名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
「開かないよー!」
「ポチィー!」
穴に落ちたまこと達は、まさかの理科室に移動させられた。何が何だか分からないまま、自分達が出来る事から探す。第一にこの場からの脱出。理科室の扉に手を掛けるあんなとポチタンだが、鍵でも掛けられているかの如くビクともせず開けられない。
「あっちのドアも開かないみたい」
教室には2つの出入り口がある。もう片方の扉をまこととみくるが調べてみるが、みくるが口にしたように同じ現象が起きていた。
「力技で脱出するか」
「力技?」
まことは適当な椅子を手に持ち、それを振り上げた。その光景を見たあんなとみくるは、慌ててその行動を止めに入る。
「ストップ! ストーップ!」
「何やってるのよ?」
「力で脱出しようと」
「「ダメ!」」
いくら異空間だとしても、壊した物が元に戻らなかった事があればそれこそ事件だ。万が一の事を考え、2人は慌てて止めたのだ。
「ポチ!」
「ポチタン? あっ、鍵穴だ!」
ポチタンがあんなの裾を引っ張って、扉に鍵穴がある事を教えてくれた。
『脱出せよ。ドアを開けるには鍵が必要。理科室の注意を守り、鍵を見つけよ』
どこからともなくゴウエモンの声がする。恐らく、3人の様子を見えない場所から監視でもしているのだろう。そして、この異空間から脱出するにはやはり鍵が必要。
その鍵を手に入れるにはたったひとつの方法しかない。
「探偵相手に謎解きをふっかけるのか。いいぜ、その挑戦、このキュアット探偵事務所の探偵が受けて立つ!」
「よーし、見つけるよー!」
まこととあんなは張り切って、理科室にある道具を全て掻き分けながら鍵を探し始める。ポチタンも一緒になり、3人掛かりで教室内を隈なく調べるのだがそれらしい物は何ひとつ見当たらない。
「何処にもなーい!」
「こんなに探してもないとなると、安易な考えは全部捨てた方がいいな。どうだみくる?」
「何が?」
「さっきの言葉、メモして考えてんだろ? 何か進展はあったのかって思ってな」
「それなら見つけたわ」
みくるの視線が横に移る。まこともその視線に釣られて目を向けると、火の絵に「FIRE」というアルファベットが描かれているポスターが貼られてあった。
「これがヒントって訳か」
「ええ。注意を守るってこれの事じゃない?」
「そうだな。理科ってその授業の性質上、危険物を扱う事が多いしな。それも、火なんて近付けたら危ない物ばかりを」
アルコールランプにマッチ。その他諸々、子供には知らない危険な薬品だって棚には陳列されている。
「もし、大きな火が出ちゃったらすぐ消さないとだし」
「それなら、この火を消せば良いんだよ!」
2人の会話を聞いていたあんなが、間に割って入り込んでそう提案をする。
「ポスターの火をどうやって消すんだ? まさかとは思うけど、水で消すとかそんなんじゃ」
「そのまさかだよ!」
いつの間にか、水を汲んでいたフラスコを手にしていた。それをあんなは勢い良く火の絵に向かって水を撒いた。
すると火はたちまち消え「FIRE」の文字も伴って消える。そして、ポスターの中に鍵が現れた。
「これで、こう!」
早速あんなはその鍵を使って解錠に掛かる。カチャリと軽快な音を立てて鍵が開かれた。
『フッ、まずますだな。だが、次の謎がお前達に解けるかな?』
「どんな謎だって!」
「「解いてみせる!」」
啖呵を切って扉を開けて飛び込んだ。まこともその後に続こうとしたが、直前でその足を止めた。何故ならば、その先は床など無く、飛び込めば下に真っ逆さまなのだから。
「「またー⁉︎」」
落ちる直前、2人はまことの腕を掴み、間一髪のところで落下を防いだ。だが。
「お前ら! 俺を道連れにするな!」
「落ちるなら3人一緒よ!」
「怖いこと言うなよ!」
自分達だけ落ちるなんて不公平とみくるは、無理矢理にでもまことを引き摺り込もうとあの手この手を使って揺さぶりを掛ける。
しかし、女の子といえど2人分を支えられる力は当然無く。
「あとで覚えてろよー!」
巻き添えを食らって3人仲良くまた落下するのであった。
◯
場所は変わって今度は音楽室。此処でも理科室と同じくゴウエモンからの謎解きというなの挑戦投げ掛けられた。その謎解きというのが。
「『ドアを開けるには鍵が必要。鍵を打て』って」
扉には縦に並ぶ5本の横線に、縦3つに連なる鍵穴があった。あんなはそれが何を意味するのか分からずじまい。
