名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第13話 嵐の前の静けさ

 今日から新学期を迎え、まこととみくるは晴れて中学2年生となる。いつもの私服と違う制服に身を包み、今から登校するという時なのだが。

 

「本当に平気?」

 

 みくるは、独り取り残されるあんなを気遣って心配の言葉を掛ける。昨日まで、時間の許す限りあんなとは共に行動している。加えて、2027年からタイムスリップしてきた身。まこととみくるが居なければ、完全孤立化してしまう。

 

 あんなはその事を心配している。

 

「大丈夫! ジェット先輩がいるし!」

 

「「ジェット先輩、ねぇ……」」

 

 2人はどこか遠い目をする。ジェットは只今絶賛発明に没頭しており、研究室に篭ってあんなに構っている暇はない。ではポチタンのお世話でも、と思うのだが。

 

「ポチー!」

 

 ポチタンはマコトジュエルの回収に伴って、ちょっとずつ力を取り戻しているのか色んなものを自分の中に仕舞い込んでは遊んでいる。今は自由に遊ばせておくのが良い。

 

「ほら2人共、急がないと学校遅刻するよ!」

 

 促される事に少し心配しているが、もう時間もない。これ以上事務所に留まっていると遅刻してしまう。

 

「分かった分かった。探偵事務所の事は任せた」

 

「なんかあったらボイスメモで連絡して!」

 

 2人は「いってきます」と挨拶をして探偵事務所を後にするのだった。

 

 

 ◯

 

 まこととみくるが通う私立まことみらい学園に到着して、2人は張り出されているクラス分けの表を眺めていた。

 

「おっ、俺とみくる同じクラスだってさ。行こうぜ」

 

「あ、うん……」

 

 張りのない返事。明らかに元気が無い。何か不服な事があったというより、頭の中でずっと考え事をしてそればかり気を取られている。気にし過ぎによる、注意力散漫の様子だ。

 

「新学期なんだ。そんな浮かない顔すんなよ。友達と離れても、休み時間に会いに行けばいいだろ?」

 

「そうだけど、そうじゃなくて!」

 

「じゃあどういう事だ?」

 

「あんながいない……」

 

 俯き、そう一言溢した。今考えると、あんなとみくるの親密度がかなり上がっている。理由として大きく挙げられるのが、名探偵プリキュアになった事が大きく起因している。

 普通の友達には無い特別なものを2人一緒に持った。

 

「そんなにホームシックになってんなら、ボイスメモで連絡すれば良いだろ?」

 

「それじゃまるで、わたしが淋しい思いしてるみたいじゃん!」

 

「違うのか?」

 

「それは、その……」

 

 言い返そうとするも図星を突かれ、それ以外言葉を発せなく萎む。

 

「変に落ち込んでると、他の友達に怪しまれるぞ?」

 

「そんなに顔に出てる?」

 

「出てる出てる。それはもうこれくらいな」

 

 そう小馬鹿にしながらみくるの頬を掴んで、揉みほぐす。その行為は流石に嫌だったのか、みくるも微かに抵抗の色を見せながらそれなりの対応を示す。

 

 そんな2人に割って入る人が2人現れる。

 

「おっはよーさん!」

 

 声を掛けたのは浅間りえ、依田ゆみの2人だった。2人とは同い年。今日から共に中学2年生という事になる。

 

「また同じクラスになれるなんて、うれしー!」

 

「あっ、まことは帰っていいよ」

 

「おい」

 

 去年と同様、この4人でまた1年間を過ごせれる。そう思うと、いつもの騒がしい時間がまだ続くのかと思う反面良かったなとも思う。

 

「にしても2人で何話してたの? みくるは元気無いようにも見えたけど?」

 

「ははーん。まーたまことが余計な事言ったんでしょう?」

 

「その言い方だと、まるでいつも俺が余計な事を言っているみてーじゃねぇか」

 

「違う違う。まこととは普通に話してただけだから」

 

 りえとゆみも、2人の距離感というものをちゃんと認識している。喧嘩等する事はあっても、泣かす事は絶対にしないのは百も承知している。

 

「おしどり夫婦でも痴話喧嘩だってするもんね。うんうん」

 

「「だから違うって!」」

 

「息もピッタリだし」

 

「「妬けますねー」」

 

 りえとゆみ。この2人はいつもこうして揶揄ってくる。こんなにも男女間での距離感が近いのは、クラス内でもまこととみくるだけ。周囲からは、あれだこれだと揶揄われる日々に滅入る。

 

「とにかく、早く教室行くぞ。みくるも」

 

 教室の方へ移動しようとした矢先、更にもう1人目の前に現れてはみくるを呼び止めた。

 

「みくるさん」

 

「あっ、生徒会長」

 

 鋭い眼差しでこちらを見つめる中等部の生徒会長金田れい。その肩書きに合った凛とした佇まいで、みくるにとある伝言を伝える。

 

「理事長がお呼びです」

 

「理事長が? なんだろう?」

 

「お前、どんな悪行やらかしたんだ?」

 

「やったこと前提で話進めないでくれますかー?」

 

 2人がまたも揉め始めた辺りで、れいは咳払いをして鎮めさせた。

 

「みくるさん早く」

 

「あっはい!」

 

 れいの逆鱗に触れないよう、早々にみくるは理事長室へと赴こうとする。

 

「それと、痴話喧嘩はほどほどにして下さいね」

 

「「生徒会長まで言うか⁉︎」」

 

