名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
怪盗団ファントムのニジーを追い返したその後、まこととみくるは、あんなに連れられてとある場所に足を運んでいた。それがマコトミライタウン。
「此処がわたしの家」
あんなが自慢げに指さすのは、高層マンションの一角。かなり広々とした立地。高層マンションと一括りにしているが、他のマンションと比べてもかなり抜きでている。
それだけで大金持ちの家なのが判明するのだが。
「街ごと無いんだけどー⁉︎」
あんなが住んでいると思われるマコトミライタウンは、まだ建設予定。しかも、予定だけあって完成図の看板は立っているが未だ工事の手すら付けられていない。
つまり、まこと達が目にしている光景はただの更地。
「"未来"から来たって本当だったのー⁉︎」
あんなは自分が住む街が何処にも無く、みくるはあんなが未来人という話に嘘偽りない事に両者頭を抱えて驚愕する。
「道中話してくれたあれって本当だったんだ」
にわかに信じ難いが、あんなは2027年のマコトミライタウンに住んでいるという話を聞かせてくれた。SFでしか語られない内容にまこととみくるはイマイチピンとこず、半信半疑で耳に入れていた。
しかし、本人の反応を見る限りではどうやら全て本当の事みたいだ。
「誕生日パーティーがあるの。わたし早く帰らないといけないから、名探偵なんだから助けてー!」
「無茶苦茶言わないで下さいー! それに貴女も名探偵!」
「まこと君、わたしは一体どうすればー!」
「なら、一度キュアット探偵事務所に行こう」
「キュアット探偵事務所?」
◯
まこと達はキュアット探偵事務所前までやって来た。建物は大きく、外見だけでも立派な事務所というだけある。そして、噂によればこの事務所には名探偵プリキュアがいるとの事も。
「と、いう訳だ。力になれるか分かんないけど、この事務所で調べれば何か欲しい情報がある筈」
「えぇー⁉︎ 他にも名探偵プリキュアが──」
「シーッ! プリキュアが居ることは秘密だそうです!」
情報漏洩は絶対にしてはならない。みくるは慌ててあんなの口を塞いで、周囲に誰も聴いて居ないか警戒をする。案の定、まこと達しかこの場には居ない。一応秘密は守られた。
ただあんなは少しだけ疑問に思った事がある。
「秘密なのによく知ってるね」
「それはまあ……」
みくるは目を泳がせ、居心地悪くまことの方へ視線を向ける。これでは秘密を知った起因を自らバラしているのと同義だ。
「早速中に入ろう。あーそれと」
まことが扉に手を掛けた直後、振り返り2人にある事を話した。
「言い難い事なんだけど、あんまし
「何それ? どういうこと?」
「そのまんまの意味だ」
その意味を教えろと言わんばかりの抗議をみくるは言うが、まことは右から左へと流した。そして、ようやく待望のキュアット探偵事務所へ足を踏み入れる一同だった。
◯
中の様子は静寂に包まれており、一切の点灯も無く昼だというのに暗闇が建物内を支配していた。3人で手分けして、事務所の人を探し出す。
妖精の子も、あんなの脇からすり抜けては何処かへ入り込んで行く。
「誰か居ませんか? 力を貸して欲しいんです! わたし、タイムスリップしちゃって」
大声であんなが呼び掛けると、何処からともなく少年の声が返って来た。
「依頼なら断っている。それに冗談に付き合う暇も無い。帰ってくれ」
「冗談じゃなくて本当に……まこと君?」
そう簡単に信じて貰える訳がない。まことは、そう踏んでいた。
「ジェットさん、この2人は名探偵プリキュアだよ。話を聞いてもらうだけでも取り合って欲しいのだけど」
「ふぅーん、プリキュアね」
すると、机の影からゴーグルに白衣を着用した金髪の少年が飛び出した。机の上に飛び乗り見下ろして、あんなとみくるの事を観察する。果たして、彼女達がまことの言う名探偵プリキュアなのかどうか。
