先生とアリウス4人が第二の人生を歩む話   作:緑抹茶

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12.「見つけた。」

 

プ「........え?」

 

突然のことだった。今までNot Foundしか出なかった文字が消え、数字の羅列が表示された。

 

プ「.......あ。ああ.......っ」

 

続いて出てきたのは文字はプラナが知らないものだった。でもそれが地名を表していることは容易に理解できた。

 

プ「先輩!アロナ先輩!来てください!先生が、先生が........っ!!」

 

 

アロ「これは...地名...ですか?」

 

プ「一体どうしてかは分かりませんが、先生のスマホが同期されました。どうやらその位置情報みたいです。」

 

アロナがその情報に目を通す。

 

そこには

 

35.655425,139.339275

日本 東京 八王子

最終更新:7時間前

 

アロ「これってはち...たまご?ですか?うーん...読めない...」

 

プ「読み方はともかく...ですが、これの受信が7時間前。これは...」

 

2人は顔を見合わせる。

 

プ「先生は生きている。」

 

アロ「ってことですよね?」

 

アロナとプラナの目に少し光が戻る。

 

アロ「でも...ダメです。これを知ったところで、そのにほんって場所がそもそもどこなのか全く分かりませんし、まして行くことなんて...」

 

アロナの顔がまた絶望へと変わっていく。

 

プ「結局は八方塞がり...ですか。」

 

プラナもまた顔が暗くなる。

 

プ「この状況が終わるのはただ1つ」

 

プ「.......先生がまたこっちに来てくれることです。」

 

泣きそうな顔でプラナはそう呟いた。

 

 

深夜遅くのシャーレ執務室。すっかり埃を被った1台のパソコンがひとりでに起動する。

 

モニターには東京 八王子の文字とともに同期された情報をもとに1つのピンが表示されたのだった。

 

ーーー

 

ホシノ→ホ

シロコ→シ

ノノミ→ノ

セリカ→セ

アヤネ→アヤ

 

『先ほど連邦生徒会はシャーレ所属の先生がトリニティ郊外においてテロ集団に違法弾薬の供与、支援を行っていた事案が発覚したことを公表しました。』

 

シ「ん!先生はそんなことしない。これは連邦生徒会の陰謀、連邦生徒会を襲う!」

 

アヤ「シロコ先輩、とにかく落ち着いて...」

 

ノ「シロコちゃん、それは暴論ですよ~?でも確かに先生がこんなことをするとは思えませんが...」

 

セ「そうよ!これはきっと何かの手違いよ!」

 

ホ「.......」

 

本当に突然だった、何気なくつけていたテレビ。クロノスのアナウンサーが先生の事案を報道する。対策委員会のみんなは口々に先生の無実を口にしている。

私だって先生がこんなことをやるはずがない、そう信じていた。でも心の奥底には大人への不信感も同時に芽生えていたのだった。

 

 

『連日お伝えしているシャーレの先生の武器供与についての続報が入ってきました。ヴァルキューレ警察学校は先程、トリニティ地区郊外において先生とアリウススクワッドメンバーの武器取引の映像を公開しました。映像を見る限り、確かに武器と弾薬の箱が手渡されているのが分かります。映っている武器につきましても、ミレニアムではすでに所持が禁止、トリニティにおいてもまもなく違法となる武器であることが分かります。』

 

『公安局、カンナ局長によりますと、ヘイローを持つ人間であっても殺傷性の高い武器であると指摘。ヴァルキューレ内部でもかなり問題視されているものばかりであると言及しており、先生の行動については犯罪やテロリズムを助長しかねない重大事案であると受け止めているとコメントしております。取り調べにおいて先生は容疑を否認し続けているとのことです。』

 

ノ「先生...」

 

セ「そんな...嘘よね?先生がこんなことしてるなんて...」

 

シ「ん.....ん....」

 

ホ「ははっ.....やっぱり先生もそうだったんだ....」

 

先生のニュースから数日が過ぎた。先生の犯行について次から次に新たな証拠が発表されていく。

先生の無実を信じる気持ちよりも先生に対する不信感が私の心の中を支配していく。

 

次の日のニュース。これが私のすべてを決定づけた。

 

『速報です!ヴァルキューレと連邦生徒会が共同声明を発表するようです。こちらが中継です!』

 

そういって画面は連邦生徒会ロビーへと切り替わる。そこには会長代行のリンと公安局長のカンナ姿があった。

 

『みなさんもご存知の通り、先生の事案についてお伝えしたいことがありまして本日は会見を開かせていただきました。』

 

そう発言したのはリン。それに続けてカンナが口を開く。

 

『シャーレの先生とアリウススクワッドのつながり、その中でやり取りがされた違法武器の数々。これについて我々は1つの仮説を導き出しました。』

 

