名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第14話 不協和音な2人

 まことは首を傾げながら校舎の周りをぐるっと一周していた。りえとゆみと一緒に教室に向かっていた筈の自分が、気付けば外に出て佇んでいた。それを探る為にこのように動いている。

 

(何で外に?)

 

 覚えがない。記憶がすっぽり抜け落ちている感覚とも違う。まるで、眠っていたような。そんな感じに近い。

 ただでさえ記憶喪失の人間なのに、日常的にも記憶の欠落が多いとなると、もはや何かの病気ではないのかと疑う。

 とはいえ流石に教室に戻らないとマズい。新学期早々に欠席なんてみくるに知られたら、きっと怒られるに違いない。

 

「早いところ戻る……あれは」

 

 戻ろうした矢先、まことの進行方向の先にはあんなとみくるが居た。キュアット探偵事務所でお留守していたあんなが、何故学校に来ているのか。それに、ポチタンの姿もある。

 

「それにしても、何か様子がおかしいな」

 

 まこと視点から見る2人の様子は、言い争いをして揉めているように見えた。珍しくもみくるは怒っており、対してあんなが顔を俯かせて拗ねている表情をしていた。

 

 まことはすぐに2人の側へ駆け寄った。

 

「あんな! みくる!」

 

「まこと!」

 

「まこと君……」

 

「あんなが学校に居る事は今は置いといて、何で2人は喧嘩みたいな感じになってるんだ?」

 

 いつも2人は仲良く笑顔で過ごしている時間が多く、こうして言い合っている場面に遭遇するのは初めて目にした。あんなも、そこまで感情的になる人ではない事はまことも承知している。

 

「あんなが勝手に依頼を受けて学校に来てたの!」

 

「それはみくるだって同じでしょう! わたしはみくるが悪いと思って、1人で解決しようと思ってるのに」

 

「だから、それが依頼人の迷惑になるんだって」

 

「待て待て待て! ヒートアップすんなって!」

 

 まことを挟んでまた熱を上げる2人。無理矢理仲裁して、一度昂っている感情を落ち着かせる。

 雰囲気は最悪としか言いようがない。まだ、喧嘩をする原因が分からないでいるまことは2人に事情を聞くことにする。

 

「もう一度教えろ。何でこんな事になってんだよ?」

 

「わたしは、おばけの調査を理事長から依頼されて。それで、あんなにも連絡しようとボイスメモで知らせようとしたけど出なかったの」

 

「わたしも調査中だったの! 真理子さんの妹の恵子さんが、みくる達が通ってる学校の生徒だって聞いて。わたしだって考えてやってるんだもん。わたしだって……」

 

 沈むあんなを見て、まことは彼女肩に手を置いた。そして、みくるにもあまり見せたことのない笑顔を向けた。

 

「あのなみくる。あんなだって悪気があった訳じゃないんだ。だからみくるも──」

 

 どちらの言い分も分かる。どちらの味方にも付けれないが、その気持ちを汲み取る事はちゃんと出来る。

 その事を踏まえて諭そうとしたのだが、その前にみくるはまことを突き飛ばした。

 

「もういいよ! 知らない! フンッ‼︎」

 

「おい、みくる!」

 

 そのまま何処かへ歩いて行ってしまったみくる。それを呆然と眺める事しか出来ずにいた。

 

「まこと君を突き飛ばす事なんてないのに。それに、まだ話の途中、だったよね?」

 

「いいよ別に。また話せばいいだけだ。それよりも」

 

 まことはあんなの背中を軽く叩いた。

 

「あんまり考え過ぎるな。あんならしくないぞ」

 

「考えるよ。だって、まこと君もだけどみくるにだって──」

 

「ポチー!」

 

 あんなが喋っている途中で、ポチタンが被せて大声を上げた。そして、あんなを引っ張ってみくるが走って行った方向へ飛んで行く。

 

「ぽ、ポチタン⁉︎ あんな!」

 