まこととみくるも同じように陥っているものの、どこか見覚えのあるのを感じ取っている。
「もしかして、これ楽譜じゃないのか? 5本の線が五線譜として」
「あっ、じゃあこの鍵穴が音符になるのかな?」
楽譜にある五線譜と口にした途端、あんなにもその意味がすぐに通じて鍵穴の意味も理解した。しかし、2人はその楽譜が読めない。
「ド・ミ・ソ。鍵はド・ミ・ソよ!」
「で、このド・ミ・ソをどうやって打つんだ?」
楽譜に隠れた謎は解けた。けれども、ゴウエモンから出された謎は謎はまだ半分しか解けていない。「打つ」という意味を解ければ、きっと鍵は手に入る。
「音楽室でド・ミ・ソを打つとなると楽器が必要。となると……」
「分かったわ! 鍵のありかは……そこ! ピアノ!」
音楽室を見渡して、みくるはピアノを指差す。だが、何故ピアノと断定したのか。
「音楽室には沢山の楽器がある。何故ピアノだと?」
「ピアノのには鍵盤があるの。鍵盤の『鍵』は
「なるほど! 鍵を打てっていうのは、鍵盤を打てって事なんだ!」
「ならあとは簡単だな」
まことがド・ミ・ソの順番に鍵盤を打ったのだが、鍵らしいものは現れなかった。
「それじゃあ無理よ。あの音符は和音だから、ド・ミ・ソの順番に音を鳴らすんじゃなくて、同時に音を鳴らすって意味なのよ」
「つまり……」
「ピアノのでド・ミ・ソの和音を奏でる!」
まこと、あんな、みくるの3人で同時に鍵盤を打った。すると、扉に描かれていた楽譜が消えて、解錠する音が鳴った。
「よく分かったな」
「昔ピアノ習ってたから」
これで第二の謎も解いてみせた。みくるは扉に手掛けて、次の教室へと移動するのだった。
◯
今度の教室は図書室。大量の本が陳列する中を見渡す。
「いつになったら出られるんだ?」
2つの謎を解き明かすだけでも苦労させられたのだ。少しずつ3人は疲れを見せ始めているが、探偵の名に懸けて襲ってくる謎を全て解き明かすのみ。
『脱出せよ。ドアを開けるには鍵が必要。鍵はオレが持っている』
「オレが持っている?」
「あのゴウエモンって人を見つければいいのかな?」
「となると次は隠れんぼか」
謎というよりかは遊びに近い形。これなら頭を使わず、図書室を隈なく調べればいずれゴウエモンを見つけ出せれる。そう安易に考えていたのだが、ここでまさかの追加ルールが告げられる。
『おっと忘れていた。今回の謎解きの制限時間は1分。時間内に見つけられなければ、そこでゲームオーバーだ』
「えぇー⁉︎」
「急にズルい!」
「卑怯だ!」
『スタート!』
3人の文句など聞き入れず、ゴウエモンは謎解きを強引に進めた。
「そっちがその気なら、こっちだって使えるもんは使ってやる! あんな、みくる! プリキットを使うんだ!」
今までは閃きだけで乗り越えてきたが、制限時間を設けてきたというのなら手段は選ばない。早急に謎を追い掛ける。
「オープン! プリキットミラールーペ!」
ミラールーペをルーペモードに切り替えて、2人はレンズ越しに覗いて床を眺める。
「ジェット先輩曰く、ミラールーペがあれば大事な手掛かりを見逃さない!」
2人が目にしたのは何かしらの跡。推察するにこれは。
「はなまる発見!」
「この形はゴウエモンの下駄の跡!」
3人はその下駄の跡を辿って行く。なのだが、途中でその跡が途切れていた。
「足跡が無いよー!」
2人はミラールーペで周辺を見透しているが、これ以上の手掛かりが見当たらない。こうしている間にも、時間は刻一刻と迫ってきている。
「跡が途切れてるなら、この周辺に隠れてるのは間違いない。後はよく観察すれば……あれは?」
まことはある本棚の違和感を覚えた。それは、他の本棚と違って立体感が無かった。
「どうしよ! あと10秒しかない!」
「ええ! まこと君も手伝ってー!」
「いや、謎は解けた。それはだな──」
「「どうでもいいから早くして!」」
この謎について説明しようとしたが、時間が無いのはご存じの通り。あんなとみくるは急かして、さっさとその真相を解いてもらうよう詰め寄る。
「わ、分かったって! ゴウエモンは此処だ」
違和感のある本棚に手に掛け、それを引っ張った。その本棚は布であり、その奥にはゴウエモンが隠れ潜んでいた。
「流石は名探偵。このオレに隠れんぼで勝つとはな。褒めてやるぜ」
ゴウエモンは潔く鍵を投げ渡した。そして、予め仕掛けておいた回転扉を使って姿を消した。
「おい!」
