グレートブリタニア内部、その重苦しい静寂と重力障壁を、文字通り「物理的に」叩き伏せて現れた銀色の機体。
ランスロット・コンクエスターを捉えていた巨大なエネルギークローは、大型ランスの一撃で粉々に砕け散り、ハドロン砲の砲身は、熱源に触れる間もなく沈黙した。
「……あれは、クラブ!? でも、なんか違う?」
重力場から解放されたカレンが、モニターに映し出された、その姿を凝視する。そこにいたのは、ランスロット・クラブのシルエットを継承しつつも、より洗練された銀色の騎士だった。
カラーリングは、光を反射する氷のようなシルバー。各部の関節やスリットからは、深海を思わせる高貴なブルーが発光している。そして最大の特徴は、その額に毅然とそびえ立つ一本の「角」だ。
「みんな〜驚きすぎだよ! 僕とセシルくんが、ただ指をくわえて待っていたとでも思ったのかい?」
通信回線に特区政庁の地下ハンガーからロイド・アスプルンドが、いつもの調子で割り込んできた。
モニターの端には、興奮した様子のロイドと、安堵の表情を浮かべたセシルの姿が映し出される。
「セシルくん、戦闘中だけど手短に解説! ギャラリーに僕たちの『クラブII』を紹介してあげて。」
「はい!……見てもらった方が早いわ。それがライ君の新しい力、ランスロット・クラブIIよ!」
セシルの指がコンソールを叩くと、攻略組のモニターに新型機のスペックシートが転送された。
「いいかい? 従来のランスロットは、例えるなら常にガソリンを撒き散らす怪物だった。でも、このクラブIIは違う!」
ロイドが指を立てて強調する。
「ライ君の脳波と同調し、必要な時に、必要な場所へ、最小限のロスでエナジーを流し込む。無駄を削ぎ落とし、効率を極めた結果、彼は戦場という名のキャンバスを、長く、速く駆け抜けることができるんだよ」
その言葉を裏付けるように、クラブIIの背中から展開された銀色の翼が、脈動するように明滅した。
重力障壁の中、他の機体がエナジー残量を削りながら耐えているのに対し、クラブIIの出力計は、大きく揺らがない。
「……ライ、本当に君なのか」
コンクエスターのコックピットで、スザクが震える声で問いかけた。
「ああ、スザク。……ずっと、暗闇の中にいたんだ。でも、みんなの声が聞こえたんだよ。」
クラブIIのコックピット内で、ライは静かに操縦桿を握り直す。
彼の銀髪と、機体のシルバーが共鳴しているかのように輝いていた。
「ロイドさん、セシルさん。……この機体、すごいですよ。まるで、自分の体みたいだ」
「フフ……当たり前よ。あなたに最適化されるように調整したんだから」
ロイドが眼鏡の奥の瞳を光らせる。
「さあ、見せておくれ。僕たちが作った『クラブII』が、皇帝陛下の城をどうやって食い破るのかを!」
クラブIIが、大型ランスを正面に構える。
その額の角が、グレートブリタニア中枢から放たれる呪縛を切り裂くための「意志」を体現していた。
「みんな!最深部への道をいこう」
「……元気になったみたいね。追い越されないようにしなさいよ、ライ!」
カレンが不敵に笑い、紅蓮可翔式のエンジンを再始動させる。
絶望に塗りつぶされていた要塞に、清冽な風が吹き抜けた。
ランスロット・クラブIIの衝撃――それは、単なる破壊の力ではない。
明日へと繋がるエナジーを、一滴も無駄にしないという「生の肯定」であった。
「目標、最深部! 突撃開始!」
ゼロの鋭い号令が、通信回線を通じて攻略組の意識を一つに繋いだ。
先ほどまで要塞の重力障壁に押し潰されようとしていた四機は、クラブIIが放つ中和エネルギーの波動に守られ、その牙を再び剥く。
要塞グレート・ブリタニアの心臓部へと続く大回廊。そこには、数多くの自律型KMF部隊と、親衛隊の精鋭が壁を成して待ち構えていた。
先陣を切るのは、二機のランスロット――スザクのコンクエスターと、ライのクラブIIだ。
「スザク、右の防衛ラインを叩く! 合わせて!」
「分かった。ライ! コンビネーション・デルタ!」
二人の間に言葉は多く必要なかった。かつてブリタニア軍で、演習でも、実戦でも幾度となく繰り返した2人のコンビネーション。
