筆が遅いもので投稿期間空いて申し訳ない…。
ピピーッガガッ…
「まじか…。」
先生たちと別れたあと急いで闇銀行に向かった俺は理事からの振込を確認していた。
…あの感じじゃ払うかどうか怪しいと思ったが…これは……。
少し考え事をしながら、当面の生活費を引き出す。
ちなみに、今回もそうだがここ最近はカイザーのような大手企業の場合基本的に報酬の支払いはブラックマーケット独自の金融機関である闇銀行を通じて振込という形で払われることが多い。
ちょっと前…まだ独自の金融形態がブラックマーケットで確立する前まで主流だったデジタルマネーが廃れ始めたのはこれが理由だ。
そんなこんなでATMで引き出しの操作を行っていたところ、近くのカウンターにいた赤髪の嬢ちゃんの声が響いた。
「ちょっと!どういうことよ!」
「ですから、先程申し上げた通りこの経営状況ではご融資は難しいと…。」
「何がダメなのよー!」
なにやら融資のことで銀行員に詰め寄っている様子だ。
「ふむ…まず便利屋68…でしたか。この便利屋、ほとんどペーパーカンパニーではありませんか?書類上は、財政が破綻しています。」
「ちゃ、ちゃんと稼いでるわよ!まだ依頼料を回収できてないだけで…。」
「それと、従業員は社長を入れて4名のみですが…室長に課長に平社員…肩書きの無駄遣いでは?会社ごっこもいい加減になさってください。」
「そ、それは…肩書きがあった方が仕事の依頼を…。」
「あとですね、必要以上に事務所の賃料が高いです。財政状況に見合った物件を見つけていただかないと。」
「そ、それも…ちゃんとしたオフィスの方が依頼を…。」
赤髪の嬢ちゃんの前にいる銀行員のロボットは眉間に皺を寄せるようなインターフェイスを出していた。
横で聞いてるだけだが酷すぎるなあの嬢ちゃんの会社…見たところ銃は一丁前に高そうなもん持ってるし腕は立つのかもしれんが…それだけで上手くいくほど経営は甘くないわな。
「…はぁ、再度になりますが、陸八魔アル様…これではご融資は出来ません…。」
「え、ええー!」
「もっと堅実な職につかれてはいかがでしょうか?手っ取り早く稼ぐなら期間工や作業員などが…」
「な、な…。」
銀行員にコテンパンに言い負かされたからか、赤髪の嬢ちゃんはショックを受けて固まってしまったようだ。
うーん…あの歳で起業した勇気は称えやりたいところだが反応を見るにどうにもおつむが弱そうだ。
さすがに見るに耐えんな…金は下ろせたし聞き耳なんて悪趣味なことしてないでさっさと帰るとするか…。
そう思って固まった嬢ちゃんの後ろを通り抜けようとした時だった。
バチンッ
「な、何事ですか!?停電!?」
「誰の仕業だ…!?パソコンの電源も落ちてるじゃないか!」
突然銀行内の照明が落ち真っ暗になったのだ。
ダダダダダダッ!
「じ、銃声!?」
その直後、暗闇の中銃声が鳴り響いた。
「うげ!」 「ぎゃあ!」 「うわぁ!」
マーケットガードどもであろう情けない叫び声が銃声に混じって聞こえる。
…これは、もしかして…。
パッ!
次の瞬間、照明が着いたかと思えば、なんとそこには5人の覆面が立っていた。
「全員その場に伏せなさい!持っている武器を捨てて!」
「言う事聞かないと、痛い目を見ますよ☆」
「あ、あはは…危ないので怪我しないように伏せててくださいね…。」
現れた覆面達はこちらに銃を向け大人しくするよう勧告する。
……ええー嘘ー?…でも…いや…間違いなくこれは…。
隣にいた赤髪の嬢ちゃんが白目を向きながら叫ぶ。
「ぎ、銀行強盗!?」
…だよなぁ…。
…今日は厄日かなんかかよ…。
銀行強盗、ブラックマーケットではよくある…と思われがちだが実はそんなに起こらない割と珍しいことである。
何故かと言うと、皆闇銀行を敵に回したくないからだ。
そもそも大手の闇銀行は腕っぷしの強いマーケットガードが守っているため強盗するとなればそいつらを相手取って勝たなくてはならない。
さらに言えば、闇銀行は企業はもちろん表の社会で普通の銀行を使えない奴らにとっても必要不可欠なものだ。
口座にしろ、融資にしろ、このブラックマーケットでなくてはならない闇銀行…そこを襲うことはすなわちブラックマーケット全体を敵に回す行為になる。
そのためたまに暴れる考え無しの馬鹿を除いて、ほとんどの奴らがここ、闇銀行では大人しくしているのだ。
…だからこそ、俺としては信じられないんだがな…。
まさか、タイミング悪く銀行強盗に居合わせるとは…。
「緊急事態発生!緊急事態発生!」
警備へと緊急アラートを出そうとする銀行員のロボットに覆面のひとりが銃を突きつける。
「うへー無駄無駄ー外部警備に伝わる連絡経路は遮断したからねー。」
「ひ、ひぃ!」
「ほら!そこ伏せて!動いたらあの世行きだよ!」
「お願いだからみなさん大人しくしてください…。」
