名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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話のベースはそのままに大きいところから細かい部分まで書いやすいよう都合良く改変しました。
半分オリ回みたいなもんですね。


第36話 消えたドレスの行方

 机の上に置いてあるピンク色のマコトジュエルとマントのプリキットに、まこと、あんな、みくる3人の探偵は仲良く頭を悩ませていた。

 経緯はどうであれ、まことのマコトジュエルが手に入ったのは素直に喜ばしい事なのだがそれでも納得はしていなかった。

 

「ねぇ、まこと君。本当にその女の人に貰ったの?」

 

「間違いない。それとも何だ? 俺が見た人は夢か幻。はたまた幽霊だったと?」

 

「ちょっ、ゆ、幽霊だなんて変な事言わないでよ」

 

 冗談のつもりだったのだが、大の幽霊嫌いのみくるは酷く怯えていた。

 3人が話し込んでいる中で、ポチタンを抱えているジェットから至極真っ当な意見が飛ぶ。

 

「ともかくマコトジュエルとそのプリキット使ってみれば?」

 

「それもそうだな。こんな楽して記憶が蘇るならこれ以上はないし」

 

 まことはトゥルースキュアブックを開き、マコトジュエルをセットしてみせる。

 

「「「「ん?」」」」

 

「ポチ?」

 

 残念ながら反応は無いし、まこと自身特に変わった様子は見受けられない。何度か外してははめ直す作業を繰り返すも、やはりマコトジュエルは無言のまま。

 

「それなら、こっちのプリキットはどうだ?」

 

 一度マコトジュエルは置いとておき、マントのプリキットに手を伸ばした。

 

「オープン!」

 

 これも反応がない。

 

「まこと君、貸して。オープン!」

 

 あんなが試してみても反応せず。

 

「今度はわたしがやってみる。オープン!」

 

 代わりばんこで回しているが、依然として無反応。そして、机の上に適当に放り投げてみくるは大きな溜め息を吐く。

 

「これはあれね。不良品ね」

 

「そうなの⁉︎」

 

「そんな訳ないだろ」

 

 否定するのはジェット。プリキットを掴んではゴーグル越しで観察する。あんなやみくる、探偵事務所が保有しているプリキットは殆どジェットのお手製だ。不良品かどうかは、調べればすぐに分かる事だ。

 

「このプリキット。確かキュアトゥルースの資料で見た事あるな。確か名前は──」

 

『シルクのような口溶け。あーん、私はこれ。シルキーアイス』

 

 会話を遮ったのは、つけっぱなしにしていたTVからだった。しかも、全員の視線が釘付けだ。それもその筈、シルキーアイスという商品の看板を背負ってCM出演しているのは人気俳優。

 

「あっ、みくるが観てるドラマの人だ」

 

 家入しるく。今をときめかす人気絶賛中の売れっ子女優。学校でも偶にその話題で会話したりと、話が弾む事はあるくらいだ。

 

 何ののけなしにそのCMにうつつを抜かしていると、まことはある事を思い出してボソリと呟く。

 

「そういえば今日、この近くの公園で撮影があるって聞いたな」

 

「「な、何だってえぇぇ⁉︎」」

 

 大声を出し、わざわざ席を立つ程のリアクションを示したのは、あんなとジェットの2人だった。突然の事でまことは驚き、床に転倒してしまう。

 

「何でそんな大事な事を忘れてたんだ?」

 

「女優さんの撮影って結構珍しいよね?」

 

「あの、2人共。マコトジュエルとプリキットは……?」

 

「そんなの後だ後! 行くぞあんな!」

 

「みくるも行こう!」

 

 2人は素早い動きで身だしなみを整えた後、出掛けられる準備をして玄関から飛び出して行った。ポツンと取り残されたのはまこととみくるだけ。

 少し意外だったのは、みくるが全くもって反応しなかったという。

 

「みくる、行かなくていいのか?」

 

「えっ?」

 

 まことの言葉でようやくそれらしい反応をした。どうやら、CMに一瞬気を取られていたが、彼女だけはすぐさま視線を外して机に置かれているマコトジュエルとプリキットだけを凝視して独り考えていたらしい。

 

「気になるのか?」

 

「あっ、いや。そ、そんな事より、しるくさんに会えるんだって? わたし達も行こうよ!」

 

「お、おう」

 

 ジェットに続き、みくるにまで目の前の謎を後回しにされた。それは一度置いておくとして、正直みくるの様子があまりにもぎこちなくて心配の色を隠せない。だから一言だけ添える。

 

「俺の記憶なんて、集められる時で構わないんだぞ?」

 

 みくるの足が止まった。そして振り返った。

 

「そんな事言わないで。約束したでしょう。まことの記憶は、わたしが必ず見つけるって! 取り戻すって!」

 

「分かってるって……無理はすんなよ?