カンナは少しの間を置くと一言

 

『先生はアリウススクワッドと結託してキヴォトスを転覆しようとしている可能性があります。』

 

アヤ「そんな...嘘、いや...でももしかして先生...本当に...?」

 

セ「こんな...こんなこと...先生は私たちを騙してたってこと!?」

 

ノ「.......」

 

シ「ん.....先生....ありえないよ....先生.....」

 

対策委員会のみんなの間にも先生への疑い、不信の色が強くなる。

そんな中、私の心はもう先生への失望、不信で染まりきってしまった。

 

ホ「.....そういうことか。」

 

アヤ「ホシノ先輩?」

 

ホ「先生はね、おじさんたちを騙してたんだよ。物資の支援もカイザーへの殴り込みも全部ぜーんぶパフォーマンス。自分の信頼を積み上げていくための踏み台だったんだ。」

 

シ「先輩、それは先生への侮辱。確かに今のこれは悪いこと。でもきっと反省してまた......」

 

ホ「本当にそう思ってるの?先生も悪い大人たちの1人だったんだよ。悪い大人が反省するとでも思う?先生...いや、アイツも一緒。」

 

ノ「アイツってホシノ先輩.....」

 

ホ「いい?私たちは先生にいいように使われていたんだよ。それもエデン条約をめちゃくちゃにしたアリウスのみんなと繋がっていたとは、私も詰めが甘かった。まぁ、そんな悪事がヴァルキューレの奴らによって白日のもとに晒された。それで一件落着。これで良かったんだよ。」

 

4人「......」

 

 

そのまま先生はキヴォトスの外へと追放が決まった。後任の先生は設けないようで代わりにAIを導入するという話らしい。

その1ヶ月後、連邦生徒会から1台のタブレットが支給された。

 

どうやらこれが噂のAIらしく、ミレニアム全面協力のもとで作られたとのこと。

このAIはとても優秀だった。

 

9億円もの借金問題について、私たちでも考えつかなかったような提案をして今までは利子の返済でいっぱいいっぱいだったのが元本の返済に手をつけれるまでに至った。

 

だが、何かが足りなかった。

確かにコイツは凄い。それは認める。でもあまりにも合理的すぎるのだ。私たちの感情は考えることなく目標達成のための最短ルート、理にかなった方法を常に提示し続ける。

 

....感情、温かみがまったくなかった。昔の先生のような。

 

ホ「っ!」

 

またアイツのことを考えてる。アイツは私たちのことを裏切った犯罪者、クズなのに。

 

 

そこから2ヶ月がすぎたあたりだろうか、AIの使い方にも慣れ、アイツのことも忘れかけていたときのことだった。

 

『速報です。3ヶ月前に違法武器取引の容疑でキヴォトスを追放処分となったシャーレの先生ですが、これが無実、冤罪であったことが発覚しました。連邦生徒会およびヴァルキューレは記者会見を開き本件について謝罪しました。』

 

ホ「.......え?」

 

今なんて言った?アイツが無実...だった?じゃあ別に私たちは先生に騙されていたわけでもいいように使われていたわけでもなかった?

映像ではカンナとリンが頭を下げて謝罪している。

 

嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ。

 

セ「じゃ、じゃあ私たちは何の罪もない先生をただただ偽物の情報で責め立ててたってこと...?」

 

セリカちゃんが呆然としている。

 

アヤ「そんな....ごめ、ごめんなさい先生.....」

 

アヤネちゃんは先生に謝罪の言葉を言い続けている。

 

『ヴァルキューレ関係者によりますと、BlackSuitと名乗る男からミレニアムのヴェリタス、特異現象捜査部及びヴァルキューレ公安局にメールがあり、ニュースで報道されている映像が何者かによって改ざんされてものであるとの指摘があったそうです。』

 

『ミレニアムが解析を行ったところ、確かに先生の腕と手首の間に通常ではありえない映像のズレを確かに認めたとのことです。その他、証拠として報道された映像の大半にも似たような改ざんがなされていたとの情報も入ってきています。』

 

シ「........先生....うう.....」

 

シロコちゃんは泣いている。

 

ノ「ごめんなさい先生、私たちだけでも先生に寄り添っていれば.....」

 

ノノミちゃんは懺悔の言葉を口にしている。

 

ホ「そんな....嘘.....でしょ?」

 

ホ「まただ。また私は大切な人を守れなかった。それも今度は自分の手で手放したんだ....」

 

そこからのニュースは先生の話題で持ちきりだった。

 

ある日、この犯人がカイザーであることが判明した。どうやら先生を失脚させて自分たちがキヴォトスを支配することを目論んでいたらしい。

そんなときに先生がトリニティ郊外にいるのを兵士の一人が発見。カメラをハッキングしていたらアリウスとの接触の映像が録れた。それを改ざんすれば先生も失脚するとの上層部の思惑だったそうだ。

