名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
「見えた!」
ポチタンが示した虹ヶ浜まで全力疾走したまこととジェット。2人が目にした光景は、ハンニンダー相手に苦戦を強いられて地べたを這いずっている名探偵プリキュアの姿。
「2羽のツバメだったのに1羽になってる。もしかして、合体したのか?」
2体のハンニンダーでも巧みな連携で名探偵プリキュアを追い込ませていた。1体となっているのなら、勝てる見込みがあるのではと側から見ればそう思うが、事実として目の前の光景が映し出されている。
まだ2人の間に溝があり、息が合っていないのか。それとも、単なるハンニンダーとの実力差でこのような有様になっているのか。
なんて、今そんな事を考えている暇なんてない。まこと達がわざわざ前線へ来た理由。
それは──。
「アンサーとミスティックの力になるんだ!」
「ポチ!」
ポチタンの声に反応してか、名探偵プリキュアと対峙していたニジーがこちらへ視線を向けた。
「こっそり近付こうとしたけど、やっぱり気付かれるか」
不敵な笑みを浮かべるニジーは、待機しているハンニンダーへと指示を飛ばす。
「舞台には上がらせないよ! ハンニンダー!」
前回のポチタンの隠された力を前もって知っているニジーは、それを危惧してポチタンに狙いを定めた。一度切りの力。それもまだ不安定なものだが、その脅威を脳に焼き付けられているニジーの警戒心を煽るには十分過ぎる。
「ハンニンダー!」
両翼を大き広げ、ツバメを模した無数の光弾がまこと達へと降り掛かる。
「ポチ……」
目の前の危険に僅かに臆したポチタンだったが、ジェットはプリキットを手渡して力強く言う。
「これ! 届けたいんだろ? あんなとみくるに!」
「ポチ!」
ポチタンの力強い頷き見て、ジェットはいつも頭部に付けているゴーグルを下げる。
「ここは僕達に任せろ! まことも付き合ってくれるよな?」
「当たり前だ!」
ポチタンはプリキットを自分の中に収納して、2人の元へと飛んで行く。そんなポチタンの姿を見て、2人はある期待を心にする。
「名探偵プリキュアには、それを支えるおとも妖精がいる」
「名探偵の身近にあるものとなり、いつも側で見守る存在」
((ポチタンは頑張っなろうとしているのか? アンサーとミスティックのおとも妖精に!))
飛来してくるツバメの光弾。しかしその中の一つが軌道を変えて、ポチタンの方へ向かって行った。
「「なっ⁉︎」」
まこととジェットもその事に気がつくも、今からでは間に合わないところまで許してしまっている。そもそも、自律して動くとは全くもって予想外。
呼び掛けるよりも早く、光弾はポチタンの元へ。
と、思われたが。一筋の黒い閃光が光弾を撃ち抜いた。
「ポチ?」
ポチタンだけではない。まことやジェットに降り注がれていた雨の様な無数の光弾も全て、背後から撃ち落としていった。
「今のは⁉︎」
先程の黒い閃光はまこととジェットの背後からのもの。慌てて振り返り、その原因を探ろうとしたのだが。
「誰も居ない?」
「いや……誰か居た形跡が残ってる」
影すら無い状況にジェットは不思議に思っていた。しかしまことは、小さな痕跡を見逃してはいなかった。此処は砂浜。誰かがそこに立っていたという足跡が残っていた。
何者かの仕業と断定はするが、それを追う事は今となっては不可能。
それでもまこと達を脅かす脅威は取り除かれた。後は、全て名探偵プリキュアとポチタンの3人に託すのだった。
◯
まこと達が来る直前まで、アンサーとミスティックは窮地の危機に立たされていた。
全身はボロボロとなっており、全身で息をしている。これ以上の戦闘は望めない。
だけど、2人はまこと達が見えない所で密かにだが、以前よりもその繋がりを強く、固く決して切れない絆を結んでいた。
ミスティックが伸ばす手のひら。それを手に取るアンサー。初めて出逢ったあの時とは全くの逆。あべこべの2人。そんな2人がようやく立ち上がった。
「何ッ⁉︎」
立てる筈もないと踏んでいたニジーに、この事態は予想出来なかった。体力は限界。実力の差も見せ付けられた。なのに何故立ち上がるのか。得体の知れない恐怖が、ニジーの全身を包み込んでいく。
「ミスティック、さっき1999年に、この時代に来て心細い、不安でしょって言ったけど──わたしもう平気だよ!」
先程までミスティックにぶつけた秘めた本音。不慮の事故とはいえ、この時代に飛ばされたアンサーは不安で仕方なかった。