 

「大丈夫だって。ほら、行くよ!」

 

 手招きしながらみくるはあんな達の元へと駆け出して行った。まこともようやく歩き出すのだが、少し浮かない表情をした。

 

「だったら、何でそんな暗い表情をすんだよ。みくるお前は、俺にとって"特別な"存在なんだから。

 

 探偵の勘だとか、鋭い観察眼という訳でもない。単なる付き合いと、彼女に抱く"特別な"気持ちがそう気付かせたのだった。

 

 

 ◯

 

 

 キュアット探偵事務所から20分程歩いた場所。行き着いた公園には、あの家入しるくをこの目で見ようと人集りが既に出来上がっていた。考える事は皆同じで、まこと達もその内に含まれている。

 

「サイン貰えないかな?」

 

「そんな簡単に貰える訳ないだろ。そもそも、近付けるかどうかさえ怪しいんだから」

 

 あんなはプリキットブックとペンを持ってあわよくばサインをせがもうと企んでいた。が、ジェットの言うように、撮影だったりこの人集りのせいでそもそも近付けるのかどうかだ。

 

「ならいっそ、前に進んでみるか?」

 

「揉みくちゃになりそう」

 

「その時はその時だ」

 

 子供の体格なら、人混みの中に飛び込んでその流れに乗って行けば自然と先頭に躍り出るだろうとまことは考えた。とはいえ、そこに至るまでに相当な体力を使う事をみくるは予想していた。

 

「いざ参ろう」

 

「参ろうって……」

 

 意外にもノリノリなまことに、少しばかり呆れが出るジェット。それでも、今回ばかりはそれ以上は言わない。何故なら、自分もしるくに会いたいから。サインが欲しいから。

 

 4人は密集する人の海へとダイブした。無理矢理道をこじ開け、その隙間をあんなとみくるが上手く利用して進む。

 上手く行ったのか、案外すんなりと先頭に頭を出された4人。これでしるくの様子を見逃す事はないだろう。

 

「まだ始まってないね」

 

 あんなは現場の様子を観察してそう判断した。実際、まだカメラ等の準備をしており、セッティングが終わっていない雰囲気。

 

 気長に待とうとしていると、小さな事件が起きた。

 

「おい、予備のバッテリーは何処に行った?」

 

 あるスタッフ1人の声でその場はざわめき始めた。たかがバッテリーだと思うが、外での撮影には必要不可欠。そもそも撮影機材なのだから、再度購入しようものなら費用が馬鹿にならない。

 

「探し物してるな。大変だな」

 

「……いや、これはチャンスかも知れないぞ」

 

 他人事と傍観していたまことの呟きを隣に、ジェットが何か悪知恵を働かせていた。ジェットがこういった様子を見せるのは初めてだ。

 

「あんな達は名探偵だよな?」

 

「えっ、まあ、そうだけど。ジェット先輩?」

 

「事件があるところに名探偵ありだ。この機に乗じて、しるくさんと接触。そしてそのままサインを貰う! 我ながら天才的な発想だろう?」

 

「あー、なるほど!」

 

「あんなもあんなで納得するなよ。はぁ、全く」

 

 呆れながらまことは現場の中に堂々と入って行く。あんな達が静止の声を上げているが、まことは耳を貸さない。

 

「あっ、君!」

 

 しるくの横を通り過ぎ、一直線に向かって機材が置いてある近くまで歩き、止まる。その場でしゃがみ込み、バッグの中身を弄る。

 

「やっぱり。ありましたよ」

 

 バッグから取り出したバッテリーをしるくに手渡す。

 

「何で分かったの?」

 

「簡単な事ですよ。焦っていたせいで視野が狭まって見落としていただけ。それに、さっき他の人が仕舞っているのをちゃんと目にしていましたから」

 

「中々鋭い観察眼を持っているようね。まるで探偵ね!」

 

 最初から知っていた、なんてそんな事はないだろうが、まことが探偵である事を的確に当てた為に内心驚いた。

 

