先生とアリウス4人が第二の人生を歩む話   作:緑抹茶

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9.めでたく高校生に

 

 

「サオリたちって、アリウス時代はどんな教育受けてたの?」

 

アツコたちの高校への編入が近づいてきた頃、前々から気になっていた疑問をぶつけてみた。

 

サ「教育?別に大したことはしてないと思う。最低限の文字の読み書き、足し算引き算掛け算割り算に....あとは英語だな。」

 

言われてみれば、役所で手続きをしたときも丁寧な文字で書類を書いていたことを思い出す。

 

「英語?」

 

サ「ああ。一般的なアリウス生はやっていなかったが、私たちスクワッドは将来アリウスの中心になると言われていてな。マダムは特に力を入れていた」

 

 

「いいですか?あなたたちは将来このアリウスの中心になって他学園を蹂躙し、支配するのです。そのためには日本語だけではなく、英語も欠かすことはできません。」

 

サ「えいご...?」

 

ア「...」首を傾げている

 

ミ「........」

 

ヒ「...お腹が空きました...」

 

「ええい!空腹など我慢なさい!第一あなたはデブなのですからその脂肪を燃やせばいいでしょうが!」

 

ヒ「ひいいい!!!」

 

サ「バニタスバニタス....」

 

「それはラテン語ですよ、能無しが!とにかく、外交面で絶対的なアドバンテージを得られるのですから、あなたたちには死んでもやってもらいますからね。」

 

サ「それで、私たちはどうすれば...」

 

サオリがそう言うとベアトリーチェは彼女たちに紙束を放り投げた。

 

「これはトリニティができる前、いろんな派閥が争っていたときの公文書たちです。これらを明日までに翻訳してきなさい。できなければどうなるか分かりますよね?」

 

 

サ「とまぁ、こんな感じで半ば強制的に英語を学ばされてきた。やらなければ、殺されることはなくともボコボコにされることは目に見えていたから、私たちは必死でやった。その結果、流暢とはいかないが最低限のコミュニケーションはとれるところまで到達した。あの3人もそうだと思う。」

 

「....典型的な教育系毒親ママじゃん。でも意外だったな、サオリたちが英語を話せるなんて。」

 

サ「?そんな大したことでは無いと思うが?こっちでも英語が話せると何かいいことでもあるのか?」

 

「いいことどころか大アリだよ!!大学入試でも英語は使うし、そもそも日本で英語話せる人は少ないんだから、就職でも無双できるし、いいことしかない!」

 

サ「そ、そうか...?そんなに褒められるとは思っていなかった。」

 

「じゃあさ、サオリはこの単語とかって理解できるの?」

 

そう言って、おれはTOEIC用の単語帳をサオリに渡す。

 

サオリはパラパラを目を通すと

 

サ「ああ、ほとんど見たことのある単語ばかりだ。」

 

「じゃあviableは?」

 

サ「実行可能な」

 

「factor」

 

サ「要因」

 

「disruption」

 

サ「混乱、だろう?」

 

ま、マジか。レベルの高い単語をこんなにスラスラと....

 

一回英検かTOEIC受けさせてみよう。

 

「すごいね...こんだけ分かってるのなら英語は楽勝じゃん。」

 

そう言ってサオリの頭をなでる。

 

サ「なっ父さんそれはちょっと恥ずかしい...」

 

ア「何やってるの、2人とも?」

 

「あ、みんな」

 

ミ「これって...」

 

「ああ、英語の単語帳だよ。サオリが英語を話せるって言うからさ」

 

ミサキも単語帳を開き、アツコとヒヨリも顔を覗かせる。

 

ヒ「おお...見たことある単語ばっかりです!!」

 

ミ「もしかしてこっちでも英語って学ばないといけない感じ?」

 

「まぁ授業でも、大学行くにしても学ばないといけないね。」

 

ミ「嘘でしょ...もうあの地獄は嫌なんだけど...」

 

「まぁまぁ、それはあのババアがおかしいだけで、学校の授業はスパルタじゃないからさ。それにミサキたちなら多分簡単だと思うよ?」

 

そう言って、今度は長文が載っている問題集を持ってくる。ミサキの顔が更に歪む。

 

なぜこんなものを持っているのか、それは俺がTOEICの勉強をコツコツと頑張っているからである。

 

ア「ふむふむ...これはええっと、現代社会の未婚率の高さについて書かれてる内容だね。」

 

ヒ「こっちは、おやつを食べる人と食べない人との美容問題...え!こんなに違ってくるんですか!!!」

 

「やっぱりすごいな。俺もその英語力が欲しいよ....」

 

ア「もしよかったら教えてあげよっか?」

 

「ぜひともお願いしたいなぁ」

 

ア「アリウス流で♡」

 

「やっぱり独学でがんばります。」

 

ーー

 

サ「起きろ、ミサキ。時間だ。」

 

ミ「ん...うぅ、もう朝....?」

 

私の手がスマホに伸びる。時刻は6時45分。ああ...そうか。今日は...

