名探偵プリキュア! The End of Truth 作:シロX
名探偵プリキュアはもう存在しない。そう言い渡されたあんなとみくるの瞳に揺らぎが生じた。
「数ヶ月前までは此処に居たらしいけど、突然姿を消したんだ」
「どうして?」
「それはボクの方が知りたいよ。このキュアット探偵事務所に居た名探偵プリキュアは、かなり腕の良い奴と風の噂で聞いてたからな」
まことは席を立ち、棚から1冊のファイルを取り出して皆の前で開けた。
「名探偵キュアトゥルース。その類稀なる推理で、数々の難事件を解決へと導いた名探偵」
「そ、そんな凄い先輩が居たんだ!」
「資料によると、このキュアトゥルースは7つのマコトジュエルと探偵道具を駆使して謎を解決してたらしい」
「だけど消えた。残ったのはこの事務所のみ。事務所を閉める為、ボクはロンドンのキュアット探偵事務所から来たんだ。誰も居ない事務所があったって意味無いだろ?」
キュアトゥルースに関するファイルを棚に仕舞い、みくるの肩に手を置いた。
「だから言ったろ。期待しない方がいいって。キュアット探偵事務所は廃業なんだよ」
酷な事だが、まことはみくるに現実を突き付けた。こうなる事が分かっていたから、まことはそれとなく忠告をしたのだ。
「ここでプリキュアの先輩と調査するのが夢だったのに……」
「うーん……」
悲しませるつもりはサラサラ無かったが、こうもあからさまに凹んでいる姿を見てしまうと心が痛む。みくるとは大なり小なりと付き合いのある友達だ。出来るだけ悲しませないようにしたのだが、結果がこのようになってしまった。
「いるよ! わたし達が居る! やろうよ、ここで名探偵! ねっ、みくる」
「ええ! でも、あんな自分の時代に──」
「勝手に決めるなよ」
あんなの提案を一刀両断したのがジェット。
「ボクは、お前達がプリキュアだって認めてない。ボクは、この目で見たものしか信じないからな!」
「ジェットさん」
「何だまこと。お前さっきからコイツらの肩を持ってるみたいだが」
「友達なんだから当然だ」
疑いの眼差ししか向けないジェット。どうにかして、2人の為にと説得を続けるまこと。肌に刺さる空気の中、あんなは狼狽している。
ここまで一方的に言われ続けられるのも癪。そう思ったみくるが痺れを切らした。
「むう! だったらプリキュアだって証拠見せてあげ──」
みくるは、ペンダントを手にして今からプリキュアに変身しようとした矢先。事務所内にある振り子時計が鳴り響く。それは、夕方5時の合図だ。
「……と、思ったけど帰る! 学校の寮門限だから。帰ろう、まこと」
「あっ、ちょっと!」
まことの手を引いて、みくるはキュアット探偵事務所から出ようとする。
「証拠は明日見せてあげるから! それと、あんな達泊めてあげて!」
「ついでに、俺についても詳しく教えてあげて」
「待てよ。全部ボクに丸投げかよ!」
バタンと大きな音を立てて、2人はキュアット探偵事務所を後にするのだった。
◯
太陽が沈む。オレンジ色と化した空の下で、隣り合わせで歩くまこととみくる。無言で歩く事に気まずさを感じて、みくるは口を開けた。
「今日だけで色んな事あったね」
「あり過ぎだ。それに、まさかみくるが名探偵プリキュアになるなんてな」
「あっ、その事で聞きたかった事があるんだけど。まこと、何であんなにもキュアット探偵事務所に馴染んでたの?」
「そんなの決まってんだろ。俺がキュアット探偵事務所の人間だから」
「え、ええぇぇぇ‼︎?」
目が飛び出してしまう程の驚愕のカミングアウト。いつも一緒に居て、キュアット探偵事務所に入りたい事も口に出していたというのに。
「いつから?」
「記憶喪失になった時期だ。あの時、ジェットさんが拾ってそのまま探偵事務所に」
「ズルい!」
「ズルいって……あんなぁ、こっちは相当苦労したんだ。右も左も分からない俺を、偶々下見に来ていたジェットさんが通り掛からなきゃ露頭に迷ってたんだぞ?」
そうだ。あの日、あの時、あの場所でまことは拾われた。何も分からない。自分が何者かで、どのような存在かも。そんな状態で、ジェットは心優しくも手を差し伸べてくれた。
「みくるがキュアット探偵事務所に入りたいってのを知ってたうえで、黙っていたのは謝るよ。でも、俺だって必死だったんだ」
「わたしをもっと頼ってくれたっていいんだよ?」
「十分頼ってるから頼り難いんだよ」
記憶を無くしたその日から本当に苦労と迷惑ばかりだ。ジェットだけじゃない。みくるは心配してずっと付き添ってくれている。それに留まらず、記憶を取り戻す手伝いまでしてくれている。
「らしくなーい。まことはドーンっと構えてたらいいんだよ」
「そんな呑気な」
「記憶を取り戻した時、まことが笑顔になればわたしはそれで満足だから」
心からの本音。純粋な想い。その優しさだから甘えてしまう。自分がしっかりしなきゃと何度も思っているのに、そんな屈託の無いものを振り翳されたら。
「あんなの事もそうだけど、わたしは頑張るよ」
「それじゃあ、もう少しだけ寄り添ってもいいか?」
「任せて、ちゃんと解決してみせるから!」
胸を張る彼女の頭をくしゃ撫で、談笑しながら明日どうやってジェットに名探偵プリキュアと証明させるのか模索しながら寮に帰宅するのだった。
ここまでの拝読ありがとうございましたー