 探し物は見つけた。その場を早く去ろうと振り返ると、目の前にはあんな、みくる、ジェットの顔がアップで視界に映り込んだ。

 

「「「ずるい!」」」

 

「ずるいよ、まこと君だけ!」

 

「わたし達だって探偵なんだから、3人で解決しようよ!」

 

「お前1人抜け駆けはダメだぞ!」

 

 普通なら褒められるべきところが、まさかの3人からもうバッシングをくらう羽目に。

 

「貴方達皆探偵なの?」

 

 あんなが偶々口にした言葉を、しるくは聞き逃さず拾い上げていた。

 

「はい! わたし達、こういう者です!」

 

 みくるが自己紹介をするに連れて、まこと達もそれに合わさってキュアット探偵事務所の名探偵である事の名刺を差し出した。

 

「あんなちゃんに、みくるちゃん、まことくん。本物探偵さんなんだ!」

 

「そう、なんですけど。中々依頼が来なくて……」

 

「やっぱり、わたし達が中学生だからかな?」

 

「こればっかは仕方ないよな」

 

 少なからずとはいえ、これまで数々の事件を解決へと導いてきた。だが、探偵という肩書きと同時に中学生という名も背負っている。どれだけ優秀であったり、難事件を解いてきた実績があろうと、第一印象で決まってしまっている。

 

 しかし、しるくはそんな探偵達の悩みを簡単に紐解いてくれる。

 

「決めつけちゃダメ!」

 

 気持ちが沈み込むその時、しるくから後光にも似た光が照らされた。それはまるで、救いの手を差し伸べられたみたいに。

 

「私ね、今高校に通いながら芸能活動をしてるんだけど、最初は事務所の社長や両親に凄く心配されてね。仕事をやりながら高校へ行くのは難しいって」

 

 よくある話だ。学生の身で両方だなんて無理がある。仕事は勿論大切だ。しかし、学生の本分は将来に向けての勉強だ。どちらも大切だからこそ、中途半端ではいけない。仕事を選んで中退する者もいれば、機を逃す覚悟で勉学を取る者だって少なからず居る。

 

 けれど、しるくの事は至ってシンプルだった。

 

「でも、私は両方やりたかったの! 大好きな仕事をやりたいし、高校で友達と過ごす時間も好きだから大変だけど頑張ってやってるよ。だから貴方達も探偵頑張って欲しいな。『ダメかも』って決めつけないで」

 

 その言葉に探偵3人だけではなく、傍で聴いていたジェットも含めてとても感銘を受けた。

 

「3人共、良い言葉貰ったな」

 

「みくる、まこと君! これからも探偵頑張ろう!」

 

「ええ!」

 

「論より証拠って言うしな。依頼が沢山来るよう最後まで励んでこうか」

 

 改めてこの心意気を誓う。しるくの言葉を胸に刻み込んで。

 

 その時──。

 

「ポチポチィー!」

 

「「「「あ゙っ!」」」」

 

 今まで大人しくしていた筈のポチタンが声を出した。それも、反応から察するにこれはいつものパターンだ。

 

「ポチポチ?」

 

「いや、これはその……」

 

 まことは、なんて言って誤魔化そうかと思考を巡らせる。そんな最中、不幸中の幸いか助け舟が入った。

 

「しるくさん、大変です! 撮影に使う筈でした演劇部のドレスが無くなってしまいました!」

 

「ドレス?」

 

「それに演劇部って?」

 

 あんなとみくるが首を傾げる隣で、まことは忘れていた事を思い出した。

 

「そういえば今日の撮影で、うちの学校の演劇部も参加するんだったな」

 

「うん。演劇部の人達と野外で演劇する予定だったの。それも、代々引き継いできた大切なドレスで」

 

 ジェットは腕を組んでまこと達に目配せを送る。

 

「こりゃ、キュアット探偵事務所の出番だな。あんな、みくる、まこと」

 

 目の前の事件を無視する訳にはいかない。

 

「「わたし達、キュアット探偵事務所の探偵にお任せ下さい!」」

 

「私にも手伝わせて。あのドレスには演劇部の人達の大切な想いが込められてるの」

 

 あんなとみくるは小さく頷いて、一時的にだがしるくも調査に加わる事となった。

 

「なんだが、えらい大事になったな」

 

 こうして始まった事件。早速4人は、事件の詳細を知るべく情報を集める聞き込みを開始するのだった。

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