名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第18話 明智あんなの華麗なる推理 ファイル2

「と言ったけど、何から手を付ければ良いのかな?」

 

 開口一言目のあんなに、まこととみくるは肩が下がった。犯人を追い詰めるには、先ずあの僅かな時間で盗まれたトリックを見破らなければならない。

 

「先ずは停電が起きた原因から調べる。次にアリバイ調査をする。分かる範囲で一つずつやるぞ」

 

「それじゃ、任せたぞ」

 

 探偵ではない自分は力にならないと踏み、ジェットが席に座ろうとするがまことがそれを止める。

 

「ジェットさんも来るんだよ。電気系統なら、この中で誰よりも分かるだろ? 発明家だし」

 

「発明家だからっていう括りは言いたい事あるが、そういう理由ならやってやるさ」

 

「それならこっちよ。付いて来て」

 

 

 ◯

 

 

 真香の案内で地下室へとやって来た。この場所には、レストラン内のあらゆる電気を管理している。停電したという事は、ブレーカーになんらかの影響で電気が落ちたに違いない。

 

「真っ暗ですね」

 

 地下室は窓も無い暗闇の密閉空間。足元が全く見えず、明かりが無ければ転んでしまう。あんなは気を付けて足を進める。

 

「うぅ……真香さん、明かりって何処ですか?」

 

 幽霊が苦手なみくるにとっては、こういう不気味な場所は少々不得意。地下室に来てからというものの、先程からずっとあんなの袖に掴んで離れようとしなかった。

 

「あんな、顔横。そこに明かりのスイッチがある」

 

「あっ、ホントだ!」

 

 まことの声がした。闇の中、あんなは顔横の壁を凝視して明かりの電源とと思われるスイッチを入れた。

 すると地下室全体が明るくなり、視界が良好となった。

 

「次はブレーカーだな。真香さん、ブレーカーは何処にあるんですか?」

 

 ジェットは真香に尋ねるも、少し小難しい表情をして唸っていた。

 

「実は私、地下室にはあまり立ち入ってないから何が何処にあるのか分からないの」

 

「そうですか。まあ、ブレーカーのある場所は大体見当はつきます。ほら、探すぞ3人共」

 

 ジェットの指示でまこと達は動く。大抵のブレーカーは天井付近の位置に設置されている事が多い。あまり目立たず、簡単に人の手が届かない箇所。そこを重点的に目を走らせる。

 

「見つけた。あれだな」

 

 電源スイッチの次はブレーカー。まことは誰よりも早くブレーカーを見つける事が出来た。

 

「見つけるのが早いな、お前は」

 

「偶然だ偶然」

 

 褒めるジェット。みくるも心の中で感心をしていたのだが、どうにもあんなはそれに対して違和感を感じ取っていた。

 

「あんな、どうしたのよ?」

 

「ちょっと……ううん、なんでもない。気のせいだったよ」

 

 あんなはその違和感を探ろうとしていたが、あくまで違和感。周囲を見渡しても、何処にも変わった様子など見られない。自分の思い過ごしと片付け、振り払った。

 

「少し高いな。何かハシゴのようなものがあれば届くんだけど」

 

 すると、真香が何処からかハシゴを持って来てはブレーカーの真下に置いた。

 

「ありました。これで届くかしら?」

 

「んじゃ試しに俺が」

 

 徐にまことがハシゴに登ってブレーカーに触れる。高さは十分。これなら、背の低いジェットにも難なく手が届くだろう。

 

「何でお前が登るんだよ」

 

「万が一ジェットさんが届かなかったら可哀想だと思ってな」

 

「……プッ!」

 

「おいみくる、今笑ったな?」

 

「笑ってませんよ!」

 

 何気なく言った言葉にみくるが吹き出し、それに対して言った本人のまことではなく、笑ったみくるに詰め寄るジェット。

 

「ついでだから中見てみるわ」

 

 そういって蓋を開けて、ブレーカーの中を確認する。しかしというか、当然というべきか、まことが見てもさっぱり分からない。静かに閉め、ジェットの元へと戻る。

 

「あとは頼んだ!」

 

「だと思った。待ってろ」

 

 バトンタッチし、ジェットが代わりにブレーカーの中を覗いた。

 

「線が一本切れてるな。見た目はどうもないが、どうやらそれが原因で主電源が落ちた形跡がある。念の為、配線が全部通電しているかチェックする。また落ちてもあれだしな」

 

「どれくらい掛かりそうかしら?」

 

 真香がそう尋ねた。ジェットは唸りながら大雑把な時間を算出する。

 

「特に問題が無ければ大体30分から1時間ってところだな。電気が通っているかどうかの確認と配線の繋ぎ直しだけだしな」

 

「時間掛かるな」

 

「ならその間、わたし達は消えたメモ帳を探そっか!」

 

 あんなの提案によって、ジェットとは一度此処で分かれて4人はホールに戻るのだった。

 

 

