名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第2話 小さな名探偵

 場所を変え、事情を一から式場スタッフの幸野さちよ、花嫁の想田まりが困っている内容を全部丁寧に話してくれた。

 

 結論から言ってしまえば、式で身に付ける筈だったティアラを無くしたらしいとのこと。まりの母親の代から譲り受けたもので、今日の式で使うみたいだったが、それが直前になって行方不明に。その最中に、まこと達が居合わせたという形だ。

 勿論、無くしたティアラ似た代わりの物を用意は手配済み。

 

 一生の大切な思い出となる結婚式。それを台無しにさせない為にもと、みくるは大いに張り切った。

 

 そして今現在──。

 

「まりさんが最後にティアラを見てから、子の部屋に出入りしたのは貴方方3人。この中に、ティアラを盗った犯人がいます!」

 

 他関係者2人を集めて犯人探しを始めた。そしてみくるは、この3人の中に盗んだ犯人が居ると堂々と言い切ったのだ。その可能性は大いにあり得るが。

 

「まさか、あり得ないです!」

 

「で、ですよねー! ちょーっと話を聞こうかな、なんて」

 

 内部の仕業、というだけで犯人が居ると言うのは少し強引が過ぎる。でも、そう疑ってしまうのも無理はない。まことは苦笑いを溢しつつ、みくるをフォローする。

 

「そこら辺も考慮して、取り敢えず話そっか」

 

 ここから全員の事情聴取が始まる。カメラマンの宇都見将太という男性。まりの友達で女性の藤井ともか。そして、さちよ。

 

「それじゃあまず、翔太さん。貴方は此処にはどうして?」

 

「花嫁さんを撮りに来たんだ」

 

 予想していた返しだ。

 

「あーもう! その役目はわたしなんだから!」

 

 みくるがまことに苦言を申した。どうやら聴取も全部、みくるの口から言いたかったのだろう。けれど、そんな回りくどい事をしていたら結婚式の時間までに間に合わなくなる。

 

「それならどうぞ」

 

「では次に、ともかさん!」

 

「私はまりにお願いがあって」

 

「「「お願い?」」」

 

 わざわざ花嫁にお願いをするなんて。一体どういう内容か3人は気になった。

 

「ブーケを、ともかの方に投げて欲しいって」

 

「それって、ブーケトス!」

 

 花嫁が投げたブーケを取れば、幸せをお裾分けしてくれるというやつだ。それ以外にも、次に結婚出来るなんて意味合いもあったりと。

 

「ブーケトスでそんなお願いありなんだ。そこは俺も知らなかった」

 

「ともかが珍しく遅刻しないで来てくれたから。つい」

 

 みくるは大した事のない証言も事細かく手帳にメモしながら、頭の中で整理をする。

 

「私は式の準備で部屋を出入りしてました」

 

 この中で一番怪しいのさちよ。部屋の出入りが多いという事は、その分盗めるチャンスもある。それに、準備でまりと接触していた時間も考慮すれば、アリバイも適当な理由付けで作れる。

 

 と、考えるのは凡人の発想。更にそこから深掘りをして謎を紐解いていくのが探偵というやつだ。

 

「もしかして、犯人はティアラを隠し持ってるとか?」

 

「あんなちゃん、目の付け所がいいな。流石名探偵」

 

「だから、わたし名探偵じゃないんだけど……」

 

 これだけティアラを探しても見つからないとなれば、必然的に犯人が持っているという考えに行き着く。

 

 だが──。

 

「なるほど! なら皆さん、早速荷物検査を──」

 

「早まったらダメだ。あんなちゃんの目の付け所はいいけど、それは正解ではない。いくら荷物検査したって無駄だよ、みくる」

 

 まことは代わりのティアラを手に取り、目視で寸法を測る。

 

「やっぱりね。このティアラの大きさじゃ、隠し通すのは無理だ」

 

「目視じゃ分かんないよ。実際に当ててみないと」

 

「さちよさんのポーチでは小さ過ぎる。ともかさんが持っているハンドバッグは、深さはあるもののティアラを入れるには幅が足りない」

 

「将太さんの帽子なら入るんじゃない? 大きさだって殆ど同じだし!」

 