死線を共にしてきた二人の呼吸は、新型のリンク・システムを介さずとも、完全にシンクロしていた。
スザクのコンクエスターがハドロン・ブラスターで敵陣の中央を抉り、爆炎が上がる。その影から、クラブIIが銀色の残像を残して飛び出した。
ライの手にある大型ランスが、敵の旗機である重装ヴィンセントの胸部を一突きで貫き、背後の壁面まで縫い止める。
「やるじゃないか。無駄な動きが、まったくない……!」
後方を追うノネット・エニアグラムが、思わず感嘆の声を漏らした。
「これほどまでの連携、もはや芸術の域だね。……年長者の意地を見せてあげる。
星刻、残党は私たちが!」
「承知した。これ以上の遅れは許されない! 露払いは我らが引き受けよう!」
ノネットのブラッドフォードカスタムが超低空飛行で床を滑り、敵機の脚部を次々と切断していく。その直上を、星刻の神虎が天愕覇王荷電粒子重砲を抱えて突き抜けた。雷鳴のような咆哮が回廊を駆け抜け、通路を埋め尽くしていた無人機の群れを一瞬でスクラップへと変える。
「道は開いたよ。行ってきな!」
ノネットの豪快な笑い声と共に、スザク、ライ、カレンの三機がさらに加速する。
最深部手前の大広間。そこには、グレートブリタニア守備隊の最後の砦である、特殊なナイトギガフォートレスを中心としたギアス嚮団の部隊が陣取っていた。
「どきなさいよ! アタシたちの邪魔をする奴は、全員纏めて焼き尽くす!」
カレンの紅蓮可翔式が、頭上から輻射波動を撃ち下ろす。熱線が敵陣を攪乱した隙を突いて、ライのクラブIIが可変式ヴァリスを構えた。
「ヴァリス、フルバースト……狙撃モード、ロックオン!」
クラブIIの象徴たる長砲身から放たれた極太の光軸が、敵の防衛司令官機をピンポイントで貫通、爆沈させた。
「……見えたぞ、あの扉だ!」
スザクが叫ぶ。回廊の突き当たりに、黄金の装飾が施された巨大な二枚扉が姿を現した。それは、シャルル・ジ・ブリタニアが渇望する「嘘のない世界」へと至るための「神を殺す武器」がある最後の境界。
その扉の前で、グレートブリタニアのエナジーを注ぎ込んだ最終防衛シールドが展開される。
「させるかぁぁぁ!!」
スザクのランスロット・コンクエスターがMVSを両手に構え、シールドに斬りかかる。
「僕も手伝う、スザク!」
クラブIIが隣に並び、大型ランスの先端にエナジーを集中させる。
二機のランスロットの出力が、共鳴によって臨界点を超えていく。
「……これが、僕たちの……!」
「……『明日』への答えだ!!」
白と銀、二つの光が一つに溶け合い、グレートブリタニア最強のシールドを引き裂いた。
凄まじい衝撃波と共に黄金の扉が内側へと弾け飛び、攻略組はついに、シャルル・ジ・ブリタニアが待つ「思考の回廊」の入り口へと到達した。
機体を降り、生身で扉をくぐるスザクとライ。その後ろには、カレン、星刻、ノネットも続く。
目の前に広がるのは、星々が流れるような幻想的で、どこか空虚な精神世界。
その中央、シャルル・ジ・ブリタニアが泰然たる態度でこちらを見ている。
「……来たか。今から『神』のシステムを見せよう。」
シャルルの重厚な声が、魂を直接揺さぶる。
ライは、静かにその眼差しを見つめ返した。
妄想したランスロット・クラブII
【Z-01b2:Lancelot Club II(ランスロット・クラブII)】
コンセプト: ランスロット・クラブの正統後継機にして、第8世代KMFの完成形。
動力: 新型大容量サクラダイト・コア + 複合型エナジー・ドライブ。
特徴: 第8世代機が抱えていた、圧倒的な出力に対する「燃費の悪さ」を、エネルギー還流システムの最適化によって克服。
以前のクラブを大幅に上回る出力を維持しつつ、エナジー消費を劇的に抑えることに成功。
武装: 対KMF戦闘用大型ランス: 高周波振動に加え、先端からの指向性衝撃波を放つ。
可変式ヴァリス(V.A.R.I.S.): 狙撃モードを強化。長距離からの精密射撃で急所を突くクラブIIの象徴。
MVS(高周波振動剣): 抜刀速度と切断能力を極限まで向上。
スラッシュハーケン: 四肢に装備。メッサーモードへの変形も可能。
エナジーウイング & ブレイズ・ルミナス: 攻防一体の光の翼。