名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第27話 謎解きはアイスを食べたあとで

 昨日の一件から、キュアット探偵事務所の面々でお出掛けする形となった。当初、2人きりだけかと解釈していたまことからすれば、みくる達がついて来ている事に首を傾げていたが些細な事だと流した。

 

「それであんな、今日何処か行くか決めてるのか?」

 

「え、あっ……」

 

 突発的に決めたこと故、特段何処に行きたいかなど全く考えていなかった。どちらかというと、まことの気分転換でお散歩の感覚で誘っていたのだ。それが結局、皆でお出掛けする形となったのだから余計である。

 

「さては、その様子だと決めてないな」

 

 ジェットに突っ込まれ、恥ずかしさと申し訳なさで居た堪れなく肩身が狭しくなるあんな。そんな彼女を気遣ってみくるとポチタンが宥め、まことはフォローする。

 

「まあまあジェット先輩、あんならしいじゃないですか」

 

「ポチポチー!」

 

「そんならあそこ行ってみるか? 最近学校でも話題になってる、美味しいアイスが売ってるというキッチンカー。此処からなら、そう遠くない所らしいが?」

 

「はなまる賛成! いくいく!」

 

 満面の笑みを浮かべ、いつもの調子へと戻ったあんなにまことはホッと胸を撫で下ろした。

 

 支度を終え、外に出ようとした矢先にまことの携帯電話から一通のメールが着信された。気になってすぐに開けると、宛先はパティスリーチュチュで働いている帆羽くれあからだった。

 

「くれあさんからだ。なんて書いてあるんだ?」

 

 携帯を操作して届いたメールを開けると、こんな一文を目にする。

 

『今新しいお菓子を作ってるの。機会があれば、いつものように味見お願いね!』

 

 対してまことは。

 

「『楽しみにしてる』っと。そういえば、今日も仕事の筈だけど、お菓子作る暇なんてあるのか?」

 

 少しぶっきらぼうな返信をした。すると、ものの数秒で「今回も期待してて!」という可愛らしい返事が来る。

 

「まことー、何してるのー?」

 

「今行くから!」

 

 みくるの呼び掛けに携帯を閉じ、一同はキュアット探偵事務所を出るのだった。

 

 

 ◯

 

 

「見えた。あれだな」

 

 歩いて数十分の所にある大広場で、噂になっているキッチンカーがあった。なんでも、アイスを専門に販売しており、食べた人のレビューとしては満場一致で美味しいとのこと。

 

 横に立て掛けてあるメニュー看板を見て、全員どのフレーバーを食べようかと腕を組んで悩み出す。

 

「シンプルなバニラもあるけど、チョコも美味しそう」

 

「へぇー、種類豊富だな。おっ、ストロベリーなんてあるんだ」

 

 食い気味に看板を凝視するみくるとジェットを横に、あんなもまたひとり頭を悩ませてた。

 

「これも美味しそうだし……ああでも、こっちも捨て難い! どっちにしよう」

 

 本格的に動き出したといはいえ、今キュアット探偵事務所の全体の資金はかなり乏しい。故に、1人が自由に使える金額もそれぞれ少なく、買うにしても1人1個が精々だ。なので、あんながこんなにも迷う姿を見るのは珍しくもある。

 

 そんな彼女に、まことが助け舟を出す事にした。

 

「俺とシェアして食べるか?」

 

「いいの⁉︎」

 

「折角人数募ってるんだし、交換ぐらい別に良いだろ?」

 

「やったー!」

 

 わざわざバンザイする程全力で喜びを表現する始末。余程、食べたかったのだろうと思う反面、そんなにひもじい思いもさせてしまっている事に申し訳なさもある。

 

「にしても、今回はラッキーだったな。聞いてた話だと、結構な人が買いに来るってことなんだが」

 

 周囲を見渡し、アイスを食べている人の人数を確認する。

 

 OL、大学生くらいの人が紫色のぬいぐるみを抱える、見覚えのある制服姿の人達。その全員が女性に加えて、これから食べる自分達を含めた7人+ポチタンだ。

 

「あの制服の人ってもしかして……」

 

「はい、まこと君のアイスだよ」

 

「サンキュー」

 

 あんなから注文していたキャラメル味のアイスを受け取り、スプーンで一口分掬って彼女の口元へと運ばせた。

 

「言ってた交換」

 

「ありがとう。はむっ!」

 

 口に入れて早々に、蕩けた表情をしていた。その様子だけで、評判通りの美味しさなのが見て取れた。まことも食そうとしたのだが、背後からアイスのように冷たい視線が釘を刺す。

 

「あんなにだけズルい。わたしにも頂戴」

 

「いや、お前は自分のをだな──」

 

 みくるはそう言いながら、小さな口を開けて待っている。まるで、雛鳥が餌を与えてくれるのを待っているかの様子。

 

「ったく、しょうがねぇな」

 

 同様にスプーンで一口サイズを掬い、みくるの口の中へと放り込ませた。

 

「んー! あまーい!」

 

 渋々とはいえ、みくるのその笑顔を見ればそんな気持ちも何処かへと吹き飛んだ。何気ない日常に思わず笑みが溢れてしまった。

 怪盗団ファントムの邪魔が入らず、このままマコトジュエルが順調に集まれば良いのにな、と心の底から思う。

 

 その時、あんなが肩を突いて知らせてきた。

 

「まこと君、あそこに居る人って確か」

 

「ああ、あんなも気付いた?」

 

 2人の視線の先には見知ったコックコートを着用している青い髪の女性。まこと達よりもひと回り身長が大きく、お淑やかな彼女。

 

 まことはその女性に声を掛けた。

 

「こんにちは、くれあさん」

 

「あっ、まことちゃん奇遇だね」

 

