名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第10話 無くしたバッグの行方

 まことが不在の間、キュアット探偵事務所は内装を整え、いつでもどんな時でも依頼人を迎えられるよう準備が出来ていた。

 いよいよ本格的に探偵業が開始するという、ドキドキとワクワクを胸にしていたのだが。

 

「あーもう、何も無くてどうにかなりそうだよー!」

 

 事務所内を忙しなく動き回り、中々依頼が舞い込んでこない事に若干の苛立ちを隠せずにいるみくる。それを横目にまこと、あんな、ジェットは冷ややかな視線を送り続けている。

 

「折角探偵事務所を開いたのに、依頼人が来ないの!」

 

「あのなー、それだけ平和って事だろ?」

 

「どうどう。落ち着けよ」

 

「犬じゃないもん!」

 

「誰もそんな事言ってないだろ……」

 

 退屈のあまり癇癪に近い言動を図るみくるに、一同は耳を塞いで聞こえないフリをしていた矢先。探偵事務所の扉が大きく開かれた。

 

 ドタバタと事務所内に入り込み、1人の男性が血相を変えて訪ねきて来たのだ。

 

「た、助けてー!」

 

「「……え、えぇ⁉︎」」

 

 突然の依頼主に場は一気に騒然。あんな、みくる、ポチタンはその場で慌てふためき、依頼人をどうおもてなしをしようかと忙しくさせる。

 その様子にまことは呆れ、ジェットは先輩らしく3人を落ち着かせた。

 

「いいから落ち着け!」

 

 ピシャリと言われ、3人は動きを止めて冷静になった。

 まだまだひよっこなのだと、ジェットは痛感させられた。

 

 

 ◯

 

 

 ようやく落ち着きを取り戻したあんなとみくるは、改めて依頼人と対面して、名刺を渡しながら訪ねてきたその理由を訊く。

 

「探偵の明智あんなです」

 

「小林みくるです」

 

「金田一まことです」

 

「「で、どうしました?」」

 

「2人共近い近い」

 

 依頼人から2人を引き剥がしてソファーに座らせる。少し油断すればすぐこれだ。

 

「僕は小松崎純一。それでなんですが、バッグの中身がりんごとじゃがいもになっちゃって……」

 

 依頼人である大学生の純一。その方が持つバッグの中身は、幾つものあるりんご、じゃがいも。それによく見ればそれだけでは留まらず、他にも玉ねぎ、食パン1枚にエプロンが入っていた。

 

「元々バッグには何が入ってたんですか?」

 

「漫画の原稿と着替え」

 

「全然違うな。入っていたのは、どちらかと言うとカレーの食材だ」

 

「食パンなんて使うかな?」

 

「ナンみたいに付けて食べるんじゃないのか?」

 

 純一が口にしている物とは中身は全くの別物。カレーの材料かとまこととあんなは首を傾げるが、それにしたとしても不自然な点が多く見受ける。

 しかし今はまだ断定はしていないので、それについては後回しだ。

 

「それで、原稿が無いって気が付いたのは何処ですか?」

 

「た、探偵事務所の前です……」

 

「「「じ、事務所の前⁉︎」」」

 

 意外にも発覚した場所がキュアット探偵事務所の前。純一からすれば、不幸中の幸いとも言えるが。

 

「はい。まさか、バッグの中身が変わるなんて……」

 

「でもそれ、かなり不自然じゃないですか?」

 

 これまでの一連の流れを聞いて、不可解な点が一つ見つけたまこと。

 

「バッグはずっと肌身離さず持ってたんですよね?」

 

「あ、ああ勿論」

 

「だったら尚更おかしいですよ。入れ込んだり抜き取ったりならともかく、全く気付かれず中身全てを入れ替えるなんてまず無茶だ。それも、こんな大量の荷物を」

 

 冷静になればこの考えに至るのが普通だ。となると、考えられる可能性も限りなく絞り込まれる。そう、例えば。

 

「それって、中身じゃなくてバッグそのものが入れ代わったんじゃない?」

 

