名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第11話 見つけたバッグ。だがしかし──

「えっ、競争? 何で?」

 

 大男をあんなとみくるに任せ、まことは純一と一緒に帰って来るのを待っていた。待っていたのだが、2人が帰って来るや否や耳を疑うような報告を受けて唖然とする。

 

「もう一度整理する。あの大男が怪盗団ファントムは分かった。で、バッグ取り返したというより返してもらった」

 

「うん。それで、どっちが先にマコトジュエルを手に入れるか競争って言って」

 

「逃げたのよ」

 

「んな馬鹿な⁉︎」

 

 情報を整理するのだけで手一杯だ。怪盗団ファントムが現れたのは予想外だったが、マコトジュエルが関わっているのなら別にそこまで驚く程でもなかった。

 けれど問題はそこではない。何故競争という形になったのか。

 

「狙いは純一さんの原稿みたいなんだけど」

 

「違うと思ったらすぐ返してくれた」

 

「それはさっきも聞いた。にしても競争って。もしかしてだけど……」

 

 取るか盗られるか。このギリギリのスリルを快感として楽しんでいる様にも思える相手。ニジーとも違う。話に聞いていたアゲセーヌという怪盗とも全く別の怪盗。そういう相手程やり難い。何せ、相手の気分によってその時のパフォーマンスが変化する。

 

「まこと君」

 

「ん、何?」

 

「考え過ぎだと思うよ」

 

 微笑み掛けるあんなの顔を見て、まことは一度深呼吸する。確かに、彼女の言う通り沼にハマり過ぎていたようだ。まだ見えない情報が散乱としている今、目の前の壁に集中しないといけない。

 

「ありがとう。さて、と。これからどうすっかだな」

 

「そんなの決まってる。わたし達が先に見つける!」

 

 単純に考えればそうだ。みくるの言うように、この事件を解決するにはそれが一番の近道だ。

 

「もう、いいよ……」

 

 やる気に満ち溢れた所に、水を差したのは依頼人の純一だ。

 

「僕は皆を笑顔にしたくて漫画を描いているんだ。なのに、僕の漫画のせいで探偵さんが危ない目に遭うなんて嫌だよ!」

 

 水を差す理由としては至極真っ当なものだった。依頼した身でありながらも、他人を気遣うその優しさは心にグッとくるものだ。勿論、ちゃんとまこと達には伝わっている。

 

「わたし達も同じだよ!」

 

「探偵も困っている人を笑顔にしたいの!」

 

「純一が漫画で皆を笑顔にしたいという気持ちと同じくらいに!」

 

 ちゃんと伝わっているからこそ、純一の気持ちも無駄にしないよう汲み取るのだ。純一にも漫画で皆を笑顔にしたいと思うように、まこと達探偵にもそれと同じくらいの気持ち、矜持がある。

 

「だから、受けた依頼は必ずはなまる解決します! わたし達名探偵に任せて下さい!」

 

「そんな訳で走るぞ2人共!」

 

 3人は純一に会釈をして、気を取り直して無くなった漫画の原稿を探しに駆け出した。

 

 

 ◯

 

 

「それでまこと君、謎が解けたって言ってたよね?」

 

「そうだよ、勿体ぶらずに教えてよ!」

 

 場所を変えてあんなとみくるが、差し迫った勢いでまことに詰め寄る。あれだけ純一に啖呵切ったのだ。もう失敗は許されない。

 

「勿論教えるさ。でも、前回やそのまた前もだけど。2人が活躍してるから、今回は俺に任せてくれ」

 

「うん分かった!」

 

 即答するみくるに、まことは少しばかり目を点にした。

 

「てっきり、一緒に解きたいとか言うのかと思った」

 

「まことはほら、頭良いの知ってるし。それに、わたしより謎を解くの上手いから。まことが任せてって言うなら任せるよ」

 

 絶大なる信頼。それに応えるべく、まことは小さな推理ショーを始める。

 

「改めて、2人はバッグの中身を見て連想したものは何だ?」

 

「食べ物屋さんとか?」

 

「わたしもあんなと同じよ」

 

「なるほどな。ま、じゃがいもとかに目が行き過ぎだな。俺達が最も注目すべきもの、そして見落としていたものがあるんだ。それは」

 

 まことは、エプロンとバッグに付着しているシミに指を差した。

 

「「シミ?」」

 

「ああ、答えは最初からここにあったんだ。このシミ、バッグの中身から見て調味料によるものかと思っていたんだけど……2人共匂いを嗅いでみて」

 

 2人はそれぞれ、エプロンとバッグにあるシミに鼻を近付けてその正体を知る。

 

「この独特な臭い何だろう? どっかで嗅いだ事あるような……」

 

「あんなこれ、絵の具だよ!」

 

 ここまで判ればもうゴールは目の前だ。

 

「この質の悪い食材は、全部絵のお手本として使う物だ。いつの間にかエプロンについた絵の具がそのままバッグに付着して、シミになったんだろうな」

 

「となると、何処かで誰かがスケッチしているのを見つけるってこと?」

 

「それ振り出しに戻っただけじゃ……?」

 

 結局人探しから抜け出せない。みくるが頭を抱えるが、まことはそれも含めて謎は全て解けている。

 

「言ったろ。謎は全て解けたって。漫画の原稿が入っているバッグは絵画教室にある」

 

「「絵画教室?」」

 

「何でそこだと分かるの?」

 

「探し回っている時、河や街中で絵を描いている人なんて居なかったしな。他に絵を描く場所がある所と言ったら、あんなが受け取ったチラシ」

 

 あんなは少し前に受け取ったチラシをポケットの中に仕舞い込んでいた。改めて開けて見ると、確かに絵画教室で生徒募集をしているチラシだった。

 

「他にも──」

 

「よし、今すぐ行こう!」

 

「うん!」

 

 みくるの言葉であんなも、その絵画教室まで走り出した。そして、まだ最後の推理を話している最中のまこと。独り置いて行かれ、そよ風が肌によく沁みるのるだった。

 

 

 ◯

 

 

 やってきた絵画教室アトリエプレンティ。まことの推理通りなら、この絵画教室に本当の純一のバッグがあるはず。それを信じ、3人はその扉を叩いた。

 

「間違いない! この人だ!」

 

 インターホンに反応して出てきて女性。その女性とみくるが描いた似顔絵を見比べて断定した。まこととあんなは、どんなに見比べても似顔絵と一致しているのかどうか分からずじまいだが。そこの問題に関しては、みくるを信じる他ない。

 

「あっ、私のバッグ!」

 

 女性は、あんなが手にしていたバッグを目にして早速反応を示した。どうやら間違いないらしい。

 

 そして、女性に案内がされるがままに奥の部屋と足を運んだ。部屋に入り、3人が最初に目にしたのは窓際に置かれている純一のバッグだった。

 

「あれって!」

 

「そっくり! 間違えても仕方ないね!」

 

 これで依頼を達成した。後は持ち帰って純一に返すだけ。

 

「──ほぅ……中々面白い漫画だ」

 

 安心したのも束の間。窓から手を伸ばして、バッグから純一の漫画の原稿だけを抜き取った大男の怪盗がそこに居た。

 

「頂いていくぞ!」

 

 大男は、漫画の原稿を手にして逃走した。まこと達も即座にその後を追い掛けて行く。事件はまだ終わらない。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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