名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第3話 わたしたち名探偵プリキュア!

 結婚式場から外に出て、ニジーは林の奥深くへと逃走している。まこと達3人は、ようやく目視出来る距離まで詰める事は追い掛けれた。しかしこれ以上の差が縮められない。

 

「マントヒラヒラさせて、何であんなに速く走れるんだ!」

 

「このままじゃ追い付けないよ!」

 

 徐々に距離が開き始めている。このままだと取り逃してしまう。

 

「ポーチー!」

 

 今まで大人しくしていた妖精が、急に元気いっぱいに飛んだ。

 

「えっ⁉︎」

 

 紐で繋がっているあんなは、必然的に妖精に引っ張られる。飛ぼうとするあんなを捕まえようと腰にしがみ付くも、まこととみくるも巻き添えとなって3人仲良く空を舞った。

 

 子供とはいえ、人を一度に3人抱えた妖精の力は半端ない。前を走っていたニジー追い付き、追い抜かして正面に回り込めた。

 

「此処って空き地か」

 

 ニジーを追い詰めた場所は、式場の裏にある大きな空き地。周りに人の気配は無く、ただ林が囲い込むように群がっている。

 

「ティアラを返して!」

 

「出来ない相談だね。このティアラには『マコトジュエル』が宿っているもの」

 

「マコトジュエル?」

 

「まこと?」

 

「俺じゃねぇ!」

 

 ニジーはティアラに手を翳すと、いつの間にか手のひらサイズのボトルのような物を手にしていた。青緑の色をして、細部には金箔で塗られており、中央にはまるで宝石のようなものが輝かせている。

 

「このジュエルを頂くのがボク達の目的。だろ、ルルタン?」

 

「ルル、タン?」

 

 聞き覚えの無い名前。3人は一体誰に言っているのか分からず、首を傾げる。

 呼び掛けに反応も無い様子を見て、ニジー自身困り果てていた。

 

「なるほど。今回はそこで傍観するって事なんだね。いいさ、目的の物は頂戴した。でも、次からは手伝ってくれた方が助かるよ」

 

「あの人、さっきから独りで何言ってるんだ?」

 

「さ、さあ?」

 

 薄気味悪い。そんな感情が表立って出てきている。

 すると、ニジーは何か思い付いた様子をする。

 

「そうだ、ティアラの代わりに素敵なショーを魅せてあげるよ!」

 

 ショーとはなんなのか。考える暇も無く、ニジーが動き出した。

 

「嘘よ覆え! いでよ、ハンニンダー!」

 

 ティアラに禍々しい邪悪なエネルギーが注入され、その姿と大きさを変貌させる。

 シルクハットにマント。更には両手両足が生え、家とそこまで変わらない怪物と化した。

 

「ファントムが新たに開発したハンニンダーさ。さあ、ショータイムだよ。ベイビー!」

 

「ハンニン、ダァー!」

 

 マントを振るう事で、邪悪に満ちた斬撃が放たれた。斬撃はあらぬ方向へ飛散し、木々を薙ぎ倒した。

 恐らく今のは脅しで警告だ。これ以上邪魔するのであれば、いずれ薙ぎ倒された木々と同じ末路を辿る事になる。

 

「どうする?」

 

「なんとかしなくちゃ!」

 

「な、なんとかするって……」

 

 選択肢は限り無く皆無に等しい。それでもまことは光明を見出そうと模索。あんなもやれる事を探している。一方でみくるは、非現実を目の前に動揺している。それでいて、どうしようもないと諦めている。

 

 それは間違ってはいない。なにしろ、今の自分達はどうする事も出来ない非力な存在。怪物ハンニンダーを倒すなんて到底成し得ない。そもそも、立ち向かう勇気なんてこれっぽっちも無い。

 

 だから震えて、恐怖する。怯える事しか許されない。

 

「さあ、探偵ごっこはお終いだ。怯える瞳が全てを物語っている。君は探偵じゃない。探偵気取りの真っ赤な偽物だ」

 

 無慈悲に突き付けられる現実。みくるはそれを分からされた。目の前の恐怖すら拭えない。ただでさえ、ティアラの件を引き摺っているところにこの追いうち。

 まこととあんなが励ましてくれたお陰で、辛うじて繋ぎ止めていた心が崩れ落ちる瞬間がきた。

 

「そうか? 少なくとも俺達はそうは思わないな。ね、あんなちゃん」

 

 崩れ落ちそうな時、手を添えて掬い上げた。

 

「うん。みくるちゃんは本物の名探偵だよ! だって、助けたいって気持ちがあるから!」

 

「強がっているけど、君も本当は怖いんだろ?」

 

 掬い上げる手は震えている。けれど、取り溢さないように両手で包み込み、抱擁して恐怖を取り除こうとしてくれている。

 

