名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第23話 転校生!

「はい、という事で。今日からこのクラスで一緒に過ごす事になりました」

 

「明智あんなです。宜しくお願いします!」

 

 私立まことみらい学園に転校してきたあんなは、今日から一緒に学園生活を過ごすクラスメイト達に挨拶を交わした。あんなの転校にクラスメイトは大いに歓迎してくれている。

 

 あんなの表情は少し緊張して硬くなっている部分もあるけれど、それなりにほぐれている。こうして面と向かって挨拶が出来ているのも秘密がある。

 

「それじゃあ挨拶も済んだところで明智さんの席だけど……小林さんの隣にね」

 

 このクラスにはまこととみくるが居る。それだけであんなの気持ちにも余裕が生まれているのだ。教壇に立って自己紹介をするあんなに、2人は小さく手を振って応えている。

 

 あんなが席に移動したところで、丁度朝の時間に終わりを告げるチャイムが鳴り響いた。

 

「1時間目は確か理科室だったな。あんなを案内しないといけないから、さっさと移動するぞ」

 

「とうとうこれが役に立つ時が来たわね!」

 

 みくるに呼び掛けると、不気味な笑いをしながら2枚の紙を高らかに取り出して見せ付ける。それは、この簡易の校内の地図だった。建物の構造上、1階と2階に分けられて2枚となっている。みくるの手書き且つ、愛くるしいポチタンの似顔絵も添えられて。

 

「いつの間にそんな物作ったんだよ……」

 

「どう? 凄いでしょう!」

 

「まあ……ある意味で凄いな。凄いよみくる、お前は将来大物になる」

 

「フフン!」

 

 みくるの絵の才能は自分でもよく理解している。その出来は、まこと曰く画伯とも呼べる才能だ。なので、毎回絵を見せられる度に思うのは。

 

(あまりツッコむの野暮か)

 

 面と向かってストレートに言うが、今回はそれを唾と一緒に飲み込んだ。

 ひとまずこの件については、お互いの為にも触れないでおこう。

 

「それで、あんなの方は……」

 

 まこととみくるがあんなの振り返る。机の周りに半数近くのクラスメイトの姿がそこにはあった。新学期入って早々の転校生だ。興味惹かれるのも仕方のないこと。

 

 ただ、あまりの人数の圧にあんなは案の定困り果てていた。質問の連続で、あんなは誰から先に返事を返せばいいのか首を右往左往している。

 

「お前ら、あんなが困ってんぞー」

 

「あんなも、ゆっくり答えてこ!」

 

 流石に見ていられず、まこととみくるが助け舟を出してあげた。

 

「ごめんごめん! この時期に転校って珍しいから」

 

 その気持ちに共感はする。改めて、皆はゆっくりと質問をやり直す。

 

「オカルトとか信じる? 7の月の噂とか」

 

「7の月?」

 

「最近話題になっているんだよ。1999年の7の月、地球に大魔王がやって来るって話」

 

「どうせ噂だ噂。聞き逃したんでいいぞ」

 

 クラスメイトの言葉に、まことは少し冷やかしをしながらその噂については全く信じていなかった。

 

「そういえば、3人って同じ家に住んでるんだよね? どんな関係なの?」

 

「関係って言われても……なぁ?」

 

 まことが苦笑いする中で、あんなとみくるは待っていましたと言わんばかりの不敵な笑みを浮かべる。

 

「何を隠そう!」

 

「わたし達実は──」

 

「キュアット探偵事務所で探偵やってるんだよ」

 

「「ちょっと!」」

 

 2人が意気揚々として言うとした台詞を横取りされた事で、まことに詰め寄ってきた。そこまで必死になるものなのかと思っているのだが、そこだけは譲れないのか2人の口数は減ることはなかった。

 

「はぁー、これだからロマンの欠片も無いまことはそうやってだらしなく言っちゃうんだ」

 

「まこと君、あんまり人の楽しみを奪っちゃダメだよ?」

 

「何で俺が責められてんだよ⁉︎」

 

 3人のやり取りを見て、クラスメイトの数人はクスリと微笑んだ。

 

「ホント、まことっていつも尻に敷かれてるって感じ」

 

「そこにあんなも加わって、なんかもう頭が上がらないって」

 

 みくるにはよく振り回されているが、あんなもあんなで突発的に行動する為彼女もまた大概。それに付き合わされているまことは、いくら体があっても足りないのだ。

 

「ポチポチー!」

 

 騒いでいる中、何とも聞きなれない声に一同は動きを止めた。

 

「えっ、何今の鳴き声?」

 

「携帯?」

 

「いやいや、動物だろ?」

 

「じゃあ何処にいるの?」

 

 謎の声の主をまこと達3人は知っている。それをどう誤魔化すかで血相を変え、とにかく何でもよいので言い訳を並べ立てる。

 

「ま、窓の外に小鳥が居たしそれだ!」

 

「窓に居たっけ?」

 

「さあ?」

 

 誤魔化したまことだが、上手くはいかなかった。みくるはまことと肩を組んで皆に背を向けて話し合いをする。

 

「なーにが小鳥よ? 何処に飛んでるのよ!」

 

「いやそこは乗っかれよ!」

 

「無いものに乗っかれる訳ないでしょ!」

 