知り合いもいない。親戚も友達も。そして頼れる家族すら存在しない。タイムスリップした事で、自分の常識すら通じないこの時代に独りぼっちを強いられた。
それを拭い去る事なんて出来ない。唯一の同性での友達のみくるは、学校では自分の知らない彼女がある。
それが原因とは言えないが、それでも喧嘩する要因のひとつでもあった。
しかし今は違う。自身が口にした通り、今の彼女に不安などとうに拭い去った。それは独りだった自分に光を照らしてくれた存在のお陰。
「だって、わたしの中にはみくるがいるから!」
「ええ! わたしの中にもあんながいる!」
「わたし達は──」
「「1人じゃない‼︎」」
完全に立ち直った2人に対してニジーは。
「1人だろうが2人だろうがどうでもいい! ボクには後がない……倒すまでさ! ハンニンダー!」
焦燥感に駆られているニジーから今までにない程の感情が溢れ出ている。完全に冷静さを欠き、勝負を焦ったニジーはハンニンダーを無防備に突っ込ませる。
「ミスティックと2人でマコトジュエルを!」
「ツバメの像を!」
「「取り返す‼︎」」
固く結んだ手を離さず、2人は地を蹴る。同時に両脇からポチタンも飛び出した。
「ポチー!」
ポチタンの姿を見て、2人はハッとする。
「「2人じゃない、3人で!」」
「ポチー!」
ポチタンから渡された小さなプリキット2個を、アンサーとミスティックは手に取った。
「「オープン! プリキットミラールーペ!」」
「オープン」の一言でプリキットミラールーペは本来の大きさへと変化した。そして、ポチタンの胸から、これまでとは全く別物のマコトジュエルが2つ現れる。
「「マコトジュエル!」」
プリキットミラールーペにそれぞれのマコトジュエルを嵌め込み、鏡を開ける。これが、本来あるべきプリキットミラールーペの姿。
「見て!」
「感じて!」
「謎を解く!」
ミラールーペに光を蓄えさせ、浄化の力を充填させる。
「「これが、わたし達のアンサーだ!」」
限界にまで充填された光のエナジー。それを2人同時に一気に解き放つ。
「「プリキュア! フライング・スペクトル!」」
ミラールーペから前方に放たれた光は、ひとつに混じり合い、輝かしい1羽の大きな鳥となって突き進む。ハンニンダーの身体に衝突、そして突き抜けた。
「「キュアット解決!」」
ポチタンの協力も得た名探偵プリキュアの新たな浄化技によって、ハンニンダーは闇の力から解き放たれて元の姿へと戻った。取り込まれていたマコトジュエル2個も、ポチタンの中に収納された。
◯
あんなとみくるにポチタン。3人が仲良く手に取る姿を見て、まこととジェットは静かに微笑んだ。
「とうとうなれたんだな。2人のおとも妖精に」
「それもいっぱしのな」
まこととジェットの存在に気付いてか、みくるはまことの側へと駆け寄った。そして、まことを目の前にして少し落ち着かない様子でいる。
「あの、まこと」
「ん? 何だ?」
「その……あの時八つ当たりしちゃってごめん!」
みくるの言う八つ当たりとは、学校で突き飛ばしてしまった件だ。みくるはその事を胸に突っかえって罪悪感を感じさせていた。
今更ながら遅いが、その事についての謝罪をしたということだ。
「あの時っていつの時だ?」
謝罪を受けた本人は、何も知らない様子でいた。様子からしてまだ怒っているのかと慌てふためく。
「学校で突き飛ばしちゃった事だよ!」
「あれね。石に躓いただけだ。気にすんなよ」
「いや、でも──」
「気にすんなって。みくる」
謝罪をしようとするみくるの口を、まことは人差し指で閉じさせた。そして、屈託の無い笑みで諭した。みくるの気持ちも十分に理解しているつもり。
みくるも、まことの気持ちがようやく伝わってこれ以上は何も口にしなかった。だから代わりに、ある言葉だけを伝えた。
「まこと。ありがとう」
一悶着はあったものの、奪われたマコトジュエルもツバメの像も取り返した。その後日。真理子がキュアット探偵事務所に訪れ、妹の恵子とも連絡が取れた。原因は日本とイギリスの時差によるものだった。これも、まこととみくるの推論で合っていた。
これにて全ての謎は解決となり、事件は静かに幕を閉じるのだった。
まだ先に取っておこうと思っていたのですが、次回は何話分かオリ回挟みます。矛盾無く話の整合性を取れているかのチェックを丁寧にしたいので、全部出来上がり次第1話ずつ投稿しようとかと思います。