「と、君たちは年齢的には高校生なので、学校について何かしらの選択肢から選んでもらうことになります。」
ア「その選択肢とは...?」
「一つは全日制、まあ大半の高校生が通う高校に入ることだね。編入できるのならばそれに越したことはないんだけど...それが無理だったら下の年の子達が同級生になる。特にサオリなんかは」
ア「確かにサっちゃんは17だもんね。...いや、今年で18か。」
「もう一つの選択肢は定時制、通信制の高校。」
ヒ「そんなのもあるんですね...」
「定時制は夜に通う学校。通信制はスクーリングって言って学校には決まった日に行き、それ以外は家で課題をやったりする。」
「この2つについては色んな年代の人がいるからさっきのようなことを気にしなくてもいい。もちろん高卒の資格も取れる。」
サ「なるほどな...」
「最後にもう一つ。」
サ「まだあるのか?」
「あるんだな~これが。それが高卒認定試験、いわゆる高認というやつだ。」
ミ「それで?」
「これは高校には通わず、試験を受けてそれを突破することで高校卒業するに値する学力を持っていることが認定されるもの。特に年齢制限はなかったはずだよ。」
「でもこれを取ったとしても高卒の資格は貰えない。高校に行かず、大学に進学する場合のものだね。その分結構難しいらしいけど」
サ「一応、どの選択肢を取ったとしても大学には進学できるのか...?」
「進学できるかは大学の入試を合格すればいける。まぁどれをとっても受験する権利を持てるよ。」
サ「やっぱり、父さんみたいに先生になるには大学まで行かないといけないのか...?」
「そうだね。大学で教職免許を取らないといけない。高校卒業だけでは教師にはなれないから。」
「とまぁ、色々な選択肢があるからみんな少し考えてみて考えが固まったら教えてほしい。」
サ「...私はもう決めた。」
みんなの視線がサオリに集まる。
「...早いね」
サ「私は高校には行かない。だけど父さんの行っていた高認を取って大学に行こうと思う。もちろん空いた時間は勉強とバイトもするつもりだ。」
サオリはなんとなく分かっていた。でもサオリがそういうのなら信じてあげないとね。それに彼女の年齢を考えてもそれがいいような気がする。
「分かった。じゃあサオリはそうしようか。」
「あと先に言っておくけど、俺はみんなの意見を尊重する。だからみんなも自分の進みたい道を決めると良い。もし分からなかったら聞いてもいいからね。」
ミ「私も決めた。私は通信制の高校にする。話を聞いている限り全日制では年齢とかで色々浮きそうだし、私もやっていける自信がない。それなら通信制で頑張りたい。」
ヒ「私も決めました...。私もミサキさんと同じく通信制で頑張りたいです。そしてあわよくば大学も...うへへ...」
「2人の意見も分かった。そうだ、アツコはどうする?まだ考える時間はいる?」
そういえば普段は多弁なアツコは今回かなり静かだったな...
ア「私は、パパが最初に言ってた全日制の高校に通いたい。仮に同級生が年下になったとしても。やっぱり制服を着て青春を謳歌してみたい。」
「分かった。じゃあその感じでみんな、話を進めていくね。」
高校に行かないサオリは一旦おいておいて問題は3人の編入が認められるかどうかだ。
ミサキ、ヒヨリにはそこまで大きな問題はないが、アツコの場合は話が別だ。
仮に認められないと入学試験を受けて入らないといけない。そうすると高校に入る時期がかなり遅くなってしまうのだ。
やっぱり色々考えるとそれは避けたい。
どうか神様仏様...俺は心の中でそう祈った。
ー
「これで、一通りの手続きは完了です。お疲れ様でした。」
「こちらこそ、かなりレアケースだと思いますのにご丁寧にありがとうございます。」
そう言って俺とアツコはペコリと頭を下げ、建物を後にする。
ア「...けっこう緊張した...パパは大丈夫だった?」
「俺も内心はヒヤヒヤだったよ。冷や汗まみれ。」
俺が心の中に残っていた不安は結果として全て杞憂に終わった。
まずヒヨリとミサキに関しては、引っ越し先にある公立の全日制と通信制を併せ持つ高校が戸籍を作った時の書類を根拠に、在学期間を認めてくれた上に来月からの編入を認めてくれた。
アツコについてもミサキたちと同じ高校が同様に編入を認めてくれた。ただ、彼女に関しては全日制であることと、キヴォトスからの編入はかなりのレアケースで手続きがかなり煩雑になるらしい。
なのでアツコは最初は通信制に編入し、2学期の9月から全日制へ異動するという結果に落ち着いた。
ア「パパ、お疲れ様。」
「ありがとうね。でも良かった...みんなの進学先もなんとかなって、本当に安心したよ。やっぱりシャーレで作ったあの書類...信用はかなり高いんだな...」
ア「ね、さ、帰ろう。引っ越しも近いんだし色々準備しなきゃ。」
「そうか...引っ越しももう来週だもんね。最近の時間の流れは早いなぁ。」
ー
引っ越しの日も近づいてきたということでそろそろ準備に取り掛かることにした。
4人の荷物は新居で整えようと考えていたので最低限必要な服くらいで用意は終わり。段ボール1箱ずつで落ち着いた。
残りというか大部分は俺の荷物なのでみんなには整理を手伝ってもらった。彼女たちがいなかったらもっと時間がかかっていたので、本当に頭が上がらない。
あとは、この引っ越しで一人暮らしではなくなることもあって、家電は新調することにした。
だからリサイクルに出せるものは出し、売れるものは売って金にした。
そうやって準備を進めて1週間が過ぎていった...
