名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第26話 追い求めて、それから

 薄暗い部屋の中で、まことは椅子に座って独り資料を読み漁っていた。静かな空間の中で、本を捲る音だけが支配していた。

 そろそろ疲れがピークに達しようとした頃合いで、扉からノック音がした。

 

「まこと君、ご飯出来たよーって」

 

 扉から顔を覗かせて名前を呼んだのはあんなだった。彼女は部屋の中を覗くやら、早々に部屋の中の状態を見て苦笑いを浮かべつつも嗜める。

 

「もう、こんな暗い所で本読んでたら目が悪くなるよ?」

 

「もうそんな時間か。悪い」

 

「ところで、何読んでたの?」

 

 それはそれとして、あんなは先程まで目にしていた本に目を滑らせる。本を読んでいたまもるの表情はいつになく硬く見えた。それが妙に引っ掛かり、好奇心でつい訊いてしまっていた。

 

「俺が書いたと思う記録だ」

 

「記録?」

 

「ま、事件簿ってやつかな?」

 

 かれこれ1時間は経とうとしているのだが、この様子ではまことの知りたい情報は得られていない。彼の知りたい情報は、恐らく自身の記憶。なまじ記憶を取り戻したせいで、部分的でも補完しようとこうして篭っている。その事を直感的にあんなは察した。

 

「焦らなくても、わたしはいいと思うんだけど」

 

「それはそうなんだが、どうしても知りたいんだ。自分の事を。ようやく掴んだ手掛かり。それに、マコトジュエル以外の方法で記憶が呼び覚ますかも知れないし」

 

 だからなのか。いつになくらしくない。

 

「わたしも、わたしも早く元の時代に帰りたいよ」

 

 あんなは無理矢理まことが座る椅子に座り込んだ。布越しとはいえ、2人に距離は無く、密着している。異性の接近にまことは心拍数が急激に跳ね上がるも、一方であんなは照れるような素振りは見せていない。

 

「前にも言った通り、わたしは決めたの。この時代で困っている人がいるのなら、それを先に助けてあげたい。みくるの夢の手伝いもしたい。だから」

 

 あんなの手は、優しくまことの手を包み込んで握る。

 

「まだ此処に残るって決めたの」

 

「もう、寂しくはないのか?」

 

「ずるいな。わたし、嘘は吐かないんだよ。寂しいのは寂しいよ。でも、それ以上に今はみくる、ポチタン、ジェット先輩に街の皆が寄り添ってくれてる。勿論、まこと君もだよ」

 

 あんなは立ち上がり、まるで母親のように母性溢れる表情でまことの頭を優しく撫でた。

 

「心に不安があるなら、わたしが側で癒してあげる」

 

「不安なんて別に……」

 

「不安だから、こうして読み漁ってたんじゃないの?」

 

 図星を突かれた。

 

「不安な時は弱音吐いたっていいんだよ? みくるがわたしの気持ちを受け止めてくれたように、今度はわたしが受け止める番。みくるにしたって、まこと君にしたって。困ったらいつでも頼って。それとも、わたしじゃ頼りないかな?」

 

 頭を撫でるその手から温もりを感じ取れる。久々に心地良いものを得られた。どんなに生き急いだって変化なんて微々たるものだ。それは謎解きをする時だって同じだ。

 あんなの言う通り、焦る必要なんてどこにもない。ひとつずつ、目の前の謎を解くように真実を追えばいいんだ。

 

 不安な気持ちを無意識に振り払おうとやっけになっていただけ。

 

「……ふぅ」

 

 ひと息吐く。

 

「頼りないなんてまさか。あんなは超頼りになる女の子だ」

 

「そこまで言われると、なんだか照れちゃうよー!」

 

 あんなと話している時が、心にゆとりが出来る。狭まっていた視野も広がっていく感覚だ。彼女の言葉ひとつひとつに魅力を感じる。これが、彼女の良いところなんだろうな。

 

「そうだ! 折角ですし、明日一緒にお出掛けなんてどう?」

 

「俺と?」

 

「そう! お互い似た者同士、助け合って行こうという名目で!」

 

 こじ付け感が否めないが、別に断る理由は特にない。寧ろ好都合とも言える。日常生活を送る中で、あんなと2人っきりというシチュエーションには中々やってこないのがいつもだ。基本、どちらかの隣にはみくるかポチタン。探偵事務所でなら、必ずジェットがいつも側に居る。

 

 あんなという人間もよりよく知れるチャンスでもある。交流を深めるという点では、これ以上ないお誘いだ。

 

「結構面白そうだ」

 

「じゃあ、決まり!」

 

 翌日出掛ける事が決まった直後、ノック音が聴こえた。扉の方へ目を向けると、ジェットが扉に寄り掛かって2人が喋り終わるのを待っていた。

 

「話は済んだか?」

 

「ジェットさん?」

 

「あんなの奴が呼びに行ったと思ったら全然帰ってこないじゃん。そんで、様子を見に来たら一緒にお喋りかよ。早く来ないと晩御飯冷めるぞ?」

 

「冷めたご飯は美味しくない。急いで行くとするかー」

 

 一足先に部屋を退室したまこと。それを追いかけようとあんなも部屋から出ようとしたのだが、その矢先にジェットに呼び止められる。

 

「あんな、お前さっきまことと何話してたんだ?」

 

「あ、うん。まこと君、先の事ばっかり見てたからちょっとね」

 

「どんな内容か知らんけど、あの様子だと一応話はついたみたいだな」

 

「本当に"一応"だけどね。まだ心配だから、明日一緒に出掛けようって話になったの」

 

「一緒に出掛ける」その言葉を耳にしたジェットは、とても意外そうな表情を浮かべてこう言った。

 

「ふーん。なら、デートみたいなもんだな。せいぜい楽しんでこい」

 

「えっ、デート⁉︎」

 

「男の子と女の子が一緒に出掛けるなんてそんなもんだろ?」

 

 そのような気はさらさらなかったが、ジェットが口にしてしまったばかり意識せざる得なくなった。頬は紅潮し、とめどなく体温が上昇する。

 普段ならこんなにも意識なんてしないのだが、何でだろうか。話す機会も日常的にあり、年齢も背丈的にも同じだからなのか。

 

 こればっかりは、探偵でも中々解けない難解な謎。

 

「……やっぱり皆で出掛けよう! そうしよう!」

 

「はぁ⁉︎ 急に何でだよ!」

 

「い、いいじゃん! 皆でお出掛けした方が楽しいよー!」

 

 逃げるように、そして縋り付くようにジェットに懇願するのだった。中々引き下がらないあんなに、ジェットは渋々付き合う約束をする形となった。




さてと、次の話をどうしようかと悩んでます。実は言うと、書きながら物語の内容を考えております。そんな状態でも、オリ回挟まなければならない理由がありまして…。繋ぎ部分など微塵も考えておりませんので只今悪戦苦闘中です。なんとかして頑張りマッスル!

ここまでの拝読ありがとうございました!
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