「ま、それが妥当だな」

 

 あんなの推測が一番正解に近いと言える。

 

「まさか。間違いなく僕の……あれ? なんか汚れてる」

 

 バッグは自分のものと言う純一。どうやら、バッグに関しては同一の物らしい。それが主な原因で、今の今まで気付きもしなかった。そして今更バッグにある汚れにも気付いた。

 

「汚れているなら、どっかで落としたとか?」

 

「そういえば駅前で!」

 

 これでまた一歩、謎の答えに近付いた。まこと達は、入れ代わったと思われる駅前まで赴くのだった。

 

 

 ◯

 

 

 駅前にある小さな公園。見通しはよく、駅前の事もあってか人の出入りも少ながらずある。憶測の領域だがこの場所で、バッグの入れ代わりがあったのだろう。

 

 そして現在は、この場で起きた証言を元にまこと達は推理していた。

 

「ここで向こうから走って来た人とぶつかって、バッグを落としたんだ」

 

「読み通りだな。俺達の推理はあながち間違ってはいなかった。やったね」

 

 事件の発端となった場所は特定出来た。しかし、これだけで事件解決の糸口としてはまだまだだ。手掛かりとしては弱く、子供の浅はかな思い込みで終わってしまう。

 

「ぶつかった人はどんな人でした?」

 

 ぶつかった、という認識があるのであれば、その人相も覚えている筈だ。それさえ判れば、この事件も難なく解決まで至るであろう。

 みくるは純一の証言を元に、プリキットブックに似顔絵を描く準備をした。なのだが、ここで予想だにしない躓きが発生する。

 

「うーん、覚えてないな……」

 

「男性か女性かも判らない?」

 

「あはは、はい……」

 

 身なりや顔立ちならともかく、まさか性別すら覚えていないとなると探すのがかなり困難を極める。当時、それほど落ち着きが無かったと想像出来るが。

 

 一同困り果てていると、意外な助け舟がやってきた。

 

「そのバッグ、さっき同じのを持ってる人が来たよ。間違えて持って行ったお兄さんを探してた」

 

 公園のベンチの塗装作業をしていた年老いた男性が、入れ代わった相手側の人について認知していたのだ。

 

「えっと、若い女の人で、こんな眼鏡で、髪型はこーんな感じで……」

 

 男性の協力の元で、みくるは人相をプリキットブックに描き込んでいく。ただ、男性の説明はあまりにも漠然としており、側から聞いているまことあんなは何を言っているのか全く伝わないでいる。しかし、みくるは滑らかにペンを走らせて似顔絵を着々と完成させている。

 

「出来た! ずばり、この人ですね⁉︎」

 

 完成された似顔絵を見てみるが、その中身はとてもではないがお世辞にも上手とは言えない画力だった。

 

「下手くそ」

 

「下手くそじゃないもん」

 

「そんなんで伝わるわけ──」

 

「おぉ! 彼女だ!」

 

「「「えぇ⁉︎」」」

 

 絶対に伝わらないであろう画力に、男性だけはそっくりとお墨付きを貰ってしまった。

 

「ほら、分かる人には分かるんだよ!」

 

「あんな。次からはお前が絵を描いてくれ」

 

「わたし、絵とか自身無いんだけど?」

 

「あんなのよりかマシだろ」

 

「2人共聞こえてるよ! 失礼しちゃうわ!」

 

 何がともあれ、ここまでは順調な滑り出しだ。このまま事が順調に進んでくれれば簡単に終わる。そう願っている。

 

 

 ◯

 

 

「ま、そうそう上手く行く筈もなく」

 

 好調な捜索もここへきて、とうとう行き詰まってしまった。似顔絵を頼りに道行く人片っ端から訪ねてみたものの、全て空振りで終わる。

 

「絵画教室でーす。生徒募集中です! お願いしまーす!」

 

 仕方なしのビラをあんなが受け取り、やるせない表情で小さく呟く。

 

「絵画教室かー。わたしも似顔絵描けるようになりたいなー」

 

