一般ブラックマーケット市民A   作:水管

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昨日起きたら評価めっちゃ増えててビックリしました。
感想、誤字訂正等もありがとうございます。


市民Aの仕事の日

 

 

「やはりあったか」

 

今日に限っていい仕事が全くない、なんて思いながら

斡旋所『職安』にて仕事を探していたところ

それらしい、というかそのものがあった。

 

例の狐坂ワカモ主導のテロにまつわる依頼。

 

…さて、どうしたものかね…。

 

 

 

 

基本的にブラックマーケットの場合、

仕事の依頼は専用の斡旋所を通すことが多い。

ブラックマーケットの仕事はどいつもこいつもグレーだったりブラックだったりで公の場じゃとても募集なんてかけられないからな。

 

そんな斡旋所の最大手『職安』。

 

職安は基本的に依頼時、依頼外問わず

いかなるトラブルにも責任を取らず、掲載されている依頼にも保証はしない、あくまで掲載するだけというスタンスだ。

 

そのため報酬が払われない、報酬が掲載されているものよりも少ない。

なんてトラブルが割とある。

 

もちろん多少の頭金と手数料を払って職安に掲載している依頼のためネットの地雷臭プンプンの仕事よりは信頼できるが

いい仕事、悪い仕事を見極めなければタダ働きどころか、収支マイナスすら有り得る。

 

実際、口先八丁で騙されて1日食えるかどうかギリギリの賃金で

働かされている馬鹿や、

明らかに怪しい旨い仕事に飛びついてそのまま帰ってこなかったアホも何人も見てきた。

 

そして、仕事の見極めを誤れば次は俺がそのアホ馬鹿になるというわけだ。

 

 

さて、それを踏まえて目の前の依頼の話に戻ろう。

 

まず具体的な仕事内容だが…

 

戦闘や陽動がメイン、配置や役割などは各自の判断。

拘束時間は最大5時間。

 

まあ要するに暴れろってことだと思う。

予測が正しければ既に集まっているスケバンやPMCの数からしてそこそこの規模の戦闘が勃発するはずだからな。

 

一応情報では戦車なんかも導入されるとはあったが、あの辺は直属の部下のスケバンなんかにやらせるのだろうな。

 

あくまで俺たちは戦闘員Aとして場を荒らせばいい。

乱戦ともなれば俺の逃げ足も役に立つ、ほどよく逃げて金だけ貰うとするかな…。

 

 

そして報酬だが15万…。

この手の依頼にしてはかなり高めだ、高すぎる…という程でもないのだが…短期間でなるべく頭数を揃えたいのだろうか。

 

 

さらに、場所だが…。

 

「外郭地区とはいえD.Uか…。」

 

あの辺は連邦生徒会直属の管理地域。

いくら『超人』連邦生徒会長がいないとはいえ、実際に一騒動起こすのは狐坂ワカモくらいだろう。

まあなにか思惑はあるのだろうが…。

 

うーん。正直いつもなら受けないが、今回は事情が事情だ。

治安の悪化がピークに到達するまえに金を掻き集めなければならないわけで…。

 

…報酬の未払いは、まず無いだろう。

募集人数がそこそこ多い、この数の相手に未払いかますのはヘイトを買いすぎる。

下手したら職安ほぼ出禁状態になりかねないしな。

 

そしてワンチャン死ぬリスクだが…情報屋のお陰である程度の戦力の配置はわかっているし、安全地帯の把握もすんでいる。

これだけの情報アドバンテージがあれば、俺の逃げ足で十二分に逃げられる…。

 

他にいい仕事もしばらくない可能性が高い…。

 

「受ける…か…。」

 

戦闘か…久々だが大丈夫かな…死にたくねぇなぁ…。

 

_________________

 

 

 

そんなことを考えて依頼を受けたのが丸一日前。

 

硝煙の匂いが立ち込めるつい数時間前までは平和だった

ボロボロの街並みを見ながら少し後悔し始めていた。

 

「うふふふ…皆さん、日頃の連邦生徒会への想いを込めて盛大にぶち壊して差し上げましょう…。」

 

ワカモを先頭にテロ集団が派手に声を上げながら突き進む。

 

 

「あれ?アシヤじゃん、お前も来てたのかよ!」

 

「あぁ、何せこんなに旨い仕事なんだぜ?お前らも同じ口だろ?」

 

「まぁな!報酬はうまいし、暴れるだけってのがいい!場所が場所だが例の厄災の狐サマがいるなら大丈夫だろうしな!」

 

「にしても、お前が戦闘関係の仕事に手を出すところ初めて見たぜ俺ァ、動けんのかよ?」

 

「気が向いたのさ、お前らよく見てろよ?俺の逃げ足は車より早いぜ。」

 

なんて馬鹿話をブラックマーケットのお仲間兼仕事仲間であるロボットども交わしながら集団に合わせて歩いていく。

 

 

そんな時、前の方から閃光弾と共に銃弾の音が響き渡った。

 

 

「へへっ、おいでなすったな!アシヤはどうせ後ろの方でうろちょろすんだろ?」

 

「まぁな。」

 

「俺達は戦果を上げて追加報酬が欲しいからちょっと出張ってくらァ。」

 

そんなことを言ってロボット共は前線に行ってしまった。

 

ちなみにこの依頼に追加報酬なんてものはない、大方この騒動に乗じて火事場泥棒よろしく"追加報酬"を拾いに行くのだろう…

清々しい程にブラックマーケットの住人といった感じだ。

 

まぁアイツらは本職が戦闘だったはずだし、

生き残ることには長けてるから気にしなくていいだろう。

それより俺の心配だ。

 

ダダダダ!

