名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
評価の際、必要なひと言欄ですがあの部分を無くしました。今までは0文字設定で10か0評価する時だけひと言添えなきゃダメでしたが今回そこの部分を変更しました。
今後良くも悪くも評価されるかもしれませんが、まあ、その分色々付けやすくなったのかなと。
降り注がれた隕石。まことみらい市の一部分には瓦礫で連なっており、凄惨なものとなっていた。目の当たりにしていた怪盗団ファントムの面々は、そのあまりの被害に苦言の表情をしていた。
中でも、アルカナ・シャドウは血が滲み出る程までティアアルカナロッドを握り締めていた。
マシュタンの言う「嘘のような圧倒的な強さ」。けれどその範疇を超えている。
冗談かと思われていた崩壊もあながち間違っておらず、現実味を帯びてきた。
見かねたアルカナ・シャドウは動こうと重心が揺れた時、マシュタンがいち早く察して彼女の行動を制止する。
「あの子達を助けるつもり? やめといた方がいいわ」
「そうじゃない。このままだと世界が滅んじゃう」
「アタシにはそれが建前にしか聞こえないわ」
「お願いマシュタン。止めないで」
「こればっかりは聞けないわ。それによく見て」
瓦礫の中から腕がひとつ飛び出し、誰かが這いずり出た。
「アルカナも知っての通り、彼はここで終わるような子ではないわ。だからアタシ達は、ここでじっと耐えてるのが賢明よ」
「……まこと」
アルカナ・シャドウの視線の先には、傷だらけになりながらも諦めない闘志だけで立ち上がったキュアトゥルースの姿がそこにはあった。
◯
嘘みたいな超広範囲攻撃。それを耐え忍んだのは奇跡としか言いようがない。月からの隕石によって、辺り一帯は吹き飛んで瓦礫の山。
あの規模でもジェットとポチタンは体を起こす程度には済んでいた。それも、身を挺して守ったミスティックのお陰だ。代わりに力無く倒れ込んで、起き上がるのも困難な程深いダメージを負ってしまった。
一方でトゥルースは気合いと根性で、アンサーは直前に羽織らせてくれたミスティックマントでダメージは最小限にまで抑え、奮起して震える足に力を入れて立ち上がろうとしていた。
「大丈夫かアンサー?」
「だ、大丈夫だよ」
「にしても、なんて滅茶苦茶な奴だ。今度月なんて投げてみろ。ただじゃすまねぇぞ」
これが、ウソノワールの力。まだ本気を出していない事を加味すると、実力差があり過ぎる。このまま無策で勝負しても同じ事の繰り返しだ。
だが、ちょっとやそっと小細工をしたところで先程のような力技で全てを捻り潰されるのは明白。
まるで子供扱いだ。
「はぁ、はぁ……ぐっ!」
どれだけ口が達者でも、身体はとっくに限界を迎えていた。膝から崩れ落ち、変身が強制的に解除された。
「……まこと君は下がってて。わたしがなんとかするから」
助かったのも全部まことのお陰。これ以上、彼ばかりに負担を掛ける訳にはいかず、アンサーは先頭に立ってウソノワールと対峙する。
まことの変身は解除されてしまったが、まだプリキット自体は健在。アンサーはミスティックマントを翻し、身構えた。
「無駄なことだ」
余裕綽々の言葉にも恐れずに、アンサーは歯を噛み締めながら地面を蹴った。
勢いを利用して右の足での回し蹴りをかます。
しかし、それを左腕で簡単に弾き返し完全にアンサーの攻撃を無力化してみせた。
「くッ!」
一度着地し、左拳を作って繰り出す。
「愚かな」
拳を繰り出すタイミングに合わせ、ウソノワールはアンサーの拳を外側にはたき落とされる。が、それを利用して右に身体を大きく捻って無理矢理懐に入り込んだ。
左からの攻撃を防がれるのは想定内。本命は右からの攻撃。
右拳に淡いエネルギーが凝縮され、光り輝く。
「アンサーアタック!」
瞬間的な爆発力は過去最高。今までよりも速く、重い一撃がウソノワールの左頬に炸裂した。
腕を振り抜いた。手応えはあった。その証拠に、ウソノワールの頭は下がってアンサーが見下ろす形の構図となっている。
今ので少しは優勢に傾いたと思うのに、胸の中に渦巻くこの違和感は何だ。
「ッ⁈」
よく見ればウソノワールの頬、その仮面には割れるどころか傷一つ付いていない。
「これだけやってこの程度だ」
瞬間、驚愕と同時に戦慄する。思わず一歩下がった。その隙を見逃さないウソノワールではなかった。
巨大な手でアンサーの頭を掴み、持ち上げる。そのまま腹部に手を添え、エネルギーの塊を派手にぶち込んで吹っ飛ばした。
諦める訳にはいかない。それでも尚立ち上がり前を向く。
