名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

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第6話 木を隠すなら森の中

 次の日。名探偵プリキュアだって証明する為にキュアット探偵事務所を訪れたまこととみくるだった。しかしタイミングが悪く、あんなとすれ違いとなった。

 

 ポチタンは昨日と同じく、何かしらの事件を察知してあんなと共にキュアット探偵事務所を飛び出した。後を追い掛け、ジェットも渋々付いて、皆がやって来たのはとあるケーキ屋。

 

「や、やっと追い付いた。何だよ朝っぱらから」

 

「もー、ポチタンどうしたのー?」

 

「ケーキ屋さんだ」

 

 パティスリーチュチュの看板を立てるケーキ屋。こんな事件性の無い場所で何があるのか、あんなとみくるは首を傾げる。

 

「パティスリーチュチュって……マズいな」

 

 チュチュの看板を見て、まことは青ざめた。

 

「そんなに不味いの?」

 

「その意味じゃない。寧ろここのケーキは美味しい。問題なんはパティシエの方だ」

 

 入る事に多少なりと嫌悪感を抱かせていると、あんながテラスに目を移す。そこでは何かしらの騒ぎが生じていた。

 2人程が腰を屈ませ、何か探している様子で床を這っている。

 

 困っている人を放っては置けない。ポチタンも助けてあげて欲しい、と目で訴えている。どちらにしろ、この事件に足を突っ込まざる得ないようだ。

 

「どうしたんです?」

 

「ペンが無いの。店長さんにも探してもらってるけど」

 

「エリザちゃん作家なんだ。この前、推理小説の賞を取ってね」

 

「コンクールの時に貰った大切なペンなのに……」

 

 名前は来栖エリザ。今回は、彼女が口にした通り大切なペンの紛失が事件らしい。残念と言ったらそれで終わりだが。

 

「流石に手伝います!」

 

「無くなった時の事を教えて下さい!」

 

 そう。あんなとみくる、この2人ならそう言うと思っていた。

 

「なんていうか、みくるが2人になったみたいだな」

 

 この騒々しさ。それに振り回されている感。あんながみくるに見えてしまうのも仕方ない。

 それはさておき、先ずは彼女の事情を詳しく以外無い。

 

「ついさっきお婆ちゃんが話し掛けてきて、気付いたら居なくなってペンも無くなってたの」

 

「ポチタンが行く場所に事件あり、なのか?」

 

「あんな、まこと。ちょっと」

 

 みくるは2人を連れて小声で話す。

 

「どう考えても、お婆さんが犯人の可能性も」

 

「無くしたという可能性もまだ捨て切れないが。まあ、容疑者はそのお婆さんしかいないもんな」

 

「えっ、お婆さんが⁉︎」

 

「「「聞こえてた!」」」

 

 3人にしか聞こえていないかと思い込んでいたが、どうやら話し声は全部筒抜けだった。というより、単なる間抜けなやり取り。

 これにはジェットも頭を抱えて呆れるばかり。

 

「おまわりさん!」

 

 先走るエリザは携帯電話で警察を呼ぼうとする。まだ容疑者というだけで、犯人ではない。子供の憶測だけで警察を呼び、大事にはしたくない。もし間違っていたら、大目玉を食らう。

 

「うん? 繋がらない?」

 

 携帯を指先で叩いてみるエリザだが、うんともすんとも反応がない。携帯の画面を注視すれば「圏外」という文字が表示されていた。

 

「何これ⁉︎」

 

「通信障害みたいです」

 

 店内が出てきたのは、青い髪が特徴の女の子。歳はまこと達よりも上で、とても落ち着きのある人だ。

 

「電波が繋がらなくて携帯電話が使えないって未だニュースで……あっ‼︎」

 

「げっ……」

 

 彼女とまことが目が合った瞬間、それぞれ違った反応を示した。女の子は目を輝かせているのに対し、まことは渋い顔をしてみくるの背中に隠れる。

 

「まこと?」

 