外部への連絡が遮断されていることが分かり、状況のヤバさが伝わったのか、他の客や銀行員たちは覆面共の指示に従って大人しく手を挙げて跪きはじめた。
「それじゃあ!リーダーのファウストさん!この後はどうしますか!」
「え!?わ、私ですか……………」
客や銀行員を脅して大人しくさせたかと思えば
今度はリーダーと呼ばれた紙袋たちがなにやら話を始めた。
所々しか聞こえないが…どうやらあの強盗たちは覆面水着団というらしい。
仕方が無いので体を動かさず視線だけ動かして周囲を観察する。
銀行員のロボット共はどいつもこいつもビクビクとした様子で震えながら手を挙げている。
覆面の強盗共は早速カウンターで何か詰めさせているようだ。
隣の白目を向いていた嬢ちゃんは……なんでか知らんがそれを見て目を輝かせているな…ちょっと怖…。
ん?……というかあれ…。
そんな中俺は、妙に気になって1人だけ紙袋を被ったリーダーの…ファウストとか呼ばれていた強盗を注視する。
…トリニティの制服…だよな…?…それにあの気持ち悪いグッズは…ペロロ…。
純白の高そうな制服に気持ち悪いリュックサックを背負った銀行強盗はなんだかとても見覚えがあるように見えた。
…あれヒフミだよな…というかよく見たら他の奴らも…。
ヒフミに気付いたことで周りの強盗共のことを気になりみてみると、どうにもアビドス御一行のように見える。
…つーか制服がそのまんまだ、嘘だろ?
なんなの?そんなに金に困ってたのこいつら?
うわうわ銀行員めっちゃ金詰めてるじゃんやばー…。
俺でも銀行強盗はやったことないぞ…リスクとか考えてんのかよ…。
ええ…?まじ?ヒフミの嬢ちゃんってこんなことやるやつだったのか…ペロロキチじゃなくてただのイカレ野郎だったなんて…。
しかしまあ俺がそんなことを考えている間にもスムーズに強盗を済ませていく。
「しろ…いや…ブルー先輩!例のものは手に入った!?」
「あ、う、うん。確保した。」
「それじゃ逃げるよー!全員撤収ー!」
「アディオース☆」
「…?あれって……あ、いや、
あの…ご迷惑をおかけしましたー!……」
ピューン!
欲しかったものは奪い終わったのか見知った顔の強盗共は話を終えると凄まじい速さで逃げていった。
…なかなかいい手際だな、特に銀髪の嬢ちゃんはこれが天職なんじゃないか?
「ま、マーケットガードに連絡!ブラックマーケットの道路を封鎖しろ!1人たりとも逃がすな!」
強盗が居なくなったことで銀行員たちも動き出す。
…まあいいか、無事に騒動も終わったことだしそろそろ行くとしよう…。
家に帰るのかって?いいや違うね。
少し予定を変更だ…なんせこんなネタを掴んだわけだし、少し、気になることもあるからな…。
下手に俺の情報を漏らさないように釘を刺しに行こうじゃないか、我らがファウスト様によ…。
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さて、そんなこんなでヒフミ達を追っていきたいわけだが…
まだマーケットガードに見つかっていないことから察するに相当上手く逃げていったらしい、追っていたマーケットガードたちもどうやらどこから逃げたのかわかっていないようだ。
しかし、ブラックマーケットの抜け道やルートに精通した俺ならばヒフミたちがどうやって逃げて行ったのかが手に取るようにわかる…。
そもそもが、マーケットガードにより封鎖された道で上手く逃げ切るルートはかなり限られている。
一般の奴らが知らない裏道をいくつも抜けたり、監視カメラの位置を完璧に理解していなければ抜けられなかったり…。
その全てのルートを知っている俺にとって、素人を追いかけるなんざ朝飯前だ。
…やはり痕跡がある、詰めが甘いな…。
監視カメラの死角を縫うように道を突き進んでいく。
…お、あれは…。
そんな具合で進み、閉鎖地帯をぬけたところで見覚えのあるペロロのリュックサックを身につけた少女を見つけた。
「うへ、本当に五分で1億稼いじゃったよー。」
「やったー!何してるのよ!早く運ぶわよ!」
「………」
『ちょ、ちょっと待ってください!そのお金本当に使う気ですか!?』
少し離れた路地からヒフミとアビドス生徒らの様子を確認していく。
どうやらアビドス生徒らはボストンバッグを囲み話をしているようだ。
…1億?なんだ?分前の話か?…なんか揉めてるようだが…話しているのはアビドスの奴らだけでヒフミは特に会話に参加していないようだし…イケるか。
ヒフミに呼びかけるようにこっそり石を投げつける。
ポイッ
コンッ
「…?」
…お、気づいたっぽい、こっそり来いと身振り手振りでジェスチャーする。
「す、すみません、ちょっと電話がかかってきちゃって…ほんの少しだけ席を外してもいいですか?」
「んー?まーこっちもまだセリカちゃんとこのお金の使い方に関してお話しないといけないし全然いいよー。」