手の平を向けられ、強力な砲撃が一直線に伸びる。
避けれはするが、背後にはまことにミスティック達が居る。巻き込む訳にはいかない。正面から受け切る。
ミスティックマントを広げて真っ向から受けて立った。
「あぐぅ……!」
衝突した時、その衝撃が全身に掛けて伝わり表情が歪む。防御は出来た。だがジリジリと押し込まれ、長くは保たない。
「くぅ!」
砲撃を受け流しながらミスティックマントを捨てた。被害無く防ぐにはこれしか方法が無かった。
防御から攻撃へと転じようとするも足が思う様に動かず、そこで動きが止まった。
アンサーもこれ以上の戦闘は不可能。
「素直にマコトジュエルを渡せば、苦しい思いなどせずにすんだものを」
「ウソノワール、貴方はどうしてマコトジュエルを盗ろうとするの?」
マコトジュエルは確かに貴重なものだ。けれど、何故そこまで執着するのかアンサーは気になっていた。それは、この場にいる誰もがそう思っている。
「世界を嘘で覆う。私の思うがままの世界にする為に」
「そんなこと、出来るわけがない!」
「なら試してやろう」
ウソノワールはまことに手の平を向けた。その手には赤く、得体の知れない力が秘められていた。
「嘘よ覆え。お前はキュアアンサーを攻撃し、苦しめる」
「何を言って──」
その言葉を耳にした瞬間、まことの瞳の色が赤く染まって意識を落とした。
そしてゆらりとゆっくり起き上がり、アンサーへと近づいた。
「まこと君……へっ?」
名前を呼ぶと同時に、まことは無言でアンサーの頬を叩いた。
一瞬の出来事でアンサーもあっけからんとした反応。叩かれた頬の痛みを感じながら、もう一度彼の名前を呼んだ。
「ど、どうしたのまこと君? まことく──ッ⁈」
今度は両手で首を絞めてきた。
「が、あぁッ!」
「まこと何やってるの⁉︎」
一部始終を見ていたミスティックが止めに入った。2人を引き剥がそうと必死に力を入れているのにも関わらず、まことは全く微動だにしない。
「なんて力なの!」
このままだとアンサーが絞め殺される。そう思った矢先、ウソノワールが指を鳴らした。
「あ、れ?」
途端にまことは元に戻り、その手を離した。
「ゲホッ、ケホッ!」
「アンサー大丈夫⁉︎」
「う、うん。でも、今のは一体?」
「ウソノワールの嘘に覆われたの。ウソノワールの嘘が本当になって、それが現実となる」
傍観していたアルカナ・シャドウがそう口にした。
「今はまだ短い時間だけど、マコトジュエルさえ手に入ればウソノワール様の嘘は永遠となるルル。その為にアタシ達はマコトジュエルを集めているルル」
「散り散りになったマコトジュエルの欠片を集める"だけ"なら簡単な事だ。しかし忌々しい事に、そこに居る時空の妖精がその欠片を何処の地で移動させ、元の巨大な形に戻している。そうだろう?」
「ポチタンがマコトジュエルを⁉︎」
怪盗団ファントムの本当の目的。そして、謎に包まれていたポチタンの秘密。それら全てが初耳。
「邪魔者は全て消す。そして、マコトジュエルを頂く!」
「そんなことさせない! ポチタンを守る、マコトジュエルも守る! 貴方が望む嘘の世界にはさせない!」
「それはどうかな?」
ウソノワールの瞳が赤くなり、同時にアンサーの身にも異変が生じた。
「嘘よ覆え。お前は私に跪く」
先程のまことと同様に、アンサーも嘘に染められその命令に体が自然とその通りに動かされる。
「ひれ伏せプリキュア。お前の行く末は私が決める」
「嫌だ! 貴方言う事なんて、聞かない!」
膝が曲がろうとするのを必死にウソノワールの言葉に抵抗をする。
「わたしは、自分の足で進むんだ! わたしの答えは、わたしが出すんだぁー!」
己の信念と気合いだけで、アンサーはウソノワールの嘘を跳ね除けた。
こんな事があり得るのか、とウソノワール自身も言葉を失っている。察するに、それ程までに予想外の結果だったのだろう。
しかし、抵抗するのだけで精一杯だったアンサーも力付き、そこから先へが進めずにいる。
「勝負はついた。消えろ」
ウソノワールは拳を地面に打ち付け、まこと達の真下から無数の光弾を撃ち放った。
耳をつんざく悲鳴が響き、3人は宙を舞う。あっさりと地に伏せ、トドメを刺そうとウソノワールが接近して来た。
「……マシュタンごめん」
「アルカナ⁉︎」
アルカナが走る。それも、言葉やその素振りからしてウソノワールの援護ではなくまこと達を助ける為に動いている。とはいえ、距離が離れて全速力でも間に合うかどうかの瀬戸際。
アルカナスターレインで妨害しようと円を描き、12つの星を煌めかせる。