 

そこからの私たちの行動は速かった。

 

アビドス以外にもトリニティ、ゲヘナ、ミレニアム....挙げていけばキリがないほど、多くの学園がカイザーを襲撃した。

襲撃先は本社だけではなく、子会社や工場、倉庫に至るまでカイザーと名がつくあらゆる施設に及んだ。

 

その結果、カイザーは壊滅。キヴォトスからカイザーという組織は消え、多くの社員も消されるという結果で終わった。

 

私たちの借金もカイザー消滅に伴って無くなった。

 

アヤ「借金無くなっちゃいましたね......」

 

ノ「本来なら喜ばしいことなんですが....」

 

セ「何かが足りないのよね....」

 

シ「セリカ、その答えは簡単。先生がいないから。先生が見たらどう思うかな....褒めてくれるのかな....」

 

借金が0になり、アビドスにも未来が開けた。

カイザーというしがらみも消え、平和が戻ってきたはずだった。

 

ホ「......」

 

みんなが帰った後の教室。私は自分の手を見つめていた。

 

ホ「この手で、先生を追い出したんだ。この口が先生のことを罵倒したんだ。」

 

この事実が鋭いナイフのように突き刺さる。

 

ホ「どうして.....どうして、私の大切な人に限ってさ」

 

ホ「冷たい言葉で突き放してしまうんだろう。そして気づいたときにはもう手遅れ。取り返しのつかないことになってる。」

 

人は時に耐えがたい、受け入れがたい事実に直面した時に、その事実を歪めることがある。

 

ホ「違う。先生はあんなことをする人じゃない。確かにちょっと抜けているところはある。だけど優しくてお人好しで、生徒のためなら命でさえもためらいなく差し出してしまう。先生が自分の意思であんなことするはずがない。」

 

そう思うと、心の中の霧が晴れ視界がひらけたような感じがする。

 

ホ「そうか......。そうだよ、先生は騙されていたんだ、あのアリウスに。優しさをつけこまれて、無理やり協力させられていたんだ」

 

ホ「待っててね、先生。今、助けに行くから。先生を騙すクズどもは、おじさんが全部片付けてあげる。そうすればさ、またあの頃みたいに、ここで笑い合えるよね?」

 

ホシノは深夜、誰にも告げずにシャーレへと向かう。アビドスの「盾」ではなく、アリウススクワッドを葬り去るための「矛」として。

 

 

今のシャーレ、日中は生徒たちでごった返しているという。ただシャーレの入口は固く閉ざされ、誰も入ることができないようになっている。

じゃあどうして私はそんなシャーレに出向いたかって?

 

昔、先生に教えてもらったことがあったんだ。普通の出入り口とは別の入口があるって。

私はシャーレの裏側に回り、シャーレのゴミステーション、ゴミ袋の山の前に立つ。

 

ホ「よし...ついた」

 

ゴミ袋をどかしていくと、シャーレには似つかわしい錆びた鉄の扉が出てきた。隣の機械に私の学生証をかざす。

ピピッという音ともにロックの外れる音がした。

 

ホ「こりゃあ、かなり荒れてるね。連邦生徒会もきれいにすればいいものを」

 

シャーレの内部はところどころ荒らされた....いやほぼほぼ荒らされた形跡しかなかった。

窓ガラスも割られ、壁や天井には落書きの跡。

 

ホ「やっと執務室についた...エレベーターが使えないのはこりゃ相当だね」

 

何十階という階段を登りきり、私はようやく執務室前までたどり着く。

ここになにかあるといいんだけど。期待と不安が混ざりながらも私は執務室の中に足を踏み入れた。

 

 

埃っぽい執務室。人の出入りがあまりないことが容易に想像できる。

入って真っ先に目に入ったのは隅にあるサーバーラック。これが私たちに支給されたAIの心臓だと一目でわかる。

 

だが、今回の目的はそれではない。

何か手がかりはないのかと部屋を見回してみる。すると、1台のパソコンが青い光を放っている。

 

あれは、先生がよく使っていたパソコンだ。

 

ホ「...っ!」

 

椅子に座って画面を見てみると、見たことのない列島に1つの赤いピンが示されている。

その下に表示されてる地名は少なくとも私は聞いたことのない地名。

 

私はその文字列を指でなぞる。愛おしそうに、そして獲物を定めるように。

 

ホ「.......見つけた。」

 

直後、静寂に包まれた執務室に、耳を裂くような乾いた銃声が数発響いた。

 

先生の痕跡を宿した唯一のモニターが火花を散らし、砕け散る。

他の誰にも、先生を追わせはしない。その場所へ行くのは、自分1人でいい。

 

その日、小鳥遊ホシノは、キヴォトスから姿を消した。

 

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