「みくる、俺にあの人を近づけさせるなよ」

 

「何で?」

 

「それはだな……」

 

「──つーかまえた!」

 

 隠れたまことの背後から、先程の女の子が覆い被さるようにした抱き着いて捕まえた。まことはげんなりとした顔となり、女の子は満足げな顔をしている。

 何から何まで正反対の反応しかしていない。

 

「何がどうなってるの?」

 

「この人は『帆羽くれあ』さんって言って、このお店のパティシエ」

 

「そして、まことちゃんのお世話もしてるの」

 

「「お世話⁉︎」」

 

 ジタバタと抵抗しているが、くれあからの抱擁から抜け出せず諦めた。

 

「俺の事はどうでもいい。ジェットさん、2人にあれを渡して追い掛けさせた方が早い」

 

「「あれ?」」

 

「これだ。ボクが発明したプリキットだ」

 

 ジェットが渡したのは、妖精姿の自分の形した機械。首元にあるリボンにはボタンが3つある。

 

「それはプリキットボイスメモだ。それを使えば連絡出来る。どっちかがお婆さんを追い掛け、こっちでその手掛かりとなる情報を掴む」

 

「二手に分かれるって事だよね。それならわたしが追い掛けるよ!」

 

 プリキットボイスメモを受け取ったあんなは、早速パティスリーチュチュを飛び出して行った。

 

「よし、みくる。俺達はもっと詳しくその時の事を聞こう」

 

「その状態で?」

 

 未だくれあに抱かれているまこと。そのまま押し通すにしては些か難しい体勢。それに、その絵面がずっと視界に入って聞き込みに集中出来ない。

 

「頼んだ!」

 

 話は一旦みくるに丸投げして、まことはくれあの説得からする事を優先。でないと、店を退店するまでずっとこのままの状態だ。

 

「くれあさん、離して貰えませんか?」

 

「えー何で?」

 

「このままだと事件を解決出来ないから。この埋め合わせはいつかするから離して」

 

 すると、くれあは意外にも素直に聞いて抱擁を解いてくれた。ようやく解放された事に一安心していると、くれあが肩を叩いた。

 

「埋め合わせ、期待してるから」

 

「あー……はい」

 

 迂闊に変な口約束をしてしまった事にまことは後悔する。くれあの目を見れば、かなり本気で要求しているのが分かる。

 

「みくる、どんなだ?」

 

 みくるに話し掛けると、彼女は切羽詰まった表情で話した。

 

「それが、あんなが追い掛けているお婆さん。怪盗団ファントムだったんだよ!」

 

「こうしちゃいられない。俺達も合流しよう。ジェットさん!」

 

「聞こえてるよ。行くぞ!」

 

 

 ◯

 

 

 プリキットボイスメモで話すあんなを頼りに、まこと達はお婆さんが逃げた場所と思われる公園へやって来た。

 

「あれ、お婆さんは?」

 

「見失った」

 

「見失ったって言ったって、この公園は」

 

「ボクらはあっちから来た」

 

「わたしはこっち」

 

 見失う筈が無い。いやまず、この公園に入った時点で見失う事は絶対に無い。何故ならこの公園は、まこと達が入って来た2ヶ所にしか出入り口がないからだ。到底目を掻い潜って抜け出すなんて不可能。

 

「柵を越えて出て行ったの? 茂みに隠れるとか?」

 

「それか、別の誰かに変装しているのかも」

 

「へ、変装って言ったって」

 

 まこと、みくる、ジェットの3人は公園に居る人達にひとりひとり目を向ける。

 この公園にはサラリーマン、カップルの男女、ギャルの女子高校生の計4人が居る。いくら少人数と言えど、この短時間で変装を見破るには困難を極める。

 

「まことなら、こういうの得意でしょう」

 

「おいおい。トリックの謎解きならまだしも、怪盗の変装を見破るなんて時間掛かるわ」

 

「なんかその感じだと、時間掛ければ解けるみたいだね」

 

