名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第20話 明智あんなの華麗なる推理 ファイル4

 まことに扮した犯人を絶対逃さぬよう、あんなとみくるは全力で追い掛ける。「待て」と叫んでも足を止める素振りを一切見せていない。

 この鬼ごっこをしてから、かれこれ3分は経とうとしている。あんなはその間、ずっと考え事をしていた。

 

(何か、変だ)

 

 あんなだけではない。みくるもその違和感に薄々気付き始めている。

 

「あんな。これって、わたし達誘導されてない?」

 

「かも知れない。でも、このまままこと君を放っては置けないよ」

 

「そうよね。マコトジュエルだってあるし、何より皆の笑顔を守るためだもん!」

 

 違和感の正体に気付いて尚、2人の歩みは止まらない。それどころか、走る速度を上げて追い付こうと必死になる。

 

 すると、前を走っていたまことは急に振り返っては足を止めた。

 

「ここら辺なら思う存分やれるよね?」

 

 人の気配など微塵もしない開かれた林の奥の場所。恐らく誰も助けには来れない。それも承知でまことの誘いに乗ってこの場に居る。もう、覚悟は出来ている。

 

「ここで名探偵プリキュアを一網打尽にすれば、ウソノワール様の悲願も達成する事となる。早速始めようか」

 

 今までの怪盗団ファントムと違い、まことに関してはかなり好戦的な性格をしている。けれどそれより、確かめたい事がある。

 

「怪盗団ファントム、まこと君は無事なの?」

 

「無事? 何のことかしら?」

 

「惚けないでよ! その姿はあくまで変装しているまこと。本物のまことは何処に居るのか聞いてるの!」

 

 惚ける彼に対し、みくるは心からの怒りを爆発させる。今日はずっと一緒に行動していた。入れ替われる時間は殆ど無い。あるとするとしたら、一度席を離れたあの時にしかない。

 

「貴女達の目は節穴かしら? 最初から目の前に居るじゃない」

 

「それは変装してるからで──」

 

「なら、変装じゃないって言えば満足かしら?」

 

「「ッ⁉︎」」

 

 動揺が走る。相手が何を言っているのか全く持って理解が出来ない。悪寒が走り、全身を震えさす。

 

「探偵の癖に察しが悪いわね。ワタシが金田一まことだって言ってるのよ!」

 

 脳が拒む。

 

「嘘よ……」

 

 現実を拒みたい。

 

「そんなの嘘よ! だって、だってまことが怪盗団ファントムな訳ないじゃない!」

 

「怪盗団ファントムは世界を嘘で覆い尽くす為に、マコトジュエルを集めている。嘘のひとつやふたつくらい平気で吐くに決まってるでしょう?」

 

「──嘘だね」

 

 みくるが取り乱している中で、あんなだけは冷静に見据えて言葉を投げ掛ける。臆する事もなく、迷いのないその言葉にまことは呆気に取られる。

 

「あのね、何回言えば──」

 

「その嘘が嘘だって。分かるよ、わたしには」

 

 根拠はない。あんな自身も認知していない、驚異的な直感がそう語り掛けている。目の前に居る彼は、まことであってまことではなく、嘘を嘘で塗り固めている。無意識のうちに本質を見抜いているのだ。

 

「怪盗団ファントムなのは多分本当だと思う。でも、貴方は本当のまこと君じゃない。わたし達のまこと君を返して!」

 

「……まさか、今のキュアット探偵事務所の探偵がここまでするなんて。久々に──テンション上がってきたルル!」

 

 瞬間、まことの雰囲気が一変する。瞳の色が鮮血のように赤く染め上がり、純粋な敵意が剥き出しとなった。明らかに臨戦体勢となっている。

 

「嘘よ覆え! 現れろ、ハンニンダー!」

 

 楠美から盗んだメモ帳を媒体に、ハンニンダーが召喚された。

 

「ハンニンダー!」

 

 メモ帳を模したハンニンダーの咆哮が周囲に轟き、目の前に居るあんなとみくるは鳥肌が立った。冷や汗が頬を伝い、一滴の雫が地面に染み込んだ。

 

「行くよ、みくる!」

 

「ええ!」

 

「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」

 

 ジュエルキュアウォッチを開け、マコトジュエルをセットした。そして、長針を掛け声に合わせてその都度回す。ひとつひとつ変身シークエンスを整えた後、2人は名探偵の姿へと変貌させる。

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

「わたしの答え、見せてあげる!」

 

 名探偵プリキュアに変身して早々、ミスティックが飛び出した。

 

「まことと楠美さんのメモ帳を返して!」

 

 渾身の蹴りがハンニンダーの腹に直撃に、くの字に曲がる。吹っ飛ばされながらも両足はきちんと地面に着いており、後ずさるものの衝撃だけは受け流せれた。

 

 ハンニンダーが体勢を立て直し、敵対する相手へ視線を向けると今度はアンサーが向かっていた。

 

「アンサーアタック!」

 

 飛び出しての一撃。そのまま勢い付いての二撃。地に足が着いてからの再度三撃。計3回のアンサーアタックが炸裂し、ハンニンダーは悶絶しながら地に伏せた。

 

「チッ……」

 

「ミスティック!」

 

「うん!」

 

 2人はプリキットミラールーペに手を掛けた。

 

「「オープン! プリキットミラールーペ!」」

 

 すかさず浄化技までへと繋げた。ポチタンから特別なマコトジュエルを受け取り、それをミラールーペにセットした。

 