 呻き声を上げながら2人が火花を散らしていると、あんなが何か閃いてフォローした。

 

「ぽ、ポチポチー! な、なーんちゃって!」

 

「あんなの声なんだ」

 

「なーんだ。てっきり妖精でも居るのかと思った!」

 

「ギクリ! ソ、ソンナノイルワケナイヨー。あはは、ふぅ……」

 

 この場は何とか切り抜けた。同時に、チャイムが鳴り響いてクラスの皆は解散して行った。

 

「あっ、やっぱりポチタンだったんだ」

 

 あんなは気になって、自分の通学カバンを開けるとポチタンが顔を覗かせて笑っていた。

 困った妖精だと思いつつも、そんなはにかむ表情を見て「仕方ないな」とも思う。

 

「2人共……って、まだやってるの?」

 

 未だ火花を散らしている2人に、あんなとポチタンは呆れ果てていた。学校でも、いつもこの調子なんだと再認識した。

 

 

 ◯

 

 

 あれから時間は過ぎて行き、次の授業の準備をする。ただ、次は理科室で理科の授業を行う。それに伴って、教室を移動する事になった3人は廊下を歩いていた。

 

「それにしてもこの学校すっごく広いよね。移動の度に迷っちゃいそう」

 

「フフ、そう言うと思って……じゃーん!」

 

 取り出したのは、先程まことにも見せたみくる画伯自信作の学校の地図だった。

 

「これさえあれば迷わないね!」

 

「フフン! どうよまこと!」

 

「何が?」

 

「だ・か・ら! 凄いでしょ!」

 

 役に立ったと言う意味でならそれは凄い事だが、そこまで胸を張る事なのだろうか。そもそも、彼女は一体何をまことに求めてるのだろうか。

 

 そんな時、あんなが耳打ちをした。

 

「多分だけど、まこと君に褒めて貰いたいのかも」

 

「それだけ?」

 

「だってほら」

 

 みくるへ顔を向けると、まるで尻尾を振っている犬にも見える。確かに褒められるのを待っているにも思える。

 

「ど・う・よ?」

 

「はいはい凄い凄い」

 

 まことはみくるの頭を撫で、歩き出した。あんなは「たったあれだけなのか」と疑問を浮かべていた。

 

「もー、まこと君ったら。少しは褒めたって良いじゃん。ね、みくる。みくる?」

 

 顔を俯かせていたみくるを覗いてみると、耳まで真っ赤にして熱を帯びさせていた。

 

「みくるどうしちゃったの⁉︎」

 

「ま、まことって、あんまり頭とか撫でたりしないからびっくりして」

 

「そうなんだ」

 

「何やってんだ2人共! 授業遅れるぞ!」

 

 怒られたあんなとみくるは、急いでその背中を追い掛けた。そして、みくるの地図を見ながらあんなを理科室まで案内させる。

 

「えーっと、ここを渡って右に曲がると理科室」

 

 別の校舎に歩き渡ろうとした時、ふわりと桜の花が3人の目の前に舞い落ちた。あんなは気になり、渡り廊下を出て外へ歩いた。

 

 3人の足が止まる。見上げ、風に吹かれて花びらが散りゆく桜に見惚れる。

 

「これ、おっきな桜!」

 

「学校が創立した時からあるんだって」

 

「……理科のこと忘れてねーか?」

 

「「そうだった!」」

 

 

 ◯

 

 

「急げ急げー!」

 

 時間が迫る中、慌てる3人は飛び込む形で理科室の扉を開けた。

 

「「「間に合っ……た?」」」

 

 息を切らして開け放ったが、そこは理科室とは思えぬ場所だった。広々とした空間。ステージがあり、バスケットゴールもある。そう、此処は体育館だ。

 

 いくら慌てて理科室に入って、そこが間違っていたとしても体育館な筈がない。体育館は建物の大きさから校舎に収まるとは思えない。

 

「何でこんな所に?」

 

 不可思議な体験に困惑していると、開けた扉がひとりでに閉まった。

 

「どういうこと?」

 

「幽霊の仕業とか?」

 

「怖いこと言わないでよー!」

 

 一度外に出ようと方向転換した直後だった。

 

「ようこそ、カラクリ迷路へ」

 

 聞き覚えのある声。勢い良く振り返ると、ステージ上にゴウエモンが仁王立ちしていた。

 

「怪盗団ファントム!」

 

「またマコトジュエルを盗りに来たのね……って、カラクリ迷路?」

 

「ああそうさ。このゴウエモンの力で、学校全体を謎がひしめく異空間『カラクリ迷路』に変えてやったのさ!」

 

「また大掛かりな仕掛けを」

 

 なんてぼやくが、学校全体を変えられる力を有しているというのは厄介極まりない。見た目以上の力を隠しているのは確かだ。

 

「これからお前達には謎を解いてもらう。どれか1つでも謎を解けなければ、永遠にこの迷路から出られない」

 

「「「永遠に⁉︎」」」

 

「早速最初の謎へと招待してやろう」

 

「ま──」

 

 有無を言わさず、ゴウエモンは手を叩いてゲーム開始をさせる。まこと達が立っていた足元が急に無くなり、闇の中へと落下していった。

 

 3人の情けない悲鳴が木霊しながら、穴は閉じるのだった。




ここまでの拝読ありがとうございました
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