 盛大なハモりでツッコミを入れた後、ようやくみくるは足を動かした。

 まことはまことで、何故みくると話しているだけでこうも周囲にそう思われるのか。そう頭を抱え込ます。

 

 自分達もそろそろ教室まで移動しようかとした時、視界の端でとある1人の人影が映り込んだ。遠くからでも、鮮明にその人の顔が分かる。

 

 すると、教室へと向けていた足先は人影の方向へ向いては、黙ってほんの少し俯く。そして顔を上げた。

 

「ごめん、()()()用事を思い出した」

 

「今?」

 

「うん、今。だから行くねー」

 

 まことの突然の奇行に目を点にする3人。生徒会長であるれいも引き留めようとするが、何故かこの時だけ言葉を失っていた。無意識の直感が働いたのか、まことの変わりように違和感を感じて思い留まったのだ。

 

 そしてまことは、悠然と視界に入れた人物まで歩いて行くのだった。赤い瞳を光らせながら。

 

 

 ◯

 

 

「そこのお嬢さん、ワタシと一緒に雀の像を見ませんか?」

 

「ベイビー。悪いけど、ボクは君がそんな趣味趣向があるとは思えないな。ルルタン」

 

「あはっ! まさかニジーとこんな所で出くわすなんて」

 

 話し掛けた相手はこの学校の高等部の女の子。しかしお互いに、見た目の性別とは裏腹な口調で会話をしている。そして女の子はまことの事をルルタンと呼び、まことは女の子の事をニジーと呼んだ。

 

「もしかして、この銅像にマコトジュエルが宿っているの?」

 

「ああ」

 

「でもこれ、どうやって運ぶのよ?」

 

「それを今考えているところだ」

 

「手伝おうか?」

 

 マコトジュエルが宿っているツバメの銅像。いつでも手に入れられるチャンスがあるというのに、重量という単純な壁に阻まれて盗み出せない。怪盗団ファントムであっても、人並み以上の大きさのある銅像を盗むのは、かなり骨がいる。

 

 仮に運び出せれたとしても、かなり目立ってしまう。周囲からの視線は勿論だが、名探偵プリキュアにすぐさまバれてしまう恐れがある。

 

 マコトジュエルをなんとしても持って帰らなくちゃいけない状況まで怪盗団ファントムは焦っている。故に、珍しくもルルタンが手を差し伸べてはいるが。

 

「遠慮するよ」

 

 ニジーはそれを断った。

 

「ウソノワール様にボクの良いところをアピールしなきゃならないんだ。君の助けは借りない」

 

「そう」

 

 ちょっとだけ残念だった。というのが素直な気持ち。ニジーが手出し無用と言うなら、その気持ちを汲み取ろう。

 

「それよりも、君はいつまで油を売っているつもりなんだい?」

 

「なんの事?」

 

「君が怪盗団ファントムに来てからというものの、まだ一度もマコトジュエルを盗み出していない。寛大なウソノワール様も、我慢の限界というものがあると言ってるんだ」

 

 ルルタンはなんとも言えない表情をする。それを言われたら何も言い返せない。ニジーの言う通り、そろそろ成果をあげないとウソノワールに処分される。間違いなく。確実に。

 

「ワタシの事を心配してるのかな?」

 

「これっぽっちも」

 

「冷たい。ま、安心しなさい。準備はもう出来たから──ニジー、アナタの次に行くわ」

 

「そうかい」

 

 お互いにぶっきらぼうな受け答え。そして会話が無くなり、無言の空間が広がる。そんな静けさの中で、甲高いコール音が鳴り響く。

 

 音の正体は、腰に小さくしてぶら下げているプリキットボイスメモから。

 

「何それ?」

 

「曰く、これがあれば離れた場所からでも連絡を取り合えるみたいよ」

 

「トランシーバーみたいなものか」

 

「面白いでしょう。オープン!」

 

「オープン」の一言で指で摘めるミニマムサイズから、本来の大きさに変化したボイスメモ。ボタンを押し、ルルタンは金田一まこととして応答する。

 

「はいはい」

 

『あっ、まこと?』

 

 声の主はみくるだった。

 

『実は理事長から依頼があってね、それでね、その……』

 

 歯切れの悪いみくるに、ルルタンは少し苛立ちを見せ始める。

 

「切るぞ?」

 

『待って待って!』

 

 切ろうとすると、みくるは大慌てで引き止めようとする。

 

『おばけについて一緒に調査して欲しいの!』

 

 震える声色でそう懇願してきた。

 

「で、調査内容は?」

 

『今言うの⁉︎』

 

「当たり前だ」

 

『い、嫌だよ! わたしがおばけ怖いの知ってるでしょう? こうして話題に出すのも嫌なの。だから合流! 合流してから話す!』

 

 なんて無茶苦茶な奴だ。そんな一方的な願いが通るとでもと言おうとしたが、言葉を唾と一緒に飲み込んだ。今自分は金田一まことなのだ。彼なら、みくるに対してそう冷たくはならない。何よりまことには大なり小なりキュアット探偵事務所に所属している分、探偵としての矜持を持ち合わせている。

 

「分かった分かった。今から行くから場所教えろ。何処に居るんだ?」

 

 みくるから居場所を聞いて、ボイスメモを切った。そしてルルタンは、大きな溜め息を吐いては髪をかき上げた。まるで、一仕事終えた様子。

 

「そんな訳で、ワタシはもう行く」

 

 お互いに顔を見合わせ不敵に笑う。そして、背を向けてそれぞれが思う場所へと足を踏み出した。その際、ルルタンも中へと引っ込んでいく。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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