名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
薄暗い部屋の中で、まもるは椅子に座って独り資料を読み漁っていた。静かな空間の中で、本を捲る音だけが支配していた。
そろそろ疲れがピークに達しようとした頃合いで、扉からノック音がした。
「まもる君、ご飯出来たよーって」
扉から顔を覗かせて名前を呼んだのはあんなだった。彼女は部屋の中を覗くやら、早々に部屋の中の状態を見て苦笑いを浮かべつつも嗜める。
「もう、こんな暗い所で本読んでたら目が悪くなるよ?」
「もうそんな時間か。悪い」
「ところで、何読んでたの?」
それはそれとして、あんなは先程まで目にしていた本に目を滑らせる。本を読んでいたまもるの表情はいつになく硬く見えた。それが妙に引っ掛かり、好奇心でつい訊いてしまっていた。
「俺が書いたと思う記録だ」
「記録?」
「ま、事件簿ってやつかな?」
かれこれ1時間は経とうとしているのだが、この様子ではまもるの知りたい情報は得られていない。彼の知りたい情報は、恐らく自身の記憶。なまじ記憶を取り戻したせいで、部分的でも補完しようとこうして篭っている。その事を直感的にあんなは察した。
「焦らなくても、わたしはいいと思うんだけど」
「それはそうなんだが、どうしても知りたいんだ。自分の事を。ようやく掴んだ手掛かり。それに、マコトジュエル以外の方法で記憶が呼び覚ますかも知れないし」
だからなのか。いつになくらしくない。
「わたしも、わたしも早く元の時代に帰りたいよ」
あんなは無理矢理まことが座る椅子に座り込んだ。布越しとはいえ、2人に距離は無く、密着している。異性の接近にまことは心拍数が急激に跳ね上がるも、一方であんなは照れるような素振りは見せていない。
「前にも言った通り、わたしは決めたの。この時代で困っている人がいるのなら、それを先に助けてあげたい。みくるの夢の手伝いもしたい。だから」
あんなの手は、優しくまことの手を包み込んで握る。
「まだ此処に残るって決めたの」
「もう、寂しくはないのか?」
「ずるいな。わたし、嘘は吐かないんだよ。寂しいのは寂しいよ。でも、それ以上に今はみくる、ポチタン、ジェット先輩に街の皆が寄り添ってくれてる。勿論、まこと君もだよ」
あんなは立ち上がり、まるで母親のように母性溢れる表情でまことの頭を優しく撫でた。
「心に不安があるなら、わたしが側で癒してあげる」
「不安なんて別に……」
「不安だから、こうして読み漁ってたんじゃないの?」
図星を突かれた。
「不安な時は弱音吐いたっていいんだよ? みくるがわたしの気持ちを受け止めてくれたように、今度はわたしが受け止める番。みくるにしたって、まこと君にしたって。困ったらいつでも頼って。それとも、わたしじゃ頼りないかな?」
頭を撫でるその手から温もりを感じ取れる。久々に心地良いものを得られた。どんなに生き急いだって変化なんて微々たるものだ。それは謎解きをする時だって同じだ。
あんなの言う通り、焦る必要なんてどこにもない。ひとつずつ、目の前の謎を解くように真実を追えばいいんだ。
不安な気持ちを無意識に振り払おうとやっけになっていただけ。
「……ふぅ」
ひと息吐く。
「頼りないなんてまさか。あんなは超頼りになる女の子だ」
「そこまで言われると、なんだか照れちゃうよー!」
あんなと話している時が、心にゆとりが出来る。狭まっていた視野も広がっていく感覚だ。彼女の言葉ひとつひとつに魅力を感じる。これが、彼女の良いところなんだろうな。
「そうだ! 折角ですし、明日一緒にお出掛けなんてどう?」
「俺と?」
「そう! お互い似た者同士、助け合って行こうという名目で!」
こじ付け感が否めないが、別に断る理由は特にない。寧ろ好都合とも言える。日常生活を送る中で、あんなと2人っきりというシチュエーションには中々やってこないのがいつもだ。基本、どちらかの隣にはみくるかポチタン。探偵事務所でなら、必ずジェットがいつも側に居る。
あんなという人間もよりよく知れるチャンスでもある。交流を深めるという点では、これ以上ないお誘いだ。
「結構面白そうだ」
「じゃあ、決まり!」
翌日出掛ける事が決まった直後、ノック音が聴こえた。扉の方へ目を向けると、ジェットが扉に寄り掛かって2人が喋り終わるのを待っていた。
「話は済んだか?」
「ジェットさん?」
「あんなの奴が呼びに行ったと思ったら全然帰ってこないじゃん。そんで、様子を見に来たら一緒にお喋りかよ。早く来ないと晩御飯冷めるぞ?」
「冷めたご飯は美味しくない。急いで行くとするかー」
一足先に部屋を退室したまこと。それを追いかけようとあんなも部屋から出ようとしたのだが、その矢先にジェットに呼び止められる。
「あんな、お前さっきまことと何話してたんだ?」
「あ、うん。まこと君、先の事ばっかり見てたからちょっとね」
「どんな内容か知らんけど、あの様子だと一応話はついたみたいだな」
「本当に"一応"だけどね。まだ心配だから、明日一緒に出掛けようって話になったの」
「一緒に出掛ける」その言葉を耳にしたジェットは、とても意外そうな表情を浮かべてこう言った。
「ふーん。なら、デートみたいなもんだな。せいぜい楽しんでこい」
「えっ、デート⁉︎」
「男の子と女の子が一緒に出掛けるなんてそんなもんだろ?」
そのような気はさらさらなかったが、ジェットが口にしてしまったばかり意識せざる得なくなった。頬は紅潮し、とめどなく体温が上昇する。
普段ならこんなにも意識なんてしないのだが、何でだろうか。話す機会も日常的にあり、年齢も背丈的にも同じだからなのか。
こればっかりは、探偵でも中々解けない難解な謎。
「……やっぱり皆で出掛けよう! そうしよう!」
「はぁ⁉︎ 急に何でだよ!」
「い、いいじゃん! 皆でお出掛けした方が楽しいよー!」
逃げるように、そして縋り付くようにジェットに懇願するのだった。中々引き下がらないあんなに、ジェットは渋々付き合う約束をする形となった。
さてと、次の話をどうしようかと悩んでます。実は言うと、書きながら物語の内容を考えております。そんな状態でも、オリ回挟まなければならない理由がありまして…。繋ぎ部分など微塵も考えておりませんので只今悪戦苦闘中です。なんとかして頑張りマッスル!
ここまでの拝読ありがとうございました!