「ないな。あり得ない。まこと、何でもかんでも鵜呑みにするのは良くないぞ?」
「いやでも実際、この目で見たんだけど……」
「2人は知り合いなの?」
まことの脇下からみくるが頭を覗かせ、ジェットとの関係性を訊いてくる。
「知り合いも何も俺達は──」
「ちょ、ちょっとまこと退いて! そいつは!」
ジェットはまことを押し除けて、あんなのしているペンダントに注目する。その慌てようにバランスを崩し、机の上から転落。
「痛てて」
「ジェットさん、姿が元に戻ってますよ」
「あっ、しまった!」
転落した影響で、ジェットは妖精の姿になっていた。色は黄色だが、大きさ等のところはあんなが連れていた妖精とほぼ同じ。
「フン」
見られた事が相当嫌だったのか、不機嫌なまま人間の姿に素早く変身し直した。
「……話だけ聞いてやる。代わりに、そのペンダント見せてくれ」
「良かったな2人共。あ、飴ちゃんいるか?」
「ありがとう。それと、まことさっきの質問なんだけどね」
「その説明は後にしてくれ。折角ジェットさんが話を聞く気になったんだ」
軽くみくるの頭を撫で、あんなにはぶどう味の飴。みくるには桃味の飴を手渡した。まこともソーダ味の飴を口の中に放り込み、近くのソファーに寛ぐ。
そして、話を聞いて貰える交換条件としてあんなはペンダントをジェットに渡した。
「さてと」
ジェットは引き出しからルーペを取り出して、ペンダントについて調べ始めた。なんの変哲もないペンダント。細部に至るまでの装飾は立派なもの。しかし、今のところそれ以上の情報は得られない。
「妖精が人間になるなんてね」
「貴方、プリキュアのおとも妖精?」
「いいや、ボクは天才発明家・ジェット! 探偵道具を発明するのがボクの仕事だ」
「まだ小さいのに凄いねー」
威厳のある自己紹介をしたが、その内容についてさっぱり感心を持たないあんな。返した反応も味気ない。
「小さい? お前は何歳だ?」
「わたし14歳だよ」
「えっ? わたしももうすぐ14歳! まこともわたしと誕生日が2日違いだから、同じ14歳になるの!」
「そうなの? はなまるびっくり!」
この場にいる者の中ではまことが一番の高さ。しかし、身長の高さからしてあんなもみくるもそう大して3人の身長は変わらない。歳は近いと思っていたが、まさか同い年とは。
「フン、ボクが年上だな。僕は222歳だ!」
「同い年なら敬語は無し! 『あんな』でいいよー2人共!」
「じゃあ、わたしもみくるでー! まことの事も全然呼び捨てで良いよ!」
「おいコラ待たんかい。呼んではいいが、何でみくるが勝手に決めるんだ?」
ジェットの話など完全に無視して、3人は同い年という運命の出逢いに感動して話が盛り上がる。これにはジェットも呆れて溜め息を吐くばかり。
「これで、プリキュアに変身したんだな? で、お前ら何処でこのペンダントを手に入れた?」
「ずっと前にお婆ちゃんに貰ったの。でも、詳しい事は分からなくて」
「わたしはね、自分の机の上にペンダントが置いてあって。そしたら『ポチタン』が現れたの」
「ポチタン?」
2人のペンダントを手に入れた経緯を聞かれたジェットだが、聞き慣れない「ポチタン」という人物の名前に引っ掛かった。
「「「ポチタンはポチタンだよ」」」
「3人まとめて言われてもボクは分からないんだが?」
中学生3人のペースに振り回されて、終始調子を狂わされてとうとう参り始める。そんな時だった。
事務所内に警報音が響き渡る。一体何事なのかと全員が席を立ち、急いで警報音が鳴る部屋に駆け込んだ。
「もしかしてだけど、この音の発生源って研究室?」
「間違いない!」
まことの予想通り、音は研究室からなっているらしい。ジェットを先頭に、その部屋まで階段を降りて中へ飛び込んだ。
「あっ、ボクのおやつ!」
研究室の扉を開けた先にある光景は、天井から大量のお菓子が落ちて一つの山と化していた。