 確かに将太の帽子とティアラの大きさは一致する。だが、大きさが同じでも入れられるかが肝心だ。

 

「帽子、いいですか?」

 

 あんなは将太から帽子を受け取り、試しに中に入れ込もうとするが。

 

「あっ、入らない」

 

「そう。いくら大きさが同じでも、入らなければ意味は無い」

 

「じゃあこれって」

 

「振り出しに戻ったな」

 

 みくるは手帳を閉じて、強く握り締めた。

 

 

 ◯

 

 

 みくるは探偵としての服を脱いで、丁寧に折り畳み、噴水に座り込んでいた。そこで、もう一度改めて情報を整理、まとめ、手帳に書き留めているがその手が止まる。

 

「ティアラを持ち出した方法が判れば、犯人が分かる筈なのに。その方法が判らない」

 

 あまりにも情報が少な過ぎる。仮に、偶然ティアラを見つけ出したとしても、持ち出したトリックを暴けなければただのこじ付けとして扱われる。それではダメなのだ。

 

「名探偵が珍しく悩んでいるな」

 

「まこと……」

 

 浮かない顔を浮かべる彼女を心配して、まことはその様子を伺いに来た。様子を見に来て正解だった。見たまんまに、みくるは落ち込んで参っている。

 

「隣座っても良い?」

 

「あ、うん」

 

 まことは隣に座る。何か励ましで喋る訳でもなく、ただじっと静かに隣に寄り添うだけ。その様子がみくるからしたら気になり、視線が揺れ動いている。

 

「本当にまことって凄いや。一目で全部判っちゃうし、それに比べてわたしっていつも……」

 

「俺はそうは思わないな」

 

「えっ?」

 

「俺にだって知らない事は沢山あるよ。ほら俺、記憶喪失だから自分の事全然知らないし」

 

「それは仕方ない事だよ」

 

 まことは横に置かれている帽子をみくるに被せた。

 

「でもみくるは、それを『仕方ない』で片づけようとはしなかった」

 

「だってそれは、まことが困ってたから」

 

「そこだよ。そこがみくるの良いところ。俺が諦めていたものを、みくるは拾ってくれた。そこんところ、俺結構感謝してるんだよ」

 

「普段の態度からはそう見えないけど?」

 

 ガクリと肩を落とす。そう言われても仕方ない。事実、偶に嫌々で付き合ってたりもしていた事もある。

 

「俺は信じてるよ。みくるなら、立派な名探偵になれるって」

 

「まこと……!」

 

「てか、そうでないと俺はいつまで経っても自分を思い出せないまま。俺の記憶を探せられるのは世界でただ1人。名探偵小林みくるだけだ」

 

 微笑む彼の表情に、悩んでいた心のモヤモヤが晴れていくのを感じた。同時に熱も感じる。まことと一緒に居る時偶に感じる。知っているようで知らない"何か"を。

 

「心配をしてるのは俺だけじゃないぞ」

 

 立ち上がるのと同じタイミングで、まことと同じようにあんなも心配して様子を見に来てくれた。

 

「みくるちゃん、大丈夫?」

 

「はい、なんとか。ですが、まだティアラを見つけ出す為の鍵が見つかりません」

 

 みくるは徐に語り始める。

 

「わたしも名探偵に助けられたから。だから今度は、わたしが名探偵になって皆を助けたい。そしたら、まことの記憶も」

 

 みくるは一瞬意味深にまことへ視線を向けた。

 

「だったら、名探偵になれば良いよ!」

 

「でも……」

 

 精神的には立ち直りはしたが、肝心の謎が未解決のまま。この知恵の輪を解くには、まだパズルのピースが欠けている。故に、これからどうすれば良いのか迷いが生まれている。最後の一歩がどうしても踏み出せずに足踏み。

 

「悩んでるだけじゃ始まらないよ」

 

 まるで、心を見透かされたような言葉がみくるの心に突き刺さった。

 

「一歩踏み出せば答えは付いてくる! 一歩の勇気が答えになる、だよ!」

 

 その言葉は、今みくるが喉から手が出る程一番欲しかったもの。それが最後の後押しとなって、重かった足が一気に軽くなった。

 

「もう一度全部調べよう!」

 

