にいるみたい。」
プ「先生。誰かに襲われる以前にこのビルは老朽化が激しいです。くれぐれも怪我とかをしないように気をつけてください。」
「大丈夫だよプラナ。」
そう言って先生は階段を登っていきます。
「あ、多分あれだ。おーい、みんな!」
ア「あ、先生。こっちこっち。」
どうやら無事に合流することができたようです。
「はい、今日の差し入れ。色々持ってきたから確認してね。」
そう言って先生は両手、さらには背中のリュックをアツコさんたちに渡します。
水に食料、雑誌、モバイルバッテリー。出発前に先生が色々入れていたのを覚えています。
ア「先生、こんなにもらってもいいの...?」
「あぁ、君たちの力になれるのなら私としてもすごくうれしいからね」
ヒ「缶詰に、乾パンに水に、あ、それにこれは私が欲しかった雑誌じゃないですか!世の中まだまだ捨てたもんじゃないですね...!!」
差し入れがみなさんから好評のようで先生から嬉しそうな表情が漏れます。
「でもごめんね、これくらいしかしてあげられなくて...」
ミ「これは私たちに与えられた罰だから先生は気にしなくていい...」
「ミサキ...でも、何かあったら遠慮なく私のことを頼ってね」
アロ「いやぁ、先生!差し入れ、好評のようでよかったですね!」
「本当だよ。あの子達も私から見たら大切な生徒たちだからね。正直な話、もっと頼って欲しいんだけど....」
プ「彼女たちにもきっと色々あるのでしょう。先生はできる最善のことをしていると思います。」
「そうだね。私もそう信じてる。はぁ...帰ったらまた書類仕事か...嫌だなぁ」
アロ「私たちもがんばってサポートしますから!明日に持ち越すと昨日の私なんでやらなかったんだ!!って後悔しちゃいますよ!」
「それもそうだね。...がんばりますかぁ」
そう言いながら私たちはシャーレへの帰路につきました。
ー
「2人ともおはよう。今日も1日がんばろうね。」
アロ「先生!おはようございます!」
プ「おはようございます、先生。先生あてのメールですが、返信が必要なもの重要度が高いものを分類しておきました。」
「おお!プラナは本当に気が利くなぁ。ありがとう、書類仕事の合間に確認していくよ。」
プ「褒めても何も出ませんよ。」
アロ「でもプラナちゃんの口角が少し上がっています!」
プ「アロナ先輩、余計なこと言わないでください。次はグーですよ。」
アリウスのみなさんに差し入れをしてから数日後。
何気ない1日、大量の書類仕事に追われる先生とそれをサポートする私たち。
今日もいつも通りの1日になると思ってました。
「先生、失礼します。」
「あ、おはようリンちゃん。ってあれ?珍しいね、カンナも一緒だなんて」
「えぇおはようございます、先生。」
仕事を始めて数十分、まだ朝も早い時間です。今日の当番は午後からのはずですが、カンナさんとリンさんがシャーレにやってきました。何かあったのでしょうか?
「...先生には今からヴァルキューレに来ていただきます。」
ヴァルキューレ?
「...へ?」
「単刀直入に言うと先生、あなたにトリニティで、テロリストへの武器供与に関して嫌疑がかかっています。」
...え?
