名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
「いらっしゃいませ」
今日も今日とて、いつものようにパティスリーチュチュへ足を運ばせるまこと。そんな彼を温かく出迎えてくれたのはくれあだった。
その笑顔はいわゆる営業スマイルみたいなもの。軽く会釈して挨拶すると、普段まことにしか見せない柔らかな表情を見せつける。
明らかにそれは私情を挟んだ業務外の笑顔。
「こんにちは、まことちゃん!」
弾む声に困り顔で返し、適当に注文をする。
「今日はシンプルにショートケーキ。それと紅茶。ホットで」
「店内で食べるのね。でも……」
くれあが店内に視線を移し、それに釣られてまことも視線を向ける。見渡せば、店内は客で溢れかえっていた。当然、テラス含めて満席で店内でゆっくり食べるなんて事は出来ない。
こればっかりはどうしようもない。
「仕方ない。持ち帰りで。それと、いつものセットで」
「あっ、ああ待って!」
持ち帰りで注文しようとした矢先、くれあがそれを引き留めてとあるテーブルへと駆け出して行った。少し背伸びをして様子を伺う。
席に座ってアイスを食べている女の子に話し掛けている。くれあの事だ。「相席でもどうですか?」なんて聞いているに違いない。
そこまでして店内で食べようとは思わない。断られたらそれまでだ。
「お待たせ! 相席大丈夫の許可を貰ってきたの」
「わざわざいいのに」
「わたしも最初はそう思ってたのよ? でもね、あの子まことちゃんと同じ常連さんだから話が弾むかと思ったの!」
「相手の人も器の広い人だな」
何がともあれ、相席が大丈夫と相手の許可が得られたのだ。今回はその優しさに甘んじよう。
くれあの後ろをついて行き、席まで移動する。そこでようやく相手と対面をした。
「すみません、相席してもらって……?」
「わたしも食べ終わる所だから……?」
「「あっ」」
両者、社交辞令での挨拶を交わして顔を見た途端素っ頓狂な声を出して固まる。
まことはその人を知っている。特徴的なぬいぐるみをテーブルに置き、黙々とアイスを食べている姿。その子は先日、宝生美術館で探偵と怪盗として対峙した。
名は森亜るるか。別名キュアアルカナ・シャドウ。勿論それは相手も同様。
「2人共知り合い?」
そんな2人の関係性などつゆ知らずのくれあは、自然に口にして訊いた。変に誤魔化したって意味がない事くらい十分理解している。
なので、ここは正直に答える事にした。
「ま、まあ知り合いっちゃ知り合いだな。な?」
「ええ、元カノよ」
「「えっ⁉︎」」
冗談にしては笑えない。まだちゃんと把握してはいないが、彼女の声色や性格からして冗談を軽々しく口にするタイプではないのだが。
「ま、まことちゃん本当に彼女なの?」
「ち、違う違う違う!」
「強く否定すれば余計信憑性が深まるわよ」
「うっ……!」
るるかの言葉に強く胸を打ったくれあがその場に膝を付いて苦しむ。どういった心情か定かではないが、そのような大袈裟なリアクションをされると身を引いてしまう。
「と、ところで付き合ってどれくらいの経つのかしら?」
「そうね……そろそろ1年は経つかしら?」
「さっきからあることないこと言うなよ! ほら見ろよ、くれあさんが無駄に心にダメージ受けてるぞ!」
あまりのショックに耐え切れず、顔色を変えて目を回す姿のくれあが。そしてそのまま、フラフラとした足取りで店の奥へと戻って行った。
「どーすんだよあれ! 誤解を生んだままそのままとか笑い話にもなんねーぞ!」
「彼女らしいわね」
「彼女らしいって、アンタなぁ……」
「笑えるでしょう?」
「全然笑えない!」
もう口にするのも辞めだ。癒しを求めにパティスリーチュチュに来たというのに、この脱力感は何だ。余計に疲れが倍増して気が休まらない。
どっしりと席に着き、テーブルに突っ伏しては深いため息を吐く。
「で、何でアンタがこんな所に居るんだ?」
「何でって、アイスを食べに来たのよ」
手元を見れば確かにチョコミントを掬うスプーンが握られていた。
「……らしいな。別に何か事件が起きた訳でもないし」
いっそこのまま何も起きなければ良いと願うばかり。
ふと、テラスの方へ目を向けると大柄な男が窓ガラスに張り付いてこちらの様子を伺う不審者が居た。
「うおっ⁉︎ ゴウエモンだ!」
「助けてくれ新人! いや、アルカナ・シャドウさん!」
「次はこれを頼もうかな」
「「無視⁉︎」」
ゴウエモンの存在には気付いている筈だ。それでも頑なに目を合わせようとはせず、メニュー表に視線を落としている。
「アルカナ・シャドウ、いくら何でも無視は可哀想だろ」
まことがそう投げ掛けると、るるかは僅かな反応を示して返答をする。
「貴方、記憶ってどこまで戻ったの?」
「まあ大体だな。少し人の顔とかボヤけてて、誰が誰だが分からんけど……それがどうしたんだよ?」
「……ペースが早い」
るるかは手にしていたメニュー表を置き、先を立った。
「お、おい注文するんじゃ」
「先にあっちを片付ける。折角の美味しいアイスタイムに水を刺したくないから」
そういって、お会計をする為にレジへと足を運ばせた。まことはというと、未だ注文した品が届いてすらいないので退店すら出来ない状態。
「く、くれあさーん!」
結局くれあが品を届けてくれたのは、るるかが退店した5分後であった。その時の様子のくれあは、先程のやり取りでの内容を酷いくらい引き摺っていたのは言うまでもなかった。
今回の話は簡略してお送りしてきます。なので、珍しくも次回でこの回は終わり、の予定です。