「はい!」

 

「まこと君も!」

 

「勿論だ」

 

 完全に立ち直ったみくる。また3人で、一から調べれば答えは必ず見つけられる。そう信じて、みくるは立ち上がった。

 気張り始めたところで、水を差すそよ風が吹いた。その風はとても悪戯好きで、みくるの髪を結んでいたリボン解けて近くの花壇まで飛んで行ってしまった。

 

「植え込みにリボン。実は今日これ2回目なんだ。さっきもこうして花に絡まったリボンを……花?」

 

 取りに行ったあんなが何か閃き掛けている。

 

「植え込みの、中」

 

 みくるも、植え込みの中に落ちたリボンで引っ掛かる。

 

 あんなとみくる。2人はその細い糸を手繰り寄せて、先にある答えを探し求めた。点と点。線と線。パズルを組み立てるようにピースを一つずつ嵌め込んでいった。

 

 ひとつ、またひとつと。そして遂に辿り着いた。

 

「「見えた! これが、答えだ!」」

 

 探し求めていた解答を2人は同時に手にした。

 

「何か分かったの?」

 

「うん、これで間違いないよ!」

 

「早速教えますね。ティアラの行方。誰にも見つからないように仕掛けたトリックの謎。そしてこの事件の犯人を!」

 

「じゃあ、答え合わせでもしよっか」

 

 

 ◯

 

 

 全ての謎が解けたあんなとみくるは、改めて全員を呼び集めた。恐らくこれが最後のチャンス。もし、これから話す推理が間違っていれば、今度こそティアラの件はここで打ち切られる。

 

 それだけはなんとしても避けたい。

 

「犯人が分かりました」

 

 あんなとみくるは、お互い目を合わせ、同時に犯人を名指しする。

 

「「犯人は貴方です!」」

 

 2人が指をさしたのは、まりの友達であるともかだった。

 

「やだなぁ。ティアラはポーチに入らなかったでしょう? 外に持ち出せないよ」

 

「いいえ。ティアラは、まだこの部屋の中にあるんです。貴女は、自分にブーケを投げて欲しいってまりさんにたのんで、ティアラをブーケの中に入れた」

 

「そして、まりさんからブーケを受け取った後、ティアラを抜き取るつもりだったんです!」

 

 2人の推理に従い、まことはブーケの中に手を入れて探る。すると、指先に硬い物体に触れる。取り出してみると、行方をくらませていたティアラだった。

 

「俺も2人の推理が間違っているとは思えないのだけど。ともかさんはどう思います?」

 

 ともかさんは目を伏せる。そして口角を上げて、込み上がる笑いを堪え切れず体を震わせる。そして、2人の推理を讃えているのか拍手までした。

 

「やるわねぇ。でも一つだけ、大きな間違いをしているよ。()()は『ともか』ではないんだ!」

 

 顔に手を掛け、皮膚を引き剥がす仕草をして表の仮面を自ら脱ぎ捨てた。顔だけじゃない。服も脱ぎ捨て、その下から本当の姿を現す。

 

「ボクはニジー! 怪盗団ファントムの怪盗さ。惚れ惚れする変装だったろ?」

 

「なっ、怪盗だって⁉︎」

 

 目の前に現れた青年は自ら怪盗と名乗り、それに相応しい格好でこの場に居る全員に素性を晒した。

 

 まさか怪盗の仕業とは思えず、ド肝抜かされ全員硬直した。

 

「頂くよ」

 

 耳元で囁く声と共に、まことが持っていたティアラを瞬く間に盗まれてしまった。

 

「しまった!」

 

 体験した事のない出来事で反応が遅れ、怪盗ニジーは部屋の窓から外へと躍り出た。

 

「此処2階だぞ⁉︎」

 

「とにかく追い掛けよう!」

 

「2階から⁉︎」

 

「そんな訳ないだろ。さっさと行くぞ、みくる!」

 

 あんながいち早く部屋を飛び出し、遅れてまこと、みくるもニジーを追い掛け外へ駆け出していった。

 まだ事件は終わってなどいない。寧ろ、今ようやく始まったとも思えた。




文字数も多くなってきたので一旦区切ります。

ここまでの拝読ありがとうございました!
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