ー
そうして先生はヴァルキューレに連行され、取り調べを受けることになりました。
多分、数日前にアリウスのみなさんに接触した事実が間違って伝わっているようです。
もちろん先生もアリウスのみなさんと接触したことは認めながらも違法武器は提供していないことを必死に訴えていました。
「だから私はやっていないんだ!!!」
「じゃあこれはどう説明するというのです!!!!!」
ですが、どういうことでしょうか。先生が武器を支援している映像が出回っているようです。多分、何者かによるディープフェイクのように思います。
さらに良くなかったのが、接触したのがエデン条約を破壊したアリウスのみなさんであったこと。どうやら先生とアリウスが結託し、キヴォトス転覆を企んでいると思われているみたいです。
少し考えれば分かることですが、先生はそんなことをするような人ではありません。
ですが、そのような証拠になり得るものが出てきている状況。カンナさんの目つきがさらに鋭くなります。
「これ以上、こう話していても平行線をたどる一方なのは目に見えています。だからもう、終わりにしましょう。」
「いや...は?」
「取り調べはこれにて終了です。先生には処分が出るまで自宅で謹慎していただきます。もちろんシャーレでの業務も厳禁です。」
ついに先生は犯罪者というレッテルを貼られ、自宅に謹慎となりました。
ー
アロ「先生!元気出してください!先生は無実なんですよ!きっと冤罪だって証明されるはずです!」
プ「肯定。アロナ先輩の言うとおりです。今しばらくの辛抱です。少なくとも私たちは先生の味方です。」
ここは先生の自宅。先生はずっと落ち込んだままです。
「...ねぇプラナ。今のネットはどうなってる?」
プ「...先生のことがトレンド上位を占めています。そしてその大半は先生への失望の声や誹謗中傷です。」
プラナちゃんに言われ、SNSを覗いた先生。ただでさえ暗かった顔が余計に暗くなってしまいました。
「そう...じゃあモモトークとメールは?」
プ「正直言って、今の先生の状態で見ることはおすすめできません。それでも見ますか?」
「...うん。お願い。」
プ「モモトークは罵詈雑言の嵐です。少なくとも先生を信じる声は皆無。ただアリウススクワッドのみなさんからの着信は無し。恐らく返信している状況に無いのかと。」
「...」
プ「先生のシャーレドメインのメールですが、主に各学園からですね。セミナーにティーパーティー、風紀委員会に万魔殿。もう来なくて良い、生徒を当番には行かせないという絶縁メールばかりです。」
「分かった。もういいや。それ系はもう見ないようにするよ。」
プ「...それが最善かと。」
アロ「先生...」
先生...今すぐにでもシッテムの箱から飛び出して先生のことを抱きしめてあげたい。よしよししてあげたい。でもここから出られず、何もできずただただ励ますことしかできない自分が本当にもどかしい、無力なんだと感じました。
同時にここまで手のひらを返すのかものなのかとこの世の不条理を呪った。
プ「先輩」
アロ「どうしましたか?プラナちゃん」
プ「これなんですが....」
数日後、そう言ってプラナちゃんが見せてきたのはアツコさんとミサキさんからのモモトーク。内容を見るに敵意は無いようです。むしろ心配していることと、追われていることが書かれていました。
プ「先生に見せるべきでしょうか?」
アロ「...正直先生、相当病んでいてむしろ見せるべきでは無い気も...」
プ「...」
アロ「...やめましょうか。これを見て余計に自身を責めるかもしれません。」
プ「...そうですね。」
この1週間で、先生は以前の姿が見る影もなくなってしました。髪はボサボサ、目の下にはクマ、風呂もまともに入っていないようです。ごはんも1日に1食食べるかどうか。死んでしまわないかすごく心配です。
ああ、どうか神様、お願いします。先生を...どうか先生を助けてください!!!
ー
運命って残酷ですね。
先程先生が連邦生徒会に呼び出されました。どうやら先生の追放が決まったようです。
先生によると1週間以内に荷物をまとめて出ていかないといけないようです。
「ごめん、アロナ、プラナ。追放だって」
プ「そんな...ありえません...こんなこと」
アロ「そうです!きっとなにか方法があるはずです!!」
「もういいんだ2人とも。アロナたちも聞いてたでしょ。リンちゃんがなんて言ったのか。犯罪者だってさ。」
「もうここには俺の居場所は無いんだ。仮に冤罪が証明されても以前のような関係には戻れない。」
アロ「先生...」
「アロナもプラナもありがとうね。俺のそばにずっといてくれて。」
プ「え?」
先生?何を言ってるんですか?私たちは先生がどこに行こうとずっとお供しますよ?
