名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
しるくを連れて、早速3人は聞き込みに取り掛かる。その前に、まことは一度状況を整理する。
「犯行があったのは、撮影の為に設置されたテント。関係者以外は立ち入る事が出来ない。ドレスに人がずっと付いている訳でもないが、それでも周囲にはスタッフの皆さんが常に居た」
「となると、外部の人間には犯行は出来ない」
みくるの言葉にまことは頷く。外部と内部で犯行出来る出来ないの有無だけでも、かなり容疑者は絞り込めれた。しかし、内部の人間だとしてもスタッフの数はまだ多く犯人を特定するにはまだ足りない。
「で、だ。中でもドレスを最も触った人、触る事の出来る人は誰なのか? しるくさん」
「カメラマンのあきらさん、ディレクターのともきさん、マネージャーのみわさん。そして、演劇部の皆くらいだけど」
「そうか。しるくさん、撮影の時間まで後どれくらいですか?」
腕時計で時間を確認する。時計の針は刻一刻と進んでおり、そろそろ撮影する時間に差し掛かろうとしている。
「あと20分ってところね」
時間が無い。容疑者もある程度まで絞り込めれたが、それでも特定までには行き着いておらず。加えて殆ど情報が無いときた。流石にお手上げ状態かと思いきや、あんながある閃きをする。
「ひとつだけ方法があった。犯人を特定出来る方法が!」
「本当なのあんな⁉︎」
「うん! 3人共、ちょっと耳貸して」
あんなは思い付いた案を耳打ちで伝えた。3人はその内容に驚きもしつつ、納得の表情で頷いた。
「──て訳なの。どうかな?」
「ま、いいんじゃないのか?」
「それなら犯人が誰なのか分かるもんね!」
「手筈通り。やろうか皆!」
しるくの掛け声で3人は拳を高らかに挙げて、事件を解決すべく気合いを入れるのだった。
◯
あれから5分程時間が経った頃。まことは現場にいるスタッフ全員に呼び掛ける。
「あのー! 例のドレス見つかったらしいです!」
その一言でまことに視線が集中する。思わず安堵する者も居て、彼もまた和かに笑顔を作る。
「今、しるくさんが着替えているらしいのでもう少しお待ち下さーい!」
それだけ言って、まことはその場から立ち去った。その最中、まことはスタッフの視線や動きに注目する。不自然な行動をしている人が居ればその人が犯人だ。
(ああ、見つけた。なら、解決するのも時間の問題だな)
ある人物に目が入った。予定通り、まことは一度あんな達と合流すべくその場を後にした。
◯
1人の人物がテントに入って来た。その人はテント内で、何かを求めて隈なく探し回っている。物音を立て、焦る様子。そんな輩の背後から数人の足音が聴こえた。
「やっぱり、貴方が犯人だったんですね」
振り返るとそこには、名探偵らの姿があった。
犯人がこうして姿を現すのを、じっと我慢していた。まこと、あんな、みくるの3人はここまで辿り着いた推理も交えながら、逃げられないようジリジリと詰め寄る。
「残念ですが、いくら探してもドレスはここにはありません」
「何故なら、ドレスは貴方自身がまだ持っているから。それは、貴方が一番分かっていますよね?」
あんなとみくるにそう告げられ、犯人はズボンに強く握る。強く握った事で僅かに裾が上がり、その中から水色の布生地がチラリと顔を出している。
恐らくそれが探し求めていたドレスに違いない。なら何故、無い筈のドレスをわざわざ見つかったと言ったのか。それは勿論──。
「これは犯人を誘き寄せる為の罠。盗まれたドレスをこうして持って来させる為の、ね。ディレクターのともきさん?」
みくるが小悪魔の笑顔を浮かべてそう言い放つも、未だ犯人であるるともきには余裕の態度を示している。
「ドレスが見つかったって聞いたから、その様子を見に来ただけだ。此処に足を運んだだけで犯人扱いされるなんて……」
「ドレスが見つかったと俺が言ったあの時、1人だけズボンの裾を不自然に何度も確認していたからな」
「盗んだ筈のドレスは手元にある。でも、見つかったと知らされたから困惑した」
「自分が盗んだのは別のドレスなのではと。それを確認する為にまたこうして戻って来た」
まこと、あんな、みくるから告げられる動かぬ証拠。言い逃れをしたいが、それすらも八方塞がりで完全に逃げ場を失っている。このまま下手に喋ろうものなら墓穴を掘るだけ。
「隠すにしたってドレスは服の下に着ない」
「そんな思い込みを疑ってみたら答えが見えたんだ。この答えに辿り着いたのは、しるくさんが教えてくれたお陰!」
「「決めつけちゃダメって!」」
的確なあんなとみくるの指摘に、もう隠す事が困難と判断した彼はとうとう本性を曝け出した。
「マジでチョベリバー! 見破られるなんてマジムカつくんだけどー!」
身に付けていた衣服を脱ぎ捨てると、その下には全く別物の顔をした人物が苛立ちを隠せずにいた。
「「「アゲセーヌ!」」」
正体を看破され、小細工が通用しないと分かったアゲセーヌが取る行動はひとつしか残されていない。それは、強行突破だ。
「嘘を覆え、チョベリグにしちゃって! ハンニンダー!」
