名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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かなり早目の変身をさせました


第30話 神秘と嘘の隠された因縁

 怪盗団ファントムのアジトである劇場。その舞台上に2人の少女が対峙していた。1人は紫色の妖精を抱え込む少女。一方は、先程まで名探偵プリキュアと接触していた人間態のルルタン。

 

「新人同士、こいつぁ見物だな」

 

「空気わるー」

 

「ウソノワール様、宜しいのですか?」

 

「構わん。好きにさせておけ」

 

 その様子をそれぞれの先で見届けるファントムの面々。勿論、ウソノワールも片肘ついて座しているだけ。口に出していないところをみるに、今は不問としている様子だ。

 

「るるか。あの時、何で手助けしなかったの?」

 

 ルルタンはるるかという少女に問う。

 

「わたしが割って入らなくても大丈夫だと踏んだから」

 

 実はるるかも、大学生の変装してあの場に居たのだ。しかし、彼女はアイスを口にするだけで一向にルルタンの手助けはしなかった。その事に、ルルタンは多少なりと腹を立てている。

 

「キュアトゥルースの力でもあるマコトジュエルが奪われた。この意味が分かるわよね?」

 

「ええ、貴女の失態」

 

「とんだ娘ね。まあいいわ。けれど、これ以上力を取り戻らせられても面倒。かくなる上は、アタシが前に出るってのはどう?」

 

 不気味な表情をチラつかせたルルタンに、無表情を保っていたるるかがここで反応する。

 

「……今の彼ならニジーやアゲセーヌでも十分よ。それに、貴女は二度もマコトジュエルを奪い返されている」

 

「まだ直接対峙はしてない。アタシの手に掛かれば一捻りよ?」

 

「だとしても任せられない」

 

「いちいち噛み付くわね。なんなの?」

 

 ルルタンは自ら買って出ると主張しているのに対し、るるかはどうしても行かせようとはせず引き止める言動ばかり。

 マコトジュエルを集め、嘘で覆われた世界にする。何故その目的を邪魔するような事ばかりするのか。それとも単なる個人の感情がそうさせているのか。

 

 理由がどうであれ、2人の意見は完全に分かれている。

 

「平行線ね。悪いけど、勝手に行かせてもらうから。ウソノワール様、いいですよね?」

 

 その時だった。ルルタンの足下へ向けて一発の紫色の光弾が舞台の床に穴を開けた。

 

「行かせない」

 

 るるかの目の色が変わった。手に自分と同じ背丈のある杖を持ち、ルルタンに向けていた。先程床に穴を開けた光弾の正体もるるかの仕業だ。

 

 これには流石のルルタンも大人しくは出来なかった。

 

「本気でアタシとやる気?」

 

「貴女が行くのなら」

 

 対立が始まった。

 

「いいわ。なら先ず、目の前に居る減らず口の小娘から相手してあげる!」

 

「マシュタンは下がってて」

 

 お互い臨戦態勢になり、火花を散らす。こうなってしまえば、もう誰にも止められない。

 

「オープン! ティアアルカナロッド!」

 

 口に出すのは手に持つ杖の名。ティアアルカナロッドに、専用のマコトジュエルをセット。普段から着用している私服は弾け飛び、紫色のノースリーブワンピースに一度包まれる。

 

「シャッフル!」

 

 軽くティアアルカナロッドを地面に突き立て、その後1回転。そして、ロッドの先端にある輪の中のカードを撫でるように回す。掛け声共に髪色が金色に変色し、ログヘアーとなる。

 

「リバース!」

 

 小さく唱えると、黒を基調とした金の装飾を纏うノースリーブワンピースの衣装へと変化した。最後にケープを羽織り、全ての変身シークエンスが終わり、完了する。

 

「神秘と秘密で包み込む、キュアアルカナ・シャドウ!」

 

 長くなった煌めく金色の髪を耳元に掻き上げて、鋭い眼光を飛ばす。

 

「さあ、迷宮へ誘いましょう」

 

 アルカナ・シャドウの変身を終えるのを気長に待っていたルルタンは、退屈そうにあくびをして目尻から一雫の涙を溢していた。

 

「あ、終わった? それならアタシも──」

 

 言うが早いか、アルカナ・シャドウが先に地を蹴って手を出した。

 真正面からティアアルカナロッドを振り翳す動作から、瞬時に姿勢を低くして右側面に回り込んだ。真っ向から行くと見せ掛けてからの、死角を突いた不意の行動。

 そこから繰り出される黒い閃光──右脚による蹴りを容赦無く叩き込む。

 

「オープン」

 

 ボソリと呟かれた小言。その瞬間、右脚とルルタンの間に割って入る謎の本が出現し、壁となって黒き閃光の一撃を完全にシャットアウト。

 

