名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第29話 プリキットアンサーレンズ

 トゥルースの右目にある3つに連なるレンズは、大中小とハートの形、羽の装飾、円形といったそれぞれが異なる形をしている。

 

「あれ、何?」

 

「トゥルース?」

 

 鎖を振り解いた様に驚いていたのは怪盗団ファントムでもハンニンダーでもない。味方であるアンサーとミスティックの2人だった。

 

「アンサーレンズに映り込んだものは、そのレンズにあらゆるものを視覚情報としてレンズが可視化させてくれている。恐らく鎖を防いだのも、このプリキットアイテムのお陰だろうな」

 

 丁寧に補足説明をするジェットは意気揚々としている。まるで、自分が発明した道具のように。

 

「ハンッ! だから何だって言うの? 情報が視覚化されているだけで、戦況を有利に運べると?」

 

「ああ、運べるさ」

 

「なら、お手並み拝見と行こうかしら。ハンニンダー!」

 

「ダッダー!」

 

 アンサーとミスティックに向かっていた鎖が、トゥルースへ向けて集中砲火。並大抵の動体視力では追い付かない。けれどそれが、全て視えていたらどうだ。

 

「それなら、こう動けばいいのか」

 

 鎖の軌跡がレンズに映し出され、その中にある限りないスペースを駆使し、針の糸を通すかの如くその隙を潜り抜ける。軽やかな足運びで、その足が止まる頃には鎖は全て通り抜けていた。

 

「どうだ? 全部避け切ったぞ」

 

 レンズを3つ重ね、その瞳でハンニンダーを分析、解析を行う。気温や相手の筋肉、心拍数等から見えない情報までレンズに数値として可視化してくれる。そして、最後には最善の道まで示してくれる。

 

「そこだ!」

 

 駆け出す。無数に降り掛かる鎖の雨を物怖じしない勢いのまま、正面から回避している。これといって何か特別な事はしていない。ただ、レンズ越しで視ているだけ。

 

「こうなったら……ハンニンダー。囲い込んで潰すのよ!」

 

「ハンニンダー‼︎」

 

 ハンニンダーが両手を付くと、トゥルースの周囲の地面から鎖が出現した。籠の中の鳥と化して今の勢いを殺すには申し分ない。加えて、感覚が狭まっている。このままでは、手足の可動域までも制限されてしまう。そうなってしまったら脱出は不可能だ。

 

「が、俺は敢えてこの歩みを止めない」

 

アンサーレンズで覆う鎖を冷静に分析する。

 

「見えた」

 

 この鎖の包囲網を突破するのは不可能と言ってもいい。それでも一筋の光だけは見逃さなかった。

 

 トゥルースキュアブックを開き「S」のアルファベット文字を書く。トゥルースは徐に右手を銃のように指先を前に突き出して、ハンニンダーへ狙いを定める。

 白き輝かしいエネルギーが一点に集中され、凝縮される。

 

「トゥルースショット!」

 

 放たれる白き光弾。僅かな綻びが生まれた一瞬の隙を突き、鎖の包囲網を掻い潜ってハンニンダーへと一直線。

 

「ハニダッ⁉︎」

 

 トゥルースショットは見事命中。そして、尻餅をついては鎖の牢獄は崩れ落ちる。

 

「アンサー! ミスティック!」

 

 最後は彼女達2人の名探偵に託した。

 

「「オープン! プリキットミラールーペ!」」

 

 既に準備をして待っていた2人の声が重なる。

 

「「マコトジュエル!」」

 

 ミラールーペに専用のマコトジュエルを嵌め込み、ルーペモードに切り替える。

 

「見て!」

 

「感じて!」

 

「謎を解く!」

 

 2人で共に、ミラールーペに浄化に必要な力を蓄える。

 

「「これが、わたし達のアンサーだ!」」

 

 十分な力を蓄えたミラールーペをハンニンダーに向け、内包する力を全て前方へと撃ち放つ。

 

「「プリキュア! フライング・スペクトル!」」

 

 放たれた浄化の光は鳥となって羽ばたき、高速でハンニンダーの身体を貫いた。嘘で覆われていたマコトジュエルに光が戻り、ようやく盗まれたネックレスと共にアンサーとミスティックの手元に返ってきた。

 

「「キュアット解決!」」

 

 回収したマコトジュエルはポチタンがしっかりと収納して、この事件は一件落着と幕を閉じた。

 

「……ま、こんなもんでしょうね」

 

 ファントムである彼女は、最初からこうなる事を予見していた。故に、この結果に然程驚きはしない。こうなって当然という素振り。

 

「待てよ」

 

 失敗に終わり、此処にはこれ以上の用は無く立ち去ろうとした間際でトゥルースに呼び止められる。

 

「ルルタン、だろ?」

 

 不意に名前を呼ばれた。彼女は振り返る。そこには、驚きと嫌悪感漂う表情を見せていた。

 

「今のまことに、この姿を見せたのは初めてだった気がするんだけど?」

 

「初めてだ。けど、2つ目のマコトジュエルを手にして記憶をまた一部取り戻した。それも、ルルタンという俺のおとも妖精の」

 

「「えっ⁉︎」」

 

「な、何だって⁉︎」

 

 アンサー達が驚く。それも二重の意味合いで。けれど、これは確かな事実だ。記憶がそう語り掛けているから。

 

「ルルタン、お前は何で俺を?」

 

「そんなのどうでもいいのよ。確かな事は、まこととアタシは敵同士。それ以上でも、それ以下でもない」

 

「どうでもいいなんて、んな訳ねぇだろ」

 

「まことがそう思うように、アタシもこう思ってる」

 

 ルルタンは長い髪を翻し、背中を向けた。

 

「次も上手く行くなんて思わないことね」

 

 言いたい事を全て言い切ったルルタンは、その場から姿を消した。

 

 

 ◯

 

 

 事件は解決。ネックレスも無事に元の持ち主に戻ってこれで終わり。けれども空気は重たく、暗かった。

 その原因となっているのがルルタンだ。ルルタンがまことのおとも妖精なら、今のポチタンのように2人にもそれなりの付き合いがあった。

 

 第三者であるあんな達も、心が締め付けられて苦しい。その様子が気に入らないまことは、声を張って雰囲気を変えようとする。

 

「そんな暗い顔すんなよ。過ぎた事を気にしたってしょうがない。それだけだ」

 

「でも」

 

「でももへちまもない」

 

 あんなの言葉を遮る。これ以上ネガティブな発言をされても空気を悪くする一方だ。まことはそれが堪らなく嫌だ。

 

「記憶が戻った。今はそれだけで十分だ。ありがとうな」

 

 まことのマコトジュエルはまた1つ取り戻した。その成果だけでも良しとする。




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