「これってもしかて。まこと君、多分マコトジュエルだよー!」

 

「急だないつも!」

 

 ポチタンに身を任せて、2人は足を止めずに走り切る。その途中、歩いて引き返すみくるを発見した。

 

「「あっ、みくる!」」

 

「ちょ、2人共⁉︎」

 

「マコトジュエルが危ないって!」

 

 ポチタンはみくるを通り越して行く。そのすれ違い様に、まこととあんなはみくるの腕を掴んで無理矢理連行させる。

 突然の事で、振り回されるみくるは流れに身を任すしかなかった。

 

 

 ◯

 

 

 ようやくポチタンが止まった。そこで息を切らした3人が目にした光景は、1人の女子生徒と学校のシンボルでもあるツバメの銅像。

 女子生徒を目にしたあんなが驚きの反応を示した。

 

「恵子さん!」

 

「あの人が?」

 

「うん、ロンドンに留学中で。朝、お姉さんの真理子さんが電話しても出なくて……」

 

「フッ!」

 

 あんなが探していた恵子が不敵に微笑む。そして、盛大に制服を脱ぎ捨てて、その下に隠していた姿を曝け出した。恵子ではない、本来の姿を見た3人は開いた口が塞がらなかった。

 

「ニジー!」

 

「もしかして、恵子さんに変装していたのも連絡がつかない原因と繋がってる?」

 

「そうだその事なんだが、電話に出ないのは仕方ない事だと思うぞ?」

 

「えっ?」

 

 連絡が取れないのが当たり前と言うまことに、あんなは目を点にしていた。その事について、何も分かっていないあんなにみくるが説明をする。

 

「ロンドンにいるって言ってたけど寝てたのかも。こっちが朝の8時だとしたら、4月のロンドンは夜中の12時だよ」

 

「あんな。この世には時差ってものが存在してるんだ。みくるが説明がしているのがそれだ」

 

「そっか!」

 

 あんなが納得した。これであんなの方の謎は解決し、これを報告すれば依頼も達成させるだろう。

 なのだが、これに関してみくるはあんなに物申したかった。

 

「わたしかまことに話してくれればすぐに分かったのに!」

 

「さっき話そうとしたら、みくるが行っちゃったんでしょ! それに、まこと君と会ったのも今さっきだったし!」

 

「あーもー! 2人共喧嘩は止めろって!」

 

 3人の揉め事を目の前にして、ニジーは呆れ果てていた。

 

「にしても、彼女に変装して全くもって好都合だったよ。何せ、留学中の彼女は海の向こう側。思いがけず会う事なんてないだろ? お陰で昼夜問わず好きなだけ調べられたよ」

 

「種明かしついでに、何を調べていたか教えてくれるか?」

 

「探偵なら推理してみたらどうだい?」

 

「緊急を要するんでな。教えてくれるんなら手間が省ける」

 

 ポチタンの反応に加えて怪盗団ファントム出現を推察するに、恐らくこの場の何処かにマコトジュエルが存在している筈。それを素直にあぶり出すのは困難だ。それも短時間で謎を解き、ニジーよりも先に回収するとなると難易度は更に跳ね上がる。

 

「この銅像をどう運ぶかさ。街で何を使えばこの大きな像を運べるのか、とにかく調べ、考えに考えた」

 

「でも閃きが無く、ここで待ちぼうけしてたと」

 

「ああ、()()()()()はね」

 

 その言いようからして、ニジーは銅像を運ぶ手立てを考え付いたに違いない。

 

「君のお陰で思い付いたよ」

 

 ニジーの視線の先にはみくるがいた。その視線で、みくるは何を察した。

 

「嘘よ覆え! 出よ、ハンニンダー!」

 

 マコトジュエルが眠るツバメの銅像に、黒いエネルギーが注がれて怪物ハンニンダーと化けた。

 

「「ハンニンダー!」」

 

