名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第32話 盗まれたゴーグル

 キュアット探偵事務所内で騒ぎがあった。それを聞きつけ、玄関先に居たまこととくれあはその場へと駆け付けて行く。

 

「何だ⁉︎」

 

「無い、無い! 僕のゴーグルが無いんだ!」

 

 声を出した主はジェットだった。しかし、彼のアイデンティティでもあるゴーグルは何処にも無かった。騒ぎの原因はそれだろう。

 

「そ、そうか。えっとだな、これは一体……」

 

 ジェットの悲鳴を聞いて駆け付けたのはまこと達だけではない。あんなとみくる、ポチタンはともかくして。周囲を見渡せばカメリアインテリアの前田ちほ、フラワーショップの花森もりおの姿があった。

 

「今日何かあるのか?」

 

「あっ、まことおかえり」

 

「んっとね、わたし達でコスメショップを開こうとして、その下準備をしてたの。それで2階を模様替えをと」

 

 あんなの説明で、何故こんなにも人が沢山出入りしているのかの理由が判明した。そして2階の扉が不自然に開いていたのも合点がいく。

 

「偶々ね、ジェット先輩がゴーグルを外して皆が目を離した隙に」

 

「無くなったんだよ‼︎」

 

 みくるが最後の補足説明をしているの遮って、ジェットが食い気味で大切なゴーグルを紛失した事を報告。

 

「わたし達に任せて!」

 

「「オープン! プリキットミラールーペ!」」

 

 早速事件発生という事で、あんなとみくるはミラールーペのルーペモードを使い、事件の証拠となるものを捜索する。

 

 ミラールーペを覗き、そこに真実が映し出される。かなりの足跡が映し出されはしたが、その量に圧倒する。無理もない。自分達も含めれば、この場に7人という人の数が事務所内を動き回ったのだから。

 

「それ、どうすんだ?」

 

「任せて。ミラールーペなら、わたし達の足跡だけを消されるから」

 

 あんなのミラールーペを覗き込みつつ、どうするのかと問うと、意外にも早くその問題が片付けられる。

 

「はなまる発見!」

 

 もう一度ミラールーペの機能を使い、容疑者を絞り込む。探偵事務所の人間を除く外部の足跡。そこには3種類の足跡がある。

 

「ちほさん、花森さん。そして、くれあさんのもの」

 

「おいおい、待ってくれ。何でそこでくれあさんが容疑者の中に含まれるんだ?」

 

 みくるがあげた犯人と思われる候補の中、まことは1人異議を唱える。勿論、異議を唱えるだけの理由は幾つかある。

 

「それは足跡があるから」

 

「足跡はな。だがな、くれあさんはずっと俺と一緒に居た。怪しい仕草もしてないし、盗む事なんてまず不可能だ」

 

「でも、まことが証人としてくれるからそれを狙って──」

 

「探偵事務所を訪れたのも、ジェットさんが注文したケーキを届ける為にで居合わせたのは偶然だ。くれあさんを疑うのであれば、俺にもその容疑が掛けられる筈だ。みくるが俺を容疑者の1人から外そうとする理由は分かる。但しそれは」

 

 至極当然の推理だ。くれあが盗む事が出来るのなら、一緒に居たまことにも盗める事になる。

 しかし、みくるにもくれあを疑ってまことを白と決め付ける理由はある。但しそれは。

 

「一番やっちゃいけない事だ」

 

 ビクリとみくるの肩が小さく震える。

 

「私情を挟むという事は、視野を狭める事と同じだ。私情を絡めて推理すれば、いざ身内が犯人だった場合取り逃す危険性がある」

 

「それは分かってるけど。わたし、友達を疑いたくない……」

 

 みくるはスカートの裾を力強く握る。

 

「だとしても状況によるだろ。お前なら」

 

「まこと君」

 

 あんなに肩を叩かれ、そこで話が途切れた。顔を向ければ、あんなは少し心配の色を浮かばせていた。

 彼女は何も言わない。その表情を見れば、言わんとしている事は分かる。

 

 みくるに対して言い過ぎたのだ。

 

「ごめんみくる。少し言い過ぎた」

 

「ううん、まことの言う事にも一理あるから」

 

 そこから互いに口を閉じ、気不味い空気が漂う。それでも推理する事はやめてはならない。

 まことは、自分のプリキットアイテムを手にしてある考え事をする。

 

「あんな、ジェットさん。今回だけ良いか?」

 

「どうしたの?」

 

「今回だけ、俺とみくるに任してくれないか? この事件の謎を」

 

 まことはみくるの肩を抱き寄せ、そう告げた。そして即興で作り上げられたコンビ。この言葉に一番驚いているのは、言われた本人であるみくるだった。

 そんな彼に、あんなは優しげな目で言う。

 

「理由訊いてもいい?」

 

「俺とみくるの考え方は多分同じだ。直感ではなく、物事を考えて答えを出すタイプだからな。それに」

 

 横目でみくるを見た。その小さな仕草に察してあんなはほくそ笑んだ。

 

「分かった。今日は2人に任せるよ」

 

 あんなは身を引いて、まこととみくるにこの事件の謎を任せた。

 

「オープン! プリキットアンサーレンズ!」

 

 相棒の許可を得られたという事です、早速プリキットを使いもう一度周辺を調べる事にした。

 

「て事だ。ミラールーペで、ジェットさんのゴーグルが置いてあった周辺の床を調べるぞ」

 

「え、ええ」

 

 2人は腰を屈め、レンズ越しに視える足跡をよく観察する。その最中、まことは小さく呟く。

 

「友達を疑いたくはない。その気持ちは分かる」

 

「……」

 

「けれどやっぱり、みくるにはそんな中途半端な推理はして欲しくないって俺は思う。覚えてるか、この前のレストランでの事件」

 