「「マコトジュエル!!」

 

 ミラールーペの形を変え、浄化に必要な力を充填させる。

 

「見て!」

 

「感じて!」

 

「謎を解く!」

 

「「これが、わたし達のアンサーだ!」」

 

 必要な光の力が蓄えられ、いつでも放てる準備が出来た。未だハンニンダーは倒れている。この機を逃すまいと一気に畳み掛ける。

 

「「プリキュア! フライング・スペクトル!」」

 

 前方に放たれたふたつの光は折り重なり合い、そして神々しい一羽の鳥に形取ってハンニンダーを貫いた。

 

「「キュアット解決!」」

 

 フライング・スペクトルで、完全に浄化されたハンニンダーは元のメモ帳へと戻り、穢れたマコトジュエルも元の形へと戻った。

 

 今日のプリキュアはいつも以上に好戦的。その甲斐あってか、ハンニンダーを退治し、マコトジュエルもスムーズに取り戻せた。

 しかし、変身を解く訳にはいかない。彼女達にはまだ、最後の謎を解き明かしていないのだから。

 

「あとは!」

 

 ミスティックの鋭い視線が彼に向けて突き刺さす。

 

「あとは? アナタ達、ワタシばかり気を取られ過ぎじゃないルル?」

 

 まことの口角が上がると、何か嫌な予感がした。すると、背後から物凄い音と地響きが起きた。振り返るとそこには、もう一体のハンニンダーが居た。

 

「何でハンニンダーが⁉︎」

 

「マコトジュエルはひとつしかないのに?」

 

 目の前に居るハンニンダーは本を媒体としているのか、大きくページを開けてアンサーとミスティックを威嚇している。

 

 突然の襲来に、急ぎ距離を置いて体勢を立て直そうとする。けれど、微かな感情のブレを見逃すまいとハンニンダーは追従した。

 

「そう簡単に主導権渡す訳ないルル! ハンニンダー!」

 

 禍々しいエネルギーを右拳に凝縮し、それを思いっきりミスティックへと振り翳した。

 

「ミスティックリフレクション!」

 

 避けるのが無理と即座に判断したミスティックは、ジュエルキュアウォッチを手にし、バリアを展開して受け止めた。

 

「ぐぅ……!」

 

 ミスティックのバリアはかなり強固なもの。しかし、受け止めているミスティックの表情はいつもより苦しく見えた。

 

「このハンニンダー、いつもより強い!」

 

 全身の力を込めて踏ん張っているが、それでもジワジワと押されていく。アンサーも急いで加勢し、ミスティックを支える。

 

「頑張ってミスティック!」

 

 体勢が不十分だったとはいえ、2人掛かりでやっとの有様。明らかに普通のハンニンダーではない。かなり強い、それも何か特別なマコトジュエルを媒体にしている。一個体で出せれる出力ではない。

 

「ハンニン、ダー!」

 

 ハンニンダーの拳はバリアを粉々に破壊し、アンサーとミスティックにダメージを与えた。

 

「ミスティック、もう一回やろう!」

 

「ええ!」

 

「「ポチタン!」」

 

「ポチー!」

 

 再度フライング・スペクトルを仕掛けようと企み、専用のマコトジュエルを持つポチタンを呼んだのだが。

 

「そう何度もやらせる訳ないルル! ハンニンダー!」

 

「ダー‼︎」

 

 ページの切れ端が飛来し、ポチタンの前に突き刺さって一枚の壁が作り出された。

 

「「そんな!」」

 

 ポチタンからマコトジュエルを受け取れなければ、ミラールーペを使ってのフライング・スペクトルを撃てない。

 ならば別の手に切り替えるしかない。悔やんでいる暇があるのなら、今出せる手札を使ってハンニンダーを浄化する。

 

 2人はジュエルキュアウォッチを片手に長針を回す。

 

「「これが、わたし達のアンサーだあぁぁ‼︎」」

 

 直接拳で叩き付けて浄化させる。荒療治になるが、これしか方法がなかった。

 

 突き出した2人の拳はハンニンダーに深々と突き刺さった。これで万事解決と思っていた。

 

「確かにスピード、タイミング。どっちも完璧な一撃だったルル。でもそこに、あとパワーさえ加わってさえいれば浄化出来たかも知れないルル」

 

 

 ここに至るまでにハンニンダーとの連戦。自分達が予想していた以上に疲労とダメージが身体に蓄積しており、十分な力を発揮出来ないのが原因で事件の解決までには至らなかった。

 

「ハンニンダー!」

 

 ハンニンダーは本を閉じ、アンサーとミスティックを押し潰した。

 それからゆっくりと開けると、揉みくちゃになりがら2人は地面へ倒れ込んだ。

 

「最後に絶望的なバッドニュースを教えてあげる。このハンニンダーは、あの名探偵キュアトゥルースが持っていた本ルル! そのマコトジュエルを使い、こんなにも凄い力を得たルル!」

 

 更にそこへ追い打ちを掛ける言葉を投げ掛けた。

 

「そして、そのキュアトゥルースは今やワタシに体を乗っ取られているルル」

 

「そ、それって……!」

 

「ええ、お察しの通り。名探偵キュアトゥルースの正体は、このワタシ金田一まことルル!」

 

 高笑いする声が、透き通った空の彼方までと届いた。それはとても耳障りで、嫌気がさすもの。悍ましかった。




完成してるのはここまでです。またのんびり書いていきます

ここまでの拝読ありがとうございました
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