「あ、ありがとうございます…。」
ささっとヒフミは俺のいる小道にやってくる。
どうやらアビドス御一行はボストンバッグのお金についてなにやら話をしているからか、俺には全く気づいていないようだ。
小走りでやってきたヒフミと小声で話をする。
「あ、あのアシヤさん…どうしてここに?…いや、なんで私を…?」
俺がどうしてここにいるのか気になって仕方がないようなのでヒフミを一旦落ち着かせる言葉を吐いた。
「まぁまぁ落ち着けよ、ファウスト様。」
「え…。」
目を白黒させてこちらを見つめるヒフミの肩に手を置いて話を進める。
「いやな?実は俺、さっき銀行強盗に鉢合わせたんだがよ……逃げたルートがたまたまわかったから、情報屋に居場所を売っちまおうと思って後をつけてみたんだが…。」
「あっあう…。」
「いやー、こいつはびっくりだ…お前らがあの覆面の銀行強盗だったなんて…。」
戸惑いを隠せないヒフミに対して人差し指を立てて静かにするように伝える。
「…なぁヒフミ、このこと…情報屋に売られたりとかしたくないよな?」
こくこくと怯えた顔で頷くヒフミを安心させるようににっこりと笑う。
「だよな、俺だってできるならお前らの情報を売りたくない…知り合いだしな……だからお願いをひとつ聞いてくれたらそれで見なかったことにしようと思うんだ。」
固唾を飲み込んでヒフミは震える。
「アイツらに俺のアシヤって名前を…黙っててくれないか?」
通路の外にいるアビドス一行に指をさしながらした俺のおねがいに対して、ヒフミは拍子抜けした顔をしながら頷く。
「そ、それは構いませんが…その、どうして…。」
「お前には信頼したから名前を教えたが…ちょっと俺の名前には事情があってな…まあ大したことじゃないんだが…。」
「じ、事情ですか。」
ヒフミは不思議そうな顔でこちらを見つめる。
「ああ、言ってしまえば俺の弱みさ…頼めるか?」
「えっと…よく分かりませんが事情があるなら…分かりました………その、アシヤさんの方も、私のふぁ、ファウストの件はどうか…。」
「ああ、任せろ…どこにも流さないと誓おう、俺たちは一蓮托生だ…。」
そんな具合に俺は戸惑っているヒフミに念を押してアビドス御一行にバレないように、その場をすぐに後にした。
めちゃくちゃ強引だったが何とか今日中に
ヒフミに対して釘を刺すことができた。
…追いかけるのは面倒だったし、ヒフミに大して挙動不審すぎる態度と頼みをしてしまったが致し方ない…あいつらすぐにでもあのままブラックマーケットから帰っちまいそうだったしな…。
……もちろん、わざわざ追いかけてまでヒフミに強引に釘を刺しに行ったのには理由がある。
そもそも、本当にただあいつに名前を黙っていて欲しいだけなら、後日ペロログッズでも渡して頼んでる。
そうじゃなく、あいつに互いに弱みを握っていることを伝え、この日の内に強い約束を結ばせ、絶対に俺の名前がアビドス…というより先生に絶対に伝わることがないようにしなければならなかったのだ。
何をそんなに警戒をしているのか。
それは今回理事から振り込まれた報酬にある。
あの報酬…満額の100万円か50万円が振り込まれているだろうと予測して通帳を見た俺は目を疑った。
なんと報酬は200万円振り込まれていたのだ。
ブラックマーケットの企業が善意で色をつけて報酬を渡すことなどありはしない。
おそらくは…理事はまた俺に厄介な仕事を振る気だ。
仕事を断ることはできない、この金はそういう圧だ。
つまり、だ。
…俺の予測が正しければ………。
ピリリ、ピリリ。
ヒフミと別れ少し歩いた帰り道、路地裏でタイミングよく携帯の音が鳴る。
表示されている名前は、カイザーPMC理事。
ガチャッ
電話に出ると、変わらず機械的な理事の声が聞こえた。
「はい、お電話承りました。アシヤです。」
「…アシヤ、先日のアビドスの件はご苦労だった。」
「依頼を見事成功させた君の腕を見込んで、近日中にさらに頼みたいことがある。」
「…それは…。」
「まあまて、皆まで言うな…1度やってもらったわけだしな、建前は無しで単刀直入に言おう。」
「現在、アビドスのバックには例のシャーレが付いている。無尽蔵の物資の支援、憎たらしいまでの指揮能力を持つあの大人…これらを力につけたアビドス…。」
「君に、そんなアビドスの件で…仕事を頼みたい。」
またあの化け物…もとい、先生の相手をせねばならない、ということさ…。
感想、評価等いつもありがとうございます。
初心者なもので右も左も分からないので良ければご感想ご指摘の程をよろしくお願い致します…。
先生の性別はどちらがいいでしょうか?
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男先生
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女先生