 そう。あの時の事件の犯人はまこと自身だった。ルルタンに身体の主導権を握られていたとはいえ、犯行に手を染めて盗んだのは紛れもないまこと自身によるもの。

 みくるに対して言った言葉も全て、そこからきているのだ。

 

「あの時のみくるは、真っ直ぐな瞳で事件を解決へと導いただろ。あんなと一緒に。あの姿のみくるをもう一度見たい」

 

 声には出さなかったが、みくるは小さく頷いた。まだ気持ちは沈んでいるみたいだが、気持ちは一応伝わってはいるみたいだ。

 

「考えながら事件の時を振り返るか。俺とくれあさんは、ケーキを届ける為にキュアット探偵事務所に来ていた。事件が起きた直後は玄関先に居たけど、ちほさんと花森さんがその時何をしていたか分かるか?」

 

「ちほさんは、2階のあの部屋に収納ケースを置きに行ってたの。花森さんも2階へ花を届けている最中って聞いてる」

 

「そっか。今のみくるの言葉で、犯人の見当はついた」

 

「今の話だけで? 盗まれたあの時、現場にも居なかったのに?」

 

「だからこそなんだ。あとは証拠だけ」

 

 それぞれの証言を聞いただけで犯人の目星まで辿り着いた。残るは証拠のみとなった。それを捜すべく、2人はレンズ越しで足跡を観察する。すると、みくるがある事に気付いた。

 

「まこと、この人の足跡だけ机に向かってるよ」

 

 とある人物の足跡だけは、机の方向へと向かれている。けれど、証拠にしてはまだ弱過ぎる。あともう一つ、決定的な証拠が欲しいところ。

 

 そんな風に考えていると、またもみくるが発見する。

 

「机の下に何か落ちてる」

 

「本当だな。何だろ?」

 

 見つけたのは土だ。しかし、普段からよく見る土の色とは少し黒い。まことは指先で摘み上げて、それが何の土なのか探る。

 

「これ多分腐葉土だ」

 

「腐葉土って確か、植物の土に使ってるアレだよね?」

 

「ああ、園芸とかで普通の土と混ぜて使われてる土だ」

 

 まことはアンサーレンズを仕舞い込み、重たい腰を上げて清々しい表情をみくるに向ける。

 

「みくるのお陰で犯人が捕まりそうだ。ありがとうな」

 

「わたしは別に……」

 

「らしくないぞ。まださっきの事を気にしてるなら、無理に意見を押し通そうとしていた俺の事を軽蔑したって構わない。俺の推理だって完璧じゃないからな」

 

「んっ」

 

 軽くみくるのおでこに指を弾かせる。彼女は痛がる素振りを見せてつつ、お返しと言わんばかりに軽く拳を胸に当てる。

 

「謎は全て解けた」

 

「ええ、これが答えね」

 

「「犯人は、やっぱりあの人だ」」

 

 これで事件の全容が明らかとなった。

 

 2人の鋭い眼差しは、犯人に向けられていた。その事に気付かない犯人ではなく、相手もまた2人の視線に気付き、心の中でほくそ笑んでいた。

 

 

 ◯

 

 

 犯人を泳がせる為、探偵達は一度皆を帰らせた。その中で、とある人物だけは探偵事務所前で呼び止める。

 

「そのままファントムのアジトに帰るつもりか花森さん? いや、怪盗団ファントム」

 

「ゴーグルを奪ったのは貴方ですね!」

 

 雰囲気をガラリと変え、花森は鋭い目付きでまこと達探偵らをその瞳に映す。

 

「僕がファントム? 何の事です?」

 

「花森さんの足跡だけが、ゴーグルが置いてあった机に向かってありました」

 

「足跡だけで犯人扱いですか? 証拠にしてはまだまだ弱いと思うけど?」

 

「近くに腐葉土も落ちてあった」

 

 花森の眉がピクリと動き、顎が引いた。

 

「腐葉土は園芸とかに使われているものだ。くれあさんとちほさんの2人にはお店でそんな物は使わない。必然的に、フラワーショップの店員である貴方が犯人となる」

 

「ほう」

 

「もう言い逃れは出来ないぞ。花森さん。いや、怪盗団ファントム!」

 

 花森は、観念したのか乾いた笑いをしながら拍手をする。

 

「相変わらず冴えてるね、ベイビー」

 

 盛大に着用していた衣服を脱ぎ取り、隠されていた素顔をその場に曝け出した。大きな帽子にマント、加えて緑の長髪。いつもと言っても過言ではない見慣れた顔に、3人は声を揃えて名前を言う。

 

「「「ニジー!」」」

 

「ゴーグルを返せ!」

 

「残念だけど、それは出来ない」

 

 わざわざ盗み出したゴーグルを見せびらかして不敵な笑みを浮かべている。不穏な空気が漂う中、ジェットがゴーグルを取り返そうと一歩足を踏み出した瞬間。

 

「嘘よ覆え! いでよ、ハンニンダー!」

 

 ゴーグルに宿るマコトジュエルが嘘に覆われ、その邪悪な力の影響で巨大な怪物・ハンニンダーへと姿を変えた。

 

「やっぱりこうなるか。あんな、みくる!」

 

「ジェット先輩の大切なゴーグル!」

 

「わたし達が絶対取り戻す!」

 

 3人はそれぞれの変身アイテムを手に持ち、臨戦態勢を取った。

 

「「「オープン!」」」

 

「「ジュエルキュアウォッチ!」」

 

「トゥルースキュアブック!」

 

 最初の推理ショーがファントムとの対決第一ラウンドと称するなら、これから行われるのはマコトジュエルを取り返す第二ラウンド。その対決の火蓋が切って落とされた。




ここまでの拝読ありがとうございました
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