名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
あれから、そう、大変だった。
優雅なひとときすら無く、ケーキと紅茶を口の中はとかき込んでは退店しようとした。しかしながら、まだ根に持っているくれあが店から出させまいと腕を掴んで物理的に引き留める形となっていた。
るるかとのやり取りは、全部彼女の口からデマかせと必死に説得し続けた。真偽がどうか曖昧なままでは納得が行かないという事で、2人は今度デートするという約束をしてこの話は一度区切りがついた。
要した時間はせいぜい30分といった所だろう。
当然、るるかが向かった先なんて分かるはずもない。当てもなく彷徨い、そして遂に膝が折れる。
「完全に見失った」
そこへ、まことも見知っている4人が声を掛ける。
「あれ? まこと君、こんな所で何してるの?」
「あんな、それに皆も。そっちこそ何でこんな所に居るんだ?」
「さっきファントムからマコトジュエルを取り戻したの」
「出遅れったぽいな。そりゃ見つからない訳だ」
まことは、皆にここに来るまでの旨を伝えた。キュアアルカナ・シャドウもといるるかとパティスリーチュチュでお茶をしていたこと。そして、その後を追い掛けた事も全部。
◯
「そんな事があったんだね」
「偶然ってあるんだ……って、わたし達に内緒でチュチュ寄ったの?」
るるかの話から一変して、みくるは1人でチュチュに寄っていた事に問い詰め始めた。どんなタイミングだよと言いたい。それでも、こうなる事は最初から分かり切っているのでまことは予め手を打ってある。
「そう言うと思ったぜ。フッフッフ、この箱が目に入らぬか!」
お持ち帰りで頼んでいた箱を高々と見せつける。それを目にしたみくるとジェットが嬉々として箱を受け取った。これで機嫌が悪くなる事はない。
そう安堵していると、あんなからの視線が強く刺さっている事に気付く。
「まこと君、ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかな?」
「え、ああ」
「あのね、アルカナ・シャドウが言ってたの。まこと君とアルカナ・シャドウって前は同じキュアット探偵事務所に居たって」
ピタリとまことの動きが止まった。
「それ、本人が言ってたのか?」
「うん。あの人と会っているのにまこと君が気付いていないって事は、もしかしたら記憶がまだ朧げな人がアルカナ・シャドウじゃないかなって思ったの」
あんなの推測を聞いてまことは無言になる。確証は無いにしろ、可能性としてはあり得ない事ではない。
「全部鵜呑みにするのもあれかなーって思ってこうやって相談してみたのだけど……どう?」
「推測の域でしかないが、その線もあるな。仮にそれが本当だとしたら、何であの人は俺達の邪魔をするんだ?」
「うん、わたしもそこが引っ掛かったの」
彼女の事を知れば知るほど謎が謎を呼んで深まるばかり。底無し沼に踏み入った感覚に近い。
まこと君ってさ、キュアット探偵事務所に居たんだよね?」
「記憶が正しければな。それがどうかしたのか?」
あんなの表情が微かに曇り、俯く。その顔は以前にも見覚えがある。みくると喧嘩した時のそれだ。
「まこと君は怪盗なんかじゃないよね。どっかに行ったりしないよね?」
あんなはたった独りでこの時代に飛ばされている。それ故か、人肌を他の人よりも好む傾向があり、依存とも言うべき危うさが時折り目に止まる。
それが不安となって感情を駆られ、らしくない姿をする。
今のあんなはそんな状態に近しいと言ってもいい。
怪盗であるアルカナ・シャドウとの接点があり、元は一緒だっという言葉でいつか自分の前から去ってしまうのではないかと恐れている。
「置いて行かないで……」
服の袖を掴まれ、弱々しく引き留める。
こんな時はどうすればいいのか。優しく声を掛けた方が良いのか。迷った末、まことが取った行動は。
「置いて行かねーよ」
その手を握る事だ。
「アルカナ・シャドウとどういう関係か俺も知らんけど。あんな、みくる、ポチタン、ジェットさんと一緒に探偵やって行くって決めたから」
強く、強く、握り締める。ただ安心させるだけじゃない。これは自分にとっても大事な事だ。友達を絶対に裏切らない。
「あんなの言葉を借りるなら、俺、嘘つかないから」
「なら、安心した」
不安を拭えた事を確認してスルリと手を離そうとしたが、あんながその手を掴んで逆に離そうとしなかった。
「まこと君の手。改めて握ると大きい」
「男だからな」
「なんだか、お父さんみたい。懐かしいな。お母さん、今何してるんだろう……」
やはり不安定だ。みくるとのすれ違いによる喧嘩から、丸く収まったと思っていたが甘かった。探偵でプリキュアだとしても、どこまで行ったって彼女はまだ中学2年生の女の子に変わりない。
今後もメンタルケアをちゃんとしておかないといつか内面から崩壊する。
そうなるくらいならいっそ。
「甘えてもいいんだぞ?」
「いや、それは……」
断る前にあんなの頭を優しく撫でる。直接は髪が乱れる事もあり、いつもの帽子の上からそっと添える程度に。
苦笑いをするあんなだったが、次第にその表情は緩んで素直に受け入れる形で頭を差し出した。
「わがまま言ってもいいかな?」
「どーんっとこい」
「今度一緒にお出掛けしたいな」
「ああ。しようか」
大分あんなの心が安らいだ。まことも一先ずは安心する。表に出していないだけで、あんなはずっと張り詰めている。少しでも緩めれたのなら、偶にはこういうのも悪くない。
「2人して何やってるの?」
間に割り込んで話し掛けてきたのはみくるだった。いつまで経っても歩き出さない2人の様子が気になり、悪いなと思いつつも声を掛けたのだ。
少しばかり2人だけの世界に入っていた事もあり、みくるの存在に驚いた。
「びっくりした。驚かすなよ」
「普通に話し掛けたつもりなんだけど?」
「ごめんごめん。行こっか。みくる、まこと君」
先へ行くポチタンとジェットと合流し、他愛の無い、いつものやり取りでその帰路へと足を進めるのだった。
次回からウソノワール襲来の話ですね。何気に書きたかった内容なので、また時間掛かるかと思われますー