 振り返り、返事するや早々にまことの頭を撫で始める。やはり、声を掛けるのではなかったと後悔する。

 そんな彼女の余った片手には、まこと達と同じくしっかりとアイスクリーム・コーンが握られていた。

 

「くれあさんもアイス食べに来てたんだ」

 

「うん。お店でもよくお客さんと話しているから気になって、つい」

 

「そうですか。んじゃまた」

 

「ええー⁉︎ もう行っちゃうの?」

 

 背を向けた直後、片腕を掴まれて行かないでと懇願される。

 

「俺、今友達と出掛けてる最中なんだ! はな……てか、力強ッ⁉︎」

 

「折角だから一緒にどうですか?」

 

 すると、あんながそう投げ掛けた。それを聞いてくれは手を離して喜んだ。急に手を離すものだから、勢い余ってまことは地面に叩き付けられた。しかし、手にしているアイスだけは守り抜いた。

 

「き、急に離すなよ……」

 

「皆で感想言い合って食べた方が、絶対良いと思うんだけど」

 

 今回のお出掛けの立案者はあんなだ。あんながそう望むのであれば、叶えてあげるのが筋ってものだ。

 

「……あんなに免じて食べましょう」

 

「不服そうな顔。でも、まことちゃんらしくてわたし好きだよ」

 

 やはり、この人とは馬が合わない。それに苦手だ。好意を持って接してくれるのは嬉しい限りだが、距離感が違い過ぎて引いてしまう。

 

「あっ、そうだ。ついでにキュアット探偵事務所の金田一まことちゃんとして依頼しても良いかな?」

 

「え、あっ、うん良いけどさ。随分と急だな」

 

「あーうん。まことちゃんが声掛けてきたのと同じタイミングで問題が起きたのよ」

 

「ま、依頼は全部受けるつもりだからそれは良いとして。で、良いよな皆?」

 

 まことの問いにあんなやみくるは大きく頷いて依頼が正式に受理された。羽根休みのつもりだったが、行く先で事件に巻き込まれるとは。TVに出てくる名探偵みたいだ。

 

「それで、依頼は?」

 

「無くしたネックレスを探して欲しいの」

 

「くれあさんが? 良い趣味してますね。似合うと思いますよ」

 

「あ、ありがとうね」

 

 いきなり褒めてくるものだから、不意を突かれて驚いた。それは少し困っている様子。見えない角度でみくるから、肘で突かれる。女性を誑かすような言動は控えろと、そう言っているのだろう。

 

「で、でもわたしじゃなくて無くしたのは彼女なの」

 

 くれあの背後を見れば、OLの方が地面を這って何かを探し込んでいた。くれあが言うネックレスの落とし主は、多分の彼女だ。

 

「よし、んじゃ早速──」

 

「事件ならわたし達、キュアット探偵事務所の探偵にお任せあれ!」

 

 割り込むのはみくる。既にプリキットブックを片手に捜査の準備も万端である。気合いが入る事が良いが、せめて話は遮らないで欲しい。

 

 浅いため息を吐きつつも、みくるを先頭にして3人は困っている女性へと声を掛けた。

 

「こんにちは、キュアット探偵事務所の者です! ネックレスを探していると聞きました!」

 

 みくるの声に反応して、女性は顔を上げた。一瞬目を丸くさせ、キョトンとした表情を浮かべるも、耳にした内容を頭の中で整理、理解してすぐさま飛び付く。

 

「ああああの! あの! あのあの、あのですね!」

 

 みくるの肩を掴んで前後に揺らして、吃った声で助けをこう。

 

「お、落ち着いて下さい!」

 

「あっ、すみません!」

 

 ようやく離してくれたのだが、揺さぶられたみくるは目を回しておりその場に崩れ落ちた。あんなが優しく背中を摩る隣で、まことは詳しい事情を訊く。

 

「それで、ネックレスが無くなったというのは?」

 

「は、はい! 実は、首から下げていたネックレスを少しテーブルの上に置いていたんです。ですが、少し目を離したらもう無くなっていて。落ちてるのかと思ったのに、探しても探しても見当たらなくて……」

 

 テーブル、というのはこの移動販売をしているアイス屋が飲食スペースとして設けていたもの。

 この場所はとても開けており、視界を遮る物はひとつとしてない。落としていないとなると、誰かが盗んだという説が一番濃厚。しかし、こんな目立つ場所で誰の目も触れずに盗み出すのはほぼ不可能と言える。

 

「あのネックレスは、母が就職祝いで貰った物なんです。大事にしてたのに」

 

「そう、ですか……ん?」

 

 まことは地面に落ちている黒い羽根に目移りする。改めて周囲を見渡す。遮る物は無いのは確かだが、少し先の場所には大きな木々が視界に入る。

 

「あれは……やっぱりな」

 

 視線のその先で、まことはとある動物を目にして何か確信めいた笑みを浮かべる。

 

「困った時のプリキットだ。あんな、みくる、プリキットミラールーペを使うんだ。盗まれたのなら、絶対に証拠が残ってる筈だ」

 

 ジェットの案で、2人は早速ミラールーペを手にした。

 

「「オープン!」」

 

「いや、その必要はない」

 

「「ミラー……えっ?」」

 

 元の大きさに戻そうとした時、まことがそれを遮って静止させた。事件解決へと導くにはプリキットの助けが必須となっている。これまでのその様にして幾多の謎を解き明かしてきた。

 

 なのだが。まことは何を考えているのかと、注目する。

 

「ネックレスに、この落ちていた黒い羽根。見えたんだよ。今から俺がその答えを出す」

 

 その場に居る全員が息を飲む。

 

「犯人はアンタだ!」

 

 突き付ける衝撃に、全員の目が犯人へと集中した。

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