そんな言い方...まるでお別れみたいな言い方じゃないですか。
「シッテムの箱、置いていかないといけないんだって。」
プ「否定、そんな...許しません。行っちゃダメです。」
「ごめん。」
アロ「先生!!!ダメです!まだ行かないで!!!」
「本当にごめん。2人とも、元気でね。...さようなら。」
その一言とともにシッテムの箱の電源が切られました。
そこから先生は帰ってくることはありませんでした。
ー
数日後、シッテムの箱は連邦生徒会によって回収され、何度もシッテムの箱にアクセスしようと試みがなされました。
恐らく連邦生徒会がどうにかしようとしたみたいです。
ですが、シッテムの箱は先生がいないと起動すらできない。とうとう連邦生徒会は匙を投げ、結局シャーレの執務室に放置されることになりました。
ーーー
先生がいなくなって3ヶ月がすぎました。
私にもプラナちゃんにももう以前のような活気はありません。
昔は大好きだったいちごミルクもいつからか、喉を通らなくなりました。
アロ「先生...」
最初の1ヶ月は先生が一体どこに行ってしまったのか、あらゆる手段を使って探していました。
先生はしょっちゅうスマホをどこにやったか忘れてしまう人でした。そのために、最悪探せるようにとスマホ、シッテムの箱、シャーレの事務PCに位置情報を同期するよう設定していました。
それを頼りに探してもみましたが、特定することはできませんでした。
最初はプラナちゃんも協力的で積極的に捜索を手伝ってくれました。
ですが、日を重ねるにつれてプラナちゃんの元気はだんだんなくなっていきました。最初は表情が消え、次第に私との受け答えもままならなくなり、とうとうある日、プラナちゃんは私の前に姿を現さなくなってしまいました。
アロ「プラナちゃーん!どこですかー!」
プ「先生........先生..........」
プラナちゃんの声。小さいですが、確かに聞こえました。
声の聞こえる方に歩を進めます。プラナちゃんの姿が見えました。ですが、プラナちゃんに声をかけることはできませんでした。
プ「先生...せんせ...あっ....っ、ぁ、あぁああ...っ!」
声とともに聞こえてくる水音。
瞬時に私はプラナちゃんが何をしているのか察してしまいした。
多分プラナちゃんももう限界...いいえ、限界を超えていたんだと思います。
気が狂わないように自分を守るためにやっていたのでしょう。
アロ「先生....どこ行っちゃったんですか.....」
アロ「言ったじゃないですか、私たちは先生の味方だって。それなのに....なのに....」
目の周りが熱い。
アロ「私たち捨てられちゃったんですかね...ははっ....」
涙が溢れてくる。落ちた涙が床に吸い込まれていく。
止めないと。先生がまた戻ってきたときに笑って迎えないと。
アロ「あ...あれ。止まらない....。うまく.....笑えません。どうして....でしょう....」
先生...お願いです。
アロ「あ.....あああ.....」
私たちには先生しかいないんです。また会いたいです。またお話して笑いあいたいです。
アロ「う....あ....」
もうワガママも言いません。先生の言う事も何でも従います。
アロ「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
だからどうか、どうか....お願いします。
また、戻ってきてください。
ーー
プ「また失敗....」
これで何回目だろうか。先生の使っていたスマホの位置情報。
Not Found.
もう見慣れてしまった文字だ。
先生はきっとキヴォトスの外に出ていってしまった。だから、ここからではもう探せない。
分かってはいるが、頭がそれを受け入れようとしない。
ある時ふっと帰ってくるんじゃないか、そうやってかすかな希望を抱いてしまう自分がいた。
先生がいなくなって1ヶ月。アロナ先輩も私も必死だった。でも手がかりは何もつかめずにいた。連邦生徒会は先生の後任を設けることなくAIを使うと発表しており、その公言通り、シャーレの端のスペースにはサーバーが何台も設置された。
まるで先生がいたことを認めたくない、その痕跡を消さなければと言わんばかりに。
そこからさらに1ヶ月。先生を見つけるよりも先に私の心が限界を迎えてしまった。
プ「先生.........先........生」
私の手は股間にあった。
私の体から発せられている水音と私の声だけが響く。
壊れてしまった私が取った行動は、自慰に逃げることだった。
朝起きてから自慰行為、昼も自慰行為、夜も力尽きて眠るまでずっと自慰行為。
全部先生のことを考えながらやっていた。
プ「せんせ.....っ、ぁ、あぁああ...っ!」
昔の先生のサポートをしていた私はもう死んだ。今あるのは過去にすがりついて股をいじる情けない私だけ。
先生の捜索も諦めた....なのに先生のことは忘れられない。なんて傲慢なんだろう。
何百何千を超える再試行。シッテムの箱のOSとしての誇りも演算能力もすべてがゴミのように積み重なっていく。先生がいなければなにもかも無意味なのだ。
プ「――先生、私は...もう、使い物になりませんよ。」
言葉が漏れる。でも止められない。
プ「こんなゴミでも、もう一度頼ってくれますか?プラナは気が利くなぁって。」
遠くでアロナ先輩の泣く声が聞こえてくる。でももうどうする気も起きない。
プ「....先生、見てください。先生がいないだけで私たちはいとも簡単に壊れてしまいました。」
先生には届かないはずなのに
プ「先生がいないだけでこんなに狂ってしまうなんて。」
プ「私のお願い...聞いてくれますか?」
誰もいない空に向かって私は言葉を紡ぐ。
プ「もう一度、一度だけでいいです。ここに戻ってきてください。そうすれば私も踏ん切りがつくと思います。」
プ「だから......だから...」
プ「........」
プ「先生に会いたいです......」
ーーー
"まもなく2番線から通勤特快東京行きが発車いたします。駆け込み乗車はおやめください..."