間に合うか。いや、間に合わせる。
直後──。
「待て!」
静止の声に反応して、アルカナ・シャドウとウソノワールが止まった。
声の主は、今攻撃されようとしていたまことからだった。
まことの様子が少しおかしい。そんな違和感を持ち、彼の視線や小さな仕草、性格から推測するアルカナ・シャドウ。
「まさか貴方」
彼が次に口にするのか大体察したアルカナ・シャドウの顔は少し強張った。
◯
脅威そのものが目の前まで迫って来ている。普通に相手をしているだけじゃ無理だ。
今の自分達では、まだ到底敵わない。逃げ延びる為には。生き残る為には。最適な
まことは、自分が手にしているマコトジュエルを見つめてある賭けに出来る事を決めた。
「俺の持つマコトジュエル2つくれてやる。だから、アンサーとミスティックに手出しするな」
すると、ウソノワールの動きが完全に止まった。奴の最終的な目的の為にはマコトジュエルが必要。であれば、それを差し出せばどうだろうか。
「よせ! 何考えてるんだ!」
「だめ、だよ! まこと君!」
「お願い……!」
ジェットに続き、アンサーとミスティックも説得をしているがまことはそれに耳を傾けようとはせず。只々、マコトジュエルをウソノワールに差し出そうとしている。
取り引きとしては破格の条件だ。なのだが。
「それだけでは足りぬな」
あろうことか、ウソノワールは更に条件を欲した。
軽く指を鳴らすと、まことが所持しているアンサーレンズ。近場に落ちているミスティックマントが瞬時に消えては、ウソノワールの手の中に収まった。
「これで呑んでやろう」
(こいつ……ッ!)
ひと言言ってやりたい気持ちがあったが、今はそんな状況ではない。すぐに冷静になり、グッと堪えて出そうとしていた言葉を飲み込んだ。
「くれてやる」
変身に必要なマコトジュエルだけを残し、自分が持つ2つを投げ渡した。
ウソノワールの手にマコトジュエルが渡るのを見て、全員悔しく項垂れて言葉を失っていた。
「ウソノワール様!」
ニジーが名前を呼び、預かっていた
ウソノワールは受け取り、中身を読む。そして、本を畳んでひと言告げる。
「今はこのまま去れと、記されている。全ては未來自由の書のままに」
取り引きも成立した。未來自由の書にもこの場は去るという予言も相まって、この場に留まる理由を殆ど無くした。
「プリキュア、近い内にまた会う事になるだろう。未來自由の書に予言がある」
「予言、だと?」
「『1999年、7の月、真の地で、真実の石を抱くもの大王となる。そして、世界が嘘の影で覆われる』と。私は大王となり、世界を嘘で覆う。次に会う時は、世界とお前達の終わりの刻だ」
ファントムの面々の足元から、緑の光が柱となって覆う。そして、瞬く間にその場を次々と姿を消して行った。
「運が良かったルルね。今度はアタシと遊びましょう。まこと?」
ルルタンも別れを告げ、その場を去っていった。アルカナ・シャドウも、マシュタンを抱いて後に続こうと歩む。
しかし、光の柱に足を踏み入れようとした手前で止まり、振り返り、未だ倒れているまことへ手を差し伸べる。
「いつまでそうして寝てるつもり?」
「あっ……う、うるせー!」
「そういうところは相変わらずね」
悪態を吐きながらもその手を借り、体を起こす。
アルカナ・シャドウは杖でまことの体の至る所、探るように軽く突く。
「その程度の怪我なら数日休めば問題ないみたいね」
「そりゃ診断どうも」
そっぽ向き、目を合わせようともしない。アンサーとミスティックは苦笑いをして特に何も言わずに見守っているだけ。
お互いに、もう警戒の色は無い。
「ふふっ」
ふんわりとした優しいアルカナ・シャドウの手が、まことの頭を軽く撫でる。
「「……」」
何だか不思議な感覚。まこととアルカナ・シャドウの2人を見ていると、他人とは感じさせない。この構図がなんともしっくりくる。
そう、アンサーとミスティックは思った。
「じゃあね、わたしの名探偵さん」
「あっ、おい!」
やるだけの事をした彼女の背を捉えること無く姿を消して行った。
伸ばした手は空虚を掴み、静かにしまい込むのだった。
まことは皆に振り返り、申し訳なく謝罪をした。
「ごめん。マコトジュエル渡して。でも、他に道は無かったんだ」
「ううん、ありがとう」
「わたし達のこと助けてくれて」
攻めるどころか逆に感謝された。お互い、言葉の意味を理解して只々笑顔を作る。
プリキットもマコトジュエルも奪われてしまった。この選択が正しかったのかどうか、今はまだ分からない。
でも──俺達はここにいる。これが、俺達の選んだ