後片付けが大変だろうと先の事を考えていた直後、お菓子の山から不自然に崩れる箇所があった。そこから、さっきまで探していたポチタンが飛び出した。
「「「ポチタン!」」」
「ポチタ……えっ、時空の妖精⁉︎」
研究室に紛れ込んでいたポチタンが見つかって安心。けれど、そんなポチタンをジェットは別の呼称で反応を示した。
「時空の妖精は、時間と空間をワープするとっても珍しい妖精だ。そうか、タイムスリップの原因はお前か」
「て事は、ポチタンの力を使えばあんなちゃんは元の時代に帰れるんだな」
あんなを元の時代に戻せる手掛かり。もっと言えば、それ以上のものを見つけ出した。ポチタンの力を使い、彼女はようやく平和な世界へと帰還させられる。
が、ジェットはひとつだけ思うところがあった。
「待て。そもそも赤ちゃんじゃなかっただろ?」
「うん、ポチタン普通に喋ってた」
ジェットの中で合点がいった。時空の妖精であろうものが、何故あんなを元いた時代にすぐに帰せれていないのか。
「恐らくだが、タイムスリップで力を使い切ったんだ。元の姿に戻らないとタイムスリップは出来ないだろう」
まだ推察の域だが、考えられる可能性があるとしたらそれしかない。
「ポチタンを時空の妖精と知ってたなら、力を取り戻す方法も知ってるんだよな?」
「そう慌てるなまこと。無くなはないが、希少なものだから手に入り難い。それに、それが何処にあるのかさっぱりだ」
「それって?」
「真実の力が秘められた宝石のマコトジュエルなら」
聞いた事のある宝石だ。
「これのこと?」
少し前にティアラを取り返した時に入手したマコトジュエルを、あんながジェットに見せた。マコトジュエルというものがこれで合っているか不安だが、狙っていたニジーの言葉を信じるなら探し物はこの手の中だ。
「持ってるの⁉︎ こ、これで元に戻る!」
どうやら合っていたらしい。しかも、これひとつで元に戻るという手軽さ。
「じゃあ早速ポチタンにあげようか」
マコトジュエルをポチタンに近付けると、首元にあるハートのリボンが輝かしく光って反応を示した。どうやらやり方としては正解だったらしく、マコトジュエルも光を放ちながら消え去った。
「ポポポポ、ポチー!」
ポチタンに後光が差して、より一層皆の期待に胸を高鳴らせる。その光が消滅するのと同時に、ポンっと軽快な音を立ててハート型の哺乳瓶が出てきた。
あんなは手に取り、4人はそれを覗き見た。
「ミルクが入ってるね」
「入ってるよ」
「入ってるな」
「てことは……オイオイ」
そのミルクをポチタンにあげると、喜ばしい表情で飲み始めた。
「戻ってなーい!」
「このミルクでポチタンを育ててって事か」
「この様子だと、もっとマコトジュエルが必要なのか」
現実は、謎のようにそう簡単には甘くなく解決には至らなかった。これで振り出しに戻った。だけど、ただ戻った訳ではない。
「それでも一歩前進だ。要はいっぱいマコトジュエルを探せば良いって事なんだし。頑張ろうな」
「うん!」
「きっと見つかる。プリキュアの先輩の力を借りればね!」
みくるが当てにしてるだろう、このキュアット探偵事務所に所属する名探偵プリキュアの名を口にすると、まこととジェットは眉間に皺を寄せた。
「あーみくる。その事でなんだけど」
「何だまこと、まだ話してなかったのか?」
「話してない?」
「まこと、どういう事?」
みくるがオウム返し聞き返し、あんなはその内容を知りたく問い掛けた。
「──この世界にはもう、名探偵プリキュアは居ないぞ」
衝撃の発言に、あんなとみくるは硬直してしまう。そしてまことは、その反応をするのが当然だと予想していた為か気不味い表情をするのだった。
内容的にはあまり進んでませんが、これ以上長くなってもあれなので一度区切りました。
次回辺りでは、主人公とジェット先輩に関係性についても少し触れていこうかなと。