名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
まだ春風が吹く季節の下で、まこともといルルタンとるるか、マシュタンの3人は並んで街中を歩いている。側から見れば、一緒にお散歩をしている仲の良い男女。しかし、その会話の内容はお世辞にも子供が話していいものではなかった。
「さぁーて、アゲセーヌは一体何を盗むんだろうね。ワタシ、ワクワクしてきた!」
「それなら知ってる。ついて来て」
「にしても、新しい名探偵プリキュアも鈍臭いよねー。名探偵の癖に、ワタシの正体に全然気付いてないんだもん。あの名探偵キュアトゥルースなら、早い段階で看破しちゃうのに」
るるかは足を止め、ルルタンの事をジッと眺める。その姿は金田一まこと。しかし、中身は全くの別物。違いがあるとすれば、瞳の色。そしてその性格。ぱっと見では、看破出来る判断材料としては少ない。
「今の金田一まことは、幾つもの嘘で塗り固められているけど、本当の事しか口にしてない。嘘を嘘と思っていない。話す事全てが真実だと思い込んでいる」
「だから?」
「つまり、今のワタシこそ金田一まことであり真実なの!」
訳の分からない事を口走るルルタンに、2人は何も言わず目を伏せて呆れ返っている。
「記憶喪失だから当たり前」
いつの間にかアイスを買っては頬張るるるか。とある曲がり角が差し掛かる所で足を止め、誰かを待つ素振りをし始めた。
「そろそろ来るよ」
るるかのその言葉の直後、上からアゲセーヌが降って来た。アゲセーヌは、3人の姿を見るや否や悪態を吐いた。
「アンタ達、何で来たし⁉︎」
「ワタシが誘ったの。アゲセーヌの勇姿を見届けようって」
「それと、ウソノワール様からの伝言。『奴ら倒して華麗に盗め』」
「だって。よろしく」
理由をそれぞれルルタン、マシュタンが言い渡し、るるかはまるで他人事のように話すだけ。
「はぁ? 何それ?」
「そろそろ名探偵が追い掛けてくる頃合いだ。今のワタシが接触するのはちょっと問題が有りだから、高みの見物をさしてもらうよ」
早くも正体をバラして、ゲームを終わらせてしまうのは面白くない。それに勿体無い。金田一まことという少年の身体を使って、内部から観察するなんて滅多にないのだから。
◯
ルルタン達3人は、建物の屋上へ場所を移動させた後アゲセーヌの様子を観察していた。
彼女がマコトジュエルを使ってハンニンダーを喚び出すのと同時に、その悪事を解決する対の存在である名探偵プリキュアが立ちはだかっていた。
「今回はどっちが勝つんだろうね」
「勝ってこなきゃ困る」
「そうね。でも、例え戦いに負けても勝負に勝てればそれで良いの。ワタシ達の勝利ってなんだと思う?」
るるかは答えようとしない。代わりにマシュタンが口を開いて、その問いに答える。
「マコトジュエルを盗んでくること」
「正解。盗むもん盗んで帰ってこれればそれで終わり。なんだけど……」
名探偵プリキュアと交戦するハンニンダーを見て、ルルタン達3人は肩を落とす。それは明らかな落胆からくるもの。
アゲセーヌが喚び出したハンニンダーが有利に事を進めているが、名探偵プリキュアはそこから少しずつ巻き返しつつあった。
「へぇ……中々やるじゃん」
思わぬ力量を土壇場で発揮していく様を見て、ルルタンの中での株が上がりつつある。
「こりゃ今回も盗めなさそうだよ」
「そっ」
「『そっ』で済ませるって。関心無さすぎ」
るるかの相手をして目を離した矢先、ハンニンダーがやられる断末魔が聞こえた。ニジーのハンニンダーで大概予想はしていたが、案の定アゲセーヌもニジーの二の舞で終わりを告げていた。
「正面から見た名探偵を知りたかったから、別に内容はどうでも良いんだけど」
正面から力技で名探偵プリキュアを捻り潰すには、少々力量を見誤っていた。それを改め、修正をする為の観察でもあるが。
「マコトジュエルを盗めなかったし、そろそろ帰ろうか。それに今日は一度もあの名探偵達の前に顔出してないから、変に勘繰られても面倒だし」
「そう」
「またねー」
ルルタンはそうして姿を消した。そして別の場所で、ルルタンは金田一まこととして、いつもの日常に溶け込んでいった。
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