その壁を調べるまことだが、回転はしなかった。どうやらゴウエモンが回転しないよう、姿を隠すのと同時に何かしらの細工を施したに違いない。
「素直に進むか」
「「うん!」」
「ポチ!」
扉に開け、次の教室へと移動する。
そして家庭科室、美術室と続く謎も全て解き明かして足を進めて行った。
◯
「あれ? 此処って体育館だよね?」
「戻って来たな」
謎を幾つも解き、その度に教室を移動した果てに待っていたのは最初に訪れた体育館。
『これが最後の謎。脱出せよ。正解のドアを選べ』
目の前に出現した5つの扉。
『前に進むには後ろへ戻り、道なき道を作り出せ』
「ヒントはそれだけか」
「ポチ!」
ポチタンは、扉の上にあるマークに気が付いた。その扉だけではなく、他の扉にもそれぞれ違うマークが記されている。丸、三角、星、音符、そしてバツ印。
恐らくゴウエモンの言葉とこの5つのマークでヒントは全部。
改めてヒントを並べて3人の探偵は頭を抱える。
「今回の謎は今までよりも一段と難しいな」
「そうだ、今までの謎を振り返ってみようよ! 行き詰まったら始めから考える。みくるが前に言ってたでしょ」
「んじゃ、ここまでのおさらいしていくか」
体育館、理科室、音楽室、図書室、家庭科室、美術室。そして最後に体育館と戻ってきた。
「あっ、分かった!」
みくるが閃いた。みくるは、自分で作った地図に今まで訪れた教室の順番に沿って線を描いていく。だが、それでも繋がらない。2枚の地図に描かれた線が一体何を示しているのか、謎を深めてしまっただけ。
「キツイな。言葉の意味も合わせて、俺もこれで合ってると思うんだが」
「まこと君にでも分からないなんて」
謎は迷宮入りしてしまった。目の前の地図と睨めっこしていると。
「ポックチュン!」
ポチタンがくしゃみをして、地図の1枚がひらりと舞い上がった。舞い上がった地図はもう1枚の地図と重なり合う形で落ちてしまうが、そこでみくるはある真実を目にした。
「そっか、重ねるんだ!」
「重ねる……ああ、そういう事か!」
まこともその意味を理解した。2枚の地図を重ね合わせ、それを光りに通して改めて地図の全体図を注意深く凝視する。
すると、1枚では意味をなさなかった線が重ね合わせる事で全て繋がり、ある形として浮かび上がった。
「「見えた! これが、答えだ!」」
その形とは星。そして扉にも星のマークがある。つまりは。
「星のマークの扉を潜れば、このカラクリ迷路から抜け出せる」
3人が扉に手を掛けて押した。開かれた先には、広々とした学校の中庭に躍り出たのだった。
「出られた、でいいのか?」
「やるじゃないか」
ようやく外に出られたと思ったのも束の間。ゴウエモンが目の前に立ちはだかり、カラクリ迷宮から脱出した事を褒め称える。
「妖精については分からなかったが、マコトジュエルは頂いていくぜ」
3人が少し前まで見惚れていた桜の木に、ゴウエモンの手が触れる。
「嘘よ覆え! 来やがれ、ハンニンダー!」
桜の木に眠るマコトジュエルを使い、ゴウエモンはハンニンダーを呼び寄せた。
目の前でハンニンダーが現れたら、もうダメってはいられない。
「みくる、まこと君行こう!」
まことはトゥルースキュアブック。あんなとみくるはジュエルキュアウォッチを手にし、それぞれのマコトジュエルを使用して変身を始める。
「「「オープン!」」」
「「ジュエルキュアウォッチ!」」
「トゥルースキュアブック!」
あんなとみくるは首からぶら下げるペンダントを。まことは腰から下げる本を「オープン」と唱える事で元の大きさに戻してその手に握る。
「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」
3人は、それぞれ変身用のマコトジュエルをセットする事によってその姿を瞬く間に変化させる。
長針と本にペンを走らせる事で普段身に付けている衣服から、チャーミングだけど名探偵という風貌を損なわせない威厳と凛々しさを兼ね備えたものとなる。
「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」
「閃く直感で導き出す答え! 名探偵キュアトゥルース!」
「「「名探偵プリキュア!」」」
「真実の名の下に、謎を解き明かそう」
こうして初めてとなる名探偵プリキュアの3人体制。初めての陣形に不慣れな部分もあって不安が募るが、敵は待ってはくれない。
普段の私生活からくる息の合ったコンビネーションで、3人は出たとこ勝負を仕掛けた。