ドレスに宿っているマコトジュエルを使い、ドレス姿のハンニンダーを誕生させた。同時に、特殊なフィールドが展開されて、戦わざる得ない状況を作らされた。
そっちがその気ならと、探偵達はそれぞれが持つ変身アイテムを握り締める。
「「「オープン!」」」
「「ジュエルキュアウォッチ!」」
「トゥルースキュアブック!」
あんなとみくるは首からぶら下げるペンダントを。まことは腰から下げる本を「オープン」と唱える事で元の大きさに戻してその手に握る。
「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」
3人は、それぞれ変身用のマコトジュエルをセットする事によってその姿を瞬く間に変化させる。
長針と本にペンを走らせる事で普段身に付けている衣服から、カラフルで特徴的な、名探偵という風貌を損なわせない威厳と凛々しさを兼ね備えたものへ変化する。
「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」
「閃く直感で導き出す答え! 名探偵キュアトゥルース!」
「「「名探偵プリキュア!」」」
「わたしの答え、見せてあげます!」
力強く、地面を蹴って3人は同時に仕掛けに行った。
「しるくさんの為にも!」
「大切なドレスを!」
「返して貰う!」
撮影まで時間がない。一刻も早くドレスを取り返そうと、未知の相手に対しても果敢に立ち向かった。それぞれの拳がハンニンダーに届く間際。
「ハンニンダッ!」
ハンニンダーは、片足を軸にしてその場で高速回転。コマの様に回転する相手に3人の拳が弾かれ、逆に吹っ飛ばされた。
「「「ッ⁉︎」」」
それでも地面に着地した後再度拳や蹴りを繰り出すも、全て弾かれて通用しない。それならば、工夫を凝らすしかあるまい。トゥルースとミスティックがスライディングで駆け込んでいく。
「軸足を攻撃すれば!」
「倒れる!」
容赦無くハンニンダーの足先に直撃されるスライディングタックル。今度こそかと思ったが。
「きゃっ!」
「何……クッ⁉︎」
強烈な2人の攻撃すらものともしない体幹。そしてちょっとやそっとでは止まる事を知らない回転力。こちらの攻撃を全く通さないどころか、逆にダメージを与えにくる始末だ。
「ここまで、か……」
名探偵プリキュアに打開の策はない。
「なんて、言うと思ったか! アンサー!」
トゥルースの背後からアンサーの影。
「だっ゙⁉︎」
アンサーは、一度トゥルースの頭を踏み台としてワンクッション入れた後、二度目である本命の跳躍を見せる。
「横がダメなら上だよ!」
横からでは全て弾かれる。ならば、軸となってる上からの攻撃なら有効と踏んだアンサー。すかさず右拳を握り締め、紫色のエネルギーを溜め込んで渾身の一撃を撃ち放つ。
「アンサーアタック!」
振り抜く鉄拳。炸裂した一撃はタイヤが擦れる様な音を響かせ、ハンニンダーの回転を徐々に弱めていく。そして遂に──。
「は、ハンニン⁉︎」
アンサーの思惑通りハンニンダーを止める事に成功した。
「ハンニン……ハンニンダッ!」
回転の攻防でしか名探偵プリキュアと渡り合う手札しか持ち合わせていないハンニンダーは、もう一度回る為に身体を捻ろうとする。
「やらせっか! 来い、ミスティック!」
「わたしも⁉︎」
2人は足下まで潜り込み、ハンニンダーの足首を全身で掴んでは協力して持ち上げる。そして、大きく勢いを付けて空高くへと投げ飛ばした。
「空中で動くのは殆ど無理だろ! 今だ! アンサー! ミスティック!」
トゥルースの合図でアンサーとミスティックは、事件を解決へと導く為の推理をする。
「「オープン! プリキットミラールーペ!」」
ミラールーペを元の大きさにし、ポチタンからマコトジュエルを受け取る。ルーペモードに切り替え、セットする事で浄化技のシークエンスに移行した。
「見て!」
「感じて!」
「謎を解く!」
「「これが、わたし達のアンサーだ!」」
ミラールーペのジュエルを回し、嘘を覆す答えを充填。神々しく光るミラールーペを、アンサーとミスティックは息を合わせて解き放つ。
「「プリキュア! フライング・スペクトル!」」
前方に放たれた光線は、ひとつに混じり合って一羽の鳥となり羽ばたいた。
無防備となっているハンニンダーを貫き、嘘によって覆われたマコトジュエルまで浄化の光が行き届く。
「「キュアット解決!」」
闇を打ち払い、光が灯ったマコトジュエルは元に戻り、ハンニンダーが消滅するのであった。
「あーあー。ま、家入しるくに一目見れただけでもいっか。マコトジュエルは回収出来なくてテンサゲだけどー」
ハンニンダーが倒されるの見て、アゲセーヌは瞬く間にその姿を消してその場から去って行った。特殊なフィールドも解除されて、これにて事件は一件落着。
「おい、アンサー」
「何?」
「人の頭を踏むなんてどういう了見だぁ?」
「い、いい感じの所にトゥルースの頭があったからつい……」
「そこはせめて嘘でも良いからもっとこう、誤魔化せよ」
「わたし、嘘つかないから!」
「正直なその言葉。今は胸に深く突き刺さるからやめろ」
同情なのか、哀れみからなのか。項垂れるトゥルースを見て、優しく頭を撫でるポチタンだった。
しるくさんの出番()