名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第19話 明智あんなの華麗なる推理 ファイル3

「全て証拠は揃っている。これ以上何を突き止めるって言うんだ?」

 

「真犯人だよ」

 

 まことの眉がピクリと動いた。

 

「今からそれを証明するから。みくると一緒に」

 

 みくるは、これまで起きた一連の事件を整理する。

 

「犯人は限られた時間内でブレーカーに細工し、何食わぬ顔でわたし達の前に現れた。そして、停電が起きたその間にメモ帳を盗んだ。ここまでは良いですね?」

 

「ブレーカーに細工だって? それは本当なのか?」

 

 この事実は、まだあんなにみくるにジェットの3人にしか知らない。レストランの関係者や楠美にはまだこの事は伝えていないのだ。

 

「全て一本の配線の劣化による断線が原因なの」

 

「それで停電が」

 

「なあみくる。劣化が原因なら、それは偶然じゃないのか?」

 

 まことは意見する。停電とメモ帳が盗まれた事は偶然が重なり合った結果の出来事。それが犯人を探す手掛かりになるとは思えない。

 

「細工がしてあるって言ったでしょ? 犯人が意図的にその配線に入れ替えて、楠美さんがホールに出てきたタイミングを狙って停電させたのよ」

 

「そんなのは無理だ。断線したと言うなら、配線にそれなりの負荷が掛からないといけない。地下にある設備だけで電圧を上げるなんて出来る訳がない」

 

「そう。だから引きちぎったのよ、配線に重りを付けてね。古い配線を使った理由も"自然に切れた"という事を印象付ける為の印象工作」

 

「それでも納得いかないな」

 

 そう。その推理が合っていたとしてもひとつだけ欠点がある。

 

「重りを付けたのなら、その重りは配線盤の中に転がってる筈だ。だけど俺が見た時には何も転がってない。ジェットさんも見たよな?」

 

 まことがジェットにそう投げ掛けると、細かく頷いた。ジェットも確かにその目で確認している。重りらしき物は何処にも見当たらなかった。

 

「無かったぜ」

 

「ほらな」

 

「けれど、ジェット先輩はコレを見つけたの」

 

 あんなが例の落とし物をまことに見せる。それを見たまことの目が大きく見開いた。

 その落とし物というのが、キュアット探偵事務所の人間にしか持っていないプリキットグロス。

 

「プリキットグロスで重り代わりをした。最初は単なる落とし物かと思ったのだけど、そうじゃなかった」

 

「犯人はブレーカーを調べる振りをして、わたし達に見えない角度から仕掛けに使ったプリキットを回収したの」

 

 あんなの言葉にみくるが犯人にそう追撃をした。しかし、ブレーカーについてのアリバイトリックの説明はまだ終わってなどいない。

 

「犯人は恐らく、昨日の夜にこの地下室に侵入して配線を弄り、今日この重りとなるプリキットの仕掛けをした」

 

「何で昨日の夜だと推理出来る?」

 

 まことの質問にはジェットが代わりに答えた。

 

「ああそっか。電気を使う昼間だと、電気が通って配線を変えれないからな」

 

「うん。それに昼間の停電は怪しまれる。だから明かりも全部消えてる夜なら、一時的にブレーカーを落としても気付かれ難いの」

 

「それなら、ここに居る全員のアリバイは無くなる。全員が怪しいって事になるぞ」

 

 振り出しに戻ったと思いきや、次のあんなのひと言で空気が凍り付く。

 

「それこそが、この事件の肝となる部分です。自分以外にも犯人であるという事を少しでも仕向けさせる為の。けれど、犯人はある言葉がきっかけで、完璧と思われたこのアリバイトリックに穴が出来てしまい焦った」

 

 あんなは気付かれない程度に、犯人と思しき人物へ自然に視線を向ける。その視線の意味を犯人はまだ気付いていない。

 

「このままじゃ、自分に矛先が向けられると悟った犯人は突発的に自ら犯人をでっち上げるしかなかったんです」

 

 あんなは徐にメモ帳を手に取り、真香と交互に視線を移した。

 

「どうしても他の人に罪を被せなきゃいけない状況下となり、用意周到に準備されたであろうこの計画に、余計なひと手間を加える羽目になったの」

 

「なるほどな。それで真香さんに無理矢理濡れ衣を着させせたって事か」

 

 その推理にジェットは納得した。あんなは頷き、話を続ける。

 

「そして、身体検査と上手く理由付けにも成功して皆を誘導させた。それも、ごく自然に」

 

 ここまで言えばもう犯人が誰だか、皆分かっであろう。あんなは静かに犯人の正面に立ち、険しい表情を向ける。

 

「そうやって言いくるめたのはこの場でたった1人だけ。そう、真犯人は貴方だよ──まこと君」

 

 告げられた発言に、皆まことに視線が集中する。

 

「ううん、こう言った方がいいかな。怪盗団ファントム!」

 

「探偵である彼が?」

 

 真香も信じられないと思っていた。まさか、彼が真犯人だなんて思いも寄らなかったから。誰もがそう思うのも無理はない。

 

「いい線言ってるが所々穴があるぞ。ブレーカーにしたって、俺が仕掛ける方がよっぽど不自然だ。前日に忍び込んでトリックを仕掛けたとして、何で俺が疑われる?」

 

「それは、まこと君の行動と……なにより真香さんの証言でそう思ったから」

 

 真香の証言、それだけでまことは押し黙った。

 

「真っ暗な地下室で真香さんはあの時こう言ってたの。『地下室にはあまり立ち入ってないから何が何処にあるのか分からない』って」

 