「こんな風にツバメにして運べばいい。ツバメのように飛んで行けば、簡単に運ぶ事が出来る!」

 

 銅像は2体のハンニンダーと化して、探偵3人の前に立ちはだかった。此処は学校の敷地内。今すぐに対処しなければ、被害はこれまで以上に出る。

 

「2人共!」

 

「「うん!」」

 

 まことはポチタンを抱え離れ、あんなとみくるはペンダントを握る。

 

「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

 首からぶら下げる小さなペンダントから「オープン」の掛け声で手のサイズと同じ大きさに変化。そして、ジュエルキュアウォッチとして姿を変える。

 

「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」

 

 マコトジュエルをセットし、長針を複数回回す。回す事であんなとみくるの姿は瞬く間に変わり、別物の姿へ変貌させる。

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

「わたしの答え、見せてあげます!」

 

 いつも通り名探偵プリキュアに変身した2人だが、意外にもニジーは臆する様子を見せていない。寧ろ、どこか余裕を持っている。

 

「一気に2つもマコトジュエルが手に入るとは、まさに一石二鳥」

 

「渡さない! 幸せを運ぶと言われるツバメは、学校のシンボルなの! 生徒と先生達の思いの込もった像なの!」

 

「このボクにも幸せを運んでくれたようだね。ハンニンダー!」

 

 ニジーの指示で、2体のハンニンダーが動き出した。真正面から来るハンニンダーに対し、避けねばとアンサーとミスティックも足を動かすのだが。

 

「2人共ちょっと!」

 

 アンサーとミスティックの動き出した方向に問題があり焦った。横並びになっている2人は、不覚にもお互いが衝突するように動いてしまう。言うより行動の方が早く、まことの声が届く前に、2人は顔をぶつけ合った。

 

「「ッ⁉︎」」

 

 予期せぬ事態に、ぶつかり合った後は互いに顔を見合わせた状態のまま硬直してしまう。その隙を逃すハンニンダーでなかった。

 

「前見ろ前!」

 

 声で振り返るが目にした時は既に遅く、反応するよりも先にハンニンダーの蹴りが2人に襲い掛かる。吹っ飛ばされた2人は、離れて避難していたまこととポチタンの傍らまで転がり悶絶する。

 

「アンサー、ミスティック! 一体どうしたんだ?」

 

 いつもの息の合った動きがまるで出来ていない。酷く言えば、初めて名探偵プリキュアに変身した時よりも足並みが揃っていない。

 逆に、ハンニンダー側はアンサーとミスティック以上のコンビネーションで攻めている。今までのハンニンダーと比べても強さに個体差はそこまで変わりないのだが、ここまで差があるのには2人が問題を抱えているせいだ。

 けれども、その事に3人はまだ気付いていない。

 

 要因が積み重なっているこの状況。焦りを隠せず、勝負を急がせる。

 

「像を取り返す!」

 

「マコトジュエルを取り返す!」

 

 2人はジュエルキュアウォッチを手にして、長針を回す。

 

「「これがわたし達のアンサーだ‼︎」」

 

 一気に浄化する。名探偵プリキュアが持つ、最高火力で浄化しようと2人は地面を蹴った。

 

「……?」

 

 一瞬、僅かな揺らぎをまことは見逃さなかった。

 

「「これで!」」

 

「「ハンニンダー!」」

 

 力には力で勝負。ハンニンダーも拳を突き出して対抗する。それでも、と力強く思うアンサーとミスティックだがまたも予想だにしない出来事が発生した。

 

「「あぁッ⁉︎」」

 

 正面からのぶつかり合いを制したのは、まさかのハンニンダーの方だった。つまり、返り討ちに遭った。

 拳を振り抜き、再度アンサーとミスティックを吹っ飛ばした。

 

「やっぱりか……」

 

 いくら2体のハンニンダーが強いからと言っても、あの攻撃を跳ね返すなんてあり得ない。そのあり得ない事態を引き起こした原因をまことは知っている。

 

