名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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前回までの補完話です。しるく回の前後どちらか入れようかと悩んだ結果、先に入れる事にしました


第35話 思惑

 キュアット探偵事務所がプリティホリックを立ち上げようとしていた時、怪盗団ファントムのアジトでは2人の怪盗が舞台上で激しく火花を散らしていた。

 

「がはっ!」

 

 いや、今しがたそれは終わったみたいだ。

 

「これで分かったかしら? 貴女とワタシとでは、力の差があり過ぎる」

 

 うつ伏せで倒れるキュアアルカナ・シャドウへ向けて、キュアライアーはそう無慈悲に言葉を投げ付ける。事実、アルカナ・シャドウは疲労困憊で傷だらけ。一方でライアーは無傷ときている。

 それはあまりにも明白な事実しかない。

 

「ウォーミングアップのつもりだったんだけど。まだ加減が必要だった?」

 

 遠回しに調整相手以下と言われる始末。アルカナ・シャドウにとって、これほど屈辱的な事はない。

 悔しさからなのか、それとも己に向けて鼓舞しているのか、床に拳を叩き付けてボロボロな身体を無理に起き上がらせる。

 

「アルカナ!」

 

 舞台袖で見守っていたマシュタンが耐え切れず、アルカナ・シャドウの元へ駆け寄ろうとするも手の平を向けられ静止させられる。

 

「随分と余裕ね……」

 

「はぁ……そっちはそっちで、まだ実力差が見えてないのね。ここまで来ると呆れを通り越して馬鹿としか言いようがないわ。ま、馬鹿と天才は紙一重って言うし」

 

 鋭い眼光でライアーを睨み付けるも目の焦点が合わず、視界がぼやける。まともに相手の顔を見れてはない。そんな危機的状況下まで、今のアルカナ・シャドウは追い込まれている。

 

 肩で息をしながらも、ティアアルカナロッドの先端をライアーに向けてエネルギーを溜め込む。

 

「アルカナスターレイン‼︎」

 

 渾身の力を込められた12の星の光弾が一斉に放たれた。全て正面からの攻撃だが、それを躱す為の隙間は一切無い。例え躱せたとしても、光弾ひとつひとつの威力は計り知れない。当たれば致命傷は避けられない。

 

「オープン」

 

 手の中に転がっている、ミニチュアサイズのマントが元の大きさへと戻りライアーの身を包ませる。マントを翻し、向かってくる数多の光弾を全て弾き返した。

 

「なっ⁉︎」

 

「相変わらず最高ね。キュアトゥルースのプリキットは」

 

 ライアーは悠然と歩き、アルカナ・シャドウのネクタイを引っ張り上げる。

 

「これではっきりと分かった筈よ。一度ならず二度もワタシに負けた。これで、終わりよ──」

 

 ライアーは拳を振り上げ、振り翳そうとしたその時だった。誰かに腕を掴まれ、振り下ろす筈の拳は途中で止まった。

 

「一対一の勝負。割って入ってまで貴方が止める道理なんてないのだけど、ゴウエモン?」

 

 トドメをさされる寸前で、ゴウエモンが中断させる。彼の性格を考えれば、この勝負を止める理由はない。寧ろ、後方で天晴れと謳いながら見守る人だ。

 

「ウソノワール様の命だ」

 

 ライアーはウソノワールに視線を移すと、未來自由(ミラージュ)の書が光っていた。予言のお告げがきたらしい。

 

「『忘れ去れし記憶。かの持ち主に返還すれば、望むものが時期手に入る』。ルルタンよ、貴様の持つマコトジュエルを奴に返すのだ」

 

「待って下さいウソノワール様。返すって、金田一まことにですか?」

 

「そうだ」

 

「お言葉ですが、記憶が蘇る度彼は力を取り戻します。それはウソノワール様もご存知の筈」

 

「未來自由の書には『時期手に入る』と記されている。この言葉の意味が理解出来ない貴様ではなかろう?」

 

 運命は既に道を指し示している。これまで未來自由の書が示した予言が外れた事は一度も無い。傾向から考えてみれば、一度マコトジュエルを元の持ち主であるまことに返してもなんなら問題ない。

 

 そうウソノワールは言っている。

 

 確信はない。けれど、未來自由の書の予言は正しい。

 

「……ライライサー」

 

 ライアーは渋々マコトジュエルとプリキットをアルカナ・シャドウに投げ付ける。彼女の頬に当たり、血は出ていないものの擦り傷が出来てしまう。

 

「なら、貴女が直接渡すのね」

 

 これは嫌がらせだ。アルカナ・シャドウ自身、まことにマコトジュエルを渡したくないと知っているからこそわざと仕向けている。

 

 変身も解き、妖精の姿となって気に食わぬ顔のまま飛び去って行った。

 

「おいおい、珍しくこっ酷くやられたな新人」

 

 ゴウエモンが優しくアルカナ・シャドウに手を差し伸べるも。

 

「触らないで」

 

 その手を払い除けた。床に落ちているマコトジュエルとプリキットを拾い上げ、弱々しくティアアルカナロッドを杖代わりとして歩き、舞台袖へと消えて行った。

 

「ウソノワール様、本当に宜しかったんですか? 新人2人を戦わせたうえ、マコトジュエルをあのキュアトゥルースに返すなんて」

 

「貴様も意見すると?」

 

「いんや。新人同士、互いの気持ちのぶつかり合い。そうやって切磋琢磨するのは良いなと思っただけさ」

 

「フッ」

 

 珍しくもゴウエモンの話に鼻で笑うウソノワール。そんな彼らの会話に割って入る者がいた。

 

「ちょっとちょっと、アゲを差し置いてウソノワール様と話すなんて!」

 

「んじゃまあ解散としますかー」

 

 ゴウエモンの言葉と共にウソノワールも席を立ち、その場に残ったのはアゲセーヌだけとなった。

 

「ちょ! マジチョベリバー‼︎」

 

 

 ◯

 

 

 誰も居ない場所。暗闇の中でアルカナ・シャドウは壁に寄り掛かりながらその場に崩れ落ちる。

 先程まで立っていたのは単なる意地。だがそれも限界なのだ。完全に疲弊し切っており、あのまま戦闘を続けていたらきっと。

 

「……っ」

 

 手の中に転がるマコトジュエルに目を向ける。

 

「まさかアルカナ、本当に彼に渡すつもりなの?」

 

 彼女に寄り添うのはマシュタンだけ。マシュタンもいつになく真剣な眼差しでアルカナ・シャドウに問い掛けた。

 

「そうするしか、道がないから」

 

 ウソノワールには逆らえない。逆らえない理由がある。だから、このマコトジュエルを一度元の持ち主に返さなければならない。例えそれが、自分の意思に反する事だとしても。

 

「ぁ……」

 

 とうとう力尽き、その場に倒れ込んだ。

 

 視界はぼやけ、意識が朦朧とする。マシュタンが何か声を掛けてくれているが、それももう耳に届かない。

 倒れた時、転がり落ちたマコトジュエルが目に入る。すると、目尻から一粒の雫が溢れ、頬を伝う。

 

(わたしの名探偵……わたしだけの名探偵……)

 

 力無く口を動かして、声にならない声を出して完全に意識が落ちるのであった。

 アルカナ・シャドウが口にしたのは、彼女の言う名探偵の名前。

 

 その名は──。

 

(まこと……)




エクレールの設定がオリ主と設定もろ被りは笑う
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