「やっぱりみくるの画力じゃダメなんだってば」

 

「そんなに言うならまことが描けば良いじゃん!」

 

「俺に絵心なんてねぇよ」

 

「なら文句言わないでくれますかー⁉︎」

 

 いつまで経っても進展しない今の状況に、まこととみくるは苛立ちを見せ始めている。一才の手掛かりの無い状況からスムーズに進んだ分、詰まった時のストレスが反動で降り掛かって来ているのだから。

 

 それでも足だけは止めず、場所は変わって商店街まで辿り着いた。

 

「こうなったら、もう一度一から考えるべきだ」

 

「そうだね」

 

 あんなはまことの意見に賛同して、純一のバッグの中身を広げる。もう一度、中身の物を不可解な点が無いか注視する。

 

「改めて見ると何に使うんだろうね?」

 

「こんなに材料が揃ってるのだから、お料理に決まってるわよ」

 

 あんなの疑問に自信満々に答えるみくるだが、まことは違っていた。

 

「芽が出ているじゃがいもを料理に使うなんて無理があるだろ。それにコレ全部……」

 

 よく見ると、りんごに玉ねぎとどれも質の悪いものばかり取り揃えられている。丁寧に芽削ぎ落としてていよく見繕ったところで、一口齧れば口に合わないのが明確になる。

 

「でもパンは何に使うんだろう? みくる分かる?」

 

「えーっと、まこと分かる?」

 

「俺かよ⁉︎ まあ、ほんの少し謎は解けたが」

 

「「ホントに⁉︎」」

 

「だっ、近いってだから!」

 

 謎が解けたの一言で食い気味になるあんなとみくるを押し除け、まことが簡単に推理を始めようとする。そんな時だった。

 

 途方に暮れる4人の目の前に、まるで歌舞伎役者の様な格好をした大男が現れた。

 

「見つけたぜ、紫の包み!」

 

「えっ、誰? もしかして、このバッグの持ち主?」

 

「何言ってんのまこと。ぶつかった相手は女の人って言ってたよ。あの人、どこからどう見ても男の人だよ」

 

 珍しくもあるみくるからの指摘に、まことは思わず頬をかいては苦笑いで誤魔化した。

 

「いーや、ある意味持ち主だ。そのバッグいや……マコトジュエルを頂くからな!」

 

 大男は手にしていた扇子を扇ぎ、目を瞑ってしまいそうな突風を巻き起こした。桜の花びらも舞い散り、視界を遮られたその隙に大男が動き出していた。

 

「フン、頂いていくぜ!」

 

 僅かな隙を突かれ、純一が持っていたバッグを手にして大男は逃走。

 簡単に逃す訳にもいかず、あんなとみくるは腰に小さくしてあるジェットの発明品に手を付ける。

 

「オープン! プリキットライト!」

 

「へぇ、またジェットさんの発明品か。どうやって使うんだ?」

 

「こうやって、好きなものを光で描くと形になる!」

 

 言うより早く、みくるが実際に使用してその発明品の凄さを見せ付ける。みくるが描いた通り、光が実体を持ってその場にそのまま現れた。

 だが、みくるの画力は先程の似顔絵でかなり低い事が判明しているので、まことから見ればそれは。

 

「んだよこれ?」

 

「トランポリン!」

 

「水溜まりかと思った」

 

「どっからどう見てもトランポリンでしょう⁉︎ この辺とかよく見てよ!」

 

 あまりの歪なトランポリンに、まことは思い違いをしていた。そして、あんなも言われるまでトランポリンだと気付かず真顔で黙っていた。

 

「あーもう、この際何だっていいよ。あの花吹雪撒き散らす人捕まえて、バッグ取り返して来て。俺の推理が正しければ、漫画の原稿の居場所は分かったから」

 

「本当⁉︎ 行くよみくる!」

 

「あ、あんな⁉︎」

 

 まだまだ言い足りないみくるだったが、あんなが手を引いて会話を強制終了。盗られたバッグを取り返しに先を急ぐのだった。




ここまての拝読ありがとうございました!
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