 みくるは呆れ、あんなは期待する眼差しでまことを見る。なんとか少ない情報だけで変装を見破ろうとするも、やはりぱっと見だけでは判別が付かない。しかも、この場に居る全員は初対面且つ、今しがた目にしたばかり。

 

 他人の癖や仕草から推理すれば、まだ犯人は絞れるのだが。いかんせん難航だ。

 

「手掛かりさえ見つければ推理のしようがあるんだが……ん?」

 

 まことは携帯電話を手にしているサラリーマンと女子高校生に目が行く。一見して携帯電話で電話しているだけに見えるが、着眼点はそこではない。

 

「あんな、みくる。パティスリーチュチュでの出来事思い出してみろ」

 

 あの時、エリザが携帯電話を使おうとしたら電波が繋がらなかった。だから足で犯人を探す為にここまで追い掛けた。

 

「「あっ!」」

 

 一本の線が点と点を結ぶ、謎の解明の道となる。

 

「「見えた! これが答えだ!」」

 

 まこと達は犯人と断定したある人物に話し掛ける。

 

「ちょっといいですか?」

 

「無理。電話してんだけど」

 

 その人物とはギャルの女子高校生。

 

「だからこそです」

 

「「ペンを盗んだ犯人ファントムは、貴女です!」」

 

「はぁ?」

 

「惚けても無駄だ。貴女が携帯電話を使って喋っている時点で変装は失敗してるんだよ」

 

 あんなとみくるは頷き、どうして女子高校生が怪盗団ファントムの怪盗かの推理を披露する。

 

「今電話を使える筈がない! 通信障害だから」

 

「貴女は逃げてたから気付かなかったんだ」

 

「それが、貴女が自ら自分が犯人だと証明させちまってんだよ」

 

 女子高校生は観念してか、拍手をして推理を披露した3人を讃える。それが意味するのは。

 

「お見事。いかにもボクがニジーさ、ベイビー!」

 

 装っていた衣類を脱ぎ、その下に隠していた仮面が露わになる。正体は、先日ティアラを盗んだ怪盗ニジー。しかし、本人は完璧な変装を見破られた割には余裕の表情を見せている。

 

「ボクの変装を2度も見破るなんて。ご褒美をあげよう」

 

 ニジーは、エリザから盗んだガラスのペンを取り出した。それを使い、先日と同じ方法で怪物を喚び出そうとする。

 

「嘘よ覆え! いでよ、ハンニンダー!」

 

 ガラスのペンの中にあるマコトジュエルが闇のエネルギーに支配され、巨大な怪物ハンニンダーと変貌を遂げた。

 

「まこと君、ポチタンとジェットさんをお願い!」

 

「分かった。2人こそ気を付けろよ!」

 

「ま、待て! 何だコイツは?」

 

 ポチタンとジェットを脇に抱え、まことは巻き添えを食らわないよう離れた位置まで避難した。

 

「まーまー、見てくれよ。良くも悪くも、これで2人が名探偵プリキュアだってこと証明出来る」

 

 全く信じていないジェットに分からせるには、目の前でそれを証明させる他ない。

 

「「オープン! ジュエルキュアウォッチ!」」

 

 ペンダントのジュエルキュアウォッチにマコトジュエルをセット。

 

「「プリキュア! ウェイクアップタイム!」」

 

 ペンダントにある長針を回し、それを全部で4回繰り返す。1回回す毎に掛け声と共に体に変化が訪れる。普段着からポップでメルヘンな探偵の装いになる。あんなは紫を基調とした衣装に。みくるはピンクを基調とした衣装にその身に包み込み、変身を遂げる。

 

「どんな謎でもはなまる解決! 名探偵キュアアンサー!」

 

「重ねた推理で笑顔にジャンプ! 名探偵キュアミスティック!」

 

「「名探偵プリキュア!」」

 

「わたしの答え、見せてあげます!」

 

 戦いの火蓋は、切って落とされた。




ここまでの拝読ありがとうございました!
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