(勝負を焦り過ぎて、踏み込みが甘くなっていた。加えて出だしも僅かにズレているときた)

 

 この2つの要因があり、技の威力が半減されていた。

 

「ここまで息が合わないんだなんて」

 

 振り絞った力も通用せず、完全に万策が尽きて対処のしようがない。例え策を講じたとしても、今の凸凹とした連携ではそれを体現させるのは不可能。

 

「さぁ、そろそろ舞台から降りてもらおうか」

 

 他に伏せる中で、アンサーは何か物を天に掲げた。

 

「何、それ?」

 

「プリキットにも見えるけれど……」

 

 追い詰められたアンサーは、これが最後の希望として声を大にして使う。

 

「オープン!」

 

 プリキットを使う為の掛け声を言い放つも、そのアイテムは全く応えようとはしなかった。

 

「あれ? オープン、オープン!」

 

 何度も声を上げるが、一向に変化は訪れる事は無かった。

 

「そんな……どうして……?」

 

 こんな筈ではなかった。上手くいかない事の連続で、アンサーは心身共に疲労でピークを迎えた。

 

「ハンニンダー!」

 

 トドメを刺そうと1体のハンニンダーが低空飛行で向かって来る。避けようにも、アンサーは呆然と立ち尽くしていて、そのような素振りを一切見せてない。このままだと直撃は免れない。

 

「君達には、もう舞台に上がる資格がないのさ! 名探偵プリキュア!」

 

 絶対絶命の危機。そんな時だった。眩いピンク色の閃光がハンニンダーの行手を阻んだ。

 

「ポチー!」

 

 発光している正体は、ポチタンだった。ポチタンから凄まじいエネルギーと光が溢れ出ており、ハンニンダーを押し返そうとしていた。

 

「ポチタン、いつの間に」

 

 抱えられていたポチタンが抜け出した事に、まことは今更ながら気付いた。

 

「ポ、チィー……」

 

 更にポチタンの光は増して、それに伴って押し返す力もまた増していく。力を増幅させ続ける事で、とある人物にも微かに影響を与えさせていた。

 

「痛っ!」

 

 何の前触れも無く、まことの胸に痛みが生じた。それによって、まことの両目は赤く変色し、内に潜む者が堪らず表に出てきた。

 

『ナニ、コレ? 身体から引き剥がれそうなこの感覚は……!』

 

 不思議な力を発現させるポチタンに、一同視線が集まる。そして尚も、ポチタンから発する光量はとどまる事を知らない。

 

「ポチィィー‼︎」

 

 限界まで引き出された力は、光が収束するのと同時にハンニンダーを弾き飛ばした。

 

 謎の力によって攻撃を受けたと思われるハンニンダーは満身創痍。それを見たニジーは、先程とは打って変わって青ざめる。

 

「このまでは……ハンニンダー!」

 

 これを機に逆転の起点とされたら敵わない。そう危機感を覚えたニジーは退く事を選んだ。

 

「マコトジュエルは2つ手に入れた。よしとしよう! さらばだ、名探偵の諸君!」

 

 もう1体のハンニンダーがニジー達を抱えて空へと飛び立った。いくら名探偵プリキュアであっても、空へと逃げられては手も足も出せない。逃走するニジーの姿を見届ける事しか出来なかった。

 

「ポ、ポチぃ……」

 

 先程解き放った力で、全て出し切ってしまいポチタンはその場に崩れ落ちる。アンサーとミスティックは駆け寄り、介抱する。

 

「アンサー、ミスティック……」

 

 胸の痛みが消えたまことは、苦い表情をして2人の背中を見ているだけ。そして思った。自分にも戦える力と知恵があれば、と。こんな事にはならなかった。

 

 マコトジュエルは奪われ、そしてポチタンは倒れた。心の悲しみが映し出すように黒雲が空を覆い、ぽつりぽつりとした雨が降り出し、やがて車軸を流すような大雨となった。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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