「怖くても、真実から目を背けてはいない。それはもう立派な探偵だ。だからみくるは、ここまで追い掛けてきた。困っている人を助けたい気持ちに、偽物なんてないんだ」

 

「だからわたしも、ティアラを取り返したい。困っているまりさんを助けたい! みくるちゃんと一緒に!」

 

 いつの間にか、震えは止まっていた。彼女が啖呵を切ってくれたお陰も少なからずあるが、それ以上に胸を打たれた。

 

 抱擁してくれる手に、更に重ね合わせる。貰った勇気、探し求めていた答えを携えて。崩れ落ちそうだった心は今、より強固な物へと姿を変えて形取る。

 

「一歩の勇気が」

 

「答えになる! にひっ!」

 

 差し出されたお互いの手をお互いが受け取り、強く握り締め合う。

 あんなとみくるの答えが一致した瞬間。

 

「「わたし達で取り返す!」」

 

 奇跡の光が差し込んだ。

 

 2人が所持していたペンダントが輝きを放ち、周囲を紫と桃色で明るく照らし出す。

 

「ぷいきゅあー!」

 

「ポチ」としか話さない妖精が、初めて別の言葉を喋った。聞いた事もない単語。口にするのと同じくして、あんなとみくるは、光り輝くペンダントを開けて叫んだ。

 

「「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

 それぞれが持つマコトジュエルを、ジュエルキュアウォッチにセット。

 そこから掛け声と共にペンダントにある長針を黒電話の要領で回す。回す毎にあんなとみくるの姿がまたひとつ。またひとつと変化させる。

 

「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」

 

 元から着用していた服は、フィクションの中でしか見た事のない衣装へ。髪はそれぞれイメージカラーのものへ変色。からの、ふんわりとしたボリュームのある艶と長さまで伸びる。

 ブーツ、グローブ、髪留め等。上げればキリがない程装飾も施され、針を繰り返し回して計4回。2人は瞬く間に全く別の姿へ"変身"を遂げた。

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

 服装もさることながら、瞳の色までも変わって劇的な容姿に。それでも、彼女達の面影がどこかひっそりと残されている。

 

「わたしの答え、見せてあげる!」

 

 名探偵プリキュアという存在に、まことはその心を奪われて見入ってしまっている。

 

「ハンニンダー!」

 

 早速変身を遂げた2人にハンニンダーの拳が迫り来る。斬撃だけでもその切れ味は最高なもの。巨体を活かして直接手を下すとなると、その威力は斬撃と比例するのかも知れない。

 

 当たれば終わる。けれど、今は違う。

 

「「ハァッ‼︎」」

 

 アンサーとミスティックの2人による蹴り。ハンニンダーの拳とぶつかり合い、そして押し返した。

 あの圧倒的なまでの強さを誇っていたハンニンダーが、容易く吹っ飛ばされたのを見る限り、プリキュアに変身した2人の力は常人を遥かに凌駕している。

 

「わたし、プリキュアって⁉︎」

 

「名探偵! わたしがなりたかった『名探偵プリキュア』!」

 

「えぇ、これが⁉︎ なんか思ってた名探偵と違うんだけど……?」

 

「見て見て、まこと! わたし遂に名探偵プリキュアになれたよ!」

 

「ポチポチ!」

 

 浮き足立つアンサーとミスティックのは対照的に、ニジーはプリキュアの存在に眉を顰めていた。

 

「プリキュアだって⁉︎ ヤツとは違う新手か?」

 

 この事態は二ジーも予想していないもの。その事に対して苦虫を噛み潰している。プラス、ニジーは更に要注意しなければならない事項が増えた。

 

「彼とプリキュアの接触。これは少しマズイかもね」

 

 若干の冷や汗は滲み出る。一方で、名探偵プリキュアになれた事で、未だ興奮を抑え切れないミスティックが飛び跳ねて喜んでいた。

 

「ほらほら、よく見てまこと! どう? どう⁉︎」

 

「いや、そう言われても。でもまあ、良かったな」

 

 素直に褒めると、騒いでいたミスティックが大人しくなり、急に潮らしい態度に変わった。目を背け、髪を弄り、頬を紅潮させて愛らしい姿を見せている。

 

「う、うん。これでまた一歩、まことの記憶を探せる手伝いになれる」

 

「アンサーも、流石名探偵だな!」

 

「わたしはなんというか……流されてこうなちゃったっていうか。あはは」

 

「ポチポチ!」

 

 妖精の声で全員我に帰る。ハンニンダーの方を振り返ると、身体を回転させて特攻を仕掛けて来ていた。

 

「まこと君はその子と一緒に隠れてて!」

 

「お、おう!」

 

 まことは妖精を抱えてその場から離れる。直後、アンサーとミスティック、ハンニンダーが激しく衝突した。

 勢いのある攻撃に、2人は全体重を乗せて両手で受け止める。プリキュアに変身したといえど、力の強い相手にかなりの距離まで後退った。

 