ーー
ヒ「ついに、今日からここに...!」
サ「ああ」
ヒ「住めるんですねぇ...!!やっぱり広いのはいいですねぇ...!」
「まぁ今までが狭すぎただけさ。これが普通だろう。」
あっという間に一週間が過ぎ、引っ越しの荷物が届くのよりも先に俺達は新居に移動していた。
荷物が届く前にやらなければならないことが色々あるからだ。
「さ、今が午前8時です。昼過ぎから荷物がやってくるので、それまでに掃除とかをやってしまおう。でもヒヨリ....朝からほんとに元気だねぇ」
ミ「それはヒヨリが規格外なだけ...」
ア「ヒヨリはいつもあんな感じだよ。」
ヒ「ちょっと2人とも、それってどういうことですか!?」
ア「さぁ、どうだろう?」
「まぁまぁ、時間はあるようで無いからね。始めよう!」
ー
「まずは部屋の写真をとりあえず撮っていって。傷とか凹みがあるところは特にね。」
サ「それはどうしてだ?」
「今は良くても、ここを退去する時にこの傷が誰がつけたのか白黒はっきりつけるためさ。変な揉め事のリスクを下げるって感じかな。」
サ「なるほど、色々と勉強になる。」
更に30分ほどがたち
ヒ「お、お父さん。これ...本当にやって大丈夫なんですか?」
「大丈夫、大丈夫。」
不安そうにヒヨリが持っているのは、某防カビ◯ん。
ヒ「じゃ、じゃあやっちゃいますよ。」
そういってヒヨリは少しそれをいじくり、風呂の床に置くとすぐに白い煙が上がってきた。
ヒ「ひえええ!!!」
「OKOK。扉を閉めれば完了と。みんな~しばらくは風呂場の扉開けないでねーー」
ー
ミ「これ...終わる気配が見えない......」
サ「ミサキ、弱音をはく前に手を動かせ。そうしないといつまでも終わらないぞ」
ミサキが珍しく弱々しい。でも確かに床を水拭きするのは確かに苦行だからその気持ちはよく分かる。
ヒ「えへっえへへへ...私は水拭きの2人とは違って特別に文明の利器を使います...掃除機っていうんですけどね、えへへへへ....」
ミ「....ヒヨリがうざい...!!!」
ヒヨリの煽りに乗ってしまうミサキもこれまた珍しい。
床はあの3人に任せるとして、俺とアツコは棚なんかの上側を攻めていく。
「ふう、床をやってると腰が痛くなってくるからなぁ、やっぱこっちの方が楽でいいや...」
ア「ふふっ、でもまだ腰の痛みを心配するほどおじいちゃんじゃないでしょ?」
「それはまあ、そうなんだけどね...」
ー
「みんなお疲れ様。おかげでやりたいことが全部早く終わったよ。はいこれお昼ね。」
そう言って俺は近くのコンビニ買ってきた弁当の袋を見せる。
ヒ「なら私は、この唐揚げ弁当を...私、がんまりましたもん...これくらいいいですよねぇ...」
ア「ヒヨリは食いしん坊だね」
ヒ「な!?ひどいですよぉ~」
ー
昼が過ぎ、まずは家電量販店で頼んでいた電化製品の搬入が始まった。
一人暮らしではなくなったこともあり家電も一新、といった感じ。
冷蔵庫も洗濯機も大きくなって間違いなくQOLは上がるな、と心のなかで考えていた。
ちなみにアツコたちは家電の大きさに驚いていた。確かに今までの生活を考えれば無理もないだろう。
その次は、前の家で詰め込んだ荷物がやってきた。
部屋はまだ割り振っていないのでとりあえず、リビングに置いてもらった。
ま、言っても俺の荷物がほどんどなんだけども。
そんな感じなので全員分のベットは無い。今日は寝袋だったり組み立て式の簡易ベットで今日は寝て、後日調達といった具合。
正直もっとバタバタするかと思っていたが、朝早くから作業をしていたからか、そんなにやばいこともなく逆にスムーズに事が進んでいった。
こうして一応、引っ越しは完了といった感じだろう。