「だから?」

 

「なのに、初めて地下室に訪れた筈のまこと君は暗闇の中でも的確に電気のスイッチを見つけた。それにブレーカーがある場所も早く発見した。不自然だと思わない?」

 

「偶々だ。もしかしたら、俺以外が早く見つける事だってあり得る」

 

 これだけでは、まだ追い詰めるには弱い。

 

「それは絶対ないよ。だってそうしたら、ブレーカーに細工をした事が他の人にバレちゃう可能性があるから。だからあの場に居た誰よりも先に見つける必要があって、ブレーカーを確認する素振りをしながら証拠を回収するしかなかったの」

 

 プリキットグロスをまことに返しながら、一言付け足す。

 

「もっとも、探す事に拘って落とした事にすら気付かなかったのはマズかったね」

 

「なら、どうやってあの停電の中メモ帳を盗んだんだ? いくら入念に準備したってシェフの楠美さんが、一番来て欲しいタイミングでホールに姿を現すなんてあまりにも都合良過ぎないか?」

 

「その都合を成立させる為、まこと君は呼んだんだよ。料理の感想を理由にして」

 

 動揺が走る。

 

「そして停電が起きた時、まこと君はある"魔法の言葉"で見事メモ帳を盗み出した」

 

「魔法の言葉? 何だよそりゃ?」

 

 発明家のジェットにとって、科学では証明出来ない、それこそ魔法みたいな非科学的なものには信じていない。

 その魔法の言葉については、みくるが全部説明をする。

 

「『暗闇は危ないだろうから、今は皆動かない方がいい』。突然の状況に対してこの寄り添う言葉。この心理的トリックを使って、メモ帳を盗んだんだよ」

 

「動かなければ、皆の立ち位置が変わる事はない。停電する前に誰が何処に居るのかを瞬時に把握して、暗闇の中を優雅に歩いてポケットからメモ帳を抜き取ったって事だよ。まこと君」

 

「「これが、この犯行に使われたトリックの全容だよ」」

 

「……フッ」

 

 笑った。まことは、ここまで全てを明るみにされても尚笑っている。

 

「ちょっと待てよ。言ったろ。そんなチンケなトリックなら誰にだって出来るし、この俺を犯人に仕立てる為のものだって可能性もある」

 

「真香さんは地下室でのトリックは不可能。シェフの楠美さんにだって、大事な食材をダメにしてまで自作自演する動機もないよ」

 

「なら、仮に全部俺がやったとしてその証拠は? あんな、みくる、お前らが口にしたその推理はまだ机上の空論に過ぎない。確信的な物的証拠が無いのに、犯人と断定するのは無理があるぜ」

 

 あんなは溜め息を吐き、目を伏せ、往生際の悪いまことに冷淡にも近しいトーンで言い放つ。

 

「そうよね、そうだよね。そこまで言い切るんなら」

 

 あんなはメモ帳を手に取り、一部何か汚れた部分に指を添える。

 

「このシミ、何だか分かる?」

 

「そのシミが何だと言うんだ?」

 

「このシミは、楠美さんが調理中に使っていたオリーブオイルの垂れ落ちた跡。その証拠に、メモ帳を入れていた楠美さんのポケットにも同じオリーブオイルのシミの跡が付着している」

 

 あんなはまことの側まで歩み寄った。

 

「そしてそれは、盗んだまこと君のポケットにも同じシミがあるって事だよ」

 

 まことのポケットに手を入れ、中の布生地を引っ張り出した。その布には、あんなの推理通り小さなシミがあった。

 

「怪盗団ファントムが関わっているのなら、これまでの傾向から考えて何処かに隠している可能性だってあり得る。探さない訳がない。それを踏まえて、敢えてずっと持ち歩いていた」

 

 まだ乾き切っていないシミを指で拭い取り、臭いを嗅いだ。滑りに加えて、オリーブ独特の臭い。やはりこのシミは、オリーブオイルに違いない。

 

「偶然だったけど、盗まれた後すぐにメモ帳を探したあの行動すらも利用した。真香さんが犯人だとより強く印象付ける為に、ね」

 

 ここまで機転の効いたトリックをやり遂げられたのは、それなりに賢い頭脳を持っているからこそ成立したもの。

 

「これでもまだ無実だと言い張るなら、メモ帳と服のシミに含まれている成分を詳しくジェット先輩に調べて貰ってもいいよ。そしたら分かる筈だよ。それが同じものだと」

 

 耳元で囁かれるあんなの言葉に、これ以上ない程の嫌悪感を抱いた。

 強く握る拳だが、すぐに緩めて賞賛の拍手を贈る。

 

「見事だよ。ホント、よくここまでワタシを追い詰めたもんだ。褒めてあげる。謎解きに関してはワタシの負け。でもね──」

 

 まことの足元から煙幕が焚かれた。

 

「それとこれとはまた別の話よ。最後にマコトジュエルを盗んで帰ればワタシの勝ちなのよ!」

 

 あんなが手に持っていたメモ帳はいつの間にか無くなっており、まことの手中に収まっていた。そして、そのままレストランを飛び出して逃走したのだった。




ホントに苦労しました。一歩進むごとに二歩三歩下がって修正の嵐。特にブレーカーに関するトリックはめんどかった。仕組みを知ってるからこそ、書いた後におかしな点を見つけて修正。なので、最終的に重りを付けて線を引き千切るという力技に急遽変更しました。
これはミステリー書いている人尊敬します

ここまでの拝読ありがとうございました!
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