「はぁ...はぁ...なんとか間に合った...」
駆け込み乗車をやめろというアナウンスを聞きながら駆け込むことでなんとか電車に間に合った。
これならギリギリ始業前には会社につくことができそうだ。
とりあえずYouTubeでも見て時間潰すか...
そう思って、カバンに放り込んだスマホを取り出した。
「...やべ」
電車内なのに思わず声が漏れる。
確かに持ってきたのはスマホだ。でもそれはキヴォトスで先生をしていたときに使っていたスマホ。こっちではネットも繋がらない、ただの文鎮と言っても過言ではない。
iPhoneを買ったときに電源落としたはずなのに、走っていた衝撃で電源がついてしまったみたいだ。充電は3%。電源落としていたとはいえ、逆によく電池持ってるなと感心してしまった。
懐かしい、アロナとプラナを壁紙に設定していたんだっけ。
キヴォトス今どうなってるのかな。一瞬そんなことも頭をよぎったが、生徒は皆、手のひらを返して俺のことを犯罪者と呼んだ。
そんなこと、もうどうでもいいじゃないか。
それよりも今はこっちでの生活のほうが大切だ。
....でも、アロナとプラナ、あの2人元気にしてるかな。
”本当にごめん。2人とも、元気でね。...さようなら。”
あの時冷たく突き放してしまったことを正直言って後悔している。アロナたちは俺のことを信じてずっとそばにいてくれた。
彼女たちも何らかの形でこっちに連れてくればよかったのに。本当に不誠実な男だと思う。
...今日は1日スマホ断捨離か。
そう言って俺はまたスマホをカバンに戻す。目を閉じながら会社の最寄駅まで過ごすことを決め込んだ。
ー
先生がスマホをカバンに放り込んで数分後
カバンの中でアロナとプラナの壁紙が突然黒いコマンドの画面へと切り替わる。
....
Searching Network....zoftbanc mobile network
Connecting....Received invalid response
再試行シテイマス....無効ナ応答ヲウケトリマシタ
再試行しています....無効な応答を受け取りました.
通信プロトコル非常変換システム起動....
変換に成功しました.
zoftbanc mobile networkに接続しました.
................
SCHALEofcPC01を検索します....位置情報が見つかりません.
再試行しています....位置情報が見つかりません.
Shittimを検索します....位置情報が見つかりません.
................
再試行しています....位置情報が見つかりません.
再試行しています....位置情報が見つかりません
強制接続を開始します....
警告:次元境界線が不安定です....未定義の経路を使用します.
強制接続が成功しました to Shittim
位置情報を収集しています....
................
無効な応答を受け取りました.
再試行しています....35.655425,139.339275
解析しています....座標が既存のマップデータに存在しません
検索しています....
日本 東京 八王子市
位置情報の収集に成功しました.
同期しています....
................
未定義の情報が含まれています.再試行しています.
................
................
................
Shittimと同期が正常に完了しました.
....Shittimとの接続が切断されました.
刹那、スマホの電池がなくなったのか画面が暗転した。