 ◯

 

 

「それじゃあ先ず、真香さんから聞いていきますね」

 

 あんなとみくるは、プリキットブックを片手にそれぞれ事情聴取を始める。

 

「停電が起きる直前、貴女は何処で何をしていましたか……と、言いたいけど」

 

「その時、わたし達の目の前に居ましたよね」

 

 あんなとみくるは、自分達が聞いておいて少し戸惑っていた。何せ、楠美と真香は自分達が呼び出していたのだ。そんなタイミングもあやふやな状況で、人為的にブレーカーを落とす事なんて不可能に近しい。

 

「なら、こう聞こうか。ホールに来るまでお2人は何をしていましたか?」

 

 まことの咄嗟の機転。直後のアリバイがあるのならば、少し時間を遡ってみればいい。それならば2人も答えやすいうえ、あんなとみくるも証言のひとつとして事件をスムーズに解決しやすい。

 

「被害者の俺まで訊くのか。まあいいが。俺は厨房でお客様に出す品を調理していた。あっ、でも一回だけトイレに行きはしたな。少しの間だが」

 

「それはいつ頃か分かりますか?」

 

 みくるは積極的に話を進めていく。正確な時刻を割り出す事で、その日のアリバイは証明されるのだから。調査をする側も単なる間違いのひとつで信用問題に関わってくるから。

 

「そだな。停電が起こる20分前ってところだな」

 

「お手洗いから厨房に帰って来るまでの時間は分かりますか?」

 

「ざっくり5分前後だな。飲食店は衛生管理が徹底されてるからな。多少の着替えをしていかないと、殺菌を厨房に運んでしまうから恐れがあるからどうしても時間が掛かっちまう」

 

「それを証明出来る人は?」

 

「厨房に立ってた連中全員だな。時間にしても多少のズレはあれど、全員が俺と同じ時間帯を指し示すだろうな。時間には厳格にしてるからな」

 

 証言出来る者がそこまで大人数となると確認するまでもないに等しい。

 

「あの、この建物の間取り図ってありますか?」

 

 まことの言葉で、楠美は一度席を外した。その間に、あんなは真香にも同じ内容で質問を改めてした。

 

「真香さんはこちらに来るまで何処で何をしてましたか?」

 

「2階で書類の整理をしてたわ。暫くドタバタしてて、書類が積み重なって部屋からは出てないわ。篭ってた時間も、貴方達との挨拶が終わってからずっとね」

 

「それを証言出来る人は?」

 

「……居ないわ。部屋には誰も入って来てないもの」

 

 真香からの話を聞き終えた所で、席を外していた楠美が間取り図を手にして帰って来た。

 まことはそれを受け取り、あんなとみくるを呼んで広げる。

 

「改めて見ると、すごい広さよね」

 

「そうだな。えっと、ここが確か地下室への入り口だったよな?」

 

「うん。あっ、みくる、まこと君見て」

 

 あんなが指を刺したのはお手洗いの間取り。その周辺には重要な情報が転がっていた。

 

「地下室の入り口付近には、お手洗いと2階に続く階段があるよ」

 

「なるほどな。他の人にも聞いてみようか。詳しく調べるのは、2階へ行ったりトイレを訪れた人に絞り込んでから」

 

「「うん」」

 

 あんなとみくるは力強く頷き、それぞれスタッフやお客として来店している人全員に聞き込みをするのだった。

 

 

 ◯

 

 

 全員の証言を聞き終えた3人は、また集まって得た情報を共有した。そのうえでブレーカーを落としたと思われる人数も絞り込めれた。

 

「それにしても、こうなったか」

 

「でもこれどうするのよ?」

 

「うぅ……」

 

 まこと、みくるの順であんなに謎を投げ掛ける。容疑者は2人に絞り込まれたが、その容疑者2人というのが楠美と真香となった。全員が頭を抱え込む羽目となってしまったが、一応前進はしている。

 

 しかし、ひとつだけ気掛かりな点が浮上する。

 

「わたし思うんだけど、楠美さんは容疑者から外していいと思う」

 

「わたしもそう思う。まことは?」

 

「俺はそうは思わないな」

 

 楠美が容疑者から外れる理由としては至って簡単な事だ。それは被害者だから。わざわざ自作自演してまで、この様な騒ぎを起こすとは先ず考えられ難い。なので、容疑者から外す理由としては十分なのだが、どうにもまことだけは納得してなかった。

 

「何でよ? 料理に関する事が入ってあるあのメモ帳を、わざわざ騒ぎを起こしてまで失くすメリットが見つからないよ。もしかしたら、人の手に渡って大事な情報の漏洩になりかねないし」

 

 完璧とまで言える内容をみくるは言う。だが、大事な事を見落としている。

 

「みくる忘れたのか。この事件にはマコトジュエルが関わっているんだ。怪盗団ファントムが楠美に変装している可能性だってある。自作自演で、騒ぎに乗じて盗む事なんてあり得るんだぞ」