「その本は⁉︎」

 

 驚愕する。戦慄する。何故ならば、その本は金田一まことが所有するトゥルースキュアブックと瓜二つの物だから。表紙には黒、裏表紙は白とカラーリングは異なるものの形状は全くのそれだ。

 

 おまけに、先程ルルタンはこう口にした。「オープン」と。その単語を口にするのは、現在キュアット探偵事務所の名探偵プリキュアのみ。

 

「覚えているわよね?」

 

「ッ!」

 

「以前一度戦い、完膚なきまで叩きのめされて、地面の砂利を口にした苦い味を。まさか、もう忘れた訳ではないよね?」

 

 アルカナ・シャドウの頭の中にフラッシュバックする過去の記憶。口元が震え、冷や汗をかく。

 

「涙ながらに愛しの彼の名前を口にしながら何度も助けを乞うアナタの姿ときたら、無様としか言いようがなかった」

 

 瞳が揺れ、歯を食いしばる。あの日、あの時の自分への情けなさ、不甲斐無さに怒りが込み上がる。

 

「けれど、今はあの時と違ってアナタを助けてくれる白馬の王子様は居ない。というより、()()()()()()()()今の彼じゃアナタの事なんて微塵も気にしてないだろうけど」

 

「黙りなさい」

 

 右脚に力が更に加わり、本から軋む音が鳴る。

 

「でも残念ね。今の彼の隣には2人の名探偵が居る。向けてくれた笑顔も、頭を撫でる手も、優しく掛けてくれる言葉も全部2人の名探偵だけのものに」

 

「黙りなさい‼︎」

 

 頬が熱くなる。頭に血が上って正常な判断を見失いつつある。

 

 ルルタンは悪魔のような笑みを浮かべ、いつの間にか右手に所持していた鍵を本に備え付けられている鍵穴へと挿し込んだ。

 

「ライアーキーブック」

 

 解錠された本が開かれる。その瞬間、本から凄まじいオーラが洪水のように噴き出し、アルカナ・シャドウを吹き飛ばす。

 

「アルカナ!」

 

 予想外の力にマシュタンも似合わぬ大声で彼女の事を心配した。ルルタンがここまでの力を秘めていた事に、誰も想像し得なかった。

 

「この力、一体何処から?」

 

 ルルタンを中心に渦巻く白と黒のオーラが、その身に変化を齎した。

 

 ただでさえ長かった白黒の髪は踵まで伸び、髪飾りとしてウソノワールと同じ白いマスクが付けられている。キャミソール型のふんわりとしたワンピースにケープを着用。右に白、左は黒とグローブをはめられている。左腰には6つの鍵がリボンチャームで携行とマントが装飾されて、ロングブーツを履いている。

 全体的に白と黒で彩られ、まるで光と闇、陰と陽、真実と嘘をその身で体現させているカラーリングとなっている。そして一番目立つのは、アルカナ・シャドウと同様に、右手に持ち手部分に宝石が埋め込まれている大きな金色の鍵が握られている。恐らくそれが彼女の武器であろう。

 

「美しき虚実で彩られる、大怪盗キュアライアー!」

 

「くっ、この力の総量は」

 

「嘘と真実の狭間で、共に踊りましょう」

 

 肌で感じるライアーの気迫とその力に、アルカナ・シャドウは顎を下げた。

 

「この程度で臆するなんて、随分と肝が小さくなったわね」

 

「貴女を彼の元には行かせない。絶対に、何があっても!」

 

 アルカナ・シャドウは懐から、新たな黒いマコトジュエルとミニチュアサイズの杖を取り出した。

 

「奇遇ね。まさかアタシと同じ事を考えるなんて」

 

 ライアーも同様に、ピンク色のマコトジュエルとミニチュアサイズのマントを取り出す。

 

「愛されていた彼女と信頼されていた相棒。どちらが彼の力を上手く扱えるか。見ものね」

 

「「オープン!」」

 

 ティアアルカナロッド、ライアーキーブックにそれぞれのマコトジュエルがセットされる。

 

 アルカナ・シャドウの左手には白い錫杖が握りられていた。先端には、名探偵プリキュアの証明でもある疑問符を模したハートが刻まれている黒の宝石。更に宝石の美しさをより際立たせる無数のハートが、イアリングのように吊り下がっている。

 

 一方でライアーにはピンク色の襟袖が立っている大きなマントを翻していた。マントには同じく、名探偵プリキュアの証のハートが金色で刺繍されている。

 

「「ッ!」」

 

 そしてまた、舞台上で火花を散らし合うのだった。




ここまでの拝読ありがとうございました
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