名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
ドレスの事件はキュアット探偵事務所の人間によって、瞬く間に解決となって幕を閉じた。
事件を終えて事務所のソファーで腰落とし、ゆっくりとティータイムで優雅な時間を過ごす。そして今日の出来事を思い返して、その余韻に浸るばかり。
「しるくさんからサイン貰えて良かったねみくる!」
「うん! 一生もんの宝物だよ!」
「お前ら大袈裟だなー」
「そういうジェットさんも胸に抱き締めて。説得力無いぞー」
談笑している彼らの耳に、事務所の鈴が聴こえる。誰かが事務所を訪れたのだろう。全員カップを一度テーブルに置き、出迎えようと立ち上がる。
「今の時間、丁度撮影が終わった頃だよな。しるくさんだったりしてな」
「ないない。家入しるくは大変なんだぞ? そんな気軽に会える訳が」
「──決めつけちゃダメ!」
透き通る様な声がするのと同時に広間の扉が開いた。そこには、先程まで噂をしていた家入しるくの姿がそこにあった。
「やっほー! さっき振り!」
「「し、しるくさん⁉︎」」
「また事件ですか?」
全員和らいだ表情から一変して、鋭い探偵の顔付きになる。大騒ぎになると思い、しるくは慌ててそれを否定する。
「違う違う! 事務所の2階には、素敵なコスメショップがあるって聞いたから寄ったのよ」
「そ、それなら沢山あるぞ‼︎」
手作りしたコスメ商品をしるくが買ってくれる。こうして生の姿を目にするだけでも珍しいうえ、手に取ってくれるとなったら興奮なんて押さられない。
ジェットは、取り敢えず見本となるものを机の引き出しから出そうと慌てふためく。
その様子にクスリと笑みを溢すしるく。
「では改めまして」
「「ようこそ、キュアット探偵事務所へ!」」
彼女の協力もあって今回の事件は解決へと導けれた。まこと達は快く歓迎し、盛大に挨拶を交わすのだった。
◯
その日の夜。お風呂も入り終わり、タオルを肩に掛けながら自分の部屋へと戻ろうとするみくるの姿があった。自室のドアノブに手を掛けた時、偶然にもまことの部屋から光が差していた。何気なくまことの部屋を覗いてみる。
「まーこと?」
扉の隙間から中の様子を伺う。まことの姿は確かにあった。机に向かって、何か本を読んでいる。寝ていたら起こしてお風呂に入らそうとしていたが、その様な手間が省け、堂々と部屋に入室する。
「まこと、何やってるの?」
「みくるか。キュアトゥルースについて調べてたんだけど。ほら、見てみろよ」
「うわぁ……相変わらずね」
黒塗りにされた資料。正直、こんな状態からどうやって手掛かりを探そうというのだ。みくるなら、そう諦めているところをまことは真剣な眼差しで見ていた。という事は、この限られた情報から何かを見出そうと努力している。
「……」
胸が少し苦しい。
「相変わらず。いつも通りだけど、別に足踏みしてる訳でもない。悩んでてもしょうがないが、こうして謎を解き明かそうとしてる方がよっぽど楽だ」
「そう、なんだ」
何か、胸に渦巻く感情。まことが前向きな姿勢を表す度に、みくるは違和感を感じる。その正体が分からないからこそ、気持ち悪い。
だから一度打ち切ろう。
「謎を解くのもいいけど、お風呂緩くなるから早く入って」
「お前は俺の母親か?」
「どーでもいいから。明日だって早いんだから!」
背中を押し、半端まことを追い出す形でお風呂へと足を向けさせた。あんなの時と違って、まこと相手にはこの距離が2人とっての普通。だからこそ思う事もあるが。
「はぁ……」
机の上に目が移る。汚らしくされた学習机に、呆れ果ててみくるは思わず溜め息を吐く。愚痴なんて溢さず、折角だから整理してあげようという心遣いから手を動かし始めた。
「大雑把なところは変わらないな。記憶が無い頃もこんな感じだったのかな? まあ、そういう所がほっとけないって言うか、何というか。お世話したくなっちゃうし……」
自分でも恥ずかしい事を言ってるのは十分自覚している。そのせいで、冷めた熱がまた火照り始める。
「あっ、いけない!」
うっかり資料を床に落としてしまい散乱してしまった。流石にこれを放置する訳にもいかず、無駄な労力を自分で増やしてしまい肩を落とす。
(あーあー、やっちゃった)
1枚ずつ丁寧に拾ってはきちんと整える。その際、まことが全部調べたであろう資料の中身に目が入る。
結論から言って、かなり調査した跡がある。それらしい推論等がびっしりと書き込まれており、見るだけでも目が痛くなる。改めて見ても資料の数も膨大。
(わたしも頑張らなくちゃ。まことと約束したんだもん。絶対記憶を取り戻すって。だから)
手に取った資料の中から、名刺が1枚ひらりと床に落ちた。裏面だが、みくるはそれを一目見て何の名刺なのかすぐに判った。
「コレ、キュアット探偵事務所の名刺じゃない。全くまことった、ら……?」
拾い上げ、付着した埃を落とそうと表面に返した時、みくるは言葉を失い、固まった。
「何、これ? どういう事なの?」
表面は何ら変わらないただの名刺。写真も名前も変わらない。では、何故みくるは絶句しているのか。それは──。
「“明智”まことって? だってまことは"金田一"まことなのに……」
記されているまことの姓が違っていた。
「──ッ」
みくるは胸を強く握る。今はっきりと実感して知った。自分の胸に渦巻いている正体が何なのかを。
次回の絵画回をスキップして、みくるにフォーカスしたオリ回をやっていこうと思います。