 

「それは、そうだけど……」

 

「それならもう一度レストラン内を歩き回るか。ついでに身体検査でもしてみるか」

 

 3人は話をするついでに、レストランの中を隈なく調べ尽くした。何処かにメモ帳が隠されているのではないかという可能性を捨て切れずに。しかし見つかる事はなかった。

 となると、犯人が体の何処かに隠して持っている事になる。

 

「あんなとみくるが2人の体を調べてくれ。俺は上着に隠してないか調べるから」

 

「分かった。楠美さん、真香さん。上だけ脱いでちょっと身体検査しても宜しいですか?」

 

「え、えぇ」

 

「そりゃ構わないけど?」

 

 あんなは楠美を。みくるは真香を調べる事になった。しかしこれも、しらみ潰しに探ってはいるが中々見つかりはしなかった。

 

「あの楠美さん、これなんですか?」

 

 身体を探っていたあんなは、楠美に付着していた滑りのあるシミに疑問を抱かせていた。

 

「ああそれはな、オリーブオイルさ。少し垂らしちゃってな。実はポケットに入れていたメモ帳にも付いてな」

 

「オリーブオイル、ですか」

 

 ここでようやく、地下室に居たジェットが戻って来た。

 

「あっ、ジェット先輩おかえり。ブレーカーどうだった?」

 

「直した。原因は配線の劣化による断線からのショートだ。ただなぁ……少し腑に落ちないんだよ」

 

「腑に落ちないって何が?」

 

 身体検査を終えたみくるが話に参加する。

 

「劣化してたのが断線していた一本だけで、他の配線に関しちゃそんな事なかったんだよ。さっき他の客とかにこのお店が開店した時期を教えてもらった」

 

「「それで?」」

 

「このレストランが開店してまだ2年程度。配線の劣化は色々条件にもよるけど、大体10年以上は保ってくれるんだけどな」

 

「それって、誰かが意図的に古い配線に変えたってこと?」

 

 みくるが鋭い指摘をする。みくるのそれは的を得ている。しかしジェットの表情はとても神妙なものだった。

 

「かもな。だとしても意図が分からん。それに漏電ならともかく、いくら劣化してると言っても何かしらの力が加わらない限り切れる事はまずないぞ」

 

「配電盤には何かそれらしきものはありました?」

 

「それらしい物はないな。ああ、代わりと言って何だがコレが地下室に落ちてたぞ」

 

 そう言いながら、ジェットはポケットからある落とし物を2人に見せた。

 

「それって……そうか、そういう事だったんだ!」

 

 落とし物を見たあんなは声を上げた。そして、頭の中でパズルのピースをひとつずつ嵌め込んでいく。

 

「だからあの時……それなら筋は通る。だとして、コレが落ちてた理由も大体見当がつく。あの時感じた違和感の正体もこれで説明がついた」

 

「あんな?」

 

 少しずつ集中力は高まり、それに伴って瞳を伏せていく。

 

「盗んだ手口も、この方法を使えば簡単に盗み出せる。わたしの推理通りなら、盗まれたメモ帳はまだ持ってるに違いない。証拠と一緒に」

 

 パズルのピースが組み上がり、真相に辿り着いたあんなは瞳を開けた。

 

「……みくる。見えたよ、これが答えだ」

 

 いつも事件の真相が解明された時に口にする台詞。今日はいつもとは異なり、怖いくらい静かものだった。

 

「アリバイトリックの謎も全部解けたよ。今からそれを説明するから。犯人は──」

 

「犯人は貴方だ! 久坂部真香!」

 

 バッとその場にいる者全員が注目する。声を出したのはまこと。犯人と言われた真香に、全員の視線が釘付けされた。

 

「このメモ帳は、楠美さんのもので間違いない。貴方の上着のポケットにメモ帳があった」

 

「そ、そんな……」

 

「2階に1人で居た貴方は、機を見計らって地下室へ移動してブレーカーに細工をした。その後、何食わぬ顔で俺達の前に現れた。そして、闇に乗じて盗み取る」

 

「でも……!」

 

「盗まれたメモ帳も上着から出てきた。これ以上の証拠は無い」

 

 真香に事実を突き付けるまこと。だが、それに待ったを掛ける人物が2人居た。

 

「「ちょっと待って!」」

 

「あんな、みくる?」

 

 あんなとみくるは、険しい表情でまことを睨み付けていた。明らかに怒っている。

 

「真香さんは犯人じゃないよ」

 

「あんな。だがこうしてメモ帳が見つかったんだ。どう考えたって」

 

「それは犯人が巧妙な手口で仕組んだ罠だよ。それも、かなり念密にされた」

 

 あんなとみくるは並び立った。

 

「「今から証明する。わたし達の推理で!」」




この謎案外簡単なものです。前回の話を合わせてよく読めば誰が犯人か見えてきます

ここまでの拝読ありがとうございました。
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