 

劈くような銃撃音を合図にしてさらに戦闘は激化していく。

建物やコンクリートから出てきた瓦礫や銃の硝煙が満ちる。

完全に乱戦って感じだな。

 

まぁもともとブラックマーケットで募った人員がほとんどを占めてるわけだしお行儀のいい戦闘にはならんわな。

 

しかしこの状況は好都合だ、この乱戦状態。

俺なら上手いこと逃げ回れる。

 

 

さて、ここで俺がやるべきことは大きく分けて2つだ。

 

生き残ること。

 

ワカモの指示が来るまで戦線を持たせることだ。

 

生き残ることは言わずもがな。

ワカモの指示というのはワカモから渡されたインカムによるものだ。

今回の依頼、募集されていた時には書いていなかったのだが、

ワカモの指示があれば直ぐに撤退していいらしい。

 

どうもワカモは地元の不良や部下のスケバンを連れて外郭地区の建物を占拠して"やりたいこと"があるらしいのだ。

 

あんな建物を占拠して何をするのかは知らないが、俺たちはそれが終わるまでの時間稼ぎ、および陽動という訳だ。

 

というわけでやることはシンプル。

 

この場を持たせてしっかりと報酬をいただくことだ。

 

 

「まーそんなこと言ってもこの人数いりゃあ、あと1時間は持つだろ…。」

 

そんなことを考えて情報屋で買った地図を見ながら安全地帯でサボっていた時だった。

 

先程見たばかりのロボットどもがボロボロの状態で撤退していたのだ。

 

「おいおい!お前らどうしたんだよ!さっきまであんなに元気ピンピンだったじゃねぇか!そんなに敵が強かったのか?」

 

「ああァ?アシヤか?お前も一旦逃げた方がいいぜ。」

 

「敵の生徒は数もそんなじゃねぇんだがよ!指揮してる奴がかなり強ぇ!」

 

こいつらは元々カイザーかどっかのPMC崩れだ。

腐っても実力は本物、それがここまでこっぴどく…。

 

前線からなるべく離れるように走りながら話を続ける。

 

「…前線は?」

 

「ほぼ崩壊寸前ってとこだなァ、あいつも言ってたが敵の指揮官が厄介だ。建物や地形を上手く使ってきやがる。」

 

指揮官、ねぇ…情報屋で買ったヤツにはそんなの書いてなかったが…なんだってんだ一体…?

 

「ワカモも一瞬だけ前線にいたんだが、さっさと引っ込んでったぜ!おそらく建物の中でやること済ませにいったんだろうよ!」

 

「今は戦車が出張って持ち堪えてるってところだがもうそろそろ突破されるだろうよ、もう少しで依頼主からも撤退許可が出るだろうからそれまで持ち堪えるしかねぇわなァ。」

 

そんなことを話していると一人スケバンが逃げていくのが見えた。

 

あーあー…まだ命令来てねぇのに逃げたら報酬でねぇぞー…

おそらくは前線で戦車が破壊されたのだろう、ビビったのか何人か他にも逃げていくのが見える。

 

「こらー!あなたたちー!大人しくしなさーい!」

 

そしてとうとう敵がやってきてしまった。

 

数人の生徒たちの奥にいるのは話に聞いていた優秀な指揮官だろうか。

 

…あいつ、俺と同じでヘイローがねぇ人間か…?

思わぬ所でお仲間にあってしまったな…。

 

うーん…俺らしくもねぇが少し話をしたくなってしまった。

 

ダダダダダ!

 

ロボット共が応戦したのを見て遮蔽物に身を隠しながら

俺も手持ちのリボルバーでささやかながら抵抗する。

 

パン!パン!

 

「おいアシヤ!火力よええぞ!」

 

「うるせぇ!俺は戦闘タイプの機体じゃねぇんだよ!」

 

応戦を続けながらチラリと生徒たちの奥で指示を出すヘイローのない大人の方を見る。

…指揮がザルになるかもしれねぇし、少し話しかけてみるか。

 

「おい、あんた!ヘイローもねぇのに前線に出て大丈夫かよ!流れ弾1発で死んじまうぞ!」

 

敵に話しかけられたことにびっくりしたのかすこし驚いた顔をしながら、指揮をする手は止めずその指揮官サマは答えた。

 

” 大丈夫さ、生徒のみんなが守ってくれているからね。”

 

パン!パン!

 

閃光弾を投げようとする生徒の手元を狙い、妨害をしながら話を続ける。

 

 

「随分と。生徒のことを信頼してるんだな。付き合い長いのかよ?」

 

" いいや?会ったばかりだよ。それでも信頼できるものなのさ"

 

 

「そりゃあ…、またなんで?」

 

激化する戦場、弾丸飛び交う中

その大人はこちらを見て笑みを浮かべながら言った。

 

 

” だって、私は先生だからね。”

 

 

その言葉を皮切りに一際でかい爆音が鳴り響いた。

手榴弾か何かが爆裂したらしい。

 

「おいアシヤ!これ以上は無理だ!報酬は諦めて逃げるぞ!」

 

慌てて周りを見渡すと戦線はほぼ崩壊している。

やっべー…!

 

「こっちだ!逃げ道は俺が知ってる!着いてこい!」

 

情報屋から買ったやつに逃げ道のルートも載ってて助かった。

 

 

 

「酷い目にあったな。」

 

「ほんとだぜ…そういやアシヤァ、お前最後の方になんか敵と話してなかったか?」

 

「あ?まあちょっとした世間話だよ。」

 

「あいつ恐ろしく強かったな!確か生徒たちからは先生って呼ばれてたが…」

 

…先生、ね。

俺と同じく、ヘイローのない大人の人間。

どうも悪いやつではなさそうなんだが…。

 

ブラックマーケットにずっと居たからだろうか

俺には少し眩しく見えてしまうな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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