 

サ「今日は初登校日だろう。朝食はできてる。早く起きろ。」

 

そう言ってリーダーは部屋を出ていく。きっとヒヨリを起こしに行ったのだろう。

 

案の定すぐにサオリの声が聞こえてきた。

 

アリウス時代、不寝番をしていた事もあったのに今となってはすっかり布団と友達になってしまった。

 

多分昔の私に見られたら、ぶん殴られるに違いない。

 

ミ「はぁ...ねむい」

 

気だるい体を起こしてカーテンを開ける。電気を付けるのもめんどくさいので窓から入る光に当たりながらタンスを開ける。

 

私の編入する通信科には制服がない。だから私服登校となるのだ。

 

今日は黒のズボンと白いシャツその上にカーディガン。多分これで大丈夫だろう。

 

「あ、ミサキおはよう。イス座って待ってて。」

 

ミ「おはよう、父さん、みんな。」

 

部屋を出てリビングに向かうとすでにみんな起きていた。

 

リーダーはキッチンに立ち、父さんから料理を教わっているようだ。ヒヨリは眠い目をこすりながらご飯を食べ、アツコはテレビを見ていた。

 

ア「ミサキ、今日はすごく眠そうだね。もしかして緊張で寝れなかった感じ?」

 

ミ「いや、別にそういうわけじゃ...」

 

「はい、おまたせ。」

 

そういって眼の前に置かれた朝食。パンと目玉焼きに野菜炒め、あとヨーグルト。

 

多分、一見すると普通の家庭の風景なんだろう。でも私たちスクワッドにとってはすごく幸せなことだと思う。

 

昔は明日どころか今日の食べ物にありつくのに必死だったくらいだから。

 

ミ「おいしい...」

 

「だってさ、サオリ」

 

ミ「?」

 

「今日の朝ごはんはね、サオリが作ってくれたんだよ。」

 

サ「いや、でも私はまだまだ」

 

「でもミサキはおいしいって言ってるけど?」

 

サ「そうか。ありがとう、ミサキ。」

 

 

「みんな用意できた?」

 

ミ「私はできたけど...」

 

ヒ「忘れ物無いでしょうか....不安です...」

 

ア「私も大丈夫、多分。」

 

「じゃあ行こうか。サオリもおいで。」

 

ミ「え?行くってどこに?」

 

「どこにって、そりゃあ高校でしょ?」

 

父さんは一体何を言っているのだろう。父さんは学校ではなく会社に行くんじゃないの?スーツ着てるし。それにリーダーも、え?どういうこと?

 

「今日は記念日なんだから、写真撮ろう!」

 

ミ「会社は?」

 

「その後にダッシュで行くから大丈夫。」

 

 

「はい、4人ともならんで、はい撮るよー」

 

私たちの通う高校は家から20分くらいのところにある。

 

今の時間は絶賛登校時間の真っ最中だ。そんな中で校門に並んで写真を撮っているのだから周りの視線が集まっているのを感じる。

 

久しぶりに恥ずかしさというか羞恥心を感じた時間だったと思う。

 

「うん、バッチリ撮れた。みんなありがとね。」

 

終わった。ほんの数分だったど何時間にも感じた...

 

ア「パパも一緒に撮ろうよ。」

 

「え?」

 

...え?

 

ア「だって記念日なんでしょ?ならパパも一緒にいたほうがいいな。ダメ?」

 

ヒ「そうですよ!お父さんも一緒に撮りましょうよ」

 

「そういうなら一緒に撮ろうか。」

 

私が羞恥にさらされるのはまだ続くようだ。

 

父さんはスマホのカメラをインカメに切り替えると私たちの前隣に立つ。

 

「それじゃあいくよ」

 

 

「よしよし、これでOK」

 

今度こそ羞恥の時間は終わったようだった。

 

「それじゃあ3人とも、行ってらっしゃい。」

 

サ「緊張せずに、学校見学みたいな気持ちでな。」

 

ア「ありがとう、サっちゃん、パパ。」

 

ヒ「えへへ...じゃあ私たちはそろそろ」

 

ミ「...行ってきます。」

 

帰ったら話聞かせてねと言う父さんとリーダーに見送られながら、私たちは校門をくぐった。

 

ーー

 

「で、今日はどうだった?」

 

時間がたって、夜。夕食を食べながら父さんが聞いてくる。

 

ミ「まぁ、校内紹介とガイダンスとかそんな感じだったよ。」

 

ヒ「あとは...教科書を家に送る伝票とかも書きました!!」

 

ア「うん...けっこう楽しかったよ、学校。でもしばらく2週間くらいは毎日登校だって。」

 

サ「ふむ。向こうもお前たちのことを知りたいのだろうな。」

 

でも、学校ってあんな感じなんだ。アリウスの時みたいに殴られることも、罵倒もされなかった。むしろ向こうから見れば変わり者の私たちを優しく受け入れてくれた。

 

顔には出さなかったけど、正直言ってうれしかった。人が温かかった。

 

「でも良かったね。みんなの顔、今までよりもちょっと柔らかくなってる。」

 

ア「本当?」

 

「うん。ミサキを見てみなよ。口元ちょっと口角上がってた。」

 

ミ「え」

 

ア「ふーん?」

 

アツコが私に顔を向ける。それもニヤニヤしながら。

 

ミ「な、なに」

 

ア「ミサキも変わったなーって。めったに感情見せることなんてなかったのに。見たかったな~ミサキの笑顔。」

 

ミ「別に笑顔...じゃないし」

 

でも心の中ではそれを否定しきれない自分がいることを認めざるを得なかった。

 

 

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