「ンダ⁉︎」

 

 だが、勢いは最初だけ。最終的に勢いを完璧に殺され、ハンニンダーを見事に止めてみせた。

 そこから片足を軸にして、地を蹴り、2人は息の合った後ろ回し蹴りを同時に叩き込んだ。

 

 力と咆哮が重なり合った一撃は、ハンニンダーを彼方まで吹っ飛ばした。

 戦況としては押しているが、倒すまでには至らない。今のままでは牽制しているだけ。

 

「一歩の勇気が!」

 

「答えになる!」

 

 2人はジュエルキュアウォッチの長針を回転させる。そのなんでもない動作で、2人のパワーが瞬間的に爆発する。

 

「「これがわたし達の──アンサーだあぁぁ‼︎」」

 

 全ての力を脚に集中させ、脚力を高める。地面が沈み込む程の脚力で同時に飛び出し、そのまま特攻。エネルギーは脚から拳へ。そして全身を包み込む光の粒子と化して、ハンニンダーを貫いた。

 

「「キュアット解決!」」

 

 ハンニンダーは大爆発を起こし、ピンク色の光の柱が天にまで届き、雲を突き抜けてこの事件の幕を閉じさせた。

 倒された事によってティアラは無事元の形へと戻り、マコトジュエルはアンサーの手に収まった。闇の力が完全に浄化されたのだ。

 

「今日は幕を下ろしておこう!」

 

 ニジーは煙幕を撒いて即座に撤退。アンサーとミスティックは、緊張の糸が切れたのか互いに肩を寄せ合ってその場にへたり込んだ。

 

「すげぇな2人共。怪物を倒すだけじゃなく、怪盗を追い返して見事盗まれたティアラを取り返した!」

 

「ポチポチ!」

 

「フフン、これにて事件は一件落着──」

 

「ってじゃないよ! 早くティアラを返さないとまりさんの結婚式に間に合わないよ!」

 

「そ、そうだった! まことも早く!」

 

「俺の事はいいよ。それよりもティアラを届けてまりさんを笑顔にさせて。それが、ミスティックが志す名探偵だろ?」

 

「うん!」

 

 やるべき事を思い出してすぐさま立ち上がり、ティアラを持って式場の方へ戻って行くのだった。「また後で」と約束して、ミスティックは手を振りながら先を急ぐ。アンサーと妖精も続き、ミスティックの跡を追って行った。

 

 

 ◯

 

 

「行ったね」

 

 その場に取り残されたのはまこと1人。アンサーとミスティックの姿が見えなくなった辺りで、彼の背後に1人の男性が忍び寄った。

 その男性は、先程撤退した筈のニジーだった。どういうつもりか、ニジーは撤退したと見せ掛けてまた戻って来ていた。

 

 そして、馴れ馴れしくもまことの肩に寄り掛かりながら一輪のバラを差し出した。

 

「まさか、プリキュアだなんて予想外! 君は名探偵ごっこしていたあの子の側にずっと居たらしいけど、この事を最初から知っていたのかい?」

 

 バラを手に取り、それをへし折った。

 

「それこそまさかだよ。知ってたらあんな風に接触はしないよ。()()()にとってもイレギュラーな展開だった」

 

「で、これからどうするつもりだい?」

 

「どうもしないわ。項目に一つ付け足す羽目になっただけ。名探偵プリキュアを監視するっていう、ね?」

 

 雰囲気が先程までとは打って違い、口調の変わったまことは面倒そうな溜め息を吐く。それに、とても先程まで敵対していたとは思えない程の距離感で喋っている。

 

 まるでお互い、顔見知りのような。

 

「ならそっちは任せるよ。ただ気を付けるんだよ。プリキュアと接触する時間が長ければ長い程、その力に当てられて奪い取った記憶が戻ろうとするからね。そんなのは嫌だろう?」

 

「嫌よ」

 

「だったら距離感を間違えずにね。キュアトゥルースをもう一度相手にするのはごめんだ」

 

「ええ、分かってる。そろそろ行かないと怪しまれるから離れてくれる?」

 

 鋭い眼光を飛ばして、ニジーを威嚇する。困った様子で、素直に離れてはくれたが不気味な表情は一切変わらないでいる。

 

「じゃあ頼んだよ。キュアトゥルース……違うね、金田一まこと。ううん、これでもないね。頼んだよ、ルルタン」

 

 その言葉を残してニジーはようやくその姿を消した。

 

「頼まれなくてもやるわよ、全く。この体は、誰にも渡さない。そう、絶対に」

 

 まこともといルルタンは、瞳を赤く染め上げて結婚式場へと戻って行った。

 

 名探偵プリキュアの活躍によって結婚式は晴れて成功。けれど同時に、怪盗団ファントムもまた次の暗躍を行おうと動き出した。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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