名探偵プリキュア! The End of Truth   作:シロX

9 / 27
第8話 金田一少年の秘めごと ファイル1

 薄暗く、だけど少しばかり明るいとある大きな劇場。劇場内はその規模の大きさと比例して客席が用意されているものの、そこには誰1人として座っている者が居ない。居るとしたら2階のVIP席だ。

 

 仮面を被ったこの場を仕切る者。腕を組んで深々と座り込む大男。二段アイスを黙々と食べる少女とその隣に居る小さな妖精。そして、腕を組んであくびをする赤い瞳の少年。

 

 彼らの視線の先には劇場の舞台上。その中央に立つのは、名探偵プリキュアを苦しめた怪盗ニジー。

 

「ミラージュの書を読み解くに、約束の刻まであと僅か……マコトジュエルを得ねばならぬのにこの失態」

 

 ニジーの不甲斐無さに叱責をするのは仮面の男。その事に対して不平不満は言わず、自分の未熟さをただ謝罪をする様子だった。

 

「ウソノワール様、申し訳ありません。まさか、名探偵プリキュアが現れるとは」

 

「言い訳は良くないわよニジー。ウソノワール様は謙虚で寛大だから、この程度で済ませているけれど。あまり積み重なるとどうなるか分かんないよー?」

 

 あくびをしていた赤い瞳の少年は、挑発めいた言動でニジーを煽った。ニジーは赤い瞳の少年に鋭い目付きで言い返す。

 

「そっちこそ、いつまで様子を見るつもりだいルルタン? いや、今の君の姿ならこう呼ぶべきかな──金田一まこと」

 

 いつもとは違う雰囲気をその身に纏っており、口調までも全く別人を思わせる。何より異常なのは、まことがこうしてニジーと共に会話をしており、その仲間と思しき面々と同じ空間に居る事が不思議だ。それに、ルルタンという名で呼ばれたのも。

 

「新たな名探偵プリキュアが誕生した今、その様子を窺うのが合理的だとワタシは思うのだけど?」

 

「仮初めの姿で言われても説得力無いね」

 

「二度のチャンスを棒に振ったオシャンティ小僧に言われたくないわ」

 

「──プッ、アハハッ! オシャンティ小僧ってチョーウケるー!」

 

 舞台の横断幕が上がるのと同じくして、耳に響く甲高い笑い声が聴こえてきた。

 

「それなら次は、アゲが行くしかないっしょ!」

 

 派手な髪型にして、この場に居る誰よりもテンションの高い女性が進言した。どうやら彼女も、ニジーの二度の失態について言いたい事があるらしい。

 

「あんたのギャルの変装? 超下手! あり得ない、チョベリバー!」

 

「聞き捨てならないな」

 

 女性アゲセーヌが現れてから口論が更にヒートアップする。周囲の者は「またか……」と言った表情で、特に指摘する訳も無く傍観している。

 

「ミラージュの書は、新たなマコトジュエルを示した」

 

 仮面の男ウソノワールは目の前にある本の導き従い、次の盗みを急かせる。

 

「ニジーにお任せを!」

 

「ゆけ、アゲセーヌ!」

 

 もう一度と自分が行くと言うも、ウソノワールが指名したのはアゲセーヌ。それに肩を落とし、ニジーは恨めしそうにアゲセーヌを睨む。

 

「そ、そんな……ボクにチャンスを!」

 

「ライライサー!」

 

 ニジーが抗議の念を飛ばそうとするも、それを一蹴して無理矢理この話を打ち切らせる。

 

「「ライライサー!」」

 

 アゲセーヌはともかく、ニジーはウソノワールの命とあらば受け入れるしか無く大人しく引き下がった。

 これにて、怪盗団ファントムの会合は幕を閉じる。

 

 全員これで解散かと思われたが、まこともといルルタンは空中を渡り歩いて黙々とアイスを食べていた少女の隣へ歩み寄った。

 

「折角だから、今日はワタシと一緒に名探偵プリキュアを見て行かない?」

 

 少女は明からさまに目線を逸らし、無言で会話を拒否の意を示す。それでも尚、ルルタンは執拗に迫って背ける彼女を追い掛ける。

 

「しつこい男は嫌われるのを知らない?」

 

 紫色をしている妖精マシュタンが、ルルタンにキツく当たる。ルルタンもそれを承知で接していたもあって、反省の色を見せていない。寧ろ、わざとやっている様にも見える。

 

「マシュタンには聞いてないの。用があるのはアナタなんだから。森亜るるか」

 

 名指して呼ばれ、渋々るるかはルルタンに顔を向ける。

 

「何?」

 

「『何?』じゃないの。ワタシと一緒に名探偵プリキュアを見に行こうって行ってるの」

 

「……彼の身内に名探偵プリキュアが居るのなら、わざわざ一緒に行く必要は無いと思うの」

 

「いやだって、ずっと後ろから観察しても面白くないからさ。向き合った方が良くない?」

 

「嫌」

 

 るるかの返事に、ルルタンは笑顔のまま固まる。

 

「そっか。なら、アゲセーヌの次はワタシが行こうかな。"あの"マコトジュエルを使って名探偵プリキュアを襲わせよう」

 

 わざとらしい態度で立ち去ろうとすると、るるかが服の袖を掴んで引き留めた。

 

「……良いよ。少しだけなら」

 

「うん、そう言うと思った」

 

 ルルタンは上機嫌にスキップしながら、るるかとマシュタンを連れ、気配を殺しながらアゲセーヌの後を追うのだった。




次回も怪盗